第260話 運命の日まで後……
「やりすぎだよカズ!」
「そうだぞ! それで本当に死んだらどうするつもりだったんだ!」
「殺すとは言ったがちゃんと死なねえ程度にしたっつうの」
俺達が骸に背負われた状態で戻ると、カズが美羽と御子神のおっさんに怒られていた。
<美羽は相変わらずだな>
「まぁ……な」
俺達に気づいて欲しいのに気づかないままだったからカズは怒っていたからなんだ。
「だがよぉ、よく考えてみろ。前よりは落ち着いちゃいるが稲垣さんのテロ行為が報道されてるんだぞ?」
稲垣さんがした事はテロ行為として、大きくテレビで報道され続けている。
政府は未だに犯人の特定は出来ていないって事や、あの戦艦が何処でどんなふうにして作られたのかすら解っていないって見解を発表している。
もしそれら全部が表沙汰になっちまえばとんでもない事態に発展する。
「まだそんな状況下の中であり、そんな凶星十三星座や稲垣さん達を止められるのは誰だ? 俺か? 俺が出れば今度こそ確実に俺を殺しに来るぞ? そんなアイツらを俺の代わりに止められるのは現時点でお前らぐらいしかいねえんだぞ? それなのに憲明の心の中にはやっぱり何かあれば俺が出てきてくれるって甘い考えを持っていやがる。馬鹿か? アホなのか? どれだけ今の立場に甘えていやがるつもりだ? ん? 今回俺はやり過ぎたかもしんねえが、そうでもしなきゃコイツがそれに自覚して目を覚ましていたか? 他に誰が違う方法で目を覚まさせてやれた? 俺はまだ優しく目を覚まさせてやれたほうじゃねえのか? あ? 違うなら自身がある奴は俺に説明しに来い」
俺はお前でよかったと思う。
カズのあの目。冷酷なまでの立ち振舞いは確実に俺の中にあった甘い考えを斬り殺した。
カズだからこそ俺達に与えることが出来る恐怖。
中でも俺は過去のアルガドゥクスの、本当の恐怖を知ったって言うのに、なんでまだ余裕ぶっていたんだろうって恥ずかしい。
「……おい骸、テメェらは何時、カズを殺しに動くんだ?」
大胆なのか馬鹿なのか、どうしてそれを御子神のおっさんは骸にそれを聞くんだろうって思うと。
<それを言う馬鹿がどこにいる?>
ですよねぇ……。
「それは違うな骸」
<なに?>
「今の言葉でまだどうにかすりゃカズをこのまま今のカズに保たせることができっかもしんねえ事が解った」
は? どういうことですの?
「それを言う馬鹿がどこにいるかだって? はっ、凶星十三星座のNo.Ⅴともあろう者が? まさかカズを手に入れられなくなると思って喋れねえのか?」
なるほど!
<……だとしても何故それを話さなければならない?>
「だったら自信があるんだろ? 俺達は最後までちゃんとカズをお前達から守れるか自信がねえんだからよ、少しはハンデをくれても良いんじゃねえか?」
おっさんは骸から何かしらの情報を少しでも手に入れようとしてるのか!
「どうした? お前は憲明の特訓にも付き合ってるんだ、そのくらい弱い俺達に教えてくれても良いと思わねえか?」
と言ってもなんか大胆過ぎやしねえか?
<……>
「黙りか。……竜之年、竜之月」
<!!>
「お前らの真の狙いはその日だろ?」
骸は目を瞑って黙ったかと思うと、凶悪な笑み浮かべた。
<よく調べたじゃないか御子神刑事課長、その見た目とは裏腹に、実に良い仕事をしている>
「お褒め頂き光栄だよ。……クソッ、おいカズ! 今すぐ美羽とイリスのライブ予定を取り止めさせろ!」
<ふ、ふはは、ハハハハハハハ!>
え? どういうことだ?
「コイツらライブ当日に! 一気に暴れだすつもりだぞ!」
「な?!」
<その通り! 我ら全員! その日に合わせてこの世界に顕現する!>
ちょっと待てよ! それじゃガチでライブどころの話じゃねえじゃねえか!
<我らにとって竜之年とは今年! 竜之月とは来月8月! そしてお前達がライブを企画している日こそが竜之日! さあどうする! 我らは主をお迎えする為に準備を整えたぞ!>
マジで言ってんのかよ骸?! 冗談だろ?!
