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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第1章 終わりの始まり
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第26話 テイム


 次の日、俺達はこの世界に来た時に初めて来た街に戻った。

 理由は一樹とヤッさんがテイムしたいモンスターが、とある商会にいるかどうかを確認するために。

 その商会は街の片隅にあり、まるでサーカスをする様な大きなテントで、その周りには屈強な戦士風の人達が警護している。

 中を覗くと、そこにはディラルボアやタイラント・ワーム、サソリの尾を持つ白い虎の様なモンスター等様々。そいつら全部、頑丈な(おり)の中に厳重に入っていた。

 するとカズの存在に気づいたここのオーナーらしき人物が近寄って来た。


「これはこれは和也様、ようこそお越しくださいました」


「久しぶり、ネイガル」


 ネイガル。黒いハット帽を被り真っ赤な丸いサングラス、その下から鋭い目をしたどこか貴族風の、白い鳥の亜人。

 その喋り方はどっかの貴族なのか、あるいはここのオーナーだからなのかとても落ち着いた雰囲気だけど。


 なんか胡散臭そうに見えるのは俺だけか?


「お久しぶりに御座います」


 そう言って丁寧に頭を深々と下げると、カズに挨拶をした。


「本日はどの様な御用件で御座いましょう」


 そこでカズは、一樹とヤッさんがテイムしたいモンスター、"ロックタートル"と"ブラックスコルピオ"がいないかネイガルさんに聞く。


「はい、おりますとも。我がネイガル商会はお客様の為に出来うる限りの商品を取り揃えていて御座います」


 モンスターを商品と言うところが商人らしいな。


 カズは早速その2匹を出してもらい、2人が気に入ったら買うつもりみたいだ。

 2人はそれぞれ今テイム出来るモンスターを考え、納得したのか2人は欲しいとネイガルさんに伝えたら、カズはその代金をその場で払った。


「有難うカズ!」


「あんがとな!」


「大事に育てろよ?」


 2人はネイガルにテイムの仕方をレクチャーしてもらい、その後ろで俺、美羽、沙耶の3人も真剣になって話を聞く。

 その後、2人は無事にテイムに成功し、それぞれどんな名前をつけるか悩み始めた。


「ロックタートル、ブラックスコルピオ、どちらもなかなかカッコいいな」


 2人に先越されたものの、俺はその2体を見て2人におめでとうと伝える。


 そんな時、ネイガルさんがカズにある話を持ち出してきた。


「和也様、実はお見せしたいモンスター達がこの奥にいるのですが、宜しければ御覧いただけませんでしょうか?」


「どんな奴?」


「それはもう、とても希少価値のあるモンスター達に御座います」


「……んじゃ、見せてもらうよ」


「有難う御座います。コチラです」


 そう言ってカズを案内しようとした時、ふと、ネイガルさんの目にあるものが映った。

 ネイガルさんはカズに(しばら)く待ってもらうよう伝えると、美羽の方へと急ぎ足で近寄った。


「こ、これはいったい?!」


「えっ?」


 それはギルの事だった。


「お嬢さん、このモンスターをいったい何処で手に入れられたのですか?!」


 ネイガルさんは興奮していた。


「こんなモンスターは初めて見ます! タイラント・ワームの様にも見えますがコレはいったい……」


 そこでカズは何故、こんなタイラント・ワームがいるのかを一部始終説明をした。


「成る程そんな事が……。ふ〜む……、宜しければ(わたくし)に売って頂けませんでしょうか?」


「え?! でも!」


 突然の事に美羽は驚いた。


「ミスリル金貨1枚、いや3枚出しましょう」


「え? え?」


 そう言われてもミスリル金貨1枚がいったい幾らの価値があるのか分からない美羽は困ってしまっていた。

 ましてや俺達全員に解るわけ無い。

 そこでカズはこの世界の通貨がいったい幾らなのかを教えてくれた。


 小銅貨1枚で百円、大銅貨1枚で千円、小銀貨1枚で五千円、大銀貨1枚で一万円、金貨1枚で十万円、白金貨1枚で百万円、ミスリル金貨1枚で一千万円。


 つまりミスリル金貨3枚出すと言う事は……。

 日本円で三千万円?!


