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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第7章 近づく運命
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第221話 最強の氷雪地獄


 クロとノワールが息を合わせて向かって行く。


<"氷壁(アイスウォール)">


 でも氷で出来た壁、"氷壁(アイスウォール)"で進行ルートを邪魔されると長い触手が襲う。


<ガウガウッ!>


<クルルルッ>


 そんな触手の上を登り、ジャンプして(ムクロ)(くさり)で殴り、ノワールは鋭い爪で切り裂く。


<……蚊でも止まったか?>


<ガウッ?!>

<ギエッ?!>


<うるさい虫は早々に叩かねばな。"雨氷(フリージングレイン)">


 空から雨が降ってくる。だけどその雨が地表に落ちると、一瞬にして凍った。


「逃げろ!」


<口を出すな! ()()()!>


 殺されたいか? じゃなく、殺すぞ。

 その言葉がどれだけ重い事か解る……。その恐怖により一層動けなくなるし、体の震えが止まらない。

 すると。


「は、話すからクロ達を殺さないで!」


 セッチが泣きながら(ムクロ)にそう伝えた。

 だけど(ムクロ)は。


<勘違いするなよ? 何時クロとノワールを殺すと言った? 私は力を制御すると言ったんだぞ。それに殺さないとも言った。貴様はいったい何時まで()()()()()()()()()()()()?>


「うっ……ぐ……」


<府抜けたな、刹那。さぞあの方は貴様にガッカリしておられる事だろうよ>


 そこまで言われても、セッチは言い返す事が出来ないで(うつむ)き。しゃがみこむとうずくまって泣き始めた。


<泣いてどうなる? それで済めば良いと? ふざけよって。だから私は貴様が昔から嫌いなのだ。あの日もそうだ。あの日も貴様は泣いて自分の(おり)に閉じ籠り、周りに迷惑をかけた。あの方がどれだけ貴様を心配していたか解るか? 解らないから今でもこうして同じ様に泣いているのだろうな>


 そう話している間にも、クロとノワールが必死に攻撃するけど(ムクロ)はただそこに立っているだけで何もしない。


<刹那、私は貴様をこのまま連れ帰って無理矢理にでも喋らせても良いのだぞ? だがそうしないのはクロ達がそれを必死に止めているからだ。そんなクロ達の気持ちを貴様は踏みにじろうとしている。ましてや貴様、敵を前にして泣くとはどういう神経をしている? フンッ、余程死にたいのだな貴様は>


「そこまで言う必 ーー」


<私は口を出すなと言ったばかりだぞ憲明?>


 セッチの事で止めようとしただけなのに、それでも(ムクロ)は俺に口を出すなって睨み、俺はその睨みで黙った。


<刹那、貴様があの方の近くにいるだけでむしずが走る。存在しているだけで今すぐにでも殺したくなる>


「……」


<泣けば済むのかと聞いた筈だ。それでも泣くのなら話を聞いたら殺してやるからこっちに来い>


 セッチ……。


 それでもうずくまったまま微動だにしない。


 死ぬつもりじゃねえよな?

 もしそうならキレるぞ俺……。頼むから何か反論してくれよセッチ!


 心の中でそう叫びつつ俺は願った。

 じゃなきゃ(ムクロ)は本気でセッチを殺す。そんなの、俺は絶対に許せねえから。

 だって口に出してまた言えば、(ムクロ)が今度こそブチギレてサーちゃんだけ残した俺達を殺す筈だから、それが怖くて言えなくなってたんだ。


<これ程言っても黙りか。では、予定を変更して桜を残して貴様ら全員殺すが、良いのだな?>


「……」


<……仕方ない。では申し訳無いがお前達には死んでもらう。恨むならそこにいる刹那を恨んでくれ>


「クソッ……、結局こうなるのかよ!」


 未だに攻撃し続けていたクロ達を無視して、(ムクロ)が1歩前に出る。


<ん?>


 でも急に何歩か引くと、(ムクロ)がいた場所を破壊する何かが降ってきた。


<何しに来た()()()()>


「B?!」


 凶悪で巨大なハルバートを肩に担ぐBが、(ムクロ)の前で静かにたたずんでいた。


<今、私を攻撃しようとしたのか?>


 確かに俺の目にもそんな風に見えた。

 だって(ムクロ)がいた場所を破壊してるんだから。


「ごめん……」


<ん?>


「ボク、凶星十三星座(ゾディアック)()()()


 はあ?!


