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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第6章 成長と進化
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第191話 ウチの子が有能過ぎる件


 翌日の11月11日。


 9:00


 そいつは突然現れた。


「カズ、アレは?」


「"ガハザド"。鳥型モンスターの中でも厄介な奴だ」


 "ガハザド"。

 4つの羽を持つ、首が異様に長くて馬鹿デカイ猛禽類型のモンスター。

 翼を広げたらだいたい30メートルにはなると思う。

 カズの話によると、対空装備や対空魔法とか無いと厄介なんだとか。


「カズだったら余裕だろ?」


「あ? んなもん俺とゴジュラスだったら即効地面に落としてやれるさ」


 ですよね~。


「でも俺は手を出さねえぞ? 勿論、ゴジュラスにも手を出させねえ」


 うんうん、そうですよ……


「え~ーー?!」


「当たり前だろ? あんな奴の1羽や2羽、俺達無しでも倒せるようにならねえでどうすんだよ? 今より強くなりてえなら良い相手でもある」


 くっそ! それもそうだけどよぉ、どう対策したら良いのかぐらい教えろよな!


「ガハザドのランクはB。やり過ごす事も出来るがそれじゃお前らの為にもならねえから戦え。あっ、ちなみにイリスは手助けしてやれよ? ララを強くしたいならな」


「了解だ兄様(にいさま)


「でもお前はララの補助をしてやるだけだからな? じゃなきゃララの為にもならねえ」


「解ってるってそのくらい」


 くそぉ、イリスはララのサポートだけかよ……。


 するとカズはガハザドに向けて小石を投げつけるとそれが頭にヒット。

 そうして俺達は強制的に、ガハザド討伐が始まった……。


「ちくしょぅ……、おいカズ! せめて弱点は?!」


「水と氷属性」


 そうじゃない……っ! それもそうだけどそうじゃねえだろ!


「どこを狙えば良いとかあるだろ?!」


「頭」


 ちくしょう……、聞いた俺が馬鹿だったよ。


 そうこうしてる内にガハザドが超低空飛行でこっちに向かっていた。


「お前にしてみりゃ楽勝な奴だろうけど! 俺達は初見なんだからもっと詳しい情報くれてもいいだろ!」


 そう言いつつ、俺は"炎の弾丸(ファイヤーブレッド)"で頭を狙って応戦した。


「ヤッさん!」


「はいよ!」


 カズ特性の"ゴーレムシールド"でガハザドの突撃をガードすると、トッカーがすかさずシダ植物みたいな尾でガハザドの頭を攻撃した。


<カアァァ!>


 カラスみたいな鳴き声だな。


「ノワール!」


 空高く逃げられる前に、出来るだけダメージを与えたい俺はノワールを呼んだ。


<ギエェェッ!>


 "砂粒操作"スキルを使った技、"砂粒槍(さりゅうそう)撃"。でもガハザドにはあまりダメージが無いのか、空へ逃げられちまった。


 水と氷属性の魔法とか今のメンバーで誰も持ってねえし、どうすっかな……。


<ファウ!>


 するとトッカーが大口を開けると、なにやら冷たい空気が集まり始めた。


 トッカーさん?


<ファウア!>


 口の中で凝縮(ぎょうしゅく)された冷気が、ガハザド目掛けて飛ばされると翼に当たった。


<カアァァ?!>


 "氷結弾(ひょうけつだん)"


 いつの間にそんなの覚えてたんだ?! そもそもトッカーって土属性じゃなかったか?!


「こんな時もあろうかと、実はトッカーに氷属性を覚えさせてたんだよね」


 やるじゃねえかヤッさん!


 後から知った話しだけど、ヤッさんがと言うよりカズが魔道書(グリモワール)を用意して、トッカーに覚えさせたんだとか。


「トッカー! 出来る限り"氷結弾(ひょうけつだん)"を撃ってガハザドにダメージを!」


<ファウ!>


 ヤッさんの指示で次々と攻撃するトッカーが、なんだか氷属性のガ○ラっぽく見える。


「落ちてくるよ憲明!」


「あいよ! んじゃ佐渡! ブチに出来るだけ捕まえてられるように指示してくれ!」


「うん!」


 今のブチでじゃガハザドとまともに戦えないだろうし、相性も悪いとは思うけど、ガハザドの動きを一時的に動けなくして貰えるとは思った。


「お願いブチ!」


<シュルアァ!>


 だって鳥と蛇ってさ、昔から相性が悪いって事で有名じゃん? だからホント、一瞬でも動きを止めておいて貰えると助かるってもんだ。


「イリス! そろそろララを動かしても良いんじゃねえか?!」


「言われなくても解ってるさ! ララ!」


<プゥ>


 可愛いかよ!