「さ、さん……」


 まさかそこまでの値段を出すと言われるとは思ってもいなかったからか、美羽もビックリして言葉が出ない。

 そしてそんな美羽達の会話を聞いていた他の客や店員らしい人達も驚いていた。

 勿論(もちろん)、俺達も同じだ。


(わたくし)であればミスリル金貨30枚で売る自信が御座います」


 オークションに出して儲けようと考えているのかよ?! この人とんでもない事を口に出したぞオイッ!


「そ、そんなこと言われてもこの子を売るつもりはありません!」


 だ、だよな!


 美羽はそれだけの価値あるギルをカズからタダで譲って貰ったも同然だ。それに美羽はギルを大事にしたいが為に、若干怒っている。


「この子はカズから譲って貰った大切な私のパートナーです。私はこの子をどんな理由があろうと手放す気はありません!」


 まったく、その通りだ!


「ふむ、それは誠に申し訳ない事を致しました、どうかお許し下さいませ。和也様も本当に申し訳御座いません。余りにも珍しいのでついつい興奮してしまいました」


 ま、まぁ? 分からなくもねえけどな、その気持ち。


「気にして無いよ」


 カズは本当に、全然気にした顔をしていない。

 たぶんネイガルさんならそんな反応してもおかしくないと思ったんだろうな。


「感謝申し上げます。それに、えぇ……、申し訳御座いません、貴女様のお名前をお(うかが)いしても?」


「美羽、です」


 でも美羽はまだ少し怒っている。


「美羽様、この度は無礼な事を言い、申し訳御座いませんでした」


「まぁ、良いですけど」


「感謝申し上げます。お詫びと言ってはなんなのですが美羽様、宜しければコチラをお受け取り下さいませ」


「ん? コレは?」


「それは"鑑定"スキルの魔導書(グリモワール)に御座います」


「え?! 鑑定スキルの魔導書(グリモワール)?!」


 初めて目にする魔導書に、美羽は思わず声を上げて驚いた。


「はい、それを使用すれば鑑定スキルを覚える事が出来る様になります。鑑定スキルの魔導書(グリモワール)はそこまで数が出回っていない為、大変貴重では御座いますが、本日、(わたくし)はこの様な珍しいモンスターを見る事が出来ただけでも正直感謝しております。この様なモンスターを知る事が出来ただけで価値があると言うもの。ですので、これはほんの御礼と思ってお受け取り下さいませ」


「えぇぇ……」


 まさかそんな貴重なスキルの魔導書を貰えるとは思ってもいなかった美羽は言葉が出ず、固まったままそれを受け取った。


 マジか! メッチャいいじゃん!


「そうそう、宜しければ私が鑑定を実践してご覧に入れましょう」


 そこでネイガルさんは羊皮紙を1枚、(ふところ)から取り出した。


「鑑定スキルを使用し、ある程度の熟練度が上がりますと、コチラの羊皮紙に写し出させることも可能になりますので、どうか覚えておいて下さいませ。では始めます。"鑑定"」


 鑑定を使用すると羊皮紙が軽く光、文字が浮き上がる。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ギル 性別不明

 種族名、タイラント・ワーム変異種

 Lv. 20 ランクD


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ほほぅ、ランクDですか。同じ大きさで、通常のタイラント・ワームの幼体ならランクEだと言うのに、これは素晴らしい」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 体力500  魔力200

 攻撃320 防御350

 耐性200 敏捷25

 運80


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 羊皮紙にギルのステータスも写し出され、ネイガルさんがスキルを読み上げようとしたら驚き始める。


「スキルは……。ほう! "触手"に"熱感知"ですか、ワームにしては珍しいスキルをお持ちの様だ。他は、"嗅覚強化" "防御強化"。ユニークスキル、進化……"進化"?!」


