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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第1章 終わりの始まり
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第22話 来訪


 2日後。


 10:00



 俺達はとある場所にいた。そこには柳さん達公安と御子神のおっさん達も一緒に、とても広い和室の客間に集まっていた。

 その和室の障子(しょうじ)は開け放たれ、その先には縁側があり、そして更にその先には立派な日本庭園がある。


 そこは夜城邸の客間。


 俺達の周りには黒服のヤクザが数人立っている。


「相変わらずここはマフィアみたいだよなあ」


 そんな事を言っていると(ふすま)が開き、ゾッとする程の寒気が襲う。


 うっわヤッベ、()()()()かなりキレてる……。


 俺や美羽は勿論、一樹、沙耶、ヤッさんも、その人がどんな人なのかをよく知っている。

 その寒気の張本人が部屋に先に入り、カズ、先生、犬神さん、御堂さんの順に入ってくる。


 相変わらずコッえぇ……。


 俺はどちらかと言うと、相手が誰であろうと直ぐ喧嘩をする性格だと思う。でも、そんな俺でも絶対に喧嘩したくない相手がいる、それがカズの親父さん、"夜城守行(やしろ もりゆき)"その人だ。

 髪をオールバックにし、口元には髭。その目は相手を睨み殺せるのではと思いたくなる程、かなり目つきが悪い。目つきの悪さで言うならカズより親父さんのほうがよっぽどだと言える。

 体格は御堂さんの方が良いけど、その御堂さんとは比較にならない程のオーラが見えるんじゃないかと錯覚(さっかく)しちまう。


「今日はよく来てくれた」


 親父さんはその場にいる全員に感謝の言葉を伝え、皆の前で胡座(あぐら)になって座る。

 親父さんを中心に右隣にカズと犬神さんが座り、左隣には先生と御堂さんが座る。


 ヤベェ……、こうして目の前でこのメンバーが座ると圧迫感がものすげぇな。


「おじさん、今日はどうして私達も呼ばれたの?」


 何故自分達も呼ばれたのか、その理由を一応知りたかった美羽が質問した。


「美羽、理由は分かってると思うんだが?」


「やっぱり一昨日(おととい)の件?」


「それ以外に何があるって言うんだ?」


 親父さんの一言一言には重みを感じる。

 丁寧な言い方をしてはくれているが、遠回しに怒ってる言い方に近い。


「お前等、なんで和也の元に行った? 七海、何故教えた?」


 すると、俺達の後ろにある(ふすま)の向こうから泣きながらナッチが顔を出し、小さな声で「ゴメンなさい」と誤った。


「この馬鹿が、もし憲明達が死んだらどう責任とるつもりだったんだ。和也が守ってくれるとでも思ったか? それとも朱莉か? 刹那か? お前等もお前等だこの馬鹿が」


 す、すいません……。


 怒鳴りはしないが物凄い怒気を感じる。

 でもそれは、俺達を心配して怒っているからだってのが伝わってくるから、それが分からない俺達じゃない。

 だからこそ、俺達は親父さんに対し、心配させた事について心から謝った。


「ゴメン、親父さん……」


「私もゴメンなさい……」


「………お前等に何も無かったから良かったものの、現場にベヘモスが現れたんだってな?」


 その言葉に柳さんが冷や汗を流しながらいち早く反応し、確かにベヘモスが現れた事実を認め。その一部始終を説明した。


「にわかには信じられんな。(せがれ)達の報告を聞いた時はなんの冗談だとも思った。……んで? そのベヘモスからお前は秘薬を貰い、それを飲んだと」


 そこで親父さんは鋭い眼光で、隣に座るカズを睨みつけた。


「あぁ」


 カズはカズで、そんな親父さんの眼光を何でも無いかの様な態度でいる。


「もしそれで死んでたらどうするつもりだった?」


 さっきとは比べ物にならない程の怒気を含み、横にいるカズを更に(にら)みつける。

 それでもカズは平然とした顔だ。


「だから言ったろうがよ? ベヘモスの目に嘘は無かったってよ。だから俺は信用して飲んだ」


「だからそれだけで何故信用出来るんだって話をしてるのが、テメェには理解出来ねぇのかオイ」


「あぁ?」


「んだゴルァ、やんのか?」


 やめてくれ〜!!


 2人の(にら)み合いは酷かった……。

 でもその険悪な雰囲気を壊す者が突然現れて助かった。


「お邪魔しま〜す」


 なんの前触(まえぶ)れもなく突然、縁側にベヘモスが座っていた。


「どうしてアナタがここにいるんですか?! ベヘモス!」


 柳さんのその言葉に反応し、ありとあらゆる部屋から多くの組員の方々が武器を手にしてベヘモスを取り囲む。


 お~! まさかのカチコミか?!


「うはぁっ、スッゴイねぇボクに勝てる訳もないのにこんなにゾロゾロと。でも安心しなよ、ボクは君達を殺しに来た訳じゃないんだ。ただちょっと、ボクなりの提案があるからその話をしに来ただけだよ」


 ベヘモスは瞼を半開きにした目で笑顔を作り。その顔で空を見上げ、両足をバタバタと動かしながら話した。


「お前か、ベヘモスってのは。いったいどんな提案があるって言うんだ?」


「………」


 ベヘモスはそこで初めて親父さんの顔を見た。その瞬間、ベヘモスの両目が徐々に大きくなり、笑顔からまるで信じられない物を目にしているとばかりの表情へと変わっていく。


「どうした?」


 親父さんはそんなベヘモスを見てそう言うと、ベヘモスはその言葉に反応した。


「アンタ、本当に人間? 実は人間じゃないって言われたらボクは納得しそうだ」


 余程驚きなのか、苦笑いしながらベヘモスは額から冷や汗を流しているのが解る。


 解る。解るぜその気持ち。


「ふん、()()()()()にそう言われて光栄だな」


「え?! 魔王?! コイツが?!」


 まさかベヘモスが魔王?!


