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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第6章 成長と進化
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第186話 シャノン


「それで? そいつは結局逃げたってことか?」


「たぶん……」


「たぶんかよ」


 俺達が戻ると、そこにはカズになんか怒られてる沙耶の姿があった。


「カズ、ちょっといいか?」


「あ?」


 話を割るようで申し訳ねえけど、俺はカズに、シャノンを捕まえて戻ってきた事を報告すると、シャノンはカズの前で怯えてるのか体を震わせながらその場に座った。


「久しぶりじゃねえかシャノン」


「お久しぶりです……」


「どうしたよ? なに緊張してんだ? あ?」


 そりゃ緊張するだろうよ。だって、今にもシャノンを喰い殺しそうな目を向けて笑ってんだからよ……。


 いやむしろ緊張より、恐怖を感じているって表現が正しいかもしれない。

 そんな中、俺はどうしてシャノンを捕まえて戻ってきたのか理由を話すと、カズから益々怒気を含んだオーラが出始めた。


「成る程、俺の魂がどうして2つに別れたのか、その理由を知ってるのか……。んじゃぁ……、さっさっと答えたほうが良いって事ぐらい分かってんだよな?」


 顔を近づかせて睨み付けるとシャノンは喋った。

 その指示を出したのは邪竜教をまとめてるリーダー、"ノーフェイス"って奴の指示なんだとか。

 聞けばその方法は単純だった。

 限界ギリギリまでストレスを与え、追い込むだけ追い込んで怒りを蓄積(ちくせき)させた後、そのノーフェイスって奴が魂を分ける。

 そして都合良く、そんな状態になる場面が来ることになる。

 それが、サーちゃんとの関係に亀裂が入ることになる日がそれだった。

 それを知ったノーフェイスが動いて、カズの魂が2つに別れる事になったんだけど、その方法をシャノンは知らないらしい。


 最悪なタイミングだったんだな……。


「んじゃそれを誰かがずっと監視してたのか? あ?」


「……はい、私が……、監視をしておりました……」


「って事は、その時から俺達の事とかも知ってたんじゃねえか」


「……」


 シャノンは答えることなく、ただ黙ったままだったけど、(しばら)くして静かに(うなず)いた。


 ちっ、悪趣味な奴。


「んじゃ知らないフリしてたってことじゃねえか。それを知らないフリして、カズに名前を聞いて、バウを操って襲わせてよぅ。訳わかんねえよ」


「それがボスからの指示でしたので……」


「ちっ。んじゃそのノーフェイスって奴がどこにいるか言えよ。そしたら速攻で俺達がブッ殺してやるよ」


 シャノンの胸倉(むなぐら)を掴んで俺は言った。

 でも、シャノンはノーフェイスが何処(どこ)にいるのか全く解らないらしい。


「知るとすれば、"ニコ"ですね」


 ニコ?


「そいつ、どんな奴なんだよ?」


「ニコは幹部の中でも変わり者でして、ボスの右腕とも呼べる女性です」


 女かよ。


「しかし、彼女はかなり警戒心が強く、滅多なことでは出てこないです」


「んじゃノーフェイスってのはどんな顔してんだよ?」


「ボスの顔を見た者は誰もおりません。御会いする際、ボスはいつも私が付けてる仮面と似た物を付けておられるので」


「どんな?」


「……御覧の通り私の仮面には両目の穴があるだけの白い仮面。しかしボスの仮面は両目の穴が無い仮面を付けております」


「なんだかややこしいな」


「はい、そう思われるのは当然です。私は組織のNo.2。つまり、ボスの左腕を(にな)っているからです。ニコが右腕と言う事は、ニコは組織のNo.1。ニコの仮面も白く、右目だけに穴が御座います。それで組織の者達は認識しております」


