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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第10章 始まる滅びの時
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第279話 頼む


 アメリカで動きがあったって聞かされたのは柳さんが来た直後だった。

 凶星十三星座(ゾディアック)のベルゼブブ、レヴィアタン、この2人が現れた事で"エリア51"は壊滅し、生存者は0……。

 ほとんどの人が原形をとどめていなかったらしい。

 そして問題のアルガドゥクスの遺体は失くなっていた。

 ゼストは回収出来たからなのか、カズと親父さんに挨拶するといなくなったけど、正直俺はゼストの考えてる事が解らなくなった。

 優しい雰囲気を(ただよ)わせておきながら裏では凶悪な顔を見せる。

 カズを取り戻す為ならなんだってやるって恐怖を改めて知った俺は、ゼスト達の強い信念も感じたから、俺達はカズに頼んで今一度訓練をしてもらって、夕方頃には全員ボロボロの状態だ。

 珍しく親父さんも参加してくれたけどある意味、鬼が出たって思ったな。

 片手だけで全員ボコボコにされた挙げ句、それが一瞬だったんだぜ? 俺達全員、あれ? なんで俺達宙に浮いてんの? ってレベルでさ。

 いや親父さんも強い事は知ってるよ? でも明らかになんかおかしくねえか? って思える強さだったんだ。

 そして夜になるとカズはより豪華な食事を用意してくれて、それを皆で食べたけどそれが今までより旨いし、なんだか忘れられない味だった……。

 カズは何時もと変わらない顔をしていた。

 ……そんなカズが夜の10時過ぎに俺達を呼ぶと、どこか悲しげな顔をしていた。


「どうしたんだ?」


「……お前らに頼みたい事があるんだ」


「頼みたい事?」


 そこでカズは、カズが可愛がってるほとんどの爬虫類や熱帯魚、小動物を俺達に頼むと言い出したんだ。

 俺はそれを聞いてそりゃそうかって思ったけど中には納得出来ねえ奴だっていた。


「ふざけんなよ? テメェ戻ってくる気がねえのかよ?」


 一樹だ。

 ……一樹はカズがそんな事を言う事が何を意味してるのか解ってるからキレそうになっていたんだ。

 一樹の気持ちは分かる、だけどさ、カズがいなくなっちまうとここにいる生き物は組員さん達が面倒を見ることになる。だけどカズはそうじゃなくて俺達に見てほしいから頼むって言ってるんだって事も分かるから、俺は一樹に落ち着けって言って落ち着かせた。


「俺が全部連れていったらどうなるか……、お前らなら分かってくれるよな?」


 ……分かるさ、きっとイリスやミルクみたいな存在にする気だ。

 そんな事、させられる訳がねえ。

 だったらここにいる生き物は俺が面倒見てやるよ。


「俺が全部見てやるよ」


「ふっ、お前1人で見れるのか?」


 正直自信は無い……。


「はぁ、ノリちゃん1人でなんて無理無理」


「ぐぅ……」


「そうだね、憲明1人なんて無理だね。まっ、カズが戻ってくるまで僕達でなんとか面倒見てあげないと」


「……ちっ、そうだな、戻ってくるまでだからなカズ、忘れんじゃねえぞ? それまで面倒見てやる。コイツらはお前の家族も同然なんだろ、だったら絶対戻ってこい、いいな?」


 美羽とヤッさんの言葉に、一樹はまだ納得していないけど必ず戻って来いって想いがあるから面倒を見てやるって言った。

 その気持ちは本当に分かる。


「……もしよかったら面倒ついでに何か好きなの(ゆず)る。だから可愛がってやってほしいんだ」


「……良いのかよ?」


「あぁ……、ただ面倒見てもらうのも悪いしな」


 皆それはってなったけど、俺はお前がそう言うなら遠慮しねえぞって言って、どの子を(ゆず)って貰おうか迷った。


「本気か? お前、なんで貰おうとすんだよ」


「あ? んなもんカズの気持ちが分かるからさ。カズがそれで納得する奴だって思うか? そうじゃねえだろ? カズがこう言ったら何がなんでもそうしろって奴だろ」


「まぁ、確かに……」


「ガチで遠慮しねえからな?」


「あぁ、好きな奴を選んでくれ」


 そこで俺はカズが育ててる生き物を見て廻ることにした。

 基本的に熱帯魚は川みたいなところで飼育してるけど、爬虫類や小動物は基本的にケージで育ててる。

 そんな俺は爬虫類を選ぶことにした。

 エメラルドツリーモニター、グリーンパイソン、カーポンドロ、何時だったか政治家を(おど)して手に入れたペレンティーモニター、ドクトカゲ、トビトカゲ、アカメカブトトカゲ、様々な爬虫類がいる。

