第24話 日々精進
翌日
翌日の朝、カズの元にとあるお客が現れた。
「なんだ、"ミルク"と"イリス"じゃねえか、どうした?」
ミルク。
それはカズの愛犬で犬種はボルゾイ。全身真っ白でとても綺麗な犬のメス。
イリス。
カズがこの世で最も美しいと語る、コバルトツリーモニターって種類のオオトカゲ。
和名でアオホソオオトカゲ、又は青龍と呼ばれる程にとても綺麗な青いオオトカゲのメス。
コバルトツリーモニターはただ青いだけでなく、青と黒のコントラストがとても綺麗だって、俺でも思える。
カズはこの2匹を最も溺愛していて、ミルクはその背にイリスを乗せてやって来た。
「あれ? ミルクとイリスだ!」
カズの言葉にいち早く反応した美羽が駆け寄って行くと、その姿を見てカズは微笑んだ。
「ホントだ〜! ミルク〜! イリス〜!」
沙耶も微笑み、手を大きく振って2匹の名を呼ぶ。
ミルクは誰からも愛されるのは分かる。
だってマジで綺麗だし、俺もどっちかと言うと爬虫類は好きだしよ。
でもイリスは爬虫類でオオトカゲだ、本来ならあまり好かれない分類にはなってしまうけど、美羽や沙耶は勿論、一樹やヤッさん達もイリスを可愛がっていた。
コバルトツリーモニターのイリスの生態は確か、樹上性、主に木の上で生活をするタイプのオオトカゲであり、神経質な面を持っているけど、このイリスはどちらかと言うと神経が図太い。
その美しさとまるでドラゴンの様な風貌でとても人気がある種で、なかなか手が出せない種でも知られていて、まさにトカゲ界の生きたサファイアとも言えると思う。
そんなイリスは他のコバルトツリーモニターとは違い、カズには物凄く懐いている。
「俺が家にいないから寂しくて探しに来たか?」
自分の足元まで寄ってきた2匹に、カズの顔はとても良い笑顔だ。
「あ〜なるほど〜、ミルクの鼻ならカズを探し出すのも簡単だよね〜」
沙耶はそう言いながら笑顔でミルクの頭を撫でる。
「いや、たぶん俺がここにいるって分かってたんだろうなきっと」
「いいなぁ、いつ見てもミルクは綺麗で可愛いし、イリスも綺麗でカッコいいよねぇ」
美羽も笑顔でそんなミルクの頭を撫で、イリスの喉を優しく撫でる。
「俺の自慢の妹だからな」
カズはどこか自慢げだ。
つーか妹ってお前……。
「はいはい」
美羽はそんなカズを軽くあしらいながら2匹を撫でる。
そんな2匹の来訪に、朝から笑顔が絶えなかった。
俺達を除いて。
「た、頼む……、そろ……そろ、お、下ろして……」
俺は涙も枯れ、とても苦しぃ……。
「アァァァァァァァ……」
一樹は最早言葉が出せず、うめき声を上げてばかり。
お前……ゾンビか……?
「…………」
ヤッさんは白目を剥き、口から大量の涎を垂らしながら気絶していた。
おいヤッさん! 死ぬなーー!
俺達はカズが装備している蛇の様な紐で宙吊りにされた後、女子達の手によって別のロープで宙吊りにされながら一夜を過ごしていた。
哀れに思ったのか、もう良いと思ったのか分からないが、カズがナイフでロープの根本を切ると、悲鳴をあげて俺は頭から落ちる羽目になった。
「ってぇぇぇ……」
「これにこりたらもうすんなよ?」
「お前! もっと下ろし方を考えてくれても良いじゃねえか!」
俺は頭を打ち、その下ろし方に文句を言い始めるとカズの胸ぐらを掴もうとした。
その時だ。
「はぅ?! げベシッ?!」
俺の大事な息子をミルクが噛みつき、イリスが間髪入れずにジャンプして顔にローリングソバットならぬ、ローリングテイルビンタを叩き込むという見事なコンビネーションにより、俺は朝からノックアウトとなる。
「うっわ、痛そう……」
正直……強烈過ぎて思考が停止しようとしているよ……。
「こっわ〜……」
怖いなら助けてくれてもよくね?
美羽と沙耶はその見事なコンビネーション技に、俺を同情した目で見た。
同情するなら助けてくれ!
それを見ていた一樹と玲司は、俺がどれだけ痛かったか共感してくれたんだろ、自分の息子を両手で抑えながら顔を青ざめさせ、ガタガタと体を震わせている。
いや助けろよ!
「お前等は分かったな?」
カズのその言葉に、2人は無言で頷く。
そうしなければ次は自分だと理解したんだろ。
この……裏切り者……め!