 マジでややこしいだろ。


「よぅシャノン、幹部は全部で何人だ?」


「……全部で、五人おります」


「んじゃ他の連中の名前と特徴は?」


 カズの質問に、シャノンは幹部の名前と特徴を素直に答えた。

 ニコとシャノンを除いた他の幹部は。

 "ロイゼン"。白と黒の仮面を着けた奴。

 "ヒルク"。獣っぽい仮面の奴。

 "カラー"。ピエロの仮面を着けた奴。

 んで、バニラ達が逃がしたって奴が、どうやらそのカラーって言うオカマヤローらしい。


「どうしてそんな奴をお前は逃がしちまうかなぁ……」


「ごめんなさい……」


「仕留めたと思う前に、ちゃんと確認しねえでどうすんだよ、あ?」


「はいぃ……」


 そこでカズは沙耶を怒るけど、幹部なんじゃ仕方ねえんじゃって思ったから、俺はそこでカズを止めた。


「だがよ憲明、せっかくの大物だったんだぞ?」


「まあまあまあ、それだけ向こうも逃げるのが上手かったってことじゃん。だからよ、な?」


「……ちっ」


 カズにしてみれば狙われてる訳だし、仕方ねえのかもしんねえけど、沙耶達はまさか邪竜教の幹部だって知らなかったんだからな。


「まぁ取りあえずそのシャノンを俺の前に連れてきたんだ。それ相応の礼を出してやらねえとな」


 するとカズは5千万もの大金を用意すると、俺達にってくれた。


「マジか? こんな金貰っても良いのかよ?」


「いいから渡したんだろ。少ないかもだが五人で分配してくれ」


 ってことは1人1000万……。


 俺としては連れて戻っただけなのに、それだけの金を貰えてマジで嬉しかった。


「おいシャノン。生か死、どちらか選べ」


「……死を、……私は死を選びます」


 おいおいマジで言ってんのかコイツ?!

 カズとしては聞きたいことを隠すことなく話したから、生きたきゃ生かしてやろうって考えで言ってるのかもしんねえのに、なんで死を選ぶんだよ?!


「良いんだな?」


「はい、ここへ来る事を選んだ時点で、私は死を覚悟しておりましたので……」


「はっ、良い度胸してんじゃねえか。えぇ? んじゃお望み通り死を与えてやるよ」


「ですがその前に、貴方様は竜のお姿になれると御聞き致しました。どうか死ぬ前に一度だけでいいのです。どうか、私にその竜のお姿をこの目に焼き付かせて下さいませんでしょうか」


 そんなことを言われてカズは黙った。

 死ぬ前にカズが竜になった姿を見て死にたい。俺達としては止めたいけど、止める事が出来ない。

 だってそれは、カズを敵に回した末路(まつろ)がどうなるのかを知ってるから。

 だからカズがどうするのか黙って待っていた。


「理由は?」


「……私の望みはただ1つ。冥竜王として復活して頂き、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ちょいまて……、もしかして……、もしかしてだけど。


「お前、生き残りなのか?」


「……はい」


 ってことは……。シャノンはいったいどれだけ昔から生きてる事になるんだ?!

 魔人って事だからかなり寿命が長いとは思うけど。


「顔を……、顔を見せてくれないか?」


「はい、貴方様だけになら」


 どうしてシャノンが仮面をずっと着けたままだったのかって言うと、御子神のおっさんが外そうとしたら「御願いですから仮面を取らないで下さい」って何度も言われたから外す事をやめたんだ。

 そしてカズが俺達に離れてくれって言うから離れ、カズがシャノンの仮面を外した瞬間。……カズは涙を流した。


 知ってる顔、なんだな?


「お久し振りに御座います、……陛下」


「……なんで俺だって知ってて会いに来てくれなかった」


「……私自身、どうすれば良かったのか解らなくなっていたのです」


「だったら何故、ヘカトンケイルなんてもんに手を出した? お前が望んでいる事と、どうして真逆な事をした」


「……私はどんな手を使ってでも貴方様に復活してほしかったのです」


「それで俺は()()()2()()、……()()()()()()


 カズは涙を浮かべると、改めてシャノンを強く睨んだ……。


「……ここへ来る途中に何があったのか御聞きしました。取り返しのつかない事をしてしまい、本当に申し訳御座いません」


 するとカズはシャノンを殴りたいって顔をしながら我慢した。


「……しかし、貴方様が竜のお姿になれると聞き、私は私の望みがもう時期叶うと思って今ここにいるのです。私の望みが叶うなら、今日(こんにち)まで生きてきた使命を果たせる。そう思えばこそ、私は甘んじて貴方様からの罰を受け入れたく……」


「……どうしてお前はそこまで ーー」


「全てはあの方の無念を晴らすために御座います!」


 今まで大人しくしていたのに、シャノンは急に声を荒げた。


「どうか御願いです! 記憶がお戻りなら冥竜王として今度こそ奴らを! 奴らを……」


 俺達からはシャノンがどんな顔をして言ってるのか解らねえ……、だけどこれだけは分かる。

 シャノンが泣きながらカズにお願いしているって事が。


 コイツはそうしてでも許せない事があったから、カズを冥竜王として復活して欲しいんだな……。


「ですからどうか御願いです。最後に……、私の我儘(わがまま)を許して頂けませんでしょうか……」


「…………分かった」


 そこでカズはシャノンに仮面を着けてやるとその場で"異界(アナザーワールド)"を展開して、俺達全員も入ることになった。


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