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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第9章 覚醒
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第251話 夜城一族


 3日後の朝8時。


「やっと出来た……」


「ほんと?! どんなの?!」


 新曲を完成させ、カズは寝ようとしたいけど美羽がはしゃいで寝させない。

 3日間ほとんど寝てねえカズはぐったりしてるって言うのに。

 それにしてもこの展開は年末の時と一緒だ。違うのは今回、俺達が出なくて良いこと。


「寝させてくれ美羽」


「あっゴメン、眠いのにゴメンね」


 とりあえず3曲の新曲が完成したんだし、カズをゆっくり休ませてやらねえとな。

 しっかし、最近の美羽はやけにイチャつくなぁ。

 カズが寝たいって言ってるのに、美羽までついていくし。


 もうね、ほんとマジで最近の美羽は誰がいても隠そうとしないからなんて言えばいいか解らねえ。

 御子神のおっさんはそ知らぬ顔、ミランダさん達は呆れた顔、佐渡や岩美はその度に顔を赤くして黙り込む。


 はぁ、皆がいるのに朝から始めんなよ……。


 そう思いながら俺達は俺達で訓練をしに出る事にした。

 んで"竜の卵"は岩美がゲット。

 岩美はスロットからバカラってゲームに変更して、一番近かったイリスを抜いて一気に逆転。

 カズの話によるとその卵はネイガルさんが手に入れたらしく、それを買い取って景品として置いていたんだとか。

 種族は飛竜(ワイバーン)、"ウィンドブルム"って種族で、風属性の飛竜種。

 見つけた場所は"風の渓谷"って場所の洞窟で、性格はおとなしく、昔から人と共存してきた数少ない竜種の一角。

 ネイガルさんとカズがその卵を鑑定したところ、孵化まで残り1週間ってところらしい。

 でもそれって親から卵を盗んできたってことになるんだろうけど、それを生業にして生計を経てている人達がいるからなんとも言えない。


「さて、どんな曲が出来たのかは楽しみに取っておいて、そろそろ動くとしますかね」


 ギルド出張所夜城邸支部に顔を出し。俺は何か依頼がないか見てみることにした。


 ん~、なにか面白いのねえかなぁ。


 俺としてはクロ達をもっと強くしたい。

 だから今回は俺とクロ達だけでなにか依頼を引き受けようと考えていたんだけど。


「憲明」


「ん?」


 イリスが俺の左手に抱き付いてきた。


「悪い、今回は行けそうに無いんだ」


「まっ、新曲を覚えないといけねえし、これからその新曲に合わせたダンスの振り付けやらなんやらあるんだろ? 俺は大丈夫だから行ってこいよ」


「うん、ゴメン。ありがとな」


 そう言って俺達はキスをすると、イリスは出来上がった新曲の楽譜を持ち。カズの寝室に突撃すると美羽を引きずり出して事務所に出掛けた。


「ほら早くしろよ美羽姉」


「わかってるから尻尾を巻き付けて運ばないでよお!」


 ……一緒にいたいのは分かるけど、カズの睡眠を邪魔してやるなよな。


「さてと、なにかねえかなぁ……」


「憲明」


「ん?」


 後ろから呼ばれて振り向くと、そこにバニラのおっさんがいた。


「客人を通したぞ」


「客人?」


 見るとそこに、いつかの御影(みかげ)って人が来ていた。

 上から下まで全身黒子みたいな和服姿をしていて、顔も黒い布で隠れて見えない。

 だけど八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を止めに行った時、チラッとだけどスゲー美人だなって思える顔を俺は見ていた。


「お久し振りですね」


「ど、どうも」


 な、なんの要件なんだ?


「あっ、あの、カズなら今寝てます。3日程前から今日の朝までずっと寝てなくて、ようやく寝れたところでして」


「聞いています」


「そ、そっすか」


 カズが寝てるって聞いて俺のところに来たのか?


「此処へ来ましたのは貴方に用があって今回参りました」


 俺に?


「えっと、どのようなことですかね?」


「……"時渡り"をしましたね?」


 ?!


 親父さんか誰かに聞いたのかって思ったけど、さすがにあの親父さんが言う筈が無いって思える。

 俺が"時渡り"をした事を知っているのはその親父さんや、カズ達。そしてチーム"夜空"の皆や協力して集まってくれた人達だけ。

 組員の人達だと先生や司さん、それに御堂さんだけだ。

 だからどうしてそれを知ってるのかって疑問が出ると、御影(みかげ)さんはその答えを教えてくれた。


「本来"時渡り"とはとても危険な能力であり、下手をすれば戻って来る事が出来ません。実はその能力について()()()()()から報告を聞きまして、今回こうしてお邪魔する形となりました」


「え?!」


 なんでまた親父さんが?!


