第195話 2人で喧嘩
「行くぞ憲明」
「おう!」
俺達2人は岩場を駆け降り、降りたところでカズはゼイラムを伸ばしてガルマロスの体に巻き付いて引っ張ると、強烈な膝蹴りを首下に叩き込んだ。
「ひゅ~っ、軽快な動きするじゃないの」
でもガルマロスはビクともしない。
防御力が相当高いんだな。
そう思ったのは正しかった。
膝蹴りをして、ゼイラムを外したカズが俺の横に降りてくると、"鉄壁"ってスキルを持ってるらしいからあまり攻撃が通じなくなっているんだと話してくれた。
「だから情報教えてくれるのおせえんだよお前はよ!」
「うっせッ」
軽くそんなやり取りをしつつも、俺達は笑っていた。
だって俺としてはカズとこうして喧嘩するのは久し振りで楽しかったんだ。
「んじゃ、魔法攻撃といきますか!」
「いや待て憲明」
「ん? なんだよ?」
「ここは物理攻撃縛りでいこうや」
ニヤッとイヤらしい微笑みをしながらそんなことを言うカズに、俺はそれも面白いってなった。
「"鉄壁"に対して物理攻撃って」
ちなみに"鉄壁"スキルはあらゆる物理攻撃を、十分の一以下にするらしい。
ってことはレーヴァテインで攻撃した時に切れたのは、それだけレーヴァテインの切れ味が良かったって事だ。
やっぱカズが作った武器は一味も二味も違うから凄いって、実感出来る。
「しゃあねぇ、付き合うとしますか」
「あっ、ついでに ーー」
瞬間、カズはガルマロスの攻撃を受けた。
「あっ……、何してんのオマエー?!」
攻撃は地面を軽く抉る威力。
でも考えてみりゃあのカズがガルマロスの攻撃を避けきれなかったとは思えなかった。
案の定。
「人が話してる時は黙って大人しくしてろ、モグラが」
ダメージを受けているどころか、カズは闇色の霧状になってガルマロスの腕を登って行くと元通りになり、ハイキックを顔面にぶちこむ。
流石の"鉄壁"スキルでもダメージをかなり受けたのか、そのまま横転。
立派な角が見事に折れ飛んでいた。
"鉄壁"スキルを持ってる相手にそれを無視した破壊力は流石だね~。
更にカズはかかと落としをガルマロの腹に叩き込み、俺はレーヴァテインで何度も斬る。
でもレーヴァテインだと、よく切れる包丁で木のまな板を半分切るぐらいの手応えしかない。
打撃だとどうなんだろ?
レーヴァテインを鞘に戻した俺は、拳と足に炎を纏わせた"炎の拳"で攻撃を始めた。
「これなら別に構わねえだろ?!」
「クククッ、あぁ、別に構わねえぜ?」
「うっし!」
どっちかって言うと、カズは別に装備とかしなくても、圧倒的強者なんだから普通に勝つことが出来る。
ガルマロスは"鉄壁"スキルとその巨体を生かした攻撃を仕掛けてくるだけで、正直どうしてコイツがSランクなんだろ? って思ったりもしたけど。それは俺の感覚が鈍ってるからそう思えちまったことなんだ。
「どうした? その程度かよ? ククッ」
カズは蹴りだけしか攻撃していないのに、ガルマロスを圧倒してる。
俺はそんなカズに必死に着いていくけど、徐々に拳が痛くなってくるし、足も痛くなっていた。
コイツ、どれだけ体力があるんだ?!
