第276話 後、1日の昼 2
「俺は皆より早くカズから話を聞いた。スゲームカついたし悲しかった。けどよ、カズはずっと前から言わなかったけどヒントを出してたんだぜ? 八岐大蛇、"堕天竜"、その事を皆、真剣に考えたか? 俺はずっと何かが引っ掛かると思って考えてた。それがようやく解ったんだ、解ってもそれがとっくに遅すぎていたことも、何したって無駄って事も。だけど違うだろ……、無駄かもしんねえけど可能性がほんのちょっとあるならそれに抗おうってならねえか? 俺はなったね。なったからこそ俺は凶星十三星座を止める。止めてカズをこのままいつものカズとして生きてもらう。それともお前ら、このまま黙ってカズを行かせる気か? 昔から大切な事を言わず、ずっと1人で抱え込むような奴だって事はお前らも知ってるじゃねえか、なのに本当の事を知って怖じ気づいたってか? 諦めましたってか? はっ、んな奴がいるなら、カズじゃなくても俺が言いたくなるね。でもテメェらは違うよな? そうだよな? カズが好きだからここまで付いてきたんだよな? だったら最後までカズを守るって気持ちで戦おうぜ、そして世界の終焉が来ないようにしようぜ」
俺らしくないって感じがしたけど、皆に下を向いてほしくなかったし、諦めてほしくもなかった。
「カズ、向こうに行っても俺はお前を取り戻しに行くからな? 今のうちに覚悟しておけよ?」
「くっ、クククッ、クカカカカッ、あぁ、分かった、もう1人の俺にもよく言っておくよ」
そこで俺のケサランパサランがふっと現れた。
<バラン様より連絡が来ております>
骸から?
カズに目を向けると、顎で出ろって促すから出る事にした。
「なんだよ突然、お前から連絡来るなんて珍しいじゃねえか骸」
『そうだな、だがもう少しでそちらにゼストが到着すると思って連絡したんだが、不必要だったか?』
そうか、約束したから来るのかアイツ。
「了解、わざわざ連絡してくれてありがとな」
『なに、あれから連絡が来ないから諦めたのかと心配していてな』
「嘘つけ」
本当はこうして連絡をくれた事は嬉しいんだけど、次の日になれば俺達は……。
「なぁ骸」
『どうした?』
「……明日は覚悟しておけよな?」
『ふふっ、私はまだお前と本気で殺し合いをしたくないが、来るなら手加減はせんぞ?』
「上等だ、んじゃな」
『ん、ではまた』
不思議と骸の声を聞いたからか、俺の顔がいくらか微笑んでるように思えた。
それに、緊張していた体がなんだか柔らかくなったと言うか、肩が軽くなる、そんな気がした。
「カズ、そろそろゼストが到着するってよ」
「そうか、んじゃ、コーヒーでも煎れて待つとするか。グレイブ、ハデス、お前らも会うだろ? 久しぶりに話をしたらどうだ?」
<ふむ、言いたいことは山程あるが、それもまた一興か>
「私は別にどっちでもいいさね」
前日だって言うのに、なんか物凄いメンツが集まるな。
冥獣王と冥王の2人は親父さんが黙って座るソファに移動すると、そこにエルピスさんもついて行く。
そこで、エルピスさんが2人に親父さんを紹介。
冥獣王と冥王の2人は親父さんと挨拶を交わした後、なにか違和感を感じるって目を一瞬したのを俺は見逃さなかった。
親父さんは親父さんで、別の何かを隠してるな。
そう思ってもそれがなんなのか解らない。
「しかしお前達が凶星十三星座を抜けるなんて思いもしなかったね」
<全くだ>
「好きで抜けた訳では無い。私は思うところがあるからこそこうなってしまっただけだ」
「ボクはダージュとは違うよ。ボクは憲明達と友達になったんだ。その友達は勿論だけど、ボクは今の和也さんが好きだから抜けたんだ」
B……。
<よい友を、お前は見つけることが出来たのだな>
「まっ、そんなことよりアルガ、何かお酒を頂戴な」
<せめて夜まで待てんのかお前は>
「私が何時どこで飲もうが勝手じゃないか」
<お前と言う奴は……>
「クククッ、まってろ、真っ昼間でも軽く飲めるようなのを用意してやるよ」
<またお前はそうやってハデスを甘やかす、だからこうなってしまったのが解らんのか>
「かてえこと言うなよグレン、別に良いじゃねえか、クククッ」
グレンってのは、冥獣王の愛称か?
