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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第8章 黒い太陽
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第227話 異世界喫茶


「良いのかよカズ、話しちまって」


「……構わねえさ、どのみちクラス全員にはバレてるんだ、今更隠したって意味ねえだろ」


 そうだけどよ。


「先生に解答を頼まれたついでだから話したんだ。だから別にテメェらの為に話した訳じゃねえ事を覚えとけ」


「こらこらお~い、お前の事情は俺もよく分かってるからその辺にしとけ~」


 先生にたしなめられつつ、カズはその後も合成魔獣について話を続けた後。


「ん、でもまぁカズヤの言う通りだ。そして、"魔獣合成"ってスキルはかなり希少でそう簡単に持ってる人間、魔道書(グリモワール)、スクロールが(ほとん)どと言って良い程無い。だからもしそんな魔道書(グリモワール)が見つかってみろ、オークションが開催されればミスリル金貨だと千枚はくだらんだろうな」


 う~わ、なんちゅう希少価値だよ。


「それとだ。……実を言うと"魔獣合成"ってスキルは全世界で使用禁止に指定されている危険なスキルでもあるんだ」


 は? んじゃなんでカズは使えるんだよ?


「そこで何故、カズヤが使っても何も言われないのかと疑問が生まれるだろう。それはカズヤが許可書を持っているからだ。"魔獣合成"のスキルを持っている人間は極僅か。その中でも許可された者だけが使用出来る。理由はそう簡単にモンスターを合成する事が出来ないからだ」


 マジか。


「だが下手にそのスキルを使えば合成して誕生したモンスターを使役(しえき)するどころか、食い殺される。理性を失い、目に入るもの全てを破壊。そうしたモンスターはどれも(みにく)く、おぞましい姿をしているらしい」


 なるほどぉ……、って事はやっぱカズは冥竜王の生まれ変わりってだけあってそう言ったスキルを簡単に使いこなせるんだな。

 でもグリフォンやケンタウロスも合成魔獣になるなんてな。


 それから色々と話を聞いていると驚くような事ばかりで、聞いてて面白いと感じた。


 12:04


「カズ、飯食いに行かねえか?」


「そうだな」


 カズと一樹を誘い、俺はグレイとフィリップ達5人で飯を食いに出ると。


「んじゃ私達も一緒に行く~」


 沙耶、サーちゃん、志穂ちゃん、この3人も一緒に来るって言い出した。


「んじゃどこにする?」


「んじゃ最近出来た店にしないか?」


 グレイの提案で俺達は最近出来た店に行くことにして、案内された店はどこか懐かしい雰囲気がするところだった。


「なんか喫茶店って感じがするな」


「でもよ、ここの料理、めっ……ちゃくちゃ旨いんだよ」


 なんだ、来たことあるからここにしたのか。


「とりあえず中に入ろうぜ。ここのマスターは物静かだけどいい人だし」


 そう言われて中に入ると。


「いらっしゃぃせ」


「あれえ?!」


 そこには顔見知りのマスター、喫茶"Silver line"のマスターがカウンター内にたたずんでいた。


「お久し振りですね、(しばら)く顔を見ていなかったので寂しかったですよ」


「マスター! こっちに店出したんすか?!」


「えぇ、つい先日オープンしました」


 マジか~、他の人が聞いたら羨ましがるだろうな~。


「知り合いなのか?」


「知り合いもなにも、昔から知ってる人だよ」


「へ~、んじゃここのメニューとか知ってるのか?」


「当たり前じゃねえか。とりあえず席に座ろうぜ」


 中は俺達が知ってる雰囲気に似ているけどちょっと違う。

 でも、コーヒー豆の良い香りは一緒だ。

 とりあえずメニューを開くと、やっぱり俺の知ってるメニューと同じだったから、カレーを注文。

 沙耶もカレー、サーちゃんもカレー、志穂ちゃんは焼き魚定食、グレイはオムレツ、フィリップはナポリタンをそれぞれ注文する。


「この間来た時、このオムレツが気になって食ったら旨くてさ」


「俺はナポリタン頼んだけど、なんとも言えない美味しさで忘れられなくなってたよ」


 うんうん、2人の気持ち、よく分かるぞ。


「ところでカズは何を注文するか決めたのか?」


「ん? んじゃ俺はビーフシチューとパン」


 なに?! そんなもの、書いてありませんでしたが?!


「なぁ……、もしかしてそれって……」


「くくっ、裏メニューだ」


 出たよ裏メニュー。

 って事はマスターの事を知ってたな?


