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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第10章 始まる滅びの時
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第283話 佐渡の決意


<やるな玲司!>


「大盾にジョブチェンジしてから意外とコレがあっててさ!」


 ダークスターとルシファーが戦闘している頃、玲司と佐渡の2人はゴジュラスを食い止めていた。


「スイッチ!」


「うん! "舞い堕ちる羽(フェザーフォール)"!」


 玲司がゴジュラスの攻撃を大盾で防ぎ、佐渡と入れ替わると空中からまるで羽が舞い落ちるが如く、何度も鋭い攻撃を繰り出す。

 佐渡が扱う武器は主に"レイピア"と呼ばれる"細剣(さいけん)"。

 彼女が手にするレイピアはどこか赤い薔薇を彷彿とさせる美しい剣だが、切っ先から紫色の液体が微量に垂れている。


<私に()()()()()()!>


 毒。それは、先ほど言った紫色の液体だ。

 彼女が持つ剣の名は"ローズトーンズ"、つまり「薔薇の棘」。

 だがゴジュラスはその毒がどれだけ恐ろしいのか、まだ、気づいていない。


「スイッチ!」


<それがお前達の戦法か! 入れ替わり立ち代わり私に攻撃しても無駄だ!>


「"盾殴り(シールドバッシュ)"!」


<"多重力結界">


 ゴジュラスは玲司を止めるために"多重力結界"をここで発動させようと動く。

 しかし、それを玲司が許さない。


「"大地の波(アースウェーブ)"!」


 玲司は"盾殴り(シールドバッシュ)"から急遽変更し、地面を力強く踏み込んで"大地の波(アースウェーブ)"を放ち、ゴジュラスの動きを一瞬止めると。


「"能力殺封(アンチスキル)"!」


 大盾を地面に叩き付け、ゴジュラスの"多重力結界"を打ち消す。


<クッ、またか!>


 玲司はゴジュラスにとって厄介な存在へと成長していた。

 以前、美羽の"影の領域(シャドーゾーン)"などを封じたのもこの能力だ。玲司は自分で気づかないうちにそれだけの力を手にし、それを上手く扱えるまでになっていた。

 そして、彼はその力がなんなのかを高峰に教えてもらったお陰でより強力な能力へと変化する。

 それが"能力殺封(アンチスキル)"だ。

 その能力を使い、これまで何度もゴジュラスの"多重力結界"を打ち消していた。

 だがそれだけでは無い。

 大盾を構え直し、大盾に収められていた斧の様な片手剣を取り出すと、何度もゴジュラスに攻撃する。

 ゴジュラスの皮膚は勿論だが防御面を考えるとそれだけでは大したダメージになりはしない。

 しかし、それもまた玲司の戦略だった。


「"不動"! "爆砲"!」


 片手剣による連続攻撃から大盾をゴジュラスに押し付けると"不動"を発動させ、玲司は大盾に仕込まれたギミック、"爆砲"を発動させた事でゴジュラスが大爆発を受けて吹き飛ぶ。


<なっ……?!>


「どうだい? 至近距離から受けた"爆砲"の味は?」


 吹き飛んだ事で巨体が宙に舞い、地響きをたてながら地面に倒れる。

 それは大盾だからこそ出来る芸当であり、"不動"の能力を持つ玲司だからこそ可能とした攻撃。

 "爆砲"に使用されたのはプラスチック爆弾に使われる材料とほぼ一緒だがそこは和也だ。

 和也はアジ化アジトと呼ばれるもっとも危険な爆発物までも使用している。アジ化アジトは熱や衝撃に敏感で直ぐ爆発を引き起こすもっとも危険な爆発物だが、それとは他の危険物も混ぜている。

 玲司はそのアジ化アジト等を使用し、より凶悪な爆弾であり弾薬の作り方を和也から教わって使用している。

 その爆弾であり弾薬の名は"凶弾爆"。

 正直、頭が狂ってるとしか言いようが無い。

 それだけ危険な爆弾なのだから仕方ないだろう。

 だがしかしだ、それのお陰なのか多少なりとも強固な防御力を持つゴジュラスにダメージを与える事が出来たのは確かだ。


「……腕が痛い」


「当たり前でしょ?! "爆砲"に使ってる物が物なんだからそうなるでしょ!」


 佐渡は勿論、"爆砲"に使用されている物がなんなのかを知ってるため、玲司に怒った。


「だから使わないでって言ったのに! 下手に使って手が吹き飛んでたらどつするつもりだったの?!」


「まぁでもそうならないようにこの大盾は強化されてるしぃ……」


「でも振動はまだまだでしょ」


「……はい」


 ギヌロッと佐渡に強く睨まれ、玲司は何も言えない……。


<ふっ、ふはは>


「玲司君」


「やっぱりそこまでダメージは与えられてないかぁ……」


<ふはは、そう謙遜(けんそん)する事はないぞ玲司。まさか、この私が吹き飛ばされるとは思ってもいなかった……>


 そう言ってゴジュラスが立ち上がると、鼻から鼻血を滴し、胸には深い傷が出来ていた。


<考えを改める事にしよう……、お前は……、あの高峰と言う男の次に……、私の敵として認識する事にした! ここから先は全力で行かせて貰うぞ玲司! 私は負けるわけにはいかないのでな!>


