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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第6章 成長と進化
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第185話 道化師<バニラside>


「ふむ……、強いな」


 私は憲明達がシャノンなる者と合戦(かっせん)している頃。一樹、桜、沙耶、澤崎の五名で、道化の仮面を着けた不届き者と対峙(たいじ)していた。


「ほほほほほほほっ、いくら強いと言っても、当たらなきゃ意味ないわよね?」


 ひょろひょろで赤いスーツなる物を着た、男? と思われる者だが、その喋り方に寒気を感じる。


「ぬぅ、この変態め」


「「(アンタが言うなよ!)」」

「(え~~……)」


「誰が変態よ! そう言うアンタも人のこと言えないんじゃないの?!」


「なにをぬかす、これが私の正装なり! 見よ! この肉体美! ぬん! ぬん! ぬ~ん!」


 あらゆるポーズでこの肉体美を見せつけた。


「これこそが私の盾であり最高の武器。極限までおのが肉体を追い込み、強化することによって出来上がった至高(しこう)の美よ」


「なによ! パンツいっちょしか()いてないただの変態じゃない! ……ったく、私はね? 美を追求する探求者よ? そんなアナタに美学を語られても心がひとっつも揺れ動かないんだからね?」


「男だか女だかも解らぬ下賎(げせん)の分際で、私を愚弄(ぐろう)してくれるな」


「誰が下賎(げせん)よ! 腹立つわ~も~! オカマをなめんじゃないわよ!」


 そして私の拳とオカマ? の拳が激しくぶつかり合う。


 ぬ? なかなか出来る。


「あまりにも華奢(きゃしゃ)な体型をしていたからついつい(あなど)っていたが、貴様、なかなか強いな」


「失礼ね! レディーに向かって!」


 鞭のごとく次々と繰り出される蹴りを、私はおのが肉体と言う盾で全てを受け止め、隙を見て反撃するために拳を握った。

 だが、そやつは途中で後ろに大きく飛び退()いた。


「感のいい奴だ」


「ほほほほほ、伊達(だて)()()()()()()()()()()()()()


 そう、こやつは邪竜教なる組織の幹部。

 話によれば、カズヤの命を狙っている不届き者だと言うではないか。

 そして、もうひとつの魂と1つにするために、カズヤを一度殺し、世界に混乱を招こうとしている。


 ぬぅ、許すまじ。


「貴様らは何故(なにゆえ)、カズヤをそうまでして冥竜王として復活させたいのだ?」


「そんなの決まってんじゃな~い」


「ぬ?」


「私はね……、世界がどうなろうと知ったこっちゃないのよ。ただ面白くなればそれでいいのよ」


 ……許せん。


 私はいつぶりになるか解らぬ怒りが込み上げた。


「そんな幼稚(ようち)な考えで、あの者を傷付けると言うのか貴様は」


「……幼稚(ようち)ですって?」


 その時、その者は憎悪(ぞうお)が混じったオーラを放った。


「アンタ達には解らないでしょうよ。いぃえ……、解ってたまるもんですか」


「解りたくもない。貴様達のやってる事は世界に渾沌(こんとん)を振り撒く、身勝手な行動なのだからな」


「黙りなさい変態!」


 黙るのは貴様だ。

 あの者が、カズヤがどれだけ悩み苦しんでいる事か……。貴様らの様な者がいるからカズヤは苦しむ羽目になっているのだ!


「これより正義を執行する」


 私も伊達(だて)にカズヤ達にシゴかれておらんよ。(ゆえ)に、私は道化仮面のクズに正義を執行する事を告げた。


「なにが正義よ。この世に正義があるなら……、私はここに立ってないわよ!」


(うな)れ我が拳。正義をもって悪を貫く為に。喰らえい、"正義の(クラッシュ・オブ・)衝突(ジャスティス)"」


 進化した我が拳に砕けよ。


 私は右拳に魔力を集め、全力の正拳突きを放った。


「な~にが正義よ! 正義なんてもんはそこらのゴブリンにでも喰わせておけばいいのよ!」


 その時、私は以前と同じ光景を目の当たりすることになった。


「アンタの正義ってのは、そんなもんなのね?」


 彼奴(きゃつ)は私の全力を、左手一本で受け止めた。

 それは以前、カズヤが私の全力を受け止めたような感覚だったのだ。


「ぬぅ……」


「納得できない。そんな顔ね」


 当たり前だ。何故、私の全力を片腕一本で防ぐことが出来る。それも体がひょろっひょろで華奢(きゃしゃ)そうな者に。

 カズヤなら分かる。カズヤはこれまで出会った者の中でも、正に最強と呼ぶに相応(ふさわ)しき強者であり、納得出来る功績を数多く持っている。

 それなのに何故だと疑問に思い、(いきどお)りを感じたのだ。


「アンタに私は倒せないわよ?」


「ぬかせ」


「なら、試してみることね」


 だが、宣言通りに私の攻撃はことごとく通用しなかった。


 何故だ……、何故通用しないのだ……。


「ほほほ、アンタみたいな脳筋に私が何をしてるのか理解出来ないでしょうね」


「ぬぅ……」


 不愉快だが確かに理解出来ないでいた。

 彼奴(きゃつ)は、私では到底理解出来ぬことをしていることしか解らぬ。

 それが不愉快でならなかった。


「ね~バニラさ~ん、私と交代してよ~」


「ぬ?」


 その時、不適な笑みを浮かべて沙耶が交代しろと言ってきた。


「たぶんさ~、私なら勝てると思うんだよね~」


 馬鹿な、今の私ですら勝てない相手に勝てると思うだと?