俺とカズで相当なダメージを与えてるつもりだけど、ガルマロスは一向に疲れを見せない。
すると突然、ガルマロスは穴を掘って地中に潜った。
「地中からの攻撃に気をつけろ」
「わかった! それにしてもタフだなガルマロスって!」
「伊達にSランクじゃねえからな。基本的に奴は地中からの攻撃を得意としてる。"鉄壁"スキルのお陰で殆どダメージを受け付けねえし、地中からの攻撃が厄介ってこともあるからな」
「"鉄壁"スキル、ヤッさんに覚えて欲しいな」
「確かにな」
そこで俺の足元から衝撃が伝わってきたと思うと揺れてフラつき、急に飛び出して来て俺はおもいっきりタックルされて飛ばされた。
「うっ! クッ!」
「だから気をつけろって言ったばっかだろ馬鹿が」
うっ……せ!
そこから体を丸め、ガルマロスは転がりながらタックル。
なんとか両手でガードしたものの、その威力で両手が折れたんじゃって思いたくなるような威力だった。
「……くそっ!」
先に弱そうな俺を狙ってきやがったか!
ガルマロスは止まることなくずっと転がったまま暴れていて、俺を執拗に狙ってきた。
「おい、俺を忘れんなボケ」
そんな俺を庇おうと、カズは足でガルマロスの転がる回転を止めた。
「ついこの間までの俺だったら流石にSランクの相手をするのはキツかったけどよ。……今の俺にしたらSランクなんざ雑魚でしかねえんだよ」
そう言って、カズは"百鬼夜行"を始めるとガルマロスに何十何百って蹴りを浴びせる。
「オメェは何時まで休んでるつもりだ? あ? さっさと倒しちまうぞ」
「へっ、うっせ!」
そこから先、俺は無我夢中になり。
ようやくカズと2人でSランクのガルマロス討伐を果たすことが出来た。
結構しんどかったな……。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「まだ終わってねえぞ~?」
「……え?」
息を切らしてその場で寝っ転がると、カズにまだ終わってないって言われて起きた。
「剥ぎ取りがまだ残ってるだろ」
「あぁ……」
ガルマロスの攻撃を何度も受け、全身がバッキバキに痛いけど剥ぎ取りが残ってるからまだ休められない。
クソぉ、少しは休ませてくれよな……。
それからカズに剥ぎ取りの仕方をまた教えて貰い、なんとか終わらせたんだ。
剥ぎ取ったガルマロスの皮膚は分厚いけど意外と軽く。加工すれば良い武器や装備になりそうだ。
「せっかくだ、これを使ってヤッさんの大盾を強化してやるか」
「おおぅ、それは良いんでないの?」
「まだ俺の甲殻や鱗で出来た大盾を扱うのが難しいからな。だったら"ゴーレムシールド"をこれで強化してやった方が、今のヤッさんには良いだろうからな」
「まぁ確かに。んじゃ、ゴジュラスとノワールが戻ったらベースキャンプに戻るか? それとももう少し探索するか?」
「いや、ゴジュラス達が戻ったら一旦戻ろうぜ。剥ぎ取った素材を安全な場所に持って行きてえからよ」
俺はそれを了承し、ゴジュラス達が戻るのを待つことにした。
2匹が戻ってきたのはそれから20分後。
まず先に、ゴジュラスの報告を聞くと全然それらしい影は無かったそうだ。
だから俺達は少し早いけど、一旦ベースキャンプに戻ることにして、ヤッさん達が戻ってくるのを待つことにした。
それにしてもホント、懐かしい気分になれて楽しかったな。
またこうしてカズと2人でなにかモンスターを討伐に出掛けたいぜ。
13:00
「ただいま」
「お帰りヤッさん。どうだった?」
「うん、小型のモンスターが結構多かったかな。ノースはいなかったし未確認モンスターらしいのもいなかった」
「そっか~」
んで俺達は俺達で、ヤッさん達と二手に別れた後、何があったのか報告したら驚いて苦笑いを浮かべた。
「そっちはまさかのSランクモンスターか……」
「結構厄介なスキルを持っていたから大変だったぜ」
「でもカズがいたからなんとか倒せたんでしょ」
「うん、それが一番デカいな」
そう言って笑い合い。俺とカズは戦利品になる、ガルマロスの素材をヤッさん達に見せた。




