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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第10章 始まる滅びの時
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第293話 竜の民


 12:42


 ーー 台東区 ーー


「予定を大幅に過ぎてるからそろそろ行くとしようか」


 稲垣は部下達にそう伝えた。


「行き先は勿論()()()()()。そこで日本国民に向けて真実を話す」


 その言葉に部下達は「遂にこの時が」、「これで皆、目を覚ましてくれる」と言い、喜びを顔に浮かべた。


「悪いがこれで行かせてもらうよ守行」


 "イクシオン"が方向を変えて動き出したのを見た守行は、「何処に行くつもりだ!」と怒鳴り、崩れ掛けたビルを足場にして走り出すとジャンプし、"イクシオン"に向けて拳を大きく振りかぶるが。


「ちっ!」


 魔法障壁によって物理攻撃すら受け付けない状態の為、行き場の無い衝撃が返ってきた為に守行は吹き飛ばされた。


浩和(ひろかず)うううう!!」


「また会おう守行。さあ皆、1300(ひとさんまるまる)時の放送には間に合わせよう。この腐りきった世界を壊し、あるべき姿に、あるべき秩序に戻そう。そして、日本人の真なる目覚めを」


 自衛隊、特殊作戦群、各国軍隊、冥王軍、冥獣軍と、多くの者達が冥竜軍を退(しりぞ)かせる為に奮闘するが被害は広がるばかり。

 それにより東京は一部を除いて壊滅状態となり、千葉県、神奈川県、埼玉県、茨城県等の関東地区は東京よりも悲惨な状態だ。

 特に埼玉県が1番酷いと言える。

 その理由はレヴィアタンが暴れまわった為だ。

 そして、そんな冥竜軍を止める為に出た多くの者達の命が奪われ、多くの民間人の命も奪われた。

 それは日本政府だけでなく各国並びにあらゆる世界にとって由々しき事態だ。


 冥竜王が復活する……。


 存在事態が間違った存在であり、ありとあらゆる命の天敵。

 その目覚めは世界に終焉をもたらし、今度こそ、間違いなく許された命以外は根絶される。

 神々ですら恐れ、多くの神々を喰い殺した最強最悪にして最凶最厄なる存在が。

 その目覚めの兆候(ちょうこう)からなのか、東京の上空はまるで巨大な台風の様などす黒く分厚い雲に(おお)われ、酷い雨が降り続ける為に各所が水没し始めている。

 そして、その台風の様な分厚い雲の中心に大きな穴が広がり、内部から赤黒い雷が降り注ぐ。

 その下にあるのが夜城邸だ。


「もう間もなくです兄者(あにじゃ)


「そうだな」


 室内では和也とゼストがソファに向かい合わせで座り、その時が来るのを静かに待っていた。


「……ですが宜しかったのですか? なにもあのような芝居をしなくても良かったのではありませんか?」


「んじゃどうしたら良かったと思う? 俺は俺で奴と、今度こそケリを付けなきゃならねえんだぞ。それはお前らだって知ってるだろ」


「はい……」


「だからこそ、奴が顔を出したら俺を殺せって言ったんだ。そうすりゃ、しばらくの間はまだ奴を表に出さずに済むからだ。その間にお前らには準備してもらいてえし、アイツらがそれを手伝ってくれるなら今より強くなってもらわねえと相手にならねえ。下手をしたら俺は奴に乗っ取られ、全てが終わるんだぞ? そうなれば本当に俺は俺じゃなくなり、お前らに出したくもない命令を出すことになる。お前らの事だ、それでもそんな俺の命令を素直に聞くんだろ。それじゃ駄目だから俺は俺なりに考えてやってきたんだぞ?」


「分かっております……、ですが場合によっては彼らと本格的な敵対関係になるのではと思いまして……」


「……その時はその時だ。お前らに俺を殺せない以上、俺はアイツらと敵対してでも止めてもらうさ。じゃなきゃ、アイツらを裏切る意味がねえだろ」


「……ですね」


 その話を美羽は静かに聞くことしか出来ないでいた。

 一部とは言え和也の本当の目的を知った彼女としては、それをどう受け止めたら良いのかを悩み、和也は勿論、凶星十三星座(ゾディアック)達とって真の目的の1つをどうすべきか考えた。

