第263話 唐突な来訪者
その日、俺は母さんにこれまで何があったのか全部話した。
八岐大蛇の事は勿論、もしかしたらダークスターが仲間になってくれるかも知れないって事も。
そしたら。
「へぇ、ダークスターがねぇ」
「……母さん、ダージュの事知ってるのか?」
俺はダージュとしか言っていない。なのに、どうして母さんはそれがダークスターだって解ったのか疑問に感じたから聞いたけど、母さんは知らないよとしか言わない。
なにか隠してる。だけど、それをあえて母さんは口にしない。それは親父が関わってるのかと聞きたいけど、俺はそこでその話をやめた。
23:40
その日、俺達は家で寝る事にした。
イリスは俺と一緒なベットで、ノワールはベット横。
ノワールは母さんとなんだか一緒に寝たそうにしていたし、母さんもノワールと一緒に寝たそうにしていたけど、流石にそれはちょっとと思って俺が止めた。
ちなみにイリスには俺が使ってたYシャツを着て貰ったけど、……ぶかぶか過ぎた。
「まだ起きてるか?」
「うん、寝れないのか?」
「うん、なんだか今日は楽しかったからまだ寝れない」
「そっか、楽しんでくれたならよかった。母さんもお前らが来てくれていつもよりはしゃいでた気がするし」
「よかった」
体を丸め、俺にピタッと体を寄せて笑顔を見せるイリスが可愛い。
……正直襲いたいさ。でも、母さんだっているんだからそれはマズイと思って、俺は手を出さないと決めていた。
「今日は……、しないのか?」
「うっ! し、したいけど、流石に母さんだって近くに寝てるんだからそれはマズイかと」
「あっ、そっか、ゴメン」
く~! そんな可愛いくされたら我慢出来なくなるじゃねえか!
「……俺もこんな家庭とか、作れるかな?」
そっか、イリスも俺みたいな事を考えてたのか。
「作れるかなじゃなくてよ、一緒に作ろうぜイリス。俺はお前を離さないし離したくない。ずっと、……これからもずっと一緒にいて欲しい」
「……うん」
ずっと一緒にいたい。
「この部屋には昔の兄様の写真もあるんだな」
「おぅ、カズだけじゃなくて美羽や一樹達のもあるな」
「しかも俺まで写ってる写真もあったし」
「それはあれだ、ようやくお前と仲良くなれたかなって時の写真だ」
「あぁ、あの時か」
それはイリスがまだコバルトツリーモニターで、普通のオオトカゲと思ってた時で、ようやくハンドリング出来たから嬉しくて撮って貰った時の写真だった。
「懐かしい感じがする」
「あの時はまだお前が普通のトカゲだと思ってたし」
「でもあの時にはもう、俺は俺だった」
「だな。俺はきっとあの時からお前の事が好きだったのかも」
「ふふっ、俺は別にそうでもなかったな」
「だろうな」
「でも……」
「ん?」
「今は誰よりもお前が大好きだよ……」
イリスがキスをしてくる。
誰よりも愛おしくて、可愛くて、そんなイリスを俺は絶対に離したくない。
そんなイリスが俺の体を求めてきてくれているのが凄く嬉しい。
だけど!
「まてまて、母さんが近くで寝てるんだからもしお前の声とか聞いたらどうするんだよ?」
「お前の声も大きい時あるけどな?」
「うぐ」
「安心しろ。俺がお母さんの気配を感じ取ってるからヤバいと思ったら抑える」
「いやでも」
「もう、……我慢できないよ」
あっ、あっ、あ~~~~!
「おっとヤバい」
「え?!」
「……なんだ、気のせいか」
こらこらこらこら! 人をその気にさせておいてイタズラするんじゃねえよ!
