第189話 古城クエスト開始
11月10日
長い道のりの末、俺達五人はようやくマルギア城に到着した。
【 古城調査 】
調査依頼はここ、マルギア城近辺で未確認のモンスターが現れるようになり、その正体を突き止めること。
ちなみに現在そのマルギア城は立ち入り禁止エリアに指定されている。
ランクの高い者であるなら討伐、又は捕獲を成功させればその分の報酬も出るって話だ。
モンスターの特徴は全身に長い針が生えているらしく、かなりデカいって事。
そしてかなり臆病らしく、人の気配とかを察知したら直ぐ逃げるからよく解らないんだとか。
そのモンスターはマルギア城近辺で目撃が多いものの、逃げる時に立ち入り禁止エリアのマルギア城へ逃げていくから今回、特別依頼が出される事になった。
それと現在の古城内部の調査と、生態調査もしてくれって話だ。
うん、他の連中に受注される前でよかったぜ。
「よし、んじゃここで降りるか」
今回のメンバーはカズとゴジュラス。俺とノワール。イリスと"ファルピリス"ってウサギ型モンスターの"ララ"。ヤッさんはトッカー。佐渡はあの、"ディラルボア"の"ブチ"。
ノワール、ララ、ブチはまだレベルが低いから弱い。だけどゴジュラスやトッカーがいる。
ましてやゴジュラスは超攻撃型でありながら防御にも優れてるから、まず負けることなんてあり得ない。
ちなみにゴジュラスが車に乗せられないブチと、トッカーも一緒に重力を操ってここまで飛んで運んでくれたりもしてくれた。
「取りあえずどこか安全そうな場所を見つけたら、そこにベースキャンプの準備をするか」
<では主様、ここは私が見て参ります>
「んじゃ頼む」
それから暫くしてゴジュラスは、大型モンスターとかが入って来れそうにない場所を見つけて来てくれたから、そこをベースキャンプにすることにした。
ゴジュラスとブチが入る時、なんかスッゲー大変そうだけど。
しっかし、殆ど木とか生えてねえ場所だな。生えてるとしたら草とかぐらいなもんだし。
周りはジャングルじゃなく、荒野に近い。
来る途中にハイエナみたいなモンスターの群れがいたし、ハゲワシみたいな鳥型モンスターも飛んでいる。
どっちかって言うと、アフリカっぽい場所だった。
「そう言えば今思い出したんだけどさ。地下収容施設に"ノーフェイス"ってモンスターいたじゃん? なんか、邪竜教リーダーのノーフェイスと勘違いしやすいのに、なんでそんな名前で名のってんだろうな?」
そんな質問をするとカズは何時ものように、「んなもん知るかよ」って返してきた。
だってそうだろ? モンスターのノーフェイスなのか、邪竜教のノーフェイス、どっちなのか解らなくなるじゃん。
そこで俺はいくつかの仮説をたてた。
もしかしたらモンスターのノーフェイスって、邪竜教のノーフェイスが作ったモンスターだったりするのか? あるいは、モンスターの名前をそのまま利用してるのか?
まぁそんなことを今考えるべきじゃないんだけどな。
「そうだ佐渡、美羽からお前にってブチのステータスが写ってる羊皮紙貰ったから確認しておいてくれ」
「ありがとう」
「ララのもあるぞイリス」
「はい」
カズからディラルボアのブチと、ファルピリスのララのステータスが写っているのを受け取ると2人は確認した。
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ブチ (雄)
種族名 ディラルボア
Lv.40 ランクD
体力840 魔力120
攻撃500 防御320
耐性340 俊敏400
運75
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今のブチってスキルとか全然ないんだな。
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ララ (雌)
種族名 ファルピリス
Lv.20 ランクF
体力450 魔力100
攻撃110 防御20
耐性10 俊敏350
運80
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ララのステータスを見てなんだか懐かしさを感じた。
クロとかトッカー、ピノ、ダークスがやっぱりこのぐらいのステータスだったからさ。
「でも意外とブチのステータスが高いな」