「ってことは……、こりゃ上層部にまだ裏切ってる奴がいるな?」
まだ裏切ってる人が……。
「まぁ……カズの予想は予想じゃなく、カズがどうして8月辺りって言えた理由は答えを知っていたからなんだろ。んじゃどうしてそれをはっきり言わねえのか。……結局俺達でじゃコイツらを止められねえからなんだろ。そうなんだよな? カズ」
「……あぁ、まったくもってその通りだよミコさん。コイツらとアンタ達がいくら協力したところでコイツら凶星十三星座を止められやしねえ。それは憲明、お前だけじゃなくサーちゃんも気がついてるんだよな? 特にイリスとBはその危険性に気がついている。俺は今からお前ら全員に、最後のワガママを言わせてもらう。……生きろ。死ぬな。俺が敵になってもお前らの心が折れねえ限り挑み続けてこい。そうすりゃきっといつか、希望が見えてくるだろう」
「「……」」
諦めろじゃなく挑み続けろか……。
普段なら諦めろって言うと思うのに、どうしてカズは挑み続けろって俺達に言ったのかその時は理解することが出来なかった。
だって、カズを奪われたらそれで終わりなんだぜ? なのになんでなんだ? って。
確かにこの時は解らなかったけど、俺達はカズがどうしてそう言ったのか後になってからようやく気づく出来事があった。
それはまだまだ先になるけどよ。
<では陛下、その日にまたお迎えに参りますゆえ私はこの辺で>
「あぁ、んじゃな」
<……憲明、お前の特訓を見てやるのは次で最後にしよう。時間はまだある。覚悟が出来たその日に連絡してくるが良い>
「……わかった」
<B>
「なんだい?」
<……また立場が変わってしまったな?>
「……うん、そうだね」
<ハァルルルル……、では失礼する>
マジで悪役には不向きだな。
なんだかんだ言って骸がBを気にしてるようにも見えるし、御子神のおっさんが出した答えに対して素直に凶星十三星座達の準備が完了したことを言う辺り、やっぱり絶対的強者達の集団って事もあるんだろうけど、普通だからと言って言える内容じゃない気がする。
ルシファーとか絶対認めようとしなかっただろうな。
そりゃ骸が敵なのは解ってる、だけど俺はそんな骸に対して感謝の気持ちしかない。
骸ともなんとか争わずに、話し合いをしてなんとか済ませたいな。
「憲明、お前が今何を考えてるか当ててやろうか?」
「いや、言わなくてもきっとそれは当たりだよカズ」
「そうか、だったら諦めろ。アイツはそう簡単に説得出来る奴じゃねえ事はお前も知ってるだろ」
「あぁ……」
……今頃ダージュはどこで何を見て、何を思ってるんだろ。
俺だけじゃ駄目ならきっとダージュが手伝ってくれたらもしかしたら、って思うけど、きっとそう上手くはいかないだろうなって気持ちもある。
骸は絶対に裏切らない。
だからやっぱりどこか武士って性格してるって思える。
「それでどうすんだよ? 美羽達のライブは中止させるのか?」
「させるに決まってるだろ。おいカズ。その日に奴らが動き出せばどうなるか解ってるんだよな?」
「解ってるってミコさん。だからそんな睨むなよ」
「俺は怒ってるんだよ。なんで知っててライブをするに賛成した?」
「んじゃ素直に話せばよかったって言うのか?」
「当然だろ! 何のために俺達が今まで頑張ってきたと思ってる!」
「あ? んなもん来る日の為にだろうが?」
「……きっと俺達とお前との認識が間違ってるんだろうな。いいか? よく聞けよ? 俺達はお前を守るためにいるんだ。お前は俺達に死んだ後の事を考えてるんだろうがそうじゃねえぞ? 俺達はお前を守りきり、凶星十三星座達の計画を潰す。そうすりゃお前の中に眠ってるもう1人のカズがおとなしくずっと眠り続ける事になるだろうさ。それは後でエルピスに頼んでその魂だけを封印してもらってケリをつける。単純明快だろ?」
「……まっ、ミコさん達の思うようにすればいいさ。その間俺はおとなしくしていることしか出来ねえんだからよ」
それで話は終わりだとばかりにカズは1人でどっかに出掛け、俺達は解散することになった。
でもなんとなくこの時、なにか引っ掛かるような気がした。
どうも皆さん! Yassieです!
今年(2024年)も残り僅かな時間となりましたね。皆さんにとってこの1年はどんな1年でしたか? 僕はと言いますと、なんだかんだバタバタしていた1年だったのではないかと思います。
良い出会いもあればつらい別れもありました。
嬉しいことがあれば泣きたい時もありました。
さて、そんな僕はどちらかと申しますと活動報告を書くのが苦手でいつもここでこうして終わらせてしまう癖があります。
ですので、来年の豊富としましてはなるべく多くの活動報告を載せていこうと思います。
あとはですね、事故や病気には気を付けましょう皆さん。
では今年もお世話になりました。
皆様、来年は巳年です。また何卒宜しくお願い致します。