「ボクやっぱり憲明達の味方に付くよ」


<血迷ったか? あの方を裏切る、そう言いたいのか貴様は?>


「うん」


<……そうか、それは残念だ>


 瞬間、凶悪な触手の爪がBを攻撃して、それをBは凶悪なハルバートでガードした。


「B!」


「話しは後にしようよ。でもその前さ、今からでもボクを君達の仲間に加わっても良いかな?」


「何今さらんな事聞くんだよ?! んなもん当たり前じゃねえか!」


「はは、嬉しいな。じゃぁ、バランを頑張って追い返さないとね!」


 (ムクロ)の触手を押し返し、Bが走って反撃に出る。

 その動きを見ていたクロとノワールが合わせ、左右からまた攻撃をして援護した。


<ガウッ!>


<ギュエェエエエエエッ!>


「はは! 君はいつの間にこんな面白そうな子をパートナーにしたんだい?」


「ゴジュラスとアリスの子供だ!」


「なるほどね!」


 Bが仲間になってくれてスゲー嬉しい、めちゃくちゃ嬉しい。

 イリスは寒さにやられて喋る元気も無くなってるし、動かなくなっちまったから正直Bが来てくれて本当に嬉しかった。

 俺は恐怖で動けなくなっていたけど、Bが来てくれたから安心したのか。もう黙っていられなくて走りだし。"炎剣・レーヴァテイン"を抜いて(ムクロ)に斬りかかる。

 サーちゃんと志穂ちゃんも覚悟を決めたって目に変わり、志穂ちゃんも大剣を抜いて走ると、サーちゃんはそんな志穂ちゃんを援護する為に糸で攻撃に出た。


<(……刹那、こやつらは覚悟を決めたぞ、貴様はどうする?)>


「うおっるあぁぁぁぁ! "炎狼斬"!」


 至近距離まで近付いてからの、"炎狼斬"。

 だけど(ムクロ)の体が硬くてまったくって言う程全然斬れていない。


<"つらら舞(アイススタチュー)"。(しかしここでベヘモスが裏切ってまで助けに来るとはな)>


「君とこうして戦うのは何時ぶりになるかなあ?!」


<……そんもの、もう覚えておらんよ。(あれは確か、こやつが竜国に来てから100年が過ぎるか過ぎないかだった日だったな)>


 Bと(ムクロ)が軽く睨み合った後、俺達が入る余地が無いくらいのスピードで再び戦いが始まった。

 空からは(ムクロ)の"雨氷(フリージングレイン)"が降り続けていて、周りは既に氷の氷像になっちまってる。

 Bは笑みを浮かべながら凶悪なハルバートで地面を破壊したりしながら振り回し、(ムクロ)もどこか笑みを浮かべながらBの攻撃を交わしつつ攻撃に出ていて、激しい攻防戦を繰り広げている。


 スゲェ……、これが凶星十三星座(ゾディアック)同士の戦いかよ。


 そう思っていると、Bが凶悪なハルバートを両手でかざし、なんだか呪文めいた事を言い始めた。


「我が名はベヘモス、我が名において(なんじ)の真なる姿をここに現し、我が敵に大地の怒りを味わわせん」


 そんな事を言っていると、今度は(ムクロ)の4本の触手が変化し始めた。


<グルルルルウゥゥゥゥ……、5()0()%()()()>


 触手の1/3が太くなっていくと、骨みたいな突起の甲殻が凶悪な大鎌(おおがま)状の爪になる。


 あんなのガードしてもガード出来ずにやられちまう!


 しかも50%解放って事は、B相手でも全然本気を出さないって事。それなのにBは最初に出会った頃みたいな殺気と重圧(プレッシャー)を、全身から出してるのを感じる。

 そんなBが笑顔を崩さないでいるけど、顔から冷や汗を流していた。

 そのBが持ってる凶悪なハルバートが更にデカくなると、刃の部分がガラスの様な、クリスタルっぽい綺麗になる。けどその刃の形状は剣を何本か合わせたみたいな形だしどこか禍々しい。

 他は青黒い色で、持ち手の部分に凶悪なトゲが付いたナックルみたいなのがある。

 それにしてもデカ過ぎるけどな。


「"怒れる大地(アングリーアース)"」


<ふんっ、貴様が本気を出したところで私に勝てるとでも?>


「ははっ、ボク1人で勝てるとは思ってないよ。ボク1()()()()()()


 そこで後ろで動けないでいたイリスが、急に炎に(つつ)まれた。


「イリス?!」


「大丈夫だよ憲明、あれはボクの強化魔法だから」


 強化魔法?!


「さぁ、そろそろ起きて大好きな憲明の為に一緒に戦ってくれないかな? イリス」


 その言葉にイリスの目が光ると、炎を(まと)って目を覚ました。


「悪い悪い、寒くて寝てたぜ」


 不適な笑みを浮かべながら指を鳴らし、ようやくイリスが復活。


「さぁて、んじゃいっちょ暴れるとしますか」


<イリス、例え貴様でもこの私に勝てるとでも?>


「はっ! 確かに俺とアンタとじゃ相性がわりいけどよ、何事もやってみなきゃわかんねえだろ?」


<良いだろう。全員まとめて薙ぎ払うとしよう>


 おいおいマジかよ、イリスでも(ムクロ)には勝てるかわかんねえのかよ?


 そう思ったけど、よく考えれば確かにそうなのかもと思えた。

 だって(ムクロ)は氷雪系最強で、イリスは爬虫類だから寒さには弱い。

 だけどBの強化魔法で寒さを感じなくなったから、今のイリスなら(ムクロ)に勝てると俺は思った。


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