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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第7章 近づく運命
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第202話 社長と異世界


「ここが」


「異世界の街、ゼオルクです」


 菅原さんをゼオルクの街に案内すると、やっぱり興奮を隠すことが出来ないで喜んだ。


「素晴らしいです!」


「そう言っていただいてなによりです。あちらにいるのはゴブリンとコボルトですね。それとあちらはエルフになります」


「エルフ!」


 エルフは美男美女だから、もしこっち側の世界でデビューしたら絶対有名になるだろうな。


「それでイリスですが、イリスは確かに俺の妹であり、亜人に分類される存在になります。先程申しましたが、詳細を申し上げにくい事情がありまして」


「いえいえ、人にはなんらかの事情があります。私がそんな事を気にするとでも?」


「クククッ、そうでしたね。社長は昔からこんなことを気にする方じゃないのは承知しているのに、申し訳ありません」


 そう話しながら2人は笑い、ゼオルクがどんな街なのか軽く案内する為に歩き出した。


「あれは?」


「あれはちょうど別のハンターがモンスターを捕獲して戻ってきた所ですね」


 大通りの真ん中を巨大なモンスターを縛って運んでくる荷馬車が通り、その周りに数人のハンター達がいる。

 それはここゼオルクでは日常的な光景になっているから、今の俺達にしてみれば普通で当たり前になっていた。


「モンスターはBランクの"レッドボア"って種類でして、まぁデカい(いのしし)のモンスターですね」


「ほぅ……」


「レッドボアは主に山岳地帯に生息している、隊長5メートルになるモンスターなんですが、時折人里まで降りてきては作物等を荒らすので、討伐されるか捕獲されてきますね」


「なるほど。それではあちらは?」


「あれはロックタートルって種類のモンスターです。俺のチームメンバーの1人がパートナーにしてますが、基本的に大人しい種でして、荷物運びに重宝されますね。成長すればあれよりもっと大きくなって、甲羅は正に岩並み。甲長5メートルになります。力も強く、時には他のロックタートル5匹分を運ぶことが出来ますね」


「ほほぅ……」


 それからと言うもの、菅原さんは目を輝かしながらカズの説明に耳を傾けていた。


「ここはなんですか? とても豪華な作りに見えますが」


「ここは魔道書(グリモワール)と呼ばれる魔法やスクロール等を主に取り扱っている専門店になります」


「ではここに来れば魔法が使えると?」


「いえ、その為には魔結晶と呼ばれるアイテムを初めに使い、魔力を手に入れなければなりません。しかし魔法を使うにしても、それに見合った魔力がないと使えませんね」


「なるほど」


 それから冒険者ギルドに行ったり、ゼオルクにあるいくつかの喫茶店や市場とか行くことにした。


 1時間半後。


「正直な話し、私としてはそこらじゅうに原石が転がってるように見えてなりません」


 そりゃそうだ、向こうに行ってデビューしたらたちまち人気者間違いなしだぜ。


「許可さえ頂ければこの街に住む女の子達だけでグループを結成したいですね」


 ……ありだな。


「男の子でも女の子でも、皆売れるに違いありません。いや、絶対に売って見せますね」


 いいですね~、そうなりゃ他の大手芸能事務所ですら敵わなくなるな。


「……いや実を言いますとね社長」


 するとそこでカズが、俺でも知らなかった事を菅原さんに伝えた。


「芸能界に興味がある子達が結構いるんですよ」


「なんですって?」


 瞬間菅原さんの表情がキリッとなってカズの話をより真剣に聞き始めた。


「こちらの世界でも美羽の知名度は高く、MIYA (ミーヤ)として知られてるんですよ。しかもこの街にはテレビもあって、日本の番組も見られてます」


「な、なんと?!」


「無論テレビが見れるって事は電気も通ってる訳なんですね。ってことは他の家電製品も使える事になります。ですからこの街の人々は、そんな美羽の曲も聞いていまして、他にも有名アーティストの曲も聞いてるんです。そんな環境ですから自然と自分も芸能界に入りたいって子が出てきますよね?」