 "進化"に反応したのを見て、俺達は苦笑いするしかなかった。

 カズはカズで知らん振りをし、顔を別方向に向けている。


「こ、こここここここれはいったい?!」


 そりゃそうなるよな……。


 ネイガルさんはさっきよりも動揺し、美羽の腕を掴んで聞く。


「あぁ、実は……」


 そこで俺が正直に話をすると、そんな事が本当に出来るのかとカズはネイガルさんに詰め寄られる事になった。


 悪いカズ、黙っていられなかった……。


「ま、まぁ和也様ですから? そんなスキルを持っていてもおかしく無いと思えばおかしく無いのですが、せめてその情報は私にも教えて欲しかったものです。ですが、そのスキルは和也様だけしか持っていない超希少なスキル。確かに無闇矢鱈と話す事が出来ない情報ですので、納得は出来ますが」


「まぁそのぉ、ゴメン」


 カズは黙っていた事が申し訳なかったのか、苦笑いしたまま謝った。


「いえいえ、話したく無いその御気持ちは十分に理解出来ますのでどうか謝らないで下さい」


「ありがとうな、ネイガル」


「ふふ、私と貴方様の仲では御座いませんか。いやそれにしても素晴らしい……、本当に素晴らしい限りです。これだけの能力ならミスリル金貨30枚どころか100枚以上の価値はありますね」


「そ、そんなに……」


 つまりギルは億の値段が付くって事かよ?!


 それは俺達だけじゃなく、それを聞いていた周りの人達や美羽も動揺した。


「今はランクDですが、進化した時にその価値が生まれます。理由は簡単です。本来、タイラント・ワーム等の昆虫型ワームは一生そのままの姿形なのです。ですがそのギルは違います。"進化"スキルを手に入れた事により、一定の所まで成長した時にギルは別の姿へと進化することが可能なのです。話によりますと、進化したら蝶型のモンスターに羽化するのですよね? そんなの前代未聞もいいところです。はぁ……、せめて3匹捕まえて私に売って頂きたかったものです……」


「なんか……、ゴメン。全部駆除しないとより大変な事になってたからさ、そこまで考えてなかったんだ」


 た、確かにそのままにしておけば被害は広がっていただろうな。だからカズはギルだけを残して殲滅しちまった。


「まっ、致し方ありません。と、言う事で、ギルは世界で1匹しかいない超希少な存在ですので、やはりそれなりの価値があると言うもの。美羽様、どうかこの子を大事になさって下さいませ。さすればきっと、ギルは貴女に応えてくれる筈です」


 ネイガルさんはクチバシの隅を伸ばし、優しい目で美羽にそう伝えた。


 その顔の表情筋ってどうなってんのか気になる。


「は、はい!」


 美羽はどこか嬉しそうに、笑顔で応えた。


「ふふ、ではだいぶ話がズレてしまい申し訳御座いませんでした。改めまして、和也様にお見せしたいモンスター達はコチラに御座います」


 そう案内され、カズは奥へと進む。その後ろから俺達5人も着いて行く。

 そのモンスター達が目撃された場所では多くのハンターや冒険者達が行方不明になっているらしい。


 どんだけヤバい場所から捕まえてきたんだよ……。


「実を言いますと。これより貴方様に御紹介致しますのは正に新種のモンスター達に御座います。私が言うのも何ですが、とにかく凶暴でして。つい先日、そのモンスター達が(おり)から脱走し、自分達より大きいディラルボアが殺されてしまいました」


 な?! マジか?! あのディラルボアをかよ?!


 そしてそのモンスター達の話を聞いたネイガルさんはハンターや冒険者達を雇い、かなりの被害が出たもののなんとか捕獲に成功したのだとか。


 どんだけの被害が出たのか知りたくねぇな……。


~次回~

ネイガルに案内してまもらった先には、驚愕の生物達が檻の中にいた。

それは太古の殺戮兵器とも言える存在。


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