 すると両肩から生える花弁(はなびら)状の結晶、"結晶華"が抜けると紫色に何度も明滅を繰り返し、高密度のエネルギーが集まる。


「あっ、コレはマズイかも……」


 玲司はそれを一度だけ見た事があるからこそ、それが如何に危険かを悟った。


<"四面葬渦(しめんそうか)">


 四つの結晶華から赤黒いエネルギーが放たれ、そのエネルギーが1つとなると渦となって玲司達に向かう。

 避けようとしてもその渦が余りにも大きく、避けきれない。


「(ど、どうしよう……)」


「玲司君!!」


 叫びにも似た佐渡の声。

 その声を聞き、玲司は無意識に大盾を構え直すと正面から"四面葬渦(しめんそうか)"を防ごうとした。


「あ、"能力封殺(アンチスキル)"!!」


 ゴジュラスの"四面葬渦(しめんそうか)"は憲明が奇跡にも近い状態で斬った事がある。

 だがその時とは比べ物にならない程までにゴジュラスは強くなり、そのゴジュラスが放った"四面葬渦(しめんそうか)"をいくら玲司が"能力封殺(アンチスキル)"を使ったところで無駄な筈だ。

 それでも玲司は佐渡を守るために何度も"能力封殺(アンチスキル)"を使用する。


「"能力封殺(アンチスキル)"!! "能力封殺(アンチスキル)"!! "能力封殺(アンチスキル)"!! ……くそっ! 全然弱まらない……んぎぃ!」


「玲司……君……」


 ゴジュラスの"四面葬渦(しめんそうか)"を前にして恐怖した佐渡は腰が抜け、動きたくても動けず、ただジッと玲司の背中を見つめた。


「(……やだ、このままじゃ玲司君が……、玲司君が死んじゃう……。誰か……、誰か玲司君を助けて!)」


 そう願っても誰も来ない。

 その場にいるのは玲司達だけ。

 故に、佐渡の願いを聞いてくれる神様もいなければ誰もいない。


「(お願い! 誰か!)」


 その時……、佐渡の脳裏に和也達に助けてもらった時の映像が流れた。

 それは走馬灯か、はたまたただ思い出したのか解らない。

 だが彼女は玲司の笑顔を見て、その優しさに触れた事で意識し、自分が玲司に恋をした事を自覚した。

 そこから2人が付き合う事になるのは意外と早かった。


「(……助けなきゃ)」


<どうした玲司! お前はここで死ぬか?! それとも私の攻撃に耐えられるか?!>


「(私が玲司君を助けなきゃ!) 玲司君聞いて!」


 佐渡はどうにか食い止めている玲司に対し、これから何をしようとしているのかを伝えると聞いた玲司はギョッとした顔で佐渡へ視線を向けた。


「しょっ、正気なの?!」


「私は正気だよ! だからお願い!」


「そ、そんな、無理だよ!」


「無理でもやらなきゃ死んじゃうかもしれないでしょ?! だったらやらないで後悔するよりやって後悔する方がましよ!」


 そこまで言われ、玲司は悩んだ末に佐渡にある物を手渡した。


「い、良い?! よく聞いて! その先端に付いてるスイッチが少しでも触れたら!」


「解ってる! ……ねえ玲司君!」


「なに?!」


 その時、佐渡は玲司にキスをした。


「さ、佐渡……さん?」


「もう……、何時になったら恵梨佳って呼んでくれるのよ?」


 すると佐渡は自分のレイピアの先端に、玲司から渡された物を靴紐でどうにか縛って取り付ける。


「……待っててね」


「……うん。気をつけてね、……恵梨佳」


 ようやく名前を呼んでくれた、それだけで彼女は喜び、玲司から一旦離れると今度は玲司に向かって全力で走りだす。


「玲司君は私が守るんだから!!」


 そう叫んだ彼女はジャンプすると玲司の肩に脚を乗せ、更に高くジャンプするとゴジュラスの真上まで跳んでその姿を見たゴジュラスは目を見開いて驚愕した。


<はは……、そうきたか……>


 構えられた"ローズトーンズ"の切っ先には、"爆砲"の為に作られた玲司が和也から教わった凶悪な"凶弾爆"が2つ、くくりつけられていた。


「上がガラ空きだよ」


 そして彼女はゴジュラスに向けてレイピアを伸ばし、切っ先が当たった瞬間に大爆発が引き起こされた。


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