第19話 ラスト・ヴァンパイア
「おおぅ、生きてたか村中」
「生きてたじゃ無いっスよ! 火炎放射器の火で中は火事になってるんスよ?!」
寄生タイプに追いかけ回され、挙句に火炎放射器で火事になっている廃工場内を、必死で逃げてきたと村中って名前のどこかたより無さそうな人が御子神のおっさん達に泣きながら説明をし始めた。
でもカズにしてみればまだまだ甘いと言われ、村中の兄ちゃんはもうゴメンだと言って、おっさんの後ろに隠れやがった。
なんか情けねえなおい……。
カズにしてみれば寄生タイプのワームだけでなく、元凶である本体が出て来るまでそのまま中にいて欲しかったみたいなことを言いながら村中の兄ちゃんを睨む。
だからその目はやめてくれって、こっちまで怖くなるんだよ……。
でも流石に中にいる先生達が、建物が限界だと伝えて脱出して来た。
「お疲れさん、どうよ?」
カズは軽く労いの言葉をかけ、内部がどうなっているのか先生達に聞く。
「あらかたの寄生タイプは火炎放射器で燃やしながらアサルトライフル等で倒したわ。でも、本体がまだ出て来てないの」
すると、廃工場内で何かが崩れる音が響いてくる。恐らく柱に限界が来て、崩れ始めたんだろ、次々と音が鳴る。
「んじゃ、そろそろ出番かな?」
「アナタ、ただそう言わせたいだけでしょ? そんな格好に既に着替えちゃってんだから」
「もう疲れたんだよ、いい加減そろそろケリをつけようぜ、ケリをよぉ」
「まったく、アナタって子は」
カズと先生がそんなやりとりをしていると、突然カズはシャツの襟を引っ張り、首筋を先生に見せる。
なにする気だ?
「……わかったわよ」
そう言うと、先生はカズのその首筋に噛み付いた。
「な?! 何してんだよオイ?!」
なんでいきなりカズの首に噛み付くんだよ?!
「騒ぐなぁ、邪魔しねえで黙ってろ」
黙ってろってお前!
突然目の前で首を噛まれてるんだから、普通誰だって慌てるに決まってるよな? でも……。
……ん? 先生……、なんか飲んでる?
「え……、血を……飲んでる?」
はっ? 血を……、飲んでる?
美羽はその異様な光景に、両手を口に当てて驚愕した。
するとカズの首筋から血が流れる。
最初噛んだ時、先生は躊躇していたけど、もう我慢の限界だったのか無我夢中になって血を飲んでいる。
カズは右手を先生の頭にそっと乗せ、優しく自分の首にグイッと押し付けた。
暫くして先生は首筋から口を離し。次第に変化が出始める。
全身から、コウモリの様な形をした黒く凶々しいオーラみたいなのが解き放たれたかと思うと、黒い髪が根本から段々と銀色へと変わっていき、毛先だけがほんのり紅色に染まる。
「これで本気になれるだろ?」
「このお馬鹿……」
俺は思わず、先生が若干照れ臭そうな顔をしながら口元についた血を手で拭う姿に、ちょっとドキッとした。
そんな2人が見つめ合うと、美羽が面白く無くなさそうな顔をしている。
御子神のおっさんもそれを見て何とも言えなそうな顔で見ていた。
おっさん?
すると何かに気づいたのか、今度は驚いた顔になって何かを言おうとすると、犬神さんがおっさんを止める。
「それ以上、無粋な考えはよしてもらおう」
「っ! 犬神、テメェ……、知ってたのか?!」
ん? 知ってた? 何を?
