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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第1章 終わりの始まり
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第23話 強くなりたい


 6月27日



「そっちに行ったぞ美羽!」


 俺は美羽に大きな声でそう教えると、美羽は怒り始めた。


「ちょっと! なんでこっちなのよノリちゃんの馬鹿!」


「美羽! 逃げずにちゃんと構えないと!」


 今度はヤッさんが声をかける。


「だったらヤッさんやってよ!」


 俺達5人はとある場所に来ていた。

 そこにはカズとナッチの2人も同行し、俺達を見守ってくれている。


「おい美羽、俺が教えた通りにナイフをちゃんと構えろ」


 カズは両手をポケットに入れ、ナイフの持ち方に口を出す。

 その表情は真剣だ。


「そんな事言われてもキャッ!」


 カズのアドバイスも虚しく、美羽は泥で足を滑らせて転倒し、水でずぶ濡れ状態だ。そしてカズは顔に手を当てて困った様な表情だ。

 俺達がいるのは湿原地帯。そこには数多くの()()()()()()()()()()()()

 俺達は今、()()()()()()()()()

 理由はベヘモスの提案から始まる。

 ベヘモスは暇潰しに俺達を強くし、自分の遊び相手にする為にだ。

 最初、親父さん達は大反対をしていたけど、そこにベヘモスが自分の遊び相手を殺す訳にもいかないから責任持ってその時は助けると言い出し、親父さんは信用出来ないと言っていたけど最終的にカズとナッチも同行する形でなんとか丸く収めることになった。

 そして、ここに来る為に美羽は出来るだけ仕事を前倒しにして、暫く休暇(きゅうか)を貰うことが出来たので来る事が出来た。

 でも俺達は学校を無断欠席。

 それでも家族を心配させる訳にもいかなかったから、暫く旅行に行くと言って出て来た。

 俺達が暮らしていた世界の名をこちらでは"マフティアラ"と呼び、こちらの世界は"オルティアラ"と呼ばれている。

 そのオルティアラに来るにはゲートを通る必要があるんだけど。その為のゲートが実は幾つも存在し、日本に存在するゲートはカズの家である夜城家が、代々守り続けていた。その内の一つが夜城邸の地下にあり、その地下には幾つもの道が存在し、一つは自衛隊の市ヶ谷駐屯地とか、他にも幾つか繋がってるらしい。


 夜城邸にあるゲートを潜ると、そこは立派な街が存在していた。その殆どが組員や自衛隊によって創り上げられた街で、そこには色々な亜人種も生活している。

 人間は勿論、"エルフ"、"ドワーフ"、犬の亜人"コボルト"、猫耳の亜人"キャットピープル"、変わり種として"ゴブリン"や"ゴブリナ"等、様々だ。

 元々この街には名前が無かったが、ここに暮らす人達からは"ゼオルク"と呼ばれる事になり、街に名前が付けられた。

 ゼオルク、それはこの世界で「大いなる鳥の大地」を意味するらしい。

 そして俺達がいるのはそのゼオルクから3キロ程離れた湿原地帯、ペロミア大湿原と呼ばれる場所の一角。

 ここペロミア大湿原は22万ヘクタールって広大な湿地帯であり、ありとあらゆる動植物が生息している。

 そう言われても俺にはどれだけ広いか解んねえけど。

 聞けばここにしか生息していないものだらけであり、様々なモンスターが暮らしている。

 そして、このペロミア大湿原の中央には生態系の頂点の一角である、あのタイラント・ワームやそれすら捕食することもある巨大なワニの様なモンスターやヘビのモンスターも生息する危険地帯だって言うじゃねえか。

 俺達は比較的安全な所で武器の扱い方をカズとナッチからレクチャーされ、弱いモンスターを絶賛討伐中だ。

 俺は比較的ポピュラーとされる両手剣、美羽はナイフを2本、一樹は薙刀の様な槍、ヤッさんはハンマー、沙耶は自分で持ってきたアーチェリーを使う。


「おい、いつになったら倒せる様になるんだ? 始まってから5時間だぞ? 5時間」


 カズは退屈そうに俺達5人を眺め、5時間も時間を使っているのに今だ1匹も倒せていないのに呆れていた……。


 チクショウ……。


「そこいらのガキですら5時間もありゃ10匹は倒してるぞ?」


 俺達が戦っている、いや……正確に言えば、俺達が遊ばれているモンスターはカエルと魚を合体させた様な姿の"ペルトフログ"と呼ばれるモンスター。

 そのペルトフログと戦っているというより、遊んでいる様に見える為にカズはイライラしていた。


「し、仕方ないだろ! 俺達初めてなんだぞ!」


 そう、俺達にしてみれば初めてだ。けど、そんな言い訳は此処では通用しない。


「あぁ……、だからそこいらのガキでも倒せるつってんだろうが? なにか? 耳に泥水でも入って俺の言葉を上手く聞き取れなかったか? それとも元から耳が悪いのか? 単なるお飾りなのか?」


