第245話 確認
戻る頃には夜中の2時を回っていて、流石に皆疲れを見せていたけどカズと美羽、それに親父さん達はピンピンしていた。
どうなってんだよ……。
それから1時間が過ぎた頃、ようやくエルピスさんがやって来て、カズはエルピスさんにお礼として何かを渡した。
「宜しいのですか?」
「良いって良いって、持ってけ」
「ではありがたく」
なに貰ったんだろ。
「んでダークスター、これからお前は本当にどうするつもりでいるんだ?」
勿論俺はちゃんとダージュを連れてきたからいる。
皆、ダージュから戦意を感じられないから黙ってどうなるのか見守ってくれる中、カズの質問にダージュはゆっくりと答えた。
<……旅に出ようかと思います>
「旅?」
<はい……>
「……取りあえず人の姿になれ」
そう言われて人の姿になったダージュはカズに椅子に座れと言われるとおとなしく座り、そこからまた話が始まった。
俺としてはなんで旅に出ようとしたのか解らない。
ダージュはプライドが高いところがあるから、戻るに戻れないってのもあるんだろうけどなんで旅なんだ? って。
そのダージュは「世界を見て回りたいのです」って言うと、カズは「そうか」ってだけで話が途切れ、なんだか気まずい雰囲気が流れる。
「んじゃ凶星十三星座を裏切るつもりでいるんだな?」
「……裏切りたくない気持ちが大きいです」
だろうな。
でもそうなるとまた俺はダージュを止めなきゃならねえのか……。
そうなればはっきり言ってしんどいと思う。
だけど俺はどこか、ダージュとはもう戦わなくて良いようにも思えてもいた。
俺には美羽みたいな"未来視"なんて能力も無ければ未来を予知する力すらねえんだけど。なんか、そんな気がしてならない。
「行ってこいよダージュ」
「シリウス?」
「だからシリウスじゃねえって」
「そ、そうだったな」
「うん……、まぁ世界を見に旅に出るのは別に悪いことじゃねえだろ? それから凶星十三星座に戻ろうと、俺達の味方になってくれようと、それはお前が世界を見て改めて決めたことなんだからさ。まっ、戻ってもまた俺が友達としてお前を止めてやるだけだ」
するとさっきまでの雰囲気が変わるのを感じた。
皆笑顔を見せて頷いたり、笑ったり。皆は俺の事を信じてくれてるからきっとダージュの事も信用してみようと思ってくれてるのかも知れない。
他に問題があるとしたら。
「んで、なんでまたあのタイミングで沙耶は俺達を裏切ったんだ? カズ、お前、やっぱり記憶が戻ってたのかって言ってたよな? って事は気づいてたんだろ?」
まず一つ目は沙耶だ。
「……確証は無かった。ただ違和感を覚えたのはアイツに"ガル"をやった時だ。お前ら、あの日アイツが"ガル"を手にした後に暴れたのを覚えてるか?」
勿論覚えてる。
あの時のアイツは狂ったように暴れていたからな。
そう思ってると、俺はその時聞いた言葉を思い出した。
『夢なのかなんなのか分かんないけど、大きなモンスターが出て来て、それがバランって呼ばれてた』
……バラン。バランは骸の本当の名前だよな。
その時カズが驚いていた顔をしてたのも覚えてる。
でもその前から実は記憶を取り戻しつつあったって話だし、沙耶の口からバランって聞いて、カズはどうしてその名前を知ってるんだって思ったからもしかてって思っていたのかも知れない。
「あの時からずっと、俺はもしかしたら沙耶は誰かの生まれ変わりなんじゃないかとは考えていた」
「んじゃそれが結局アズラエルだったのか」
「そうだ」
「なるほどな。でもまさか沙耶があのアズラエルの生まれ変わりだったなんてな。今までの沙耶とアズラエルでじゃ、性格だって違うし。んで、あのアズラエルが全部教えてくれたから戦争が起きちまったんだよなぁ……」
「なあ憲明」
「なんだ?」
「お前どうしたんだ?」
「……ん?」
カズが不思議そうな顔で聞いてくるから俺は思わず、なにが? って顔で反応すると。
「なんでダークスターをそこまでおとなしくさせる事が出来た? それになんだかアズラエルを知ってるって口振りじゃねえか」
「……あ」
ヤッベ、どう説明したら良いんだ? ダージュは話の流れで理解してくれたけど、カズ達もちゃんと解ってくれるのか?
なんにも考えていなかったから俺は慌ててどう説明したら良いか悩み。
結局ありのままの事を説明するとやっぱり皆は、は? って顔をして俺を見た。
いやだってどう説明したら良いかわかんねえんだからしかたねえだろ……。
「……おいダージュ」
「はい」
「お前は憲明の体験に納得出来たんだな?」
「正直申しますと……、にわかには信じられないのですが、あれから憲明と話をして不思議と辻褄が合いますので……」
「……ってことはだぞ憲明。お前、時渡りしたんじゃねえのか?」
「時渡り?」
それってなんだ?