「まぁディラルボアだからな。だがディラルボアは育てばグンとステータスが上がるし、一気にBランクになるから潜在能力は期待出来る。ファルピリスはどっちかって言うと俊敏が高いから偵察とかサポートにしても良いが、蹴り技を覚えるからきちんと育てたらなかなか面白いことになる」
「へ~、んじゃイリスと佐渡の育て方次第か」
そのモンスターによって育て方が一緒だったり、個体によって違ったりするから面白いよな。
「ところでカズ」
「ん?」
俺は小声でカズにあることを聞いた。
「最近、自我のほうは大丈夫なのか? ほら、前に少しづつ弱くなってってるって言ってたからよ」
「……正直キツいな」
前にカズが、日に日に自我が弱くなってるって言ってたから気になって聞いたんだ。
「……いつまで持ちそうか、解るか?」
解る筈ないのに俺がそう聞くと、「もって数ヶ月ってところだが、お前らのためにもなんとかしねえとな」って、困った顔で微笑むとそう答えてくれた。
どうにかしてカズの自我がと言うより、元に戻ってまた平和な毎日が来れるようにしねえと……。
「心配かけてすまんな」
「お前が謝ることじゃねえだろカズ。謝るのは俺達の方だ。お前には何時も何時も助けて貰ってばかりいるのに、俺達はいざって時にお前を助けてやれてねえ。だから今度は俺達がお前を助ける番なんだ」
「……ありがとよ」
……本当に、今度は俺達がカズを守らねえと。
そう思うと今以上にもっと強くなりたかった。
だから今はカズに甘えて特訓するしかないし、弱気になったら駄目だなって、改めて思えた。
「んじゃベースキャンプの設置も完了したし、どこから調査するか話し合うか」
そう言ってカズはマルギア城の地図を広げた。
「まずはその未確認モンスターがどこら辺で目撃されたのかチェックしねえか?」
「そうだな。そのモンスターが目撃されたのは此処と、此処。特に北側が目撃件数が多いな」
「んじゃまずそこに行って調査するか?」
「そうだな、取りあえず今日は北側を重点的に調査して、明日は二手に別れて調査してみるか」
それから俺達は車に乗って北側へ移動し、調査を始めた。
14:20
「それらしいのはいないね」
「そうだね、でももしかしたら何処かに隠れてるかも知れないから注意してよく見ないと」
佐渡とヤッさんがそんな話をしつつ、俺とカズも注意深く何かいないか探した。
「いるのは"ノース"と"ブォリイグル"ばかりだな」
"ノース"ってのはハイエナみたいなモンスターで、相当しつこい性格をしてるんだとか。
"ブォリイグル"はハゲワシみたいなモンスターで、弱ってる相手を見つけると集団で攻撃してくるらしい。
その2種類はどうも仲が悪いらしく、いつも獲物の取り合いをしてるって話だ。
「アイツらが近くにいるってことはもしかしたら今日はここに来てないかも知れないな」
「なんでだ?」
「あの2種類のモンスターはマジで性格が悪いからよ、本当に相手するのメンドくせえんだよ。未確認のモンスターは直ぐ逃げるって話だし、もしかしたら相手をしたくないなら来てねえのかもってな」
なるほど。
「まっ、お前らとパートナーにとっては良い相手だし、ちょっと討伐してこいよ」
と言われましてもどれだけ強いのか解らないんですけど?
そう思いつつ俺達3人と3匹は、ノースを討伐することにした。
俺が攻撃担当でヤッさんが防御担当、佐渡はまだ実戦経験とか無いからブチと一緒に援護をして貰うことにした。
んで、ノースは全部で7頭だ。
「ノワール、お前お得意の奇襲で1頭倒せるか?」
<カロッ>
俺の顔を見て、ノワールは不適な笑みを浮かべると姿を消した。
"隠密"
ノワールにはカメレオンやホタルイカとかのDNA が組み込まれてるから風景に紛れて姿を消す事が出来るし、ジャガーのDNAもあるから"隠密"スキルが使える。
しかもここは荒野で、至るところに砂とかもあるからノワールにとって独壇場にしやすい。
「佐渡はブチと一緒にヤッさんから出来るだけ離れないようにして、一緒に俺達のサポートをしてくれ」
「うん、わかった」
「よ~し……んじゃ、行くぞ!」
俺が飛び出すのと同時に、ノワールがノース1頭に奇襲攻撃を仕掛けた。
<ギエェェッ!>
<ブフォッ?!>
首もとに噛み付くと、ノワールはそのままノースの首を折って殺した。
いやぁまさに恐竜って殺り方しますねぇ。
でもっ!
「それがノワールの魅力だよな!」
「おぉ! 早瀬君のノワールカッコいい!」
「負けてられないね! トッカー!」
<ファウ!>
基本的にノワールが"隠密"スキルを使ったり、"砂粒操作"を使ったりしたからやっぱりノワールの独壇場になった。