それにしてもなんか……、なんなんだろこの空気……、やっぱり昔から仲がよかったからなのか、凄く楽しそうな顔をしてる。
それはそれを眺めてる親父さんも一緒だった。
そこに、アイツは遂に顔を出してきた。
11:00
「お邪魔致します兄者」
瞬間、空気がピリついた。
殺気や怒気とは違う、なんて言ったら良いのか解らない独特な空気感。
それは、冥獣王と冥王の2人から感じられた。
「ふふっ、これはまた面白い面々が集まりましたね」
俺は勿論、皆、警戒するだけ無駄だって事は理解してるけど、やっぱりいざゼストを前にすると凶星十三星座達が計画した事が余りにも酷いから文句の1つや2つ、言ってやりたいって顔をしている。
<久しいなゼスト>
「久しぶりだなグレイブ、それにハデスも」
「ほんと、お前も昔から変わらないんだねぇ」
「ふふっ、それはお前もそうじゃないか」
「おいゼスト、突っ立ってねえでさっさと座れ。今コーヒーを煎れてるところだ」
「兄者が煎れてくれるコーヒーですか、それは楽しみです」
カズにそう言われ、ゼストも冥獣王と冥王、それに親父さんやエルピスさんがいるソファに行って座る。
「お邪魔して申し訳ありません」
「おうっ、元気にしてたか?」
「はい」
親父さんと軽くそんな話をすると、ゼストがこっちに顔を向けた。
「憲明、よかったらこっちに来ないか?」
「……おぅ」
呼ばれて座ったは良いけど、なんだこの状況って感じだ。
「ウリエル……、お前の母さんは元気にしてるか?」
「おぅ……、アンタのお陰で元気にしてるよ」
「そうか、それはよかった」
なんでコイツはそんな優しい目をするんだよマジで。
「母さんと話がしてえなら呼ぶぞ? ここにいるし」
「いや、やめておこう」
「なんでだよ? 別に良いじゃねえか話ぐらい」
「……」
ゼストは何も言わず、ただ頭を横に振る。
もしかしたら母さんと何を話せば良いのか解らねえから拒否したんだろ。
その後は全員何も話さず、カズが煎れてくれたコーヒーを黙って待つことになった。
……なんか気まずい。
「待たせたな」
よかった、ようやく来てくれた。
「なに辛気くせえ顔してんだ? こうして集まったんだ、こんな時ぐれえ楽しそうに話をすりゃ良いじゃねえか」
そうは言ってもよぉ……。
<そうだな、友の言う通りだ>
「だろ? んでハデス、ペルは元気にしてるのかよ?」
ペル? ペルって……誰?
「相変わらずだよ、ただお前が生まれ変わってるって知ったら会いたがっていたよ」
「へえ、あのペルが俺に会いたいだなんて珍しいな」
「別にペルセポネはお前を嫌ってなんかいやしないからね。ただ昔のお前はやり過ぎたから怖がられてんのさ」
あ~ペルセポネか。確かペルセポネって相当美人な女神様だったよな。
あれ? でも女神って事は神の仲間なんだよな?
それにハデスはゼウスの兄妹になるんだよな?
それからカズ達は楽しそうに冥王ハデスとペルセポネの結婚生活を話し、からかったりしてハデスが軽く怒ったりとしていた。
「もう私と妻の結婚生活の話は良いだろ! それよりもグレン! お前は何時になったら妻をめとるつもりなんだ?!」
<私の事はどうでも良いだろ>
「よくないわよまったく! アルガもなんか言ってやんなよ!」
「別に良いじゃねえか、1人でいるほうが楽なら無理して結婚しなくてもいいんじゃねえのか?」
「いやそうかもだけどさぁ」
結婚か、俺はイリスと結婚したいな。