 「そうだよ、ボクは()()()()()()()()()()()()()()()だよ」


 そう言って不敵な笑みを浮かべるベヘモスに、俺は先日の恐怖が今になって蘇り、体が動かなくなる。


「でもさ、僕達は昔、七大魔王とは呼ばれてなかったんだ。かつては()()()()と呼ばれていたんだけどね。まっ、1人僕達を裏切り、しかもあの方までも裏切った馬鹿がいるから今は七大魔王なんだけどね」


「それは、どう言うことだよ……」


 俺は知りたかった。


「宜しければ私が説明しましょう」


「柳さん」


 片手で眼鏡をクイッと上げると、柳さんは説明を始めた。

 元々、確かに八大魔王が存在していたことを。


 七つの大罪を代表する魔王と言えば、ルシファー、ベルゼブブ、リヴァイアサン、アスモデウス、ベルフェゴール、マモン、そしてサタンの7人。

 でも柳さんが語ったのは、その中に本当はベヘモスも含まれていたという事実。

 そして、更に真実を伝えるのであれば、その中に今はサタンが含まれていないと言う事だった。


 あの超有名なサタンが、その中に含まれてないだと?


 つまり、ベヘモスが言った裏切り者とはサタンであり。その為に今はサタンを除いた7人が七大魔王と呼ばれ、恐れられている。

 だがその七大魔王は遥か昔、何者かの手により封印され、眠っていると話す。その封印をした者は誰なのかは今だに判明されてはいない。それでも予想する事は出来る、七大魔王を封印する事が出来る存在は数限られているため、いったい誰なのかを。

 それはこの世で最も恐れられている存在であり、その眠りから醒まさせてはならない者。

 ベヘモス達が最も慕っている者だと。

 多くの神々すらその者の前では恐怖し、抵抗しようとも(むな)しく、多くの命を奪った者。

 そしてベヘモス達はそんな者の下に付いたけど、サタンは裏切ってその者を倒す為、神々や人間達等の味方についたと話した。

 それが、表では公表されていない本当の真実の一つ。


「七大魔王が眠りから覚め、復活すると言う事は他の者達も目を覚ますと言う事です」


「他の者って誰なんだ?」


 そこで御子神のおっさんが質問して、柳さんは徐々に体を震わせ、その存在を口にする。


 どうしたんだ? そんなにヤバい相手なのか?


「最強にして最強の大幹部……。()()()()()()。彼等の力は尋常(じんじょう)では無いと聞いています。そしてそこにいるベヘモスは、そのゾディアックの1人なんですよ」


「なっ?!」


「ゾディアックのNo.Ⅶの1人。No.Ⅶ-Ⅴ・ベヘモス。No.Ⅶは彼女、ベヘモスをを含めた七大魔王に与えられた番号です。」


 柳さんのその話に美羽が疑問を感じた。


「なんで、そんな番号を?」


「それはその者に与えられた役割の様なものなんだよ」


 美羽の質問にベヘモスが応え、何故そんな番号が与えられているのか話す。


「番号にはそれぞれの意味があるのさ。例えばボクはNo.Ⅶ-Ⅴ、その意味はNo.Ⅶの5番目を意味している。そしてボク達七大魔王は7人、だからNo.Ⅶを与えられたのさ、"アンラッキーセブンズ"としてね。ゾディアックとは本来、星を表す言葉、へびつかい座以外の12星座を指すんだけど、ボク達ゾディアックは全部で13星座なんだ。ボク達七大魔王は7人で一つの存在とされている。つまり、大幹部は本来ボク達7人と12人いることになるんだ」


「そして、そのゾディアックと言う言葉の表現を作ったのが彼女達の主人。そのため昔から13と言う数字が不吉とされるのがそれがあるためです」


 ベヘモスの話の続きを柳さんが自然な流れで引き継いで話を続けた。


「そして。アナタ達七大魔王の他にも魔王がいて、そんな魔王達をまとめていたのがアナタの言うあの方」


 美羽がベヘモスにそう聞くと。


「その通りだよ」


 それには御子神のおっさんも納得し、美羽も理解した。

 でもベヘモスの顔がどこか寂しげに見えるのは気のせいか?


「何故、そんなに寂しげな顔なの?」


 美羽も思ったらしくそう聞くと、図星だったのかベヘモスは一瞬目を見開き、直ぐにその顔を隠して不敵な笑顔を見せる。


「ボク、そんな顔してたかい?」


「えぇ」


「ふ〜んいい目をしているね、それに……うん、やっぱりボクの提案を聞いてもらうとしよう」


 ベヘモスは美羽の目を見つめ、さっき言っていた提案とやらを話した。

 ベヘモスの提案は誰もが驚く内容だったけど、俺達は驚いた後に喜んだ。

 だってその内容はまさかの……。


今回も読んでくださり誠に感謝申し上げます。


感想、ブックマーク、いいね、☆☆☆☆☆を頂けますと、僕のモチベーションが上がりますので、どうか宜しくお願い申し上げます!!

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[良い点] 事件が一区切りついたので感想をば。 ぶっとんだ奴を中心として、周囲と軽口を言い合ってドタバタしながら、最後はスタイリッシュにキメて事件を乗り越えていく―― という感じが好きなんだろうなぁ…
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