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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第7章 近づく運命
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プロローグ


 11月24日


 話し合った結果、イリスは美羽が所属してる事務所にあえて入ることにした。

 しかも政府の御墨付きで。

 そうすることで下手に手が出せなくなるし、そこの社長は話が分かる人だから安心出来るって事もある。

 まあ他に色々と手を使えばそんな事にならなくて済んだんだけど、イリスが結構前向きで、美羽がいる事務所なら一緒に活動しても良いかもとかって言い出すもんだからいくらかモメたんだけどな……。


「活動名、そのままの名前にしようと思ってる」


「……マジでやるつもりなのかよ?」


「あ? マジだけど?」


 だからそのままの名前で、"Iris (イリス)"。

 これからは、「MIYA(ミーヤ)&Iris (イリス)」のコンビで活動するんだとか。


 ……またなんか色んな意味で大変な事になっちまった。


 でも俺達はこの後、恐ろしいのを目にすることになるからこんなのまだ可愛い方でしかない……。

 それは全てを憎む憎悪の塊で、(あらが)うことの出来ない、絶対的な死。

 その存在はどんな事よりも不平等の塊であり、平等がこの世に存在するならそれは死だけだと本当に思う。

 冗談抜きでアレは目を覚ましちゃいけないって……、痛感することになる……。

 ……俺は選択を間違ったのかも知れない。 

 そう、思える程の絶望が待ち受けていることを、この時の俺は知るよしもなかったんだ……。



 11月26日


「突然(うかが)ったりして誠に申し訳ありません」


「いや大丈夫ですよ。こちらそこ御足労頂いて恐縮です社長」


 その日の朝、夜城邸に美羽が所属している事務所の社長、菅原(すがわら)さんが挨拶にやって来た。

 どこか仏様みたいな少し中年太りした50歳半ばの人なんだけど、実は物凄く結構やり手で人望が暑い人なんだ。


「この子がイリスでして、俺の妹になります」


「ほう……、妹さん」


「イ、イリスです、よ、宜しく」


 ……固い!


 カズを見習ってか、イリスも丁寧に挨拶しようとするんだけど、見てて固いって感じた。


「ははは! そう固くならなくていいですよ? 普段通りの貴女を見せてください」


「え? あっ、うん、じゃなくてその、あの」


「なあに緊張してんだよ?」


「だ、だって兄様(にいさま)


「普段通りって言ってんだからそれで良いんだよ」


「……わかった」


「詳細は話せませんが、このイリスは俺の妹で間違いありません」


 緊張しつつも、カズを交えてイリスと社長との話し合いが始まり、そこに美羽も加わった事でイリスは少しずつ緊張が解けていった。


「俺はその、美羽姉と一緒に活動するとは言ったけどさ。正直芸能界の事とか全然知らねえし、憲明と付き合ってるからその事でなんか色々と言われたりしたら嫌なんだけど……、大丈夫……なのか?」


「ははは! 私は全然構いませんよ」


 きっと業界でそんな事を言えるのはアンタだけだろうな。


 芸能界、しかも歌手となれば誰と交際してるのかってスキャンダルになる。

 だけどこの社長の場合、交際大いに結構って人で、恋愛自由、活動自由をモットーにして成功した数少ない人で有名だ。

 人望も厚くてめちゃくちゃ良い人でさ。だからなのか、この社長が構える事務所のタレントは皆、この人を信頼しているから誰も裏切らない。


「恋愛、大いに結構! 人は誰だって突然誰かを好きになる時があります。それを止めるなんてナンセンス。運命の出会いを邪魔してまで稼ごうなんて私はしたくない。お金なんてね、稼ぎたい時に稼げばそれで良いんですよ。だからなのか、ここ最近はママさんタレントが多くなってきていますけどその分、若い子も増えてますし、美羽ちゃんも頑張れる時に頑張ってくれてますからね。そうやって皆で支え合い、頑張り合えるからウチのタレントさん達は皆売れてるんですよ」


 マジでスゲーんだよなぁ、この人。


 そういった考えの人だからなのか、実際多くのタレントさんがいるし、映画やドラマと多くの仕事が舞い込んでくる大手事務所なんだ。


「君を紹介された時、私はいてもたってもいられなくなって今日突然伺うって電話をしてしまいましてね。いやでも、話に聞いてたより本当に可愛いからビックリしましたね」


「それで社長、例の件なんですけど」


「本当に申し訳ありません。そちらに迷惑を御掛けしたくないのですが、先方がどうしてもと(うるさ)く」


 それから約1時間話をしてイリスは契約書にサインして、正式に事務所に所属することになった。

 ちなみに事務所の名前は"スマイル"。

 常に笑顔でイキイキとってのが社長のモットーらしく、そんな名前にしたんだとか。


「それにしても社長。実際問題周りからイリスの印象はどんな感じなんでしょうかね?」


「うん……、血眼になって探してますね。それにメディアでいろいろとヒントが流れたって事もあり、ここに来る途中でも何人か居られた様子でした。中には私も見たことがある方がおられましたが、その方は大手事務所のスカウトマンです」