 それは敵となるか味方となるか。

 味方となれば世界の敵として美羽達も粛清(しゅくせい)される。

 敵となれば和也を殺す事になる。


 そのどちらか1つを選ばなければならない。


 しかし、それを下手に話すわけにもいかない。

 故に彼女は苦しんだ。

 時刻は13時。

 テレビが勝手に映るとそこには稲垣の姿が映し出された。


『えぇ、私は元陸上自衛隊陸将の稲垣と申します。日本国民の皆さん、本日は突然の大惨事を経験する事となりましたがどう御過ごしでしょうか?』


 ーー 国会議事堂 ーー


「今回の件で多くの命が散りました。しかし、これは必要な犠牲と言える事なのです。国民の皆さん、これは日本政府だけではなく、全世界でも伏せられている事実をこれから話させて頂きます。この世界は元々、竜、またはドラゴンと呼ばれる存在が暮らす世界でした。その世界を破壊し、こうして多くの人種がこの世界の頂点に君臨しておりますが、それは大きな間違いなのです。皆さんもよく知る存在、それは神と呼ばれる者がこの世界に侵略し、こうして多くの人間が誕生する事となったのです。……多くの竜達が怒りました。なぜ、自分達の王であり神を裏切り、この世界を侵略するのかと。ですがその王は同胞達に言ったのです。「今はツラいけど我慢しよう。いずれ和解する事が出来る。そうすればまた平和な世界を取り戻せる筈だからその時が来るのを待とう」と言い、自分の事は良いからと着いてきてくれる多くの者達に食料を与え、自分は泥水を(すす)り、腐った肉等を食べてでも生きようとしていました……。しかし、神はそれでも裏切った……。そして王は真実を知ってしまった……。その真実を知った王が遂に激昂(げっこう)した事で天界へ宣戦布告をし、その結果、天界は滅ぶ事となりました。……王の名は"アルガドゥクス"。冥竜王と呼ばれ、史上最強の存在。その王は神が手を付けた事で腐り始めたこの世界を浄化する為、一度破壊する事で再び豊かな世界へと再生させるつもりでいました。しかし、それをよく思わなかった者達に(はば)まれてしまい、王は道半(みちなか)ばで封印される事となったのです。……実の妹の手によって。……国民の皆さん、我々日本人はその、()()()()()()()()()()()()()()()()! つまり! 我々日本人は竜の民! 故に! 我々は親愛なる王を再び目覚めさせる為にその命を差し出して貰って頂いているのです! 申し訳無いとは思います……、しかし! これはその王を復活させる為に必要不可欠な儀式なのです! そこで国民の皆さんに伝えたい! 我らと共に王を目覚めさせ! 再び王と共に立ち上がりませんか?! こんな(いつわ)りの幸せではなく! 正真正銘の幸せな世界で暮らしませんか?! 共にこの間違った世界を正そうと立ち上がって頂けるなら外に出て空を見上げ、王と共に戦うと強く念じて下さい。さすれば……、皆さんの元に"竜国"への扉が開かれます。中には入れない者もいるでしょうがそれは申し訳無い。それは王を信じない、またはいずれ裏切る心を持った者だと判断されたからだ」


「陸将、そろそろ」


「ん? 時間か。……では国民の皆さん、共に戦えるのを楽しみにしております。そうそう、来て下さった方々には他に隠された真実を話しますので、どうか楽しみにしてて下さい。それでは」


 そこまで話し、稲垣は部下と共に画面から消える。

 中継を見ていた多くの国民は、日本政府は他に何を隠しているんだと思った。

 勿論、避難していた政府機関の者達は動揺し、知られては困る事をバラされたら大変だと顔を青ざめさせながらどよめく。


 ー 時代が動く ー


 止まっていた時の流れが動きだし、再び王が目覚めようとしている。


 ー 絶望が息を吹き返す ー


 復活すれば今度こそ誰にも止める事が出来ない最強最悪の絶望が世界を(おお)う。


 ー 終焉が目覚める ー


 それはより強大な力を得た終焉と言う名の絶望。


 憲明達がどれだけ頑張ろうとも、最早どうすることも出来ない状況が続く。

 街は破壊され、命は奪われ、信じていた事が全ては嘘だった。

 そんな人々の絶望が呼んだのか……。


 13:14


 それはゆっくりと姿を現した。


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