イリスがほんと、イタズラ成功って言いたげな顔で俺を見下ろす。
赤くなった頬が暗い部屋でも解る。
「はぁ、はぁ、はぁ」
イリスが興奮してる時のエロい息づかい。
「あっ」
俺はそっとボタンを下から外していくと、徐々に肌が見えてくる。
小さくて可愛いヘソ、そしてその上も少しずつ、焦らしながら外す。
「はぁ、はぁ、はぁ」
そして見えてくる胸とこっちも小さな乳首。
俺はその胸を軽く触りながらボタンを全部外す。
「あっ、ノリ……アキ……、はぁ、はぁ」
よく見たらパンツを履いていない。
そんな状態でイリスが俺の腹の上に乗っていた。
「……何時見ても綺麗な肌してるな、お前」
「バカ……、良いから早く触って……」
指で乳首を軽くいじると。
「んっ、あっ、はっ」
乳首がどんどん硬くなっていく。
イリスは今じゃ有名人。
そんなイリスを抱いていると俺のスマホがうるさく鳴り出した。
「なんだよいきなり?!」
それは地震速報のアラート。
同時に轟音と共に家が大きく揺れ始めた。
「くそっ! 今良いところだったのに邪魔しやがって!」
なんかイリスさんが荒ぶっておられる。
「ノワール! お母さんを助けに行け!」
<ギエェェ!>
「俺と憲明は外に出る!」
「なんで外にだよ?!」
「出れば解る!」
そうは言っても裸ですよアナタ!
イリスが裸だって事を伝えると、イリスは恥ずかしそうにしながら霧状の闇で着替え、俺は揺れが弱まった隙に着替えを終わらせた。
「憲明」
「ん?」
するとまたイリスがキスをしてくる。今度はさっきよりも濃厚な、舌を絡ませながら10秒程。
「んっ、んんっ……、憲明……」
「ど、どうしたんだよ?」
「大好き」
「んっ」
更にキス。
それが終わると目を変え、イリスは戦闘モードの時の目になっていた。
外に出ると周りはパニックになっていた。
所々で火事になっていている。
「イリス」
「気を付けろ……、近くにヤバいのが来てる」
敵か!
でも俺はレーヴァテインを持ってきていない。
戦うとしても素手か魔法のどちらかしか無い。
「お楽しみを邪魔したかしら?」
「?! テメェ……、パンドラ!」
ゆらっと姿を表したパンドラに、俺は背筋が凍った。
不気味なうすら笑いを浮かべ、逃げ惑う人々の間をゆるっと歩いてくる。
くそっ! なんでまたコイツが来るんだよ!
「おいパンドラ、テメェらの計画じゃまだ猶予があったと思うんだけどなぁ」
んなこと言ってそれが通用する相手じゃねえだろ。
「予定は予定よ、でもその前に邪魔者を早々に排除しなきゃと思ってね」
邪魔者だと?
「早瀬憲明君、アナタ、お兄様が復活するのに邪魔なの」
狙いは……、俺かよ!
「だからここで死んでもらえないかしら?」
「ざけんなよ? そう簡単に憲明は殺らせねえぞ?」
「吠えるじゃないイリス。でもね? アナタは彼が相手をしてくれるわ」
そう言って物影から来てほしくない奴が顔を出した。
「……ちっ、テメェかよゴジュラス」
<随分と強くなったように見えるな>
「はっ、つってもテメェらの足元にもおよばねえよバカヤロウ」
実際そうなんだから嘘を言っても仕方ねえ。
でも、まさかパンドラとゴジュラスが来るとは思ってもいなかったからどうすべきか正直焦った。
<丸腰か>
「あぁ、今日は母さんの顔を見に帰って来ただけだからな」
<……丸腰の相手をするのは気が引けるな>
「んじゃ帰ってくれるか? ん?」
「そうはいかないのよ。これは、私達全員が話し合って決めた事なんですもの」
……んじゃ骸も賛成したのか。
「さぁ、話が解ったのなら死んでもらえるかしら?」
「だからよぉ、誰にも殺らせねえって言ってんだろボケ頭!」
懐から銃を出してイリスが攻撃を始める。
だけど相手はあのパンドラとゴジュラス。
イリスが相手をするならパンドラだけで手一杯な筈だ。つまり、自然とゴジュラスの相手を俺がしなきゃなくなる。
<すまないな>
「謝るくれえなら来んなボケ」
<ははは……。では始めようか>




