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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第7章 近づく運命
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第217話 笑い合う兄弟


 ゼストはそこまで長い時間いなかった。

 いたのはだいたい1時間かそこらだと思う。

 途中怪しい空気にはなったけど、親父さんのお陰でゼストはそれ以上の事は言わなかったし、もめ事にならずに済んで良かった。

 俺としては結局、ゼスト達が何を考えて行動してるのか、全然理解出来ないでいたんだけど。きっとそれはゼストがカズに言ったように、昔交わした約束を守る為なんだと思う。

 終焉を与え、新たに再生する。

 それはカズしか出来ない事であり、他の誰かがやろうとしても出来ない事。

 今のゼスト達は復讐じゃなく、カズの願いを叶える為に行動しているって事ぐらいしか、俺の頭は理解出来なかった。


「では、そろそろ私は行こうかと。長居をしてしまい申し訳御座いません」


「なんだ、もう行くのか。だったら気にしねえでまた来たら良い、和也の弟なら俺の(せがれ)も同然だ」


 マジかよ親父さん、(ふところ)が広すぎるって。


「宜しいのですか?」


「別にかまいやしねえよ。ミルクとゴジュラスに会ったら言っておいてくれ、お前らも別に来て良いんだぞって、俺が言っていたってな」


「分かりました、ではそのように伝えさせて頂きます」


「お前は別に来なくて良いんだぞ?」


「はぁ? なに言ってんだこのクソ親父が」


「はははははっ」


 まるで本当に親子って感じるような光景が、そこにはあった。

 カズが親父さんにイジられ、それを見てゼストが笑う。

 そんな光景に俺はどこか羨ましいってなっていると。


「ゼスト……」


「ん?」


 今までずっと部屋にこもっていたセッチが、悲しそうな目を向けてゼストを呼んだ。

 でもその姿は前のセッチとは思えないくらいに痩せていて、別人なんじゃねえのかってくらいだし、髪はボサボサ、近くにいなくてもセッチから変な(にお)いが漂ってきていた……。


「……どうして貴方がここに」


「おい刹那、その前に言うことがあるんじゃねえのか?」


「……先……輩」


「どうして今の今まで引きこもっていた? いったいどれだけの連中を心配させたのか、解ってねえのか? あ?」


「……すいません」


「すいませんじゃねえんだよ。親父を見てみろ。親父は稲垣さんに裏切られてでもここにいるんだぞ? それに俺が冥竜王として復活してでも、親父はそんな俺をどう止めたら良いのか皆と考えてるんだぞ? んじゃお前は何してた? ん? ただ悲しくて引きこもってただけじゃねえのか? Bに裏切られて悲しかったか? 馬鹿が、Bは元々凶星十三星座(ゾディアック)だぞ? 俺は冥竜王だぞ? 悲しいならどう止めるべきか皆と話し合うべきなんじゃねえのか?」


 ……そうだよな、カズが怒るのも無理ねえよな。


 カズが怒らなかったらきっと親父さんが怒ってたと思う。じゃなきゃ俺がだな。


「先輩が……、冥竜王だと言うことを皆……」


「とっくに知ってるさ。俺が全部話した」


「そんな……。じゃぁ……なんの為に私は、黙ってたと思うんですか……」


 知ってたのか……。


「私は……、私は先輩の為にと思って黙っていたのにどうして?! だって冥竜王の生まれ変わりなんですよ?! 世界の敵なんですよ?! バレたらどうなるかぐらい考えなかったんですか?!」


「考えたさ。でもな、このまま黙ってる状況じゃなくなったんだ。お前が引きこもった後、東京湾にゲートが開いた。それで世界は異世界の存在を知る事になった。それから色々とあったさ、お前が引きこもってる間になぁ」


「うっ……」


 強烈な睨みでセッチは怯えて、目から涙が溢れそうになっている。

 でもまぁ、カズが冥竜王の生まれ変わりって事を話すきっかけを作ったのは、御子神のおっさんだけどな。


「本当にに色々あったよ。ミルク、イリス、ゴジュラス、新しいメンバー、異世界の学園都市に通うことになった事、イリスのお陰でここだけが不可侵条約で争う事を禁止した事、稲垣さんが世界に対して戦争を仕掛け始めた事色々だ。……お前は何してた? ん? 引きこもっていたから外の状況を知りませんでしたってか? それでも部下から報告を貰っていたんじねえのか? 今のお前がどんな(つら)してるか知ってるか? 知らねえなら鏡を見てから出直して来い、この、()()()!」


「おい! 何もそこまで言う必要は!」


「黙ってろ憲明! ブチ殺されてえか?!」


「うぐっ……?!」


 本気でぶちギレたカズが怖い。

 でもただ怖いってだけじゃ無く、純粋な恐怖。

 俺の本能が危険だって物凄く警鐘(けいしょう)を鳴らしていた。


「答えろ刹那! 俺にブチ殺されてえのか今すぐ消えるかどっちかを選べ!」


「その辺にしておけ和也」


「でも親父!」


「刹那は辛かったんだ、真実を知っていたからこそ辛かったんだ。だからもう許してやれ」


「……チッ!」


 よ、よかった……、親父さんが止めてなきゃこの場から逃げようってなってたとこだぜ……。


 俺は本気でそう思った。

 だってゼストですら怯えた顔をしながら固まってるんだもんよ、ダンディーな顔が台無しだったぜ。

 でもさ……、美羽はスゲーよ。本気でぶちギレたカズに悲しそうな笑顔を浮かべながら抱きついて、「その辺にしておこうよ」って言ってさ、それで怒りを完全に止めちまったんだ。


「……悪い」


「ううん、別にカズは悪くないし、誰も悪くない。だからもう許してあげよ? ね?」


「……分かった」


「ゼストもごめんね? やっぱりカズが怒るところを見たら怖かったでしょ?」


「……あぁ、昔怒られた時の事を思い出してしまっていたよ……。兄者(あにじゃ)は滅多なことでは怒りはしなかったが、一度怒ると誰にも止められなかったからな」


「へ~、やっぱり昔からなんだ~」


「や、やめてくれゼスト、恥ずかしい過去とか絶対言うんじゃねえぞ?!」


「はて、その御約束も出来かねますな」


「なっ?!」


 ゼストがそう言って、カズと笑った。


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