「誤解されないように言っとくけど。私、アイツが何かのスキルを使ってるってのは解ったの。だからその答え合わせをしたくてさ~」


 ふむ、答え合わせをしたいなら致し方ない。ここは譲るとしようか。


「だがその答えが間違っていれば」


「大丈夫大丈夫、きっと合ってるから」


 ふむ、心配は無用だな。

 チーム"夜空"の中で、カズヤの次にと相手が次にどう動くのか常に把握出来るように訓練をしているからな。


 沙耶は援護タイプであり、戦闘となると常に周りを見るようにと、カズヤから教わっている。

 今回、沙耶が選んだパートナーは"ミスト・ドラゴン"のジーク。

 私はパートナーが()らぬが、パートナーが()()ないではその戦法が変わるから面白いものだ。


「さ~て行こうかジーク」


<グルル>


「あらあら、そんな可愛らしい顔を傷物にしたくないけど、(いど)んでくるなら容赦 ーー」


 言い終わる直前、沙耶は"ガル"なる生きたモーニングスターを投げ、大爆発を引き起こした。


「あっれ~? ごめ~ん、痛かった~?」


「この……、クソガキ~……」


 私が全力を出しても通用しなかったと言うのに、まさか沙耶の一撃が入るとは。


 大爆発によって道化の仮面が一部破壊され、右目の部分だけが露出(ろしゅつ)した。

 その目は誰が見ても憎しみに染まった目をしている。


 ぬぅ、そうまでして一体何を憎んでいると言うのだ。


「でも失態だわ」


 一瞬だが沙耶に怒気を放っていたものの、道化は瞬時に冷静になった。


「今の一撃で認めてあげる。アンタは私の天敵のようね」


「あは~」


 口の両端(りょうはし)を上げ、沙耶は戦闘態勢に入るとジークに指示を出す。


「"霧の監獄(フォギィ・プリズン)"」


 "霧の監獄(フォギィ・プリズン)"か。また厄介な指示を出したな。


 だがただの霧の監獄と言う訳じゃない。

 それは五感を狂わせ、攻撃も()ねた魔法。

 一度(とら)われれば脱出は困難を極める。

 そして我は1つ。危険だと思い始めている事があった。


「あっははははは~!」


 それは沙耶が、度々(たびたび)豹変(ひょうへん)する事が多くなったことだ。


「ジーク~! "霧の槍(フォギィ・ランス)"!」


 そう指示を出し、霧に包まれた監獄の中で次々と霧のランスが道化を襲い、沙耶はガルを使って更に追撃をした。


「"爆裂の(エクスプロージョン)(レイン)"!」


 全方位はジークによる霧の監獄、その上からガルによる爆裂攻撃の多重攻撃。


「あっははははははは~!」


 正直、今の沙耶は援護タイプとは無縁の、"凶戦士(バーサーカー)"タイプと言えるな。


 それだけ沙耶の変貌(へんぼう)ぶりが恐ろしくもあったのだ。


「死ね! 死ね! 死ね! 死ね死ね死ね死ね死ね! 死ね~! あっははははははは~!」


 いったいどれだけの魔力を注ぎ込んだと言うのか、ガルによる攻撃が終わりを見せない。


「あは~、もう、死んだかな~?」


 普通なら耐えられる者等居よう筈が無い。

 しかし沙耶はトドメと言わんばかりの技を、我々に見せつけた。

 ガルを手元に戻し、魔力をこれでもかと言わんばかりに注ぎ、沙耶は風魔法によって空高く飛び上がると再びガルを投擲(とうてき)した。


「吹き飛べクソオカマ。……"流星擊(メテオインパクト)"」


 ガルを(くさり)から解き放ち、そのガルを中心に風魔法を(まと)わせると、遥か上空から道化に向かって攻撃。

 その光景は正に流星の如し。

 一直線に道化へと向かっていくガルは流星となって落ちていく。


「ジーク~! 退避(たいひ)~!」


 沙耶のそんな声が聞こえると、ジークは道化から離脱(りだつ)し、防御姿勢となった。


(みな)! 衝撃波に備えよ!」


 私はそう叫び、(みな)で防御しようとした時、私の目にボロボロになった道化が一瞬見えた。


「あっ」


 その一言の後、道化に流星となったガルが直撃すると大爆発が起こり、周囲一帯が吹き飛ばされた。


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