第287話 倒れる者達
「そろそろ僕達も出ようか皆」
12:11
凶星十三星座達冥竜軍に続き、稲垣が率いる部隊が戦艦"イクシオン"を起動させ、首都東京上空に現れた。
「ようやく来たかあのボケが」
それに対するは怒りを露にする守行。
「なんだ、止めに来たつもりかい? 守行」
守行にとって友だろうとその裏切りは決して許せはしないが為、ここで戦艦イクシオンもろとも稲垣を葬ろうと考えたいた。
「陸将、以下がなさいますか?」
「撃て」
躊躇うこと無く、稲垣は部下にそう伝えると守行に対し、次々とミサイルやレーザー砲による攻撃をし始める。
「……くだらん」
しかし、"鬼神"と恐れられる男をその程度で止められる筈がない。
守行は向かってくるミサイルをその豪腕で叩き潰し、逆にミサイルを潰さんばかりに握ると戦艦イクシオンへ投げるが、それをイクシオンから放たれるレーザー砲で破壊される。
「(イリスから聞いた情報には無かったが、今の技術であんなレーザービームを撃てる兵器を作れる訳がねえ。だがアイツの事だ、"変換"か"創造"で造ってそれを搭載させやがったんだろ)」
そう考えつつ、守行は向かって来るレーザー砲を素手で受け止める。
「(熱い……、それに魔力も感じられるな)」
戦艦イクシオンから放たれるレーザー砲は守行の推察通り、もう一人の和也が造り上げた兵器。
「ナメくさりやがって……、降りて来い臆病者!!」
「陸将、何か叫んでおられますが?」
「うん、僕を臆病者って言ってるんでしょ。構わないから攻撃を続けて」
「はっ!」
稲垣は戦艦イクシオンの司令室で、守行が怒鳴っている映像を眺めながら艦長席に座った。
「まっ、攻撃は程々にして我々は目的を果たしに行くから準備しといて」
「はっ!」
稲垣が戦艦イクシオンを使ってまでしようとしている目的が未だはっきりしない。
それは国家転覆を目的としたクーデターなのか解らない。
解るのは1つ、彼らは世界の敵となった事だけだ。
「1230時に目標へ向けて進行。後、改めて攻撃を開始する」
「総員に継ぐ! 1230時目標へ向けて進行! 繰り返す! 1230時目標へ向けて進行!」
「(悪く思わないでくれよ? 守行)」
同時刻
ーー 横浜 ーー
「アアアアアァァァァァッ!!」
<下等生物ガ、付ケ上ガルナ>
横浜本牧市民公園に現れたダゴン達を止める為に行っていた岩美、里崎の両名でダゴン達の進行を止めに行っていたが市街地まで押されていた。
「さ、里崎先輩……大……丈夫ですか……?」
家屋を破壊し、瓦礫に埋もれる里崎を心配した岩美だがその言葉は届かず、ただ黙ったままグッタリとして動かない里崎を見た岩美は、完全に恐怖と悲しみに支配された。
「セ……ン……輩……」
自分達でじゃ止められない事は解ってはいたことだ。
努力したところで美羽や憲明達とは違う。
それでもやれる事があるならと覚悟を持って挑んだが、フタを開けてみればやはりなんの事はなくただ一方的な暴力で辛い思いをするだけでしかなかった。
「(痛いよぉ……、苦しいぃ……、ここから……逃げ) アッ?!」
<マダ、息ガアルノカ>
「痛っ! 痛い!」
そこへまだ動ける岩美を見つけたダゴンはその髪の毛を鷲掴みにして持ち上げると、岩美は涙を流しながら痛い、痛いと何度も言いながらその手から逃れようと暴れるが逃げられない。
<活キガ良イ、デハ、貴様ハ頭カラ食ストシヨウ>
「やだっ、やだやだやだやだっ! 死にたくない! 死にたくないよ!」
だがそうは言っても岩美の眼前に、死の闇とも言える凶悪な口が広がっていたのを見た瞬間、死の恐怖で失禁した……。
「(あぁ……、来なきゃよかった……)」
【里崎 岩美 両名敗北】