 カズは呆れながら首をかしげて俺達を睨み。毒舌を吐く。


「て、テメェ……」


 俺はそんなカズにキレそうな表情になるけど。何も言えない……。

 言えるわけがない……。


「そんな雑魚、いくら倒した所で何にもなりゃしねぇぞ? そいつは単なる練習相手でしかないんだからな?」


 そこまで言うとカズは、俺達が一生懸命倒そうとしていたペルトフログの眉間に、持っていた銃で簡単に撃ち抜きやがった。


「あっ……」


 俺は目の前で自分達が今まで苦戦していた相手を簡単に倒され、その場で固まってしまった。


「な、なんてことを……」


 美羽も同じだ。


「ききききき貴様は悪魔か……」


 一樹は泣きながら膝から崩れる様に倒れ、カズに対して怒った。


「ペルトフログゥゥ!」


 ヤッさんは天を仰ぎ、空に向かってペルトフログの名を叫ぶ。


「あ〜! もうカズの意地悪!」


 沙耶は両頬を膨らませて怒った。

 自分達が一生懸命追いかけていたペルトフログをあっさり倒され、普通に俺達はショックを受けた。


「いやいやいや、お前ら基本がなってないからだろうが」


 カズは溜息混じりにダメ出しし、銃をホルスターに入れる。


「そ、そそそそうですよ、うん。やっぱり基本動作をしっかり体に染み込ませないとダメだと思います」


 ナッチはオドオドしながらも、基本となるスタイルをちゃんとしなきゃいけないと言ってくる。


「だな、時間も時間だし、今日はこの辺にして野営の準備しろ。設置の仕方から何から何まで出来る様にならないとな。じゃなきゃお前らがここに来る事に賛成した意味が無い。違うか?」


 カズの言う通りだ。

 自分達の我儘(わがまま)に賛成してくれたカズに、迷惑をかける訳にはいかねえ。

 それに、本来なら一生ここに来ることは出来なかったんだ。

 ここは許された者しか知る事が出来ないもう一つの世界であり、知っていてもそう簡単には来る事が出来ない世界。そんな世界に来させてくれた事に、俺達はカズに、マジで感謝している。


 日がだいぶ沈んだ頃、ようやく野営する為のテント等を設置し終わり、火をつけてそこで食事の準備もする。


「おい、女子は先に水浴びでもして汗を流して来い。間違ってもシャンプーや石鹸は使うなよ? 使ったらここの生態系を壊す事になりかねないからな。使っても良いのは自然に優しい物だけにしろ、いいな? わかったか?」