 だって向こう側の店でもビーフシチューなんて出たことが無いからな。

 つまり、裏メニューのビーフシチューってことはだ、カズ考案の特製ビーフシチューに違いないとも考えられる。

 だがしかし……、俺達はもう他のを頼んでしまっているから手遅れ……。

 でも俺達は知っている。

 前に1度だけカズが作ってくれたことがあって、それを食べた事があるんだけど……、そこに……天国が存在していた……。


 もしかしたらあの天国がここでも……。


 そう思うと自然とよだれが出て来る。


 ヤバい……、一回しか味わったことがない天国へのビーフシチューなら……、食べたい。


 するとオムライスやナポリタンとかの香りと一緒に、ビーフシチューの香りが混じってるじゃないですか。

 もう、たまらない匂いですよ。

 カズが作る料理はどれも天才的な味わい……。

 その中でも一回しか食べたことがない、幻のビーフシチュー!

 グレイとフィリップは食べたことが無いからその味わいが分からないからこそ、俺達の顔を見て不思議そうにしている。


 グレイ達みたいに食べたことが無いってのも、それもまた幸せなことなんだろうな……。


「御待たせ致しました」


 そう思ってるとマスターが料理を運んできてくれた。


「や、やっぱりそれは……!」


「くくくっ、俺がマスターに教えた俺特製ビーフシチューだ」


 くそ~~~~!


 あんまりうるさくするとマスターに怒られるから心の中で叫ぶしかない。


「なんでそれがあることを教えてくれなかったんだよ」


 怒りで声が震えつつそう聞くと。


「聞かれなかった」


 あること事態しらねえんだから聞けるわけねえだろバカヤロー!!


 俺はまた心の中で叫んだ。

 香りからして俺の知ってるビーフシチューと比べても断然旨い筈だ。

 カレーだってカズ考案の特製なんだからその旨さは知ってる。

 だけど! 幻のビーフシチューがあるならカレーよりそっちを食べたくなるだろ!


「に、匂いからして旨そうだな……」


「ビーフシチューって、いったい……」


 2人は知らなくて宜し!


「カズ……、一口だけでも」


「お前にはカレーがあるだろ」


「でもよカズ、そのビーフシチューを食べたことがある奴からしたら幻のビーフシチューだ。それを目の前で食われてみろ、発狂するぞ」


「知るかよんなこと」


 その瞬間、カズは遂にビーフシチューを口に運んだ。


「テメエ~~~!」


 同時に俺はマスターに睨まれた後に怒られた。



 16:20


「んじゃ今日はここまで。気をつけて帰れよ~」


 授業が終わり、夜城邸に戻ろうとしていると。


「なあノリアキ、今日って暇か?」


 否、カズの事があるから早く帰って何かクエストに出てレベルアップしたいと思ってるんですが?


 と思いつつ何か用事があるのか聞くと。


「実はさ、昨日俺とフィリップの2人でギルドに行って冒険者の登録してきたんだ」


 なんですと?!


「それでさ、先輩であるノリアキにちょっと俺達に付き合って欲しいんだよ」


「OKわかった、そう言うことなら一緒に行くか」


「助かる!」


「カズ、グレイ達とクエストに行ってくる」


「あ? あ~んじゃものはついでだ、俺も行くか」


 なななっ! なんですと?!


「そんなに驚く顔しなくても良いだろ」


「いや驚くだろ!」


 カズとは昔からの付き合いってのもあるし、俺達とつるんでるけど、基本的には誰ともつるもうとしない性格だ。

 御子神のおっさん、柳さん、ミランダさん、そういった人達ならつるむこともあるけど、ギルドに認められた3チームの人達とは未だ一緒にクエストとか、一緒に出掛けるとか一切見たことが無い。

 確かにグレイ達とは仲良くしてるように見えるけど、どこか壁を作っていたからな。


「んで? グレイ達はなんのクエストを受けるつもりなんだ?」


「野良のゴブリン討伐」


「ゴブリンか」


 仲良くしてるゴブリンはいるけど、そのゴブリン達は友好的ってことが解るように印を付けられている。

 まぁ顔を見れば解るんだけど、一応って事で。


「俺達初心者だから、実戦でちゃんと動けるか不安でさ」


「だから憲明に頼んだのか。まっ、良い機会だから憲明、ちゃんとどう動けば良いかお前が教えてやれ。俺はちょっと気になるだけだから一緒に着いていくだけだしよ」


「まぁ、何かあったとしてもカズがいれば安心だしな。それに俺も教えることで初心に戻れるし、色々と勉強になるかもだし」


 それから俺達は一度ギルドに行って、ゴブリン討伐の依頼を受けて出掛ける事にした。

 場所は学園都市から南に行った森、"ネルの森"。

 昔、ネルって魔女が住んでいたって事でその名前がついたんだとか。


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