ーー ーー
「ぬう! やりおる!」
「ちっ、ただの変態がまさかここまで粘るなんてな」
その頃バニラはベルゼブブと戦闘していた。
「我輩を嘗めて貰っては困る!」
「気色悪りぃ、いい加減死ねよ!」
「ぬううぅぅぅ!」
目にも止まらぬ速さで動くだけでなく、その強力な攻撃力でバニラは防戦一方ではあったが、それでもなんとか踏みとどまってベルゼブブの相手をしていた。
しかし、度重なる攻撃の連続で最早バニラは立っているだけで精一杯である事は明白。
だが相手は素手だけで人を簡単に殺せる魔王なのだからそれでも立っている事事態が凄いとも言える。
「ぬはっ!」
だがベルゼブブの猛攻に遂には片膝を付き、次の一撃が来ればバニラは死を覚悟した。
「(ぬうぅ……、ここまでか……、皆スマナイ)」
「そろそろ死ねよ変態! "飢えた黒蝿"!」
右手に小さい蝿の群れの様な魔力の塊を作り、ベルゼブブはそれをバニラに放つ。
"飢えた黒蝿"に触れた物が瞬時に消える。
削るや破壊とは違い、それは触れたものを食べている。食べる事でベルゼブブの魔力となり、力となる。
《暴食》
それは能力ではなくベルゼブブの権能であるが故に、彼女はありとあらゆる物を食べて力にする事が出来る特殊な力だからだ。
「ぬおおおおおおおおお!! (だが只では死なんぞ! 一撃! 一撃で良い! 奴に叩き込んでみせる!)」
バニラは右手に魔力を集め、最後の力を振り絞って走り出した。
ーー 品川 ーー
品川では一樹と凶星十三星座の1人、No.Ⅶ-Ⅵの"マモン"と戦っている。
「ダークス! 超電磁砲!」
<キュラララッ!>
「させね~っすよ!」
緑色の長髪に悪魔特有の角。まだ幼さが残る顔をしてるが体は大人。
しかし彼女は《強欲》を司るれっきとした魔王の1人だ。
マモンは相手の攻撃を吸収し、自分の魔力を混ぜる事で相手の攻撃を倍にして放出する事が出来る。
故に、ダークスの"超電磁砲"は吸収されてしまう。
「……そう来ると思ってたぜ」
「はい?」
ダークスの"超電磁砲"はこのマモンによって何度も吸収され、逆にそれを利用して一樹達は押される結果に繋がっていたが、一樹は考えがあるからこそワザとそうしていると口にした。
「いくら"強欲"の力を使って吸収されてもよぉ、限度ってもんがあるよな? 限界まで撃ち続けろダークス!」
<キュラララッ!>
「はははっ! 限度? そんなのあっしにはねえスよ!」
「んじゃ俺の攻撃も吸収してみろよ!」
一樹は槍を構えて詠唱を始めた。
「まともに撃ったことがねえからどうなるか解らねえしダークスと上手く連携出来た試しがねえけどよぉ……、覚悟しろよ? ……水の水面に煌めく光の柱、大地を穿つ恵みの雨、氷塊を砕くは荒れし波」
「何しても無駄っすよ!」
「水麗守りし龍の恩恵」
一樹の周りに集まる水がまるで蛇の様に蠢き、それは次第に槍の方へと移動すると、それは龍の姿へと変わり徐々に巨大化していく。
「怒れる水龍の逆鱗触れし愚か者に裁きの洪水、……この槍ごとテメーにくれてやる! 合わせろダークス! 水滅龍! "水麗爆"」
水の龍と共に放たれた槍を見たダークスは攻撃を一旦やめ、マモンに"水麗爆"が当たるののと同時にダークスは再び"超電磁砲"を放った。
瞬間。
マモンは強烈な爆発に飲み込まれ、喉が裂けるんじゃないかという程の叫び声を上げた。
「どうよ? 俺達の連携攻撃の味わよ?」
「イギャアアアアアアア!! アッ! アアアァァァァ……!」
それは一種の水蒸気爆発であり水爆とも言える爆発。
一樹の水と槍、ダークスの電撃によって産み出された2人だからこそ出来た必殺の合体技とも言えるだろう。
【マモン 敗北】