 流石カズ、自然には優しいなお前。


 美羽、沙耶、ナッチの3人はカズが用意してくれていた場所で水を浴びる。

 そこはとても水が澄んでいて美しい川の横に穴を掘り、座れば腰まで浸かれる程の深さがある。


「はあ〜、気持ちいい〜」


「ホントだね、カズにはお礼を言わなくちゃね」


 沙耶と美羽はお風呂代わりにカズが用意してくれた水風呂に浸かり、火照った体を冷やしながら汗を流す。


「美羽、またおっきくなってない?」


「ん?」


 沙耶は美羽の胸の事を言ったのだが、美羽はそれに気づいていない。


「胸が」


「え? そう?」


 けど美羽はそれを自覚していない……。


「つーかナッチもおっきくない?」


 沙耶はナッチの胸も大きい事に気が付き、そちらにも視線を向けたみたいだな。


「ふえっ?!」


 声からして、ナッチは恥ずかしさで顔と耳を赤く染め、思わず自分の胸を隠した。と思う。

 そんな女子達の水浴びの中、お約束は必ずある。

 俺、一樹、ヤッさんの3人だ。

 そう……、俺達はカズが夕飯準備の邪魔だから水浴びする前に筋トレしてろと言ってきたが、俺達は筋トレではなく覗きを選んだのだ。


「だ、ダメだって2人とも!」


 ヤッさんは顔を赤くし、俺と一樹に覗きをやめようと止めていた。


「ヤッさんよ、美羽や沙耶の体が気にならないのか? 俺は気になるぞ」


 俺は真剣な顔でヤッさんに顔を向ける。


 そう、気になるのだよ。男なら俺の気持ちが解る筈だ。


「なに言ってんだよ憲明! 一樹もダメだって!」


「男には2種類存在する。それが分かるか?」


 だが、一樹も真剣だ。真剣になって一樹はヤッさんに質問した。


「な、なんだよそれ?」


 ヤッさんは分からない、わかりたくも無いと。ジト目で一樹に聞いた。


「覗く者と覗かない者だ」


「絶対ダメなパターンだろ!」


 ふ、ふふふっ……。


「キャッキャッウフフ、キャッキャッうふふ」


「なに変な歌口ずさんでるんだよ!」


 俺は思わず変な歌を口ずさみながら匍匐前進ほふくぜんしんで慎重に進む。

 ヤッさんは俺の変な歌を歌うなと言う。そこで俺はヤッさんに力説を始めた。


「お前は見たく無いのか? 美羽は世界的に有名な歌姫。沙耶もアーチェリー界の次代を担う美しき女子高生。その2人が同じ高校でTOPを争う程の人気者。誰も見たことも無いそんな2人の裸を見ないでどうする!」


 なんて(よこしま)な考えだろうって自分でも解る。

 だがしかし!


「俺は見たい! あと少しで2人の裸を見れる! 誰もが羨む景色がそこにはあるんだぞヤッさん!」


 俺はヤッさんをなんとか説得し、共に覗こうと誘う。


「そうだぞヤッさん! この先には学園最強の美女が水浴びしているんだぞ! だがここにあの人もいないのが残念でならない…。しかし! 学園のトップ3の内2人がそこにいる! 他の男共が喉から手が出るほどの光景がそこにはある!」


 一樹まで力説し始め。ヤッさんは生唾を飲み、きっと頭の中で美羽や沙耶の裸体を想像したのか、徐々に興奮が高まっていくのが見てて解る。

 植物が生い茂る向こう側には他の男達が見たくても見れない、美女の裸体。

 ヤッさんは鼻血を流す程までに興奮し、目をギラギラとさせ、我先と言わんばかりに覗く決意となった。


「まてヤッさん! そんなに興奮するなよ! 下手に動いたら見つかる!」


 でもまさかヤッさんがそこまで興奮するとは思っても見なかったから、流石に焦った。


「そうだぞ! 一旦落ち着け!」


 一樹もなんとか落ち着かせようと声をかけるが。


「フゥ、フゥ、フゥ」


 俺達の声は最早……届かない。

 すると、茂みの向こうから聞こえてくる女子トークを、俺の耳が捕らえた。


「しっかし美羽、アンタ本当にいい体してるよね〜」


 ごくり……。


「まぁね、毎日体型を気にしてストレッチしてるからね。そう言う沙耶だっていい体してるじゃない」


 ほ、ほほう~?


「いやいや美羽には負けるよ」


「せ、先輩達はどうしてそんなにいい体になれたんですか?」


 ナッチはどうやったら綺麗になれるのか質問をしてるんだな。


「七海ちゃんもいい体してるじゃない」


「そうだよ〜、中学生には勿体ない体だよね〜。何カップあんの〜?」


 ふっ……、確かにナッチも可愛いが、俺はお子様には興味が無いのだよ。

 だからすまんな、ナッチ。


「そ、そうですか? 私、これでもまだCカップですよ?」


 ほほ~? Cカップあるのかナッチは、ふむふむ。


「んじゃ私と一緒じゃん」


 美羽もCカップ……。


「いやいやナッチはDはあるでしょDは、私と同じくらいでしょ」


 さ、沙耶さんはDとな?


「ふあっ?! そ、そんな、わ、私より沙耶先輩のは形も綺麗じゃないですか」


 そんな女子達の話し声が植物の向こうから聞こえ、更に(よこしま)な男3人を興奮させていた事を知らない。


 音を出来るだけ立てず静かに、俺達は植物の葉を手で掻き分ける。

 そしてついにその時が来ようとしていた。

 心臓の音が高鳴るのが自分でも解る。あとちょっとで他の男共が羨む世界をその(まなこ)にしっかりと焼き付けられる!


「おい美羽、沙耶、七海、これ渡すの忘れてたわ。これ、俺が作った薔薇(ばら)のアロマオイルでな。自然にも優しいしお前らにリラックス効果があると思うから使ってみてくれ。あっあと、飯が出来上がるのにあと1時間くれ」


 ……は?


