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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第7章 近づく運命
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第208話 過去の真実


 12月13日


 あれから3日が経った日。

 カズが夜城組に(ほとん)どの関係者を呼び集めた。

 俺達メンバーは勿論、レイナや仲の良いクラスメイト達、御子神のおっさん達警察、柳さん達公安、ミランダさん達アメリカ軍、特殊作戦群の各隊長さん達、マークのおっさん達やここに来ることを許可された他の3チームの人達、テオやリリア、そして夜城組傘下の各組長さん達。

 でもそこにはまだ、セッチ達の姿が無い。

 タカさんが久しぶりの挨拶がてらにって、部屋から引きずり出そうとしていたけど、それでも駄目だったらしい。

 それでも全員が大水槽前ホールに集められると、流石に異様な雰囲気を感じる。


「皆に集まってもらったのは他でもねぇ、……俺についての話だ」


 だろうな、それしか考えられねえからよ。


「今の俺は"創造"と"変換"を一切使えない状況にある。だが、不思議とサーちゃんの心臓やルカの目を治す為になら、何故か力を使うことが出来る」


「それはもう1人のお前が許してるからなのか?」


「たぶんそうなんだと思う。もう1人の俺にとっても、サーちゃんとルカは大事らしいな」


 その言葉を聞いて、美羽の表情が一瞬曇ったのが分かった。


「だが問題はそこじゃねぇ」


「問題?」


「あぁ……。もう1人の俺がミルクとゴジュラスに何かをしたみたいだ」


 そう来やがったか、ってなると。


 俺は思った。

 もう1人のカズが今のカズを眠らせて、しかも美羽も知らないところでミルクやゴジュラス以外にも、アリス達に何かしてるんじゃないかって。

 じゃなければ"進化"の能力を与えられてもいないヒスイが人型になれる訳がねえんだ。

 きっとカズの事だからアリス達を調べたに違いない。

 そして、そこには今まで隠されていた情報をカズが知ることになった筈だ。


端的(たんてき)に伝えるとだ。まず間違いなく敗北する」


「なっ?!」


 負ける?! 俺達が?! 確かに向こうにはまだ凶星十三星座(ゾディアック)達がいるのは理解してる! それでもこっちにはエルピスとかいるんだぞ?! そう簡単に負ける訳ねえだろ!


 それにイリスだって味方についてくれているんだ。だから俺はそれを聞いて疑問に思えた。

 それなのに、俺以外の皆はやっぱりって顔をしたまま黙ってカズの話に耳を傾けるから、俺だけが納得出来ないでいた。


「ゴジュラスに対抗出来るのは……、タカさん、アンタだけだ」


「オ~レですか~ぃ?」


 うん、それは俺も思った。


「理由は"弱点看破"ってスキルのお陰が大きい」


 "弱点看破"。つまり、相手の弱点を見抜く力か?


「それにタカさんは元祓魔師(ふつまし)で、対魔戦でも相当な腕だしな」


 祓魔師(ふつまし)


「それってなんなんだ?」


「いわゆるエクソシストって事だ」


「エクソシスト? エクソシストってあの悪魔祓いのか?」


「あぁ、タカさんは元バチカンの人間でパラディン、つまり聖騎士の称号を持ってる人なんだ」


 聖騎士(パラディン)?! タカさんが?!


 それを聞いて誰もが驚いた顔でタカさんを見たけど、親父さんを始めとした組の人達は知ってたって顔をしている。


「だから悪魔に対してはめちゃくちゃ強い神父だったんだ」


 そんな風には全然見えねぇ……、なんでまた神父を辞めてヤクザになったんだ?


 そう思ったけど、取りあえず今は聞ける雰囲気じゃなかった。


「む~かしの話ですからねぇ」


「当時は最強最悪の祓魔師(エクソシスト)として恐れられていたよな」


 最強最悪の祓魔師(エクソシスト)だったって聞くと、なんとなく想像することができちまう。


「は~っはっ~! 若気の至りってやつですよ若~! だ~から恥ずかしいからその辺でたのんますぅ」


「はいはい、まっ、そう言うわけだから対ゴジュラスに関してはタカさんならなんとかしてくれる筈だ。ミルクに対してはイリス、お前頼みになる」


「任せてくれ兄様(にいさま)、ミル姉は俺が担当する」


「それで問題は凶星十三星座(ゾディアック)達だが、特に俺の弟達が問題だな」


 弟達って言うと……、時々名前が出ていたゼスト……、だったか?


