第237話 黒紫竜の過去 1
「ダージュ? ダージュはいるかしら?」
<は、ここにおります>
ん? また場面が変わったな。
今度の場面はどこか綺麗な城の中で、あの綺麗な女の人が玉座みたいな椅子に座っていた。
「ごめんなさいね、貴方をここへ呼んでしまって」
<なにをおっしゃいます。私はあの方から貴女様の側で世界をもっと知るようにと仰せつかっているのです。故に今の私は貴女様の配下も同然なのですよ?>
「配下は間違ってるわ」
<……それは今この場で言わない方が>
「あら、貴方が私とあの人の友人であることは周知の事実よ?」
<それはそうかも知れませんが>
「ほんと、貴方は固いわ。そう思わない? "ティータ"」
ティータって呼ばれた人へダークスターが顔を向けると、そこにはこの人も綺麗だなって思える人が微笑みながらダークスターを見ていた。
「まったくその通りです。昔と違い、今の我々は貴方方と敵対関係ではないのです。それに御二人から許されているのですからもう少し柔らかくなってもいいのではと、私も思います」
「そうよね?」
<うぅぅ、しかしですね>
「ほらほらダージュ、私が許しているのですよ? それにティータもあのように言ってくれてるのです。だから肩の力を抜いてください。皆もそう思うわよね?」
今度はその部屋にいる人達にそう質問すると、皆クスクス笑ったりしてダークスターに柔らかくなれって伝える。
それにしてもここの人達皆、めちゃくちゃ美人だな。
<いやしかし、ここはやはり>
すると、今度はまた違う美人な人がダークスターに近づくと頭を軽く叩いた。
「しかしではありませんよ? それに我々も貴方ともっと仲良くやっていきたいと思っているのです。確かにこの場では厳格な態度を取る必要があるかも知れません。でもこの場には貴方が御二人の御友人だという事を知る者だけなのです。でしたら今はもっと柔らかくなっても良いかと思いますよ?」
そう言ってその人は優しい微笑みをダークスターに向けてくれる。
そんなダークスターから暖かい気持ちが漂ってきていた。
もしかして、この人のことが好きなのか?
<"フローラ"……。はぁ、分かりました、では少し肩の力を抜くことに致しましょう>
「ふふ、フローラを前にすると流石の貴方でも形無しかしら?」
<そ! な! なにをおっしゃいます!>
「あら可愛い、ふふっ。よかったわねフローラ、もっと押してみたらどうかしら?」
そう言われてフローラって人の顔が赤くなっていくし、ダークスターから照れてる感じがする。
好きなら好きって言えよ。
<(シリウス、貴殿がなにを言いたいかよく分かるがそれは出来ない)>
なんでだよ?
<(……御二人の結婚が先だ)>
なに言ってんだよ?! フローラさんもお前が好きだって分かる顔してるじゃねえか!
<(御二人の結婚が先だ。御二人が結婚してから、私は正式にフローラに想いを伝えるつもりだ)>
はいはい、んじゃ勝手にすれば? それまでフローラさんが待っててくれれば良いんだけどな?
そうは言っても本当にフローラさんからダークスターの事が好きだって事が分かる顔をしていたから、まぁ大丈夫なんだろうさ。
きっと待っててくれるだろ。
……でも俺はこの時、あることを忘れていた。
俺が見ている光景が過去で、聞いた話し通りの事になるのなら……。
それからまた場面が変わると、フローラさんと一緒にどこか綺麗な湖を眺めている事がわかった。
デートかな?
「風が気持ちいいですね」
<そうだな>
「ここは地上世界とは違いますが、もう馴れましたか?」
<確かに違うな。だがとても美しい国だ。皆、こんな私を心から受け入れてくれていることがとても嬉しいよ。それに……>
「それに?」
<いや……、なんでもない>
いや今良い雰囲気なんだからいっちまえよ!
<(し、シリウス?)>
お前フローラさんの事が好きなんだろ?! フローラさんもお前の事好きなんだ! だったら男らしくビシッと結婚しようとか言ってみろよ!
<(あ、いや、別に私達はまだそのような仲では)>
ジレってえんだよ!
<(あの、少し落ち着いてくれないかシリウス?)>
「? どうしたのですか?」
<あ、いや、なんでもない>
「ん?」
あ~~~も~~~! こんな可愛くて美人な人を大事にするのは分かるけど言うことはきちんと言えよな~!
<(わ、分かってはいるのだ。だがな、まだ言うのは早いかと)>
逆に遅いだろ!
<(う~む……、わ、私には私の考えがあってだな)>
だ~! フローラさんはお前から愛の告白待ちしてんだから早く言えよ!
それともなにか?! 他の男に取られても良いのかよ?!
<(そ! それは困る!)>
だったら早く言えよ!
<(そ、そうだな)……フローラ>
「はい、なんですか?」
<その、なんだ、なんて言えば良いか>
「ふふふっ、どうされたのですか? 何時もとなんだか雰囲気が違いますよ?」
それはあれですよフローラさん。ダークスターがアナタにこれから愛の告白をするから緊張してるのですよ。
だから察してあげて下さいな。
<……フローラ>
「はい」
<私はフローラをその……>
「っ! は、はい」
あっ、これからなに言われるか察したな?
<その……、私はフローラを……>
「はい……」
<(よし、言うぞ! 私は言うぞシリウス!)>
オウッ! 頑張れ!
<フローラ、私 ーー>
「2人共ここにいたのね?」
<は?!>
えぇ……、タイミング悪すぎだろ……。
いざ意を決して告白しようとしたらそこに、あの超絶美人な女の人が現れた事で台無しになった……。
しかもその隣にはあの、昔のカズもいる。
「邪魔をしたか?」
<陛下、どうしてここにいるのですか?>
「お前の顔が見たくなったから来た」
来るのは良いけどタイミング……。
<そ、そうでしたか>
「ん? なにか邪魔したか?」
<いえそんな!>
「なんでも御座いません!」
「……あ」
そこで察したのか、昔のカズが気まずそうな顔をこっちに向けた。
「……すまない」
<だ、大丈夫ですよ!>
「そ、そうです! 大丈夫です! 何時でも聞ける話しでしたので!」
<(まってくれ……、何時でも言える言葉ではないぞ)……>
ドンマイ……、ダークスター……。