 それはとんでもない瞬間だった。

 水浴び中の女子3人の元にカズが普通に現れ、女性陣だけでなく、俺達3人の顔が最早、楳図か○おが書いた様な顔になって驚いた。


「カカカカカズ……、な、なんでここに?」


 美羽は動揺しながらどうしてここにカズがいるのか質問した。


 そ、そそそそそそうだぞ! どうしてお前がそこにいんだよ?!


「あ? だからコレを渡すの忘れたから持って来たんだろうが」


 カズはスタスタと美羽の元まで近づき、しゃがみ込むと美羽を見る。すると手に持っていた小瓶を美羽に手渡した。


 その距離、僅か20センチ。


 あまりの出来事に3人は前を隠すのを忘れ、顔を赤くしたままカズを見ているようだった……。


「あとお前等タオルも忘れてっただろ。ここに置いておくからな」


 カズは美羽達の為に、白いタオルをカゴに入れて持ってきてくれていた。

 しかもちゃんと綺麗に畳まれているようだ。


「あ、アンタ……!」


 美羽はカズを怒ろうと目の前で立ち上がり、軽く睨んだ。


 なっ?! ギリギリ見えないだと?!


「あ? んだよその顔はよ? せっかく持って来たのに礼の一言があっても良いんじゃねえのか?」


 どうして逆にお前が怒る……。


「えっ、うっ……、あり……がとぅ」


「んじゃな。あっ、あともう一つ、お前等水浴びする時水着とか必要だったら言えよ? 後で用意してやるから。……美羽の乳首って薄いピンク色で綺麗だな。それに下も綺麗で見惚れる」


 ……はい? なんだって?


 女性陣はその瞬間、自分達が全裸であることを思い出した。しかも美羽はカズに下から真正面を全て見られた事で顔を更に赤く染め、今更だが前を隠して水の中にしゃがみ込んだ。


 ち、チキショーー!! 俺達は結局葉っぱが邪魔で何も見えてないって言うのに! それをアイツは、アイツはー!!


 カズが去ろうとした時、草むらに隠れていた俺達は当然、怒りながらなにしてんだと言いながら顔を出した。

 でもそれが間違いだったとその瞬間、俺達は気づいたけど……。


 あっ……。


 カズの時とは違い、女性陣の顔は凍りつき。カズはカズで物凄い殺気を俺達に向けて放っている。


「……あれ?」


 思わず飛び出した俺は、女性陣とカズの顔を見て凍りついた。

 美羽と沙耶はカズが持って来たタオルに手を伸ばそうとしたところでカズが2人にタオルを黙って渡す。

 タオルで自分達の前を隠しながら笑顔でこっちにやって来る。その笑顔の向こう側に、それは恐ろしい何かが見え隠れしながら。


「あ、その、これは、ですね」


 冷や汗が止まらない。興奮から恐怖に変わるその落差は精神的に相当なダメージを負う。


 ヤバい……、ど、どうしよう……。


 しかし、そこに笑顔で怒りを隠す美羽と沙耶の睨みによって更にダメージを受ける。

 最早、俺の命は風前の灯火状態になっていた…。


「カズ、アナタもこっちに」


 そう言って美羽はカズに手招きする。


「あ? 俺がなんかしたかよ?」


 お、お前! 自分が何をしたのか分かってないだと?!


「なんかしたか? じゃないでしょ……?」


 美羽は笑顔でいいから来いとカズを呼ぶ。


「んだよ、早く戻って調理しないと間に合わなくなるぞ。それに今夜はお前の好きな肉料理にしてんだぞ?」


「なっ?!」


 美羽の好きな肉料理、それはカズの得意料理でもある。

 鳥モモの骨付き肉に数種類のスパイスを付け、味が浸透するまで暫く寝かす。

 暫く寝かせた後、じっくりと時間をかけて火で炙る。

 そして、ウオッカに何度も何度も時間をかけて薔薇(ばら)の香りをつけた後、火でアルコールを飛ばして作ったカズ特製のウオッカを軽く鳥モモにかけ、更に軽く焼く。

 美羽はそれが好きだった。そしてそれは俺達全員も同じ。

 いや、むしろカズが作った料理は全て好きなんだけどよ。美羽はその中でもその鳥モモ肉の料理がメッチャ好きなんだ。

 今夜それが食べられると思うと、嬉しくてたまらない。

 それに……。ぶっちゃけた話し、美羽はカズの事が好きだってことは皆知ってる。

 だからそんな好きな男に見られたのならそれはそれでいいかと、考えが……変わる。


「まぁ、でもカズだったら許せるかな」


「うん、まぁ私もかな〜」


 美羽と沙耶は頬を赤く染め、潤んだ瞳でチラリとカズを見る。


「……ん?」


 カズはいったいなんなんだ? と言いたげな顔で首をかしげる。


 鈍い奴だな、お前って奴はよ。


「アンタ、私達の裸を、その……」


 徐々に顔が赤くなっていく。


 まっ、勢いに任せてここでコクっちまってもいいんじゃねえのか?


