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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第8章 黒い太陽
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第228話 ネルの森


「初めて来たけど、薄気味悪い森だな」


 森の中は薄暗く、ジメジメしている。

 例えるなら昼間なのに夜なんじゃって思えるような暗さ。

 そんな森に入ると早速モンスターが出てきた。

 "クラブモンキー"ってモンスターで、両手がカニの猿、長い尻尾の先には手。


 うん、キショい。


<ヴギャキィイイ!>


 大きさは日本猿くらいで、その数は全部で6匹。

 木の上から目を光らせてこっちを見ている。


「クラブモンキー、Eランク。雑魚モンスターだな」


 カズと俺だとそうだけど、グレイとフィリップにとってはそうじゃねえから緊張して動けないでいた。


「ど、どうしたら良い?!」


 どうしたらって。


「倒せば良いんじゃねえの?」


「どどどどうやって?!」


 あぁ……そっか……、倒しかたって言うより戦いかたを知らねえんだっけ。


 すると乾いた音が鳴り響いた。


躊躇(ためら)うな、殺らなきゃ殺られるだけだ。テイムしたけりゃ話しは別だがよ」


 魔改造されたデザートイーグルが、1匹のクラブモンキーの眉間(みけん)を撃ち抜いてカズがそう話した。


 相変わらず容赦の欠片もねえなおい。


「でもカズの言う通り、殺らなきゃお前らが死ぬ事になる。だから躊躇(ためら)わずに戦え2人とも」


「わ、わかった!」

「うん!」


 よし、ここで迷いを捨てる事が出来ればきっとこれから先、この2人は良い冒険者になれるだろ。


 そう思った瞬間、暗い森の奥から不気味な音がし始めると、クラブモンキー達が怯えながら警戒した。


「2人とも気を付けろ……、なんか知らねえけどヤバいのが来てる気がする」


「な、なんかってなんだよ……」


「ちょ、ノリアキ……」


「カズ……、なんだと思う?」


 聞いてみると、カズは不適な笑みを浮かべながら煙草を吸い始めていた。


「なんだ、もう()()()()()()


 目覚めた?


 すると、金属同士が擦り合うのと合わさって、聞いたことも無い不気味な声が混じった強烈な咆哮(ほうこう)が鳴り響き、森が静かになった……。


<ヴギャ……>


 やっぱり(おび)えてる。コイツら、カズが目覚めたって言う奴に(おび)えて逃げてたのか?


 でも考えてみればそうだ。

 クラブモンキーはEランクで、グレイ達はギルドに登録したばかりだから2人ともFランクだし、下手に手を出したら返り討ちにされる。

 それに目標のゴブリンはFランクで、クラブモンキーより弱い。

 そのゴブリンが逃げてくるよりも先にクラブモンキーと遭遇するってのは、ちょっとおかしくもある。


「目覚めたって何が ーー」


 瞬間、クラブモンキー達が木ごとなにか強烈な力で吹き飛ばされて、それは俺達の目の前に姿を現した。


「な、なんだアレ……」


「あっ……ああっ……」


 普通じゃない、そう思えるような殺気を全身から放っているからそれをグレイ達は当てられ、恐怖で体が動かなくなった。


 ちっ、ヤバいな。


 鼻先からまるで槍みたいな1本のデカくて長い角が前に伸びていて、その後ろに凶悪そうな真っ赤な目が光り、他にも小さい目がいくつもある。上半身は蜘蛛みたいな体に鋭い爪が何本もあり、そして凶悪で太い腕が2本。背中にはカマキリみたいな凶悪な(かま)が2本。下半身はムカデみたな体で、ピッケルみたいなデカくてゴツイ爪の脚。尻尾の先にはハサミムシみたいなハサミ。

 全身白銀色だけど、爪やハサミはどこか翡翠色っぽくて、どこか装甲車って感じがするモンスター。


 うん、格好いいけど絶対凶悪なモンスターだろこれ。

 でもなんか似たモンスターがいたなぁ……。


 ちなみにお口はあるのかな? って思っていたら。凶悪そうな牙が並んだ口が開いた。


 あ~……、これ絶対Sランクじゃね?


「カズさんや」


「あ?」


「……アレ、絶対Sランクだから手を出したらまずいよな?」


「"鑑定"スキルで確認してみろよ」


 そう言われて恐る恐る使うと。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名前 ダークス 性別((オス))

 種族名 不明

 Lv.78   Aランク

 体力1400   魔力962

 攻撃1004   防御645

 耐性897    俊敏743

 運82

 スキル

  猛毒生成 共喰 振動感知 忍足(しのびあし) 斬撃強化 超音波 身体強化 雷魔法

 ユニークスキル

  自己再生 電磁砲

 アルティメットスキル

  進化


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「へ? ダークス? ダークスって……、は~?! お前ダークスなのかよ?!」


<ギュルリリリリリリ>


「そう、コイツはあのダークスだ」


 マジかよ!