「なるほど……。まぁ、ヒントもそうですし、探す時間もそれなりにありましたからね」


「えぇ。他にも、私の耳に入ってきた情報ですが。貴方を事務所に取り込みたいって所もあるようです」


「俺を?」


「はい。本来ヤクザと関わることはご法度でしたが、貴方の存在が余りにも大きく、又、政府関係者とも繋がりを持つ事は実際知られていました。しかし、表ではヤクザとして活動しているものの、本来はあちらの世界から紛れ込んでくるモンスターから人々を守っている組織と明るみとなり、貴方を事務所に所属してより大きな影響力を手にしたいと考えが出始めたんです」


 チッ、コロコロ(てのひら)を変えやがるな。


 でも菅原さんはそんな事をする人じゃないってことは俺達は知ってる。

 だって、美羽を見つけたのがこの人なんだから。

 本当はまだ、俺達が小さい頃から美羽に声をかけていた人で、ずっと猛アタックし続けてきた。

 でもカズが自分で家の事情を説明して、一時はしなくなったんだけど、日に日に美羽の歌に惚れ込み、気がついたら俺達の次に美羽のファンになっていた人だ。

 だから美羽やカズの事情をよく知った上で、菅原さんは2人を説得し、美羽は歌手デビューすることになった。

 周りにカズの存在がバレた時、そうとう言われたらしいけどそれでもカズを守ろうとしてくれたのもこの人で、だからこそカズは社長を逆に守るためにその実力で周りをねじ伏せる事にしたのもある。

 美羽だけじゃない。カズの良き理解者だからこそ、俺達は菅原さんを信用することが出来た。


「まっ、例え周りが何を言おうと、俺は社長しか信用してませんから俺がどっかになびくなんてことは絶対にありえませんけどね」


「ははっ、そう言ってもらえると本当に嬉しいですよ。では、そろそろ失礼すると致します。これからあちらの世界に行かれるのですよね?」


「えぇ、最近全然あっちの学園に顔を出していないので、そろそろ行かないと」


「私もあちらの世界には興味がありますが、皆さんの邪魔をする訳にもいきませんし。なにより、こっちでの仕事が沢山あるのでそこまでの余裕が正直ありませんからね」


 この人の場合、本当に裏表無いからなんとか行かせてえってなるんだよな~。


「クククッ、んじゃ今度行きますか?」


 お?


「宜しいのですか?」


「構いませんよ。社長には常日頃からお世話になっていますし、なにより俺は社長だからこそ信用してるんですから。ちなみにまだ時間はありますか?」


「はははっ、そう言ってもらえるだけ嬉しい限りです。えぇ、本日、午前の用事は空いてますがなにか?」


「んじゃこれから行きますか?」


 カズが笑いながらそう言うから、菅原さんはビックリして固まった。けど俺達も菅原さんなら案内してやりたいって思ったから、カズのその言葉を聞いて嬉しくなった。


 久しぶりの後書きです。

 皆様元気に御過ごしでしょうか? 季節は夏となりましたね。

 私は時折暑さでダウンしそうになったりしておりますwww。


 さて、憲明とイリスが付き合うことになったと思った矢先に不穏な出来事が始まり、そこから新章開幕となります。

 そして……、この章から混乱が広がる事になります。

 前の章は私としてはいたって平凡な内容になったと思うのですが、ここからまた空気がガラッと変わる所が御座います。

 イリスが言っていた"常闇"。それはこの物語の要となる物の1つですが、"常闇"とは永久に暗闇であること。永遠の闇。つまり光の届かない闇を指し示す言葉なんですね。

 その"常闇"と言うのが冥竜王の生まれ変わりである和也なのですが、その和也は現在、二重人格となっております。

 普段の和也は口が悪く、やることなす事がデタラメなのに頼りになる人格。

 では、もう一方の和也はどうなんでしょうか?

 怒り、憎しみ、悲しみが混ざった憎悪の塊とも言うべき人格であり、全てを破壊しようとしています。


 彼もまた被害者。


 されど加害者。


 さて? その憎しみの連鎖は何時訪れるのでしょうね?


 では、また続きを読み進めてください。

 読み続ければいずれ終焉が顔を出すことでしょう。


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