「あぁ、スマン、見た」


 カズのその言葉に余計顔が赤くなる。


「なんだ、その……、綺麗だった……。よくよく考えてみれば俺の行動は確かにおかしかったな。本当にすまない。後で詫びするよ」


 ホントだよこのヤロー。なんて羨ましい奴。


 カズは潔く頭を下げて謝罪した。

 けど美羽は別の事を考えているのか、まったく耳に入っていないようで、何かブツブツと独り言を言っている。


「え? え? 綺麗? うそ……、え? 本当に? えっ……嬉しい……。それに……さっき見惚れるって……、やった……」


 よく美羽と沙耶を見て見ると、2人はカズの前で、前しか隠していない……。


 ぬはっ?!


 後ろがガラ空き状態。その為、カズにはきっと、2人の綺麗なお尻が自然と目に入ってる筈だ。


 くっ……、チクショー!!


「あっ、その、なんだ、お前等の尻がモロに見えてんだけど……よ……」


「え?」


 ほらな!!


 2人はその言葉に後ろを隠していない事に気がつく。でも2人には別にどうでも良くなっていたみたいだ。カズに見られているならそれはそれで悪くないと、軽く興奮してるようにも……見える。


 クソッ! なんでお前だけそんな羨ましい展開があるんだよ!


「ねぇ、カズ」


 色気を帯びた声で、美羽がカズを呼ぶ。


「な、なんだ?」


 逆に何を言われるかカズが怯えている。


 そのまま怒られろよお前!


「私と沙耶、どっちのお尻が綺麗?」


「な?!」


 なにーー?!


 軽く興奮した美羽が、潤んだ綺麗な瞳でカズに質問する。

 沙耶もまんざらではない顔で「どっち?」と聞く。

 2人のお尻はそれなりに引き締まっている筈だ。美羽は歌手としてダンスもする。

 沙耶もアーチェリーをしているからかそれなりに引き締まっていてとても綺麗だと思う。

 どちらも(なまめ)かしく、(つや)やかで本当に綺麗……な筈。

 カズは悩みに悩み。男として結論を出さなくてはならない。


 答えろカズ! どっちが一番綺麗なんだ?! どっちもって選択は間違ってもすんじゃねえぞ?!


「美羽の尻が綺麗で俺としてはその……、好みだ」


 その瞬間、美羽の頭の中で祝福の鐘の音が鳴り響いているのか、幸せそうな顔になっている。

 沙耶は沙耶でショックで泣きそうな顔だ。


「え……、ほん……と?」


 おい美羽! 嬉しいのはわかっけど、カズを見つめながら確認すんなよ! それはそれでカズに失礼じゃねえか?


「俺がそんな嘘を言うと思うかよ?!」


 おいー! お前もどうしたー?!


 するとこれ以上は見てはいけないと思ったのか、珍しく照れた顔でカズは2人から目をそらす。


「んじゃ、俺はまだ調理の途中だから行くぞ」


「うん……」


 美羽はそんなカズにちょっと残念そうに、唇を尖らせた顔になる。


 お前はお前で昔からその仕草がいちいち可愛いなあ! おい!


「あっ、その前に」


 ふとカズは歩みを止め、俺達3人を見る。

 そこで気づいた。一樹とヤッさんが血の涙を流し、あまりにも悔しそうな顔でカズを睨んでいる。

 ちなみに俺自身も、血の涙を流していた事に気がつかなかった。


「お前らはここでなにしてんだ?」


 カズにそう言われ、俺達は固まった。


 しまったあぁぁぁぁぁぁ!!


 その後、俺達はカズが装備していた蛇みたいな紐で捕まり、しばらくの間宙吊りにされた挙句、夕飯を抜きにされ、服に着替えた美羽達3人にボコボコにされた。



異世界へ自由に行き来できるもんなら行ってみたいもんです。


ここまで如何だったでしょうか?

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