「無論だ。そうか……、やはり気づいてしまったか、だがこの事を知っているのは極わずかだ。このまま黙っていて貰おう」
そんなやり取りをしていると。
「……熱いわ」
わぁお……。
そう言って先生は上のスーツとシャツを脱ぎ始め、黒いクロップドTシャツ姿になり、その綺麗なクビレとヘソを出す。
「ちょっ?! ちょっと先生?!」
美羽が顔を赤くして叫ぶけど、先生はそんな事を気にしていない。
それになんとなく解る。きっとこの後の事を考え、服を着ていては邪魔になるから脱いだんだろって思ったけど、ただそれだけじゃ無かった。
耳が尖り、左右の耳の上辺りに黒いコウモリの様な小さい羽が出てくる。そして腰からもコウモリの様な大きな翼。
この時俺は、ようやく先生が普通の人間じゃ無い事を知った。
「まさか……、吸血鬼?」
「美羽ちゃん正解。そう、私は吸血鬼。ヴァンパイアなの」
「うそ……、え……」
「皆、驚かせてしまって御免なさいね」
そう言って先生は優しい笑顔で微笑んで謝る。
でも俺は驚くのと同時に、その姿に思わず見惚れていた。
「まったくこのお馬鹿ったら、こんなことしなくてもちゃんと本気出せるのに」
先生はカズの頭を軽く小突くけど、うっすらと微笑む。
「何言っていやがる、本気で全力を出す為には誰かの血を飲まなきゃ出せねえだろうが」
カズは首の咬み傷から今だに出る血をタオルで軽く拭いた後、襟を直した。
「だったら腕で良かったじゃない」
確かに言われてみればそうかも。
「あぁ? 腕よりも首筋の方が効率いいだろうがよ? 首筋の方が心臓に1番近えんだからよ?」
あぁ、なる程な。
「あぁもう分かったわよ。でも、なんか恥ずかしいじゃない、私が変身する為とは言え、アナタの首筋に噛み付くのは」
頬を赤く染め、そんな風に恥ずかしがる先生に対し。
「はあ? そんなもん一々気にしてんなよ。もういい歳してんのに」
その言葉は流石に無いぞお前……。
案の定、先生は怒った。
先生はカズの頭を両サイドから、力を込めた拳でグリグリと押し付ける。
あ、あれは痛い……。
カズはそれをどうにか離そうともがこうとするが、悲鳴を上げながらそれに耐える。
「でも凄え、本当にヴァンパイアなんているなんてよ!」
でも俺はそう言って目を輝かした。それは俺だけでなく、一樹やヤッさんも一緒だ。
すると御子神のおっさん達や俺達に、先生がどんな存在かを柳さんが話をしてくれた。
「彼女の名は鬼頭朱莉さん、種族はヴァンパイア。現在我々が知っているだけで、ヴァンパイアは彼女だけになります」
その説明に全員が驚く。
「彼女はラスト・ヴァンパイア。つまり最後の生き残りであり、ヴァンパイア・クイーン。本来ヴァンパイアと言う存在はそれなりにいました。しかし、その多くが邪悪な存在だった為に、長い時間をかけて絶滅寸前まで追い込まれることになります。彼女はそんなヴァンパイアの中でも王族の血を受け継いでいる。その為、彼女には辛い過去があります。多くの者にその命を狙われ続けて来たのですから。しかし ーー」
「柳さん、その辺までにしてくれますか?」
話の途中で、犬神さんは遮った。
「柳さん、過去は過去、今は今だ。それに、その話はしないでやって頂きたい」
「俺も兄貴とおんなじだ、たのんます!」
昔何があったのか気になるけど、確かにそうだよな……。
犬神さんや御堂さんにそれ以上は話さないでくれと言われ、柳さんは危うく余計な事まで言いそうだったからか、逆に2人に謝罪し、先生にも謝罪した。
「本当に申し訳ありません鬼頭さん。ついつい熱く語りそうになってしまいました」
「ふふっ、なんか逆にスイマセン」
でも先生は逆に、苦笑いしながら柳さんに謝る。
「いえそんな。それに、今はまだ全てが終わってませんからね」
そう言うと、柳さんは燃え上がる廃工場を見つめる。
確かにまだ、終わってねえんだった。
「……まだ出てくるつもりは無いんでしょうか?」
燃え上がる廃工場が少しずつ崩れていく。
「何時でも出れる用意はいいか?」
カズは何かを感じ取ったのか、不敵な笑みを見せ始めた。
「私はとっくに準備万端よ」
先生がカズの右横に立つ。
「準備、万端」
今度は刹那って人格のナッチがカズの左横に立つ。
……今度から刹那の人格はセッチって呼ぶか。
〈ハアァァルルルルルル……〉
次に骸が3人の後ろに立つ。
「久しぶりに見れるな、御堂」
「はい、何時ぶりになるんですかねぇ」
「憲明、よく見ておくと良い、あれが我々の組織の中で最強と謳われるパーティだ」
犬神さんは誇らしげな顔でそう教えてくれた。
「最強の……パーティ」
カズ、先生、セッチ、骸。
この3人と1体が出れば、相手がどれだけ強かろうがタダでは済まない最強のチームだと。
確かに、絶対に敵に回したくないメンツだ。
本日も読んでくださり誠にありがとう御座います。
初めて読んだ方々にとってもっと、面白い、楽しい、ってなれますように頑張って書きますので、今後も宜しくお願い申し上げます。
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