第235話 最悪の裏切り
俺達は八岐大蛇を止めに来た。そこに凶星十三星座が出てくると、俺達どころか八岐大蛇にすら牙を向けた。
八岐大蛇は最強最悪で、あのカズの次にヤバい化物級のモンスター。
その次が凶星十三星座。
でもゼストとパンドラはまた別格だって話を聞いていたらから、パンドラが八岐大蛇の心臓を抜き取って、一撃でその巨体を宙に浮かせることも出来る事も出来るのも納得しようと思えば納得することが出来るさ。
俺が納得出来ないのは、我が強いからって味方の八岐大蛇をわざわざ1度殺す理由があるのか? って事だ。
殺すと言っても不死身だから別に死ぬわけじゃ無いにしても、それは到底受け入れられない行為でしかねぇ。
つうかさ、なんだよこの展開は?
「パンドラァ……」
「はいお兄様、なんでしょうか?」
もう、名前を呼んだ瞬間からカズが相当ブチギレてるってのが伝わってくる。
カズは静かに起き上がりながらパンドラを睨んで、"堕天竜"を何度も振るった。
「調子に乗るなよパンドラ?」
「ふふふ、お兄様を軽んじている訳では御座いません。私達には私達なりの計画があるのですからどうか御了承下さいませ」
そう言ってパンドラは簡単に"堕天竜"を避けながら笑う。
パンドラも充分化物ってことかよ。
「お兄様は私が引き付けておくから、貴方達はさっさとを殺しちゃってね?」
<ふんっ、簡単に言ってくれる>
そう言いつつダークスターはまた緑色の炎で攻撃を始めると、骸とゴジュラスも攻撃を始める。
「ちょっとまてよオイ!」
パンドラ達の計画とかそんなもん俺には関係ねえ。俺はどうしてわざわざ八岐大蛇を殺して連れて帰ろうとしてるのか納得出来ないでいた。
連れて帰るなら別に性格とかんなもん良いじゃねえか。
「お前ら、なんか間違ってねえか? 性格なんて別によくねえか? それで味方って、よく言えるよな?」
<おい憲明。俺達の関係に口を挟むなら先に殺すぞ?>
ダークスターが強烈過ぎる睨みをしながら俺を脅す。
だけどよ、許せねえもんは許せねえんだよ。
「殺ってみろよ」
<あ?>
「殺ってみろよって言ったんだよ!」
<本気で死にたいらしいな貴様!>
「許せねえもんは許せねえんだよ! そうだろお前ら!」
「うん! ノリちゃんの言う通りだよ! いくらなんでもそれは無いよ! 八岐大蛇が可哀想だよ!」
美羽は竜の姿に変身して攻撃態勢を整える。
美羽だけじゃない。その場にいた皆が同じ気持ちだったから怒った顔で臨戦態勢を整えていた。
<死んだぞ貴様らああ!>
「ダージュ」
<黙ってろパンドラ!>
ダークスターが俺達に突っ込んで来るからそれを避けるけど、長い尻尾が俺の首に巻き付こうとしていた。
「掴まるもんかよ!」
"炎剣・レーヴァテイン"でダークスターの尻尾に掴まらないようにするけど、全然ビクともしないから俺は簡単に掴まりかけそうになっけど。
<させないから!>
美羽が尻尾を掴んで俺を守ってくれた。
「ようダージュ、俺の男に手え出すんじゃねえよ!」
え?
イリスがそう言ってダークスターに強烈な蹴りを叩き込むから、思わずキュンとしちまった。
<グハッ!>
「ククッ、テメェに俺が倒せるとでも思ったかよダージュ!」
<では私がお前の相手をしよう>
「ちっ、テメェとは相性が悪いから嫌だね!」
骸が静かにたたずみながらイリスにそう言うけど、イリスは骸との相性が最悪って言えるくらい悪いから相手をしたくないでいた。
骸は氷雪系最強のモンスターだもんな。
前回の戦いを見ても、イリスとかにしたら分が悪すぎる。
「お前は俺が相手してやるよ」
え?! 親父さん?!