「時渡りってのは簡単に言えばタイムリープのことで、現実の時間から瞬時に過去や未来に移動することで、"時間跳躍"って能力になる」
「時間、跳躍……」
「しかもお前の場合、魂だけが"時間跳躍"してダージュの中に入り込んだんだろ。特殊過ぎて俺にも説明は難しい。そんな話を聞くのは始めてだからな」
……なるほど。
「お前……、どれだけ稀な経験をしたか絶対に解ってないだろ」
「…………うん」
瞬間全員が頭を抱えて深いため息を吐いた。
「え?! なんなんだよ?!」
「はぁ……。いいか? よく聞けよ? タイムリープだぞタイムリープ? タイムリープってのは"時間跳躍"って事で、お前の魂だけが過去の世界に行って、その後こっちに戻って来ることが出来たんだ。何が引き金で過去に行き、そこでも何が引き金になったのか無事な状態でこっちに戻ることが出来たんだ。つまり魂だけで時間旅行したの、タイムマシーンに乗ってお出掛けして来たの。解るか? ん?」
な、なんか馬鹿にされてる。
「ったくよぉ。まあそれでお前は過去の俺とダージュを知ったわけなんだな?」
「お、おぅ」
「……どこまで知った?」
カズがいきなりスゲー厚を放って。俺はきっと、皆に知られてほしくない事もあるからそれを喋るなって意味なんだと受け取った。
「……お前がゼウスを喰い殺した後、世界を一回滅ぼすって決めたところまでだな」
「……そこまで」
「あぁ……」
「んじゃ……、お前は"月の雫"も見たんだな?」
"月の雫"、アレはガチでヤバすぎるから忘れたくても忘れられねえから脳裏に残っている。
でも良いのか? それを話しても。
「……アレはガチで恐怖を感じた」
「それで?」
「……お前が一度使った"暴虐の星"なんかより酷い」
「具体的には?」
「確か、"暴虐の星"はブラックホールと一緒だって話だよな? "月の雫"は核兵器に似てるけど全然違う。アレはもっとヤバい……。だから……、どう表現したら良いのか全然解らねぇ……」
「そうだな、んじゃまず。前にも話したが"暴虐の星"はブラックホールと性質は一緒かもしんねえが、アレは俺が産み出した言わば虚無の世界とされる虚数空間だ。つまり何も存在しない世界であり、全てを消滅して無かった事にしちまう世界。まっ、そんな世界だって言うのにパンドラの"アクティベイタム"だけはそこから喰い破って出てこようとするがな」
とんでもないな。
「んで……、"月の雫"ってのは、言わば最強の核撃魔法。大規模破壊を可能とする高威力な魔法攻撃だ。確かに憲明の言う通り核兵器に似ている。だが核兵器とは違う。アレはどちらかと言うと地上で放ったら駄目な部類だ。"暴虐の星"が何もかも吸い込んで消滅する消滅攻撃なら、アレは何もかも全てを破壊して消滅させる爆滅攻撃って言えば良いかな。無論、……防御不可能だ」
「んじゃお前はその、凶悪な攻撃手段を2種類使えるって事か」
「そうだな……、そう思ってくれて構わない」
おいふざんな、なんだよそれ。
結局防御不可能なんじゃねえか……。
と思っても実際見た俺は確かに防御しても無駄だなって感じていたんだけどな……。
でも実際にそんな話を聞くと正直落ち込む。
「"暴虐の星"は制御することが出来るから問題じゃない。問題にすべきなのはその"月の雫"だ」
「……俺もなんとなくそうだと思う」
「そうか……。それにアレはもう、"月の雫"じゃ無くなっている。"月の雫"と言えば凶星十三星座達は恐れている力でもあるんだけどよ。アレは今、"月の雫"じゃなく"黒月の涙"だ」
"黒月の涙"……。
「アレは俺が手にしたことで変異し、憲明、お前が見た時とは比べ物になら無い威力に進化している」
「……は?」
「爆発は新たな爆発を呼び起こし、連鎖する。その威力はどれも同等。それに下手に使えば一撃でこの国が世界地図から消滅する。本気を出せば一撃でこの星ですら消滅。"黒月の涙"は俺にとって最後の切り札だ」
こうして後書きを書くのも久しぶりになります。
どうも皆様、Yassieです!
ここで取りあえず一区切りとなります。
憲明が体験した"時渡り"、皆さんでしたらどの過去に戻りたいと思いますか?
僕はやっぱり小学生時代でしょうか……。いや、大切に育てていたワニがまだ生きている、高校2年かそこらでしょうかね。
人生は1度きりで、未来がどうなるかなんて誰にも解りません。
とまあそんな話しはこの辺にしとき、今回は如何だったでしょうか?
僕としてはもっと過激にしたかったのですが、もう少し後が良いかもとアドバイスをくれた友人がいますので今回はこんな感じとなりました。
それに今回は投稿がかなり遅くなり申し訳ありません。
諸事情でまぁ、色々とありまして、なかなか進まなくなってしまっていました……。
ではこの辺にしておくとして、次回から新章開幕です!
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さて次回は!
< 覚醒 >
デス!!