「た、確かに」


「そこで社長。政府の許可が降りましたら是非、御検討して頂ければそんな亜種族の子達が夢を叶えられるかもって喜ぶと思うんですよ。今まではやはり異世界の事を隠さなければなりませんでしたし、こっちに住む亜種族の人達が気楽に遊びに行けないような状態でしたから、夢のまた夢でしかなかったんです。ですが政府から渡航許可が降りるかも知れないと思うので、その時は是非と思いまして」


「そ、それはなんて魅力的なお話なんでしょう! 是非とも私の事務所に来ていただきたいものです!」


 目を輝かせて興奮する菅原さんがカズの両手を握り、だったら今の内に面談して所属してもらいたいと言った。


「そんな胸踊る情報を頂けるなんて! 私はなんて運がいいんでしょう! 和也君と知り合えて本当に心の底から嬉しいです!」


「クククッ、喜んで頂けてなによりです」


 瞬間、俺は怖いものを見てしまった……。

 お互い両手で握手し、カズが頭を下げた瞬間、物凄く悪い微笑みをこぼしていた……。


 こ、コイツ……。


 一瞬で良からぬ事を画策していることに俺は気づいた。


「(クククッ、これでようやく社長に少しは恩を返せる)」


 コイツがこんな顔をする時は決まって悪い時だ。

 つまり、亜人種で構成したグループで何か悪巧みを考えてるに違いねえ。

 なんだ? なにを考えてるんだカズ?!


「(この人には俺と美羽がさんざん世話になったし、これからイリスが世話になるんだ。これで恩を返せたとは思えねえけど、少しでも多く返さねえと)。では今から時間がある子達を集めてきますので、宜しければそこの喫茶店で待ってて頂けますか?」


「わかりました」


 社長と俺達は喫茶店に行き、カズは1人で集めに行く。

 ちなみに付いてきたのは俺、美羽、イリス。

 他の連中は特訓や討伐依頼に出ていた。


 15分後。


「お待たせして申し訳ありません。取りあえず彼らだけ連れてきました」


 連れてきたのは"ウォーリアバニー"の女の子、"エルフ"の女の子、"ドワーフ"の女の子、"キャットピープル"の女の子、"ハーピー"の女の子、計5人。


「どの子も可愛いですね~」


「そうでしょう? どの子も美羽に触発され、個人でダンスの練習もしている子達なんですよ。それに身体能力も高いのでその腕前は確かです」


「ほほ~」


 それからカズのプレゼンが止まることなく、菅原さんは終始目を輝かせながら話を聞いて、その子達と契約を交わすことになった。


「よかったな、これで時が来たら晴れて君達は芸能界デビューだ」


「「ありがとう御座います和也様!」」


 皆イキイキとした顔でお礼を言ってから、取りあえず解散していった。

 カズがマジでどんな悪巧みを考えてるのか心配だけど、怪しい動きをしていなかったからまだ良い。

 けど何時どこでどうなるかわかんねえから怖い。


「さて、それでは私はそろそろ行こうかと」


「すいません社長、長いこと引き留めてしまい」


「いえいえ、逆に有意義な時間を頂けて嬉しいです」


 それから俺達は菅原さんと一緒にゲートを潜って戻り、帰りを見送った。


「なあカズ」


「あ?」


「正直な話し、よかったのか?」


「なにがだ?」


「あの人を異世界に連れてったこと」


「あぁ、別に良いさ。お前も知ってるだろ? 俺と美羽はあの人にさんざん世話になってるんだ。このくらいの事をして、少しでも恩を返さねえとな」


「ふ~ん」


 腹の中で何考えてるのかわかんねえけど、取りあえずそう言うことにしておくか。


「(時が来たら……、俺はあの社長に迷惑をかけちまうしな……。だったらなるべく今の内に恩を返してえ……)」


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