 その中で俺はコイツだって奴を決めた。


「んじゃ、俺はコイツを(ゆず)って貰うよ」


「……ふっ、そいつか。分かった、んじゃケージや機材も持っていけ、他に餌もある」


「おうっ」


 俺が選んだのはオーストラリアに生息しているペレンティーモニターってオオトカゲだ。

 大きさは約80センチ、大人になればもっとデカくなる。


「……なら私はこの子」


 美羽はグリーンパイソンのブルーコンドロって呼ばれる、真っ青で綺麗な蛇。

 その後、ヤッさんはパーケーキリクガメ。一樹はスローロリスって種類の小さい猿。サーちゃんはドクトカゲを貰おうとしたけどそれは特定動物だから無理って事で、マダラヤドクガエルってドクガエルを数匹。


 なんでアンタはそれを選んだ……。


 志穂ちゃんは何故かヴィラがこの子って主張していたから、アルバーティスパイソンって蛇。岩美はマーブルサラマンダーって両生類。佐渡はフクロモモンガ。里崎は熱帯魚かなと思ってたら、カイマントカゲってトカゲ。そしてイリスも貰えるって事で、グリーンパイソンとジャングルカーペットパイソンのハイブリッド、カーポンドロパイソンを貰う事になった。

 皆、早速と言わんばかりにケージやら機材やらをカズから貰ってどうにかこうにか部屋に移動させたりして、それだけでかなりの時間が掛かったよ。

 だからなのかって事もねえだろうけど、皆疲れていつの間にか寝ていた。

 起きていたのは俺とイリス、後はカズと美羽だけだ。

 俺達4人は大水槽前のソファに座り、泳ぐ魚達を黙って眺めた。


「……こうなっちゃう前に、私達だけでダブルデートしたかったな」


「美羽姉、そりゃ違うんじゃねえか? こうなる前だろうと兄様(にいさま)を取り戻したら出来るじゃねえか」


「あはは、そうだね」


 うん、イリスの言う通りだ。


「……美羽」


「ん?」


「何時だったか俺はお前に言ったよな……、ずっと側にいてくれって」


「うん」


「正直後悔してるんだ……、もしお前と付き合うことにならなければ、もし俺がそれを言わなければ、お前を苦しめなかったんじゃないのかってよ」


 当然、美羽はそれに怒った。

 怒った美羽はカズを黙ってひっぱたき、珍しく胸ぐらを(つか)むと至近距離で睨んだ。


「本気で言ってる?」


「……あぁ」


「なんでそう思ったの?」


「今、俺はお前を苦しめてる。だから付き合わなけりゃお前を悩ませたり、苦しませなかったんじゃねえかってな」


「でも私は後悔してないよ? 後悔してたら私がカズと一緒にいると思う? 違うでしょ? 好きだから、アナタを助けたいから、アナタとずっといたいから、アナタと幸せになりたいからいるんだよ? 1度死んで冥竜として復活してもアナタはアナタでしょ? だったら必ず奪い返す……、アナタは私だけの大切な人だから」


 言うねえ、まったくその通りだと思うぜ?


「カズは私の事、嫌いになったの?」


「違う、嫌いになる訳ねえだろ」


「だったらそんなこと言わないで、私を本気で怒らせないで」


 そう睨む美羽の目が怖い。


「運命が何? そんな運命、私がぶち壊してやる」


「……ふっ、お前は俺には勿体ない女だよ」


 するとカズは美羽を引き寄せると強く抱き締めた。


「……ありがとう」


「……うん」


 俺達、と言うより皆? ……まぁ、こっちが負けるのは確実だけど、それでも(あらが)えるだけ(あらが)わねえとな。


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