「弟のゼスト、妹のパンドラ。俺が言うのもなんだがこの2人は本当に要注意だ。ゼストは"破竜王"と呼ばれる、破壊を(つかさど)るドラゴン。パンドラは"滅竜王"と呼ばれていて、滅亡を(つかさど)っている。破竜王・ゼストは振れるもの全てを破壊し、滅竜王・パンドラはありとあらゆるウイルスを操る力を持ち、死に至らしめる力も持っている。どちらか一方だけでも世界を簡単に破滅させられる」


「反則だろ……、お前ら兄弟」


「故に王なのさ。俺達兄弟は王として生まれ、王としてあらゆる事象を支配出来る。それを(ねた)み続けていたのが……」


「お前らにとって本当の敵……か……」


 俺がそれを言うと、カズは静かに(うなず)いてからその敵が誰なのか、ついに口にした。


「俺達にとっての真なる敵。それは全ての神々だ」


 ……やっぱそう来やがったか。


 エルピスとかの反応を見てて、薄々とそうなんじゃねえかって予想はあったけど。

 相手は神様達だったって知ると改めて何があったのか気になった。


「カズ……、良ければ何があったのか詳しく教えてくれ」


「……そうだな、そろそろ話すべき時ではあるな……」


 ……それから先、重々しく口を開いたカズの話を聞いた俺達は衝撃を受けることになった……。

 それはとんでもなく重く……、想像してたより遥かに酷い内容だったから……。

 その内容ってのがカズにとって、とても大切な人を神に殺された事から始まる……。


 今度はそうきたか……。

 クソッ、なんでコイツだけそんな想いをしなきゃなんねえんだよ……。


「だから当時の俺は怒り狂い、全ての神々を根絶やしにしてありとあらゆる全ての世界を支配しようと動いた。……そこで俺の想いに応えてくれたのが凶星十三星座(ゾディアック)達だ。当時、ルシファー達もそんな俺の味方になり、周りから八大魔王として恐れられる存在になったが、結果的にサタンだけが俺達の元から離れて敵対することになった」


「それで七大魔王に」


「そうだ。前に聞いたと思うが、ルシファー達は元々神の部下達であり、リヴァイアサンとベヘモスは生み出された存在。だがアイツらは神のやり方に反発して裏切り、堕天した事で何処にも居場所が無かったところを俺が迎え入れた。凶星十三星座(ゾディアック)ってのは元々そんな連中であり、俺の為に結成され、最強の軍隊を取りまとめる為とも言うべき組織だ」


 カズの話を聞いていて、俺達は少しずつ凶星十三星座(ゾディアック)の成り立ちを知ることが出来ていた。

 凶星十三星座(ゾディアック)は大幹部としてカズからナンバーを与えられ、国と民を守るためにも存在していた。

 けど、神の仕掛けた罠で国は乗っ取られ、大切な人まで奪われた挙げ句、カズ自身も居場所を失っちまった……。

 それなのにカズは復讐何て事はしないで、凶星十三星座(ゾディアック)や生き残った軍、民を連れて長く厳しい放浪の旅に出ることにした。

 正直、そこまで話を聞いて俺達はどうしてその時、神々に復讐しなかったのか疑問に思ったけど、根本的にカズは優しいからこそ人の痛みとかを知ってるからしなかったんだなって思うことが出来る。


「だがそれでも神々は俺を執拗(しつよう)に追い掛けてきた……。俺を、完全に殺す為にだ」


 なんでっ、なんでそこまでしてカズを?!


「だから俺は決める事にした。俺を慕って付いてきてくれる連中をこのままただ黙って殺されたくねえから戦争することを。……そう決めた俺は、"変換"の力と"絶"の力を駆使して力を得ることにした」


 "絶"? 


「カズ、"絶"って?」


「前に言ったと思ったがまあ良いや。"絶"ってのは、絶望、絶体、絶命、絶息、絶滅。ありとあらゆる"絶"がつく事を支配し、操る力だ」


 そう言えばそんなことを前に聞いてたな。


 それにしても"絶"って力がどれだけ凄いことか、改めて考えると正直そんな力に勝てる気がしなくなっていた。

 つまり、カズが「絶対破壊」なんて事で"絶"って力を使えば、それがなんであれ破壊する事に繋がるって事だろ?

 それこそ絶対に勝てるわけねえだろって話だ。

 でもだからこそ竜王として、竜達の神として頂点に君臨出来るんだとも思える。


 前にBが絶対的な存在って言ってたけど、その言葉は間違いじゃねえんだな。


「そんな俺に対抗出来る奴はエルピスぐらいなもんだ。アイツの名前であるエルピスは"希望"って意味があり、希望の象徴から冠する力は"光"。"光竜王・エルピス"ってことになる。あらゆることに対して"光"を照らし、人々に希望を、勇気を、正義を与える。過去にその力で何度も人々に希望を与える為に、何人もの英雄が誕生した。だが良いこともあればそれが結果的に悪い事に繋がる事が何度もあった。そうやって今のこの世界になっている」


 ってことは、希望や英雄ってなると……、ジャンヌダルクや有名なナポレオンとかか?

 でもエルピスが神として世界を見ていたなら納得だ。

 きっと同時に、エルピスはカズの復活を阻止する為に、色々な英雄を生み出したのかもな。


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