 おもいっきり地面に落ちてきたガハザドは目を回してるのか、バタバタと暴れるけど起き上がれないでいる。

 そこに、ブチが足に噛み付いて全身に巻き付き。ララも攻撃に出るけど。


<プゥ! プゥ! プゥ!>


「「…………」」


 垂れ下がった大きな耳でペチペチと攻撃するだけで、俺達は言葉を失った……。


 か、可愛すぎっ、じゃねえ!


「イリス!」


「なにも言うな!」


「はい! スイマセンでした!」


 俺は無心で走り、ガハザドの頭を狙って"炎剣・レーヴァテイン"を振りかざした。


「うおぉぉるぁぁぁ!」


 切るのと同時に炎が吹き上がる。

 でも流石ってくらいの切れ味ですらガハザドにしてみればまだ傷が浅かった。

 理由はガハザドの羽毛が思ってたよりも固かったからなんだ。


「ガハザドは伊達(だて)にランクBのモンスターじゃねえぞ~?」


 うるっさいデス!


「んなこた分かってんだよ! ノワール!」


 左手に砂を(まと)わせると、マジであのク○○ダイルみたいな三日月状の斬撃を繰り出して首を狙って攻撃した。


 カッコよすぎんだろ~~。


<カロロッロッロッロッ>


 うん、笑いかたは怖いけどな。


 そうこうしてる内にガハザドが体制を立て直すと、空へ逃げようとした。


「逃がすな! 撃ち落とせ!」


 カズに言われて俺は"炎の弾丸(ファイヤーブレッド)"、トッカーは"氷結弾(ひょうけつだん)"、ヤッさんは"岩石弾(ストーンブレッド)"でガハザドを再び地上に撃ち落とすことに成功した。


 「逃がすな! 撃ち落とせ!」ってセリフ、なんかカッコいいから今度俺も使ってみようかな。


「なにボサッとしてんだ! さっさと畳み掛けて倒しちまえよ!」


「あっ! はい~!」


 後ろからカズに怒られつつも、俺達だけでどうにかガハザドの討伐を成功させることが出来た。


「それにしても直ぐ空へ逃げようとするからめんどくさかったな」


「空を飛んでるタイプなんだから当たり前だろ」


「まぁな」


「んじゃ、取りあえず剥ぎ取りしちまえ」


「「は~い」」


 本来ならギルドに持って帰って解体して貰うけど。俺達はカズに剥ぎ取りの仕方を教わってるから無駄な金を出さずに済むし、食えるモンスターなら調理出来るからそこら辺のチームや冒険者、ハンターに比べても長期間依頼を受けれるって自負してる。


「カズ、コイツの(くちばし)って何かに使えるか?」


「勿論使える」


「夜城君、羽毛は?」


「武具なんかに使えるな。生息地が荒野とかだからホコリまみれで汚れてるが、洗えば綺麗な色が出てくる。あっヤッさん、翼は出来るだけ綺麗に切り落としてくれ」


「了~解」


「もし売るってなった時、なるべく綺麗な状態にした方が高く売れるからな」


 確かに、綺麗な方が見映えも良いだろうしな。


「……ところでカズさんや」


「あ?」


「ガハザドって食えるのか?」


「あぁ、旨いよ? 時折市場に出回ってるからな」


 それを聞いた俺達の目が猛烈に輝き、無事胃袋に収まってまた脳内世界に浸ったのは言うまでもない。

 ちなみにカズが作ってくれたのは鳥の唐揚げは勿論、焼き鳥にして美味しく頂きました。

 これが旨くてマジで震える。


 21:00


「こっちの夜空って本当に綺麗だよね」


「そうでしょ? だから美羽がチームの名前は夜空にしようって言ってさ」


「へ~、それじゃ夜明さんが名前を決めたんだね。なんだかこっちの夜空の方が私、好きだな~」


 ふっ、なかなか良い雰囲気じゃねえか。


 ヤッさんと佐渡が一緒に並んで座り、夜空を見上げてそんな話をしていたからなんだか良い雰囲気だった。


「俺もこっちの夜空が好きだな」


「イリスもか?」


「だってよ、向こうの世界はビルの明かりやらなんやらで星なんてろくに見えやしねえじゃねえか、だから俺もこっちの夜空を見るのが好きなんだよ」


 なるほどね。確かにこっちの方が綺麗に見えるし、天の川っぽいのも綺麗だ。


「ましてや本来の夜は、兄様(にいさま)が冥竜王として支配してる時間にもなるからな」


 そう言えばカズは"夜の灯火"って事だったな。

 灯火って事は、夜を明るく照らす光ってことでもあるんだろ?

 ……今思えば美羽も歌詞に入れて歌ってた事があったな……。

 その時にはもう知っていたって事だし、だから自然と歌詞に出たのかも……。


 そんなことを考えつつ、夜は少しづつ深くなっていった。


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