朝食もカズが用意してくれたものを食べ。なんとか回復した俺を含めた5人は、また昨日の様に戦闘訓練をすることになる。
「美羽、お前は元々運動神経が良いし、いざという時の為の動きを教えてもらってるだろ? その動きをよおく思い出し、動きに合わせて両手に持ってるナイフで攻撃。そんでそく離れて相手の動きをよく見ろ」
「うん!」
「憲明、お前は喧嘩に明け暮れてたのなら相手が次にどう動くのかを予想して動け。そんでスキを見て斬撃し、相手が攻撃して来たら可能な限りその両手剣でガードしつつ見極めろ。あとは感覚覚えろ」
「おうっ!」
「ヤッさん、お前は一撃必殺とも言えるハンマーなんだぞ? そんなに前に出てたら他の連中の邪魔になる、もっと後ろで待機しつつスキを見て一撃入れ、そのあと直ぐに敵から離れてまた様子を伺え」
「む、難しいよ!」
「馴れろ。一樹、お前の武器はリーチが長い。距離の感覚を考えながら敵の攻撃を避けながら攻撃しろ。あんまり近づき過ぎたらまともな攻撃が出来なくなるぞ」
「はいよ!」
「沙耶、お前は後方から皆んなの援護をしつつ攻撃。敵のどこに当たろうと良い、とにかく後ろから皆んなの動きを把握し、相手の動きが変わったら逐一それを全員に伝えるのが大事だ。そしてお前の攻撃で相手を動かしたい方へ誘導できる様になれ」
「わかった! やってみる!」
カズのアドバイスを受け。俺達は日々、足元の悪い湿地帯での訓練の中、徐々にだけど全員の動きが良くなっていったのがなんとなくだけど分かった。
7月1日
01:30
俺達はようやく1人でペルトフログだけでなく、それよりも強いペルトフログから成長した"ベイラルフログ"って言うモンスターを倒すことが出来るようになっていた。
ベイラルフログは、カエルと魚を合体したようなペルトフログが二足歩行になり、まるで半魚人の様な姿に近いモンスターだ。
カズの説明だと。知性は低いものの、その性格は攻撃的になっている。
更にそこから成長すると、今度はより凶暴でその危険度が一気に跳ね上がる"ベムルフローガー"って呼ばれるモンスターに成長するらしい。
「ふぅ、どんなもんだ? カズ」
俺がドヤ顔で聞いてみると。
「まぁぼちぼちかな。お前等1人1人がようやく倒したそのモンスターはベイラルフログってモンスターでペルトフログの成長したモンスターだ。ランク的にその強さはFランク。んで、そいつが更に成長するとまた四足歩行になって、体はより巨大化し、性格もより凶暴になるベムルフローガーってモンスターになる。ランクは一気に跳ね上がってBランクだ。今のお前等が束になっても勝てる相手じゃないから出たらまず逃げろ」
それさっきも聞いたって。
でもいったいどんなモンスターなんだと想像し、一気に寒気が襲う。
カズが言うんだから間違いなくメッチャ怖ぇんだろうな。
「そういやお前等に俺の装備を教えてなかったな。見た通り、俺は全身黒のスーツ姿をしてるが、下はちと違う。太腿に2本ずつ巻いてるこれは、"ゼイラム"。素材はこの大湿原の中心に分布している食物連鎖の頂点の一種、"ディラルボア"って巨大な蛇型モンスターの皮を、幅3センチの帯状にカットした物を使っている。先端にはそのディラルボアを倒した時に手に入れた魔性石を加工した物を鎌の付け根に取り付けている。鎌は今はまだ教えられないが、とあるモンスターの素材を使ってる。ちなみにどちらも魔鉱石って物をふんだんに使ってる」
なるほど、だから蛇みたいな感じがするのか。
「魔鉱石ってのは天然に出来る石なんだが、これがまたなかなか手に入らない貴重な鉱石でな。集めるのに苦労したぜ。んで、先端が鋭利な爪が付いてるこの手袋は"デュアル"。コイツにも魔鉱石やディラルボアの皮を使っている。後はそのディラルボアの牙や骨を粉砕して魔鉱石と調合し、鍛え上げられた武器がデュアルだ。後は銃だな。これはデュアルを装備していても使えるように俺がただちょっと改造した奴だ。もともとはデザートイーグルって銃だったんだけどな。まっ、そんなところか」
カズの説明が一通り終わったところで、その武器の性能を見せると言って、俺達は更に奥へ進む。
ちょうどそこに、とあるモンスターが徘徊しているのをカズが発見し、そのモンスターの討伐するところを見る事になった。
「あのモンスターがディラルボアだ」
~~ ディラルボア。
体長訳20メートル以上はある蛇のモンスター。
体の表面はワニの様にゴツゴツとした鱗を持ち、まるでコブラの様な頭をし、肋骨を開いた所には3本ずつ大きな赤い爪を持っている。
もちろん口には猛毒の牙があり、噛まれれば20分ともたない。
生半可な武器では数一つ付ける事が難しい程に鱗や皮膚が硬く、生きれば生きる程、成長し続ける。 ~~
「えぇぇ……」
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