「ものはついでだって言ったろ? 俺がここに来た用事はコイツを見に行こうとしてたからなんだ」


「んじゃ一樹もいるのか?」


「ん? 呼んだか?」


 言ったらダークスの後ろから一樹がひょこっと顔を出した。


「一樹お前、ダークスどうしたんだよ?」


「ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれた! ダークスが遂に完全体になったんだ!」


 いや完全体って、その姿が完全体なら"進化"のスキルがまだあるんだし、究極体に進化するのかよ?

 いやそれにしてもカッコよくなったな……。


「でも何をどうしたらそんな姿になった……」


 はっ!


 俺はそこで思い出した。

 カズがダークスを進化させる為に、責任もってやるって事を言っていたのを。


「お前かカズ!」


「あぁ、俺だ」


「何したんだよお前」


「なあに、ただダークスに色んな虫型モンスターと戦わせて食わせただけさ。なあ? そうだよなダークス?」


 するとダークスの体が小刻みに震え出した。


 あぁ……、ま~た無茶な事をさせたんだなコイツ……。


「いやでもカズのお陰でここまで立派に成長してくれたんだし、文句を言えねえよな、ダークス」


<ギュリリリリ……>


 ぽろりと涙を流す一樹とダークスに、やっぱり何かエグい事をしたんだなって思えた。

 グレイとフィリップはまさかあのダークスがここまで進化して、成長した事が信じられないのか、ポカンと口を開けて固まっている。

 俺も普通にヤバいモンスターが出てきたと思ったから分かるさ。


「あっ、でもよカズ、ダークスの種族名が不明になってるってことは」


「あぁ、この世に新たに誕生した新種のモンスターって事になる」


 それはステラやノワールとかと一緒なんだな。


「どうすんだ一樹、カズに考えてもらうのかよ?」


「う~ん、どうするダークス?」


<ギュリィ>


「だな、やっぱカズに考えてもらったほうが一番良いよな」


 って事でダークスの種族名をカズにお願いした。


「そうだな……」


 さて、今回はどんな種族名になるんだ?

 元はブラックスコルピオだし、"バーサーク・センチビート"、"ナイトメア・マンティス"、"ファントム・スパイダー"、他に色んなものを進化させる為に食わせてるから、ちょっと楽しみだな。

 それにしても、真っ黒だったのになんで白くなったんだろ?


「よし、んじゃこれでどうだ?」


 おっ! 決まったのか!


「ダークスは元々黒かった。でも今のダークスはほぼ白い。そこで「白い夜」って意味で、"アルバノークス"。ダークス、お前に俺と同じ「夜」を入れたぞ?」


<ギュルリルリリリリリ!>


 あ~、なるほど、黒を夜に例えたのか。


 ダークスも気に入ったのか喜んでるし、俺もその白い夜(アルバノークス)って種族名が格好いいと思う。


「そうだグレイ、フィリップ、今日の授業で合成魔獣について俺が話した内容を覚えてるか? ダークスだけじゃなく、他にも"進化"ってスキルを持ってるモンスターがいるが、そいつらは戦いの経験だけじゃなく食事にも影響される。ダークスは本来進化しない筈のブラックスコルピオ。けど俺が"進化"スキルを与えた事で今じゃここまで進化したまったく別のモンスターになった。そこで問題だ。このダークスや"進化"スキルを持ってる奴らは、はたして【合成魔獣】に分類「される」のか「されない」のか、どっちだと思う?」


 どっちだ? やっぱり色んなDNAを取り込んで進化したんだから、合成魔獣になるのか?


「そ、そうだなぁ。……される、んじゃないか?」


「フィリップは?」


「ん~……、俺はしないと思う」


 おっ、意見が割れた。答えはどっちだ?


「うん、答えは「されない」だ」


 されないんだ?


「なんでされないのか解るか? 合成魔獣は合成されて生まれたものであり。進化ってのはその環境や生存本能に適応する為に姿形を変えたりし、生き残る為に体の構造を変化させたりしたからだ。ダークスは"進化"のスキルを使い、あらゆるDNAを取り込んだ事でその情報を自分のものにし、より強力な力を得る為に体の構造を変えて進化したんだ。だから今のダークスは姿を変えたとは言え、元はブラックスコルピオであり、分類学上はブラックスコルピオと同じ分類のモンスターに当てはめられることになる。んでだ、ゴーレムとか特殊なモンスターは合成されて産み出された訳じゃないのは知ってるよな? でも中には合成されて産み出されたゴーレムもいるのは確かだ。だからよく勉強しておくんだな」


 ヤバい、カズの悪いクセが始まった。


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