「"時渡り"。またの呼び名は"タイムリープ"。憲明さん、失礼を承知で実は色々と貴方の事を調べさせて頂きました。するととても面白い事実が浮かび上がりました」


「ちょっ、ちょっと待って下さいよ。……なんで、今になって俺を調べたんですか?」


「それに関してもお話しなければならないと思っておりますので、慌てずに聞いて頂けませんか?」


「……はい」


 御影(みかげ)さんは親父さんを呼んでくれと頼み、親父さんや先生が来ると俺に関する事を話し始めた。

 夜城一族は特別な存在で、昔から八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を封印していたり、こっちにやって来るモンスターの対処をしていた事は前にも聞いた。

 御影(みかげ)さんは本題の前に、本家の夜城一族と分家の夜城一族で仕事をそれぞれ分担し、日本を影で支え守ってきた一族の事を話し始めた。

 その影響力はとんでもなく大きく。海外のマフィアは勿論、国家権力を持ってる奴だろうとこの夜城一族には逆らえない存在。

 日本には幾つもの裏組織が存在しているらしいけど、夜城って存在は特にだそうで、その夜城から要請があればどんな裏組織だろうと逆らうことが出来ず、要請に応じる。

 代表的な裏組織、秘密結社"八咫烏(やたがらす)"って組織でさえ逆らえない。


 日本が夜城を裏切れば滅亡する。


 そう言われているらしい。

 考えてみりゃその理由が解る。

 "地獄"って呼ばれる八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の封印を解けば簡単だ。

 その封印を守っていた分家の夜城家。

 実は、俺の親父がその分家出身だったらしい。


 って事は、俺とカズは親戚だったのか。


 そんな事を言われても俺には実感が無い。

 だけどそんな話を聞いて俺は、だからあの時イソラがあんな事を言っていたのかなって思えた。


 『片翼の片割れさん』


 イソラが言ってた片翼。ってことは、俺はカズの片翼って意味なのか?


 そしてここからが本題に入る。

 俺の親父が実は夜城家の分家出身で、カズと親戚。

 俺の親父は元々夜城家分家当主になる筈だったんだとか。

 でも親父は当主になりたくなくって分家から逃げるようにしていなくなり、妹の御影(みかげ)さんが跡継ぎになって分家当主になった。

 親父がどんな奴だったのか俺は覚えてない。

 覚えているのは俺がまだガキだった頃。朝、仕事に出掛ける時に見た親父の背中だけ……。

 その日は母さんの誕生日で早めに帰ってくるって言ってたらしいけど。……帰り道に母さんに贈る筈だったプレゼントと鞄を道のど真ん中に置いて、それっきり消息不明になっている。

 プレゼントとして渡す筈だった箱の中に入っていたのはネックレスとメッセージカードで、「愛してる」って書かれていたんだとか。

 そんな人間が急に消えるなんてことあるか?

 母さんはなにか事件に巻き込まれたんじゃないかって警察に相談して調べてもらったけど、何も手懸かりが見つからないまま無駄に時間だけが流れ、今でも帰りを待ってる。

 俺もなにか事件に巻き込まれたんじゃって思ってる。

 だってそうだろ? 急に消える奴がメッセージカードに「愛してる」って書くか?

 でも俺は、とっくに親父は死んでるって思ってる。

 生きてるならそろそろ帰ってきていてもおかしくねえだろ。

 他に別の(ひと)を好きになって、その(ひと)と一緒にどこかへ逃げたのなら話は別だけどさ。そんな裏切ってまで消えるような人じゃねえって母さんから聞いてる。

 だから逃げたんじゃねえって俺も信じてるから、もう死んでるんだって思うようになったんだ。


「それで、俺の親父が御影(みかげ)さんの兄貴で、カズや親父さんとは親戚だったって事は解りましたよ。でもそれと"時渡り"がどう関係してくるんすか?」


「……"時渡り"は、()()()()()()()()()()()なんです」


「……親父が?」


「その"時渡り"を今、貴方が持っている。つまり……」


 つまり……、なんだよ……、何が言いてえんだよこの人。


「黙ってちゃ解るもんも解らねえっすよ。なんなんすかいったい? 勿体ぶらずに教えてくれよ!」


「……兄が、……貴方の父が()()()()()()()()()()()()


「…………は?」


 ……俺の親父が……死んだ?


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