まさか親父さんが骸の相手をするなんて思っていなかった。
<……親父殿>
「お前が俺を親父殿って呼んでくれるなんてな」
<貴方はあの方の父親です。そんな方に敬意を示さないでどうするのです>
「だったら倅の為に引いてくんねえか?」
<……出来ぬ相談です>
「だろうな」
すると2人同時に動いて激しい攻防戦が始まった。
そんな2人の攻防戦を、沙耶が黙って見ていた。
「沙耶!」
「……分かってるよ」
怒ってるとか、悲しんでるって顔じゃなく、なんて言ったら良いのか分からねえんだけど、なんかシラケたって感じがした。
「はぁ、んじゃ仕方ないか」
「沙耶!」
骸と親父さんの攻防が激しくなって、そこに沙耶が巻き込まれそうになっていたから俺は沙耶に早くその場から離れてほしかったんだけど。
「ごめんね皆~」
「……は?」
満面の笑顔で俺達に向けて沙耶が謝る。
それを、カズは「やっぱりか」って一言言うと険しい表情になった。
「ちっ、もう記憶が戻っていたのか」
「……はい」
は? どういことだよ?
すると骸は親父さんから一旦離れると、沙耶は大きくジャンプして骸の背中に飛び乗った。
<……良かったのか?>
「うん、これで良いの」
「沙耶!」
「私は凶星十三星座のNo.Ⅳ、"アズラエル"」
そんな、嘘だろ……?
「なに、言ってんだよお前」
「言葉通りだよノリちゃん。ごめんね? ずっと前から記憶を取り戻し始めていたの」
「冗談……、冗談キツいぞそれ、やめろよ沙耶」
「冗談なんかじゃないよ? ね? パンドラ?」
「ふふふ、じゃぁ、これを渡さないとね」
"空間収納"のスキルなのか、パンドラは異空間からなにか大きな鎌を取り出すと、それを沙耶に向けて投げた。
「ちゃんと回収しておいたわ」
「うん、ありがとう。後で皆にお礼するよ」
投げられた大鎌を受け取ると。沙耶から今まで以上の魔力が溢れ出し始めた。
「……ようやく戻ってきてくれたね、"サマエル"」
大鎌"サマエル"。
蛇骨で出来たような見た目に蛇の口から凶悪な大鎌が出ている武器。
その"サマエル"からも溢れ出る不気味な魔力がより恐怖を増幅していた。
「……いくよ」
瞬間、沙耶は物凄い速さで俺達に攻撃をしてきた。
「沙耶! やめろよ!」
正直直ぐに理解したさ、俺達でじゃ沙耶に勝てないって。
その動きは今までの沙耶とはまるで違う、別人の動きだし、どこかカズや美羽にも似ているけど2人とは違う。
"サマエル"を振るうスピードも尋常じゃない。
「沙耶ああ!」
「! ……ベヘモス。今の私は沙耶じゃなくアズラエルだよ?」
「うるさい! お前がアズラエルの生まれ変わりだってことはボクも気づいていたさ! だけど君は違うだろ! 君は凶星十三星座に戻らなくても良かったじゃないか!」
「だけど私はこうして記憶を取り戻した! 記憶を取り戻したからには凶星十三星座に戻る! あの人の……、カズの幸せの為なら!」
「それが間違っているってどうして気づかないのさ!」
なんだよ……、なんなんだよこれ……。
沙耶までカズの為にとかって……。
「……お前らはカズの為とかって言うけどなんなんだよ! いい加減にしろよ! 何がしてえんだよ! ただ暴れて殺戮を楽しみたいだけなんじゃねえのかよ!!」
<貴様に俺様達の何が解る!>
「ガッ!」
俺が怒鳴るとダークスターが来て殴られた。
「憲明! テメェ……、ダージュ!」
<大切なら首に鎖でも着けて見張ってれば良いだろ!>
「テメェマジでブッ殺す!」
俺の意識が遠くなるなか、イリスが怒ってダークスターと激しい殴り合いを始めたのが目に入ったけど。
そこで俺の意識が1度途切れた。




