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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第6章 成長と進化
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第184話 怯え


 イリスの超強力なスキル、"粒子砲"で周りにいたアンデッド達が次々と倒されていくから俺達の出番が正直少ない……。


「いくら集まろうが俺の敵じゃねえんだよ! 雑魚共が!」


 笑いながら倒すイリスが怖い。

 でもそんなイリスに惚れてる俺は何も言えず、美羽に援護を頼んだ。


「美羽! ステラに光魔法!」


「うん! ステラ! "聖なる雨(ホーリーレイン)"」


 空高く翔んだステラの魔法で、アンデッド達が消滅していく。


「ほう。先程の光はこれだったんですね」


 どっかで見てたんだろ。

 関心を示すシャノンもステラの光魔法を浴びるけど効果が無い。


「闇属性かと思っていたのですが、いやはや見た目で判断してはいけませんね」


 するとシャノンが指を鳴らすと、地響きをたてながら50メートルぐらいはある巨大なモノが地中から姿を現し、イリスが「見るな!!」って大声で叫んだ。

 でも遅かった。


「……なんで」


 俺はその一言だけ言って固まった……。


「おや? コレを知っているのですか?」


「ちっ! まだ……、兄様(にいさま)がいなかっただけでマシ……か……」


 現れたのは俺達でも知ってる……、ある意味モンスターだった……。


「……()()()()()()()


 それは悪夢としか言いようが無かった……。

 だってヘカトンケイルって言うのは、生きた人間を材料に創られたモンスターなんだからよ。


「な……んで……」


「なんでもクソもあるか。コイツが、バルメイアにヘカトンケイルの作り方を教えた張本人なんだからよお!」


 そう言ってイリスはドギツイ目でシャノンを睨み付けた。


 コイツが……、バルメイアに……。


「……ッてめぇがぁ、てめぇのせいでぇ、カズがどれだけツラい思いしたかぁ、……分かってんのかよーー!!」


 俺は全力で走った。

 走って、シャノンの顔面をおもいっきり殴り飛ばしたかった。

 その後ろから美羽と志穂ちゃんの2人が追いかけて来る。


「援護は任せろ!」


 御子神のおっさんとイリスがヘカトンケイルに対し、銃を撃って俺達の援護をしてくれる。

 志穂ちゃんは何があったのかその現場を直接見ていた訳じゃねえけど、カズが八岐大蛇(ヤマタノオロチ)になった時にいたし、終わった後に何があったのか知ってるから勿論激怒してる。

 それはおっさんも一緒だ。その時はいなかったけど、俺達はおっさんに何があったのか全部話をした。

 おっさんとか、秘密を知った人になら話をしないとマズイかなって思ったからよ。


「憲明! 突っ込むのは分かるが判断を誤るなよ?!」


 おっさんは俺が暴走しないように言ってくれてると思って、なんだか嬉しかった。

 でも俺を心配してくれるよりも、美羽を心配してほしかった。

 美羽の目が完全に()わってて……、俺より激怒してる。

 瞬間、美羽の姿が消えたと思うと、ヘカトンケイルの(ふところ)に入って攻撃の構えをしていた。


「……ごめんね?」


 "飛竜脚(ワイバーン)"


 美羽渾身の"飛竜脚(ワイバーン)"が、巨大なヘカトンケイルを宙に上げる。

 きっと、カズから"竜種の種"スキルを貰ったお陰なのかも知れない。


「ステラ!」


<キュルルルルル!>


 そこに一切の迷いが無かった。


「合わせてステラ! "影の領域(シャドーゾーン)"!」


 美羽が即座に"影の領域(シャドーゾーン)"を展開すると、ステラは宙に舞い上がったヘカトンケイルの真上まで行って何か、光魔法の魔方陣を展開した。


「光と影……、(まじ)わりし銀影百騎(ぎんえいひゃっき)(ツルギ)の舞……。"光影逆鱗華(こうえんげきりんか)"」


 ここで新技か!


 美羽とステラの合体技、"光影逆鱗華(こうえんげきりんか)"。

 下から華の形をした影の刃。上から華の形をした光の刃。

 それが入り乱れてヘカトンケイルを次々に切っていくと1つの球状になってヘカトンケイルを包み込み……。大爆発して木っ端微塵(こっぱみじん)にした……。


「……まだまだだな」


 あれでまだまだなのかよ……。


 それ以前に、俺は美羽と一緒に特訓してるって言うのにいつそんな新技を作る時間があるんだって不思議に思えたし、前なら美羽でも歯が立たなかったヘカトンケイルを、1人で倒したことに驚いた。


「凄まじい……。まさか私が直接作り上げたヘカトンケイルを、こうもあっさり倒すとは……」


「次は……、アナタの番だよ?」


 そう言って、美羽はシャノンに"彼岸花(リコリス)"の切っ先を向けて冷たい視線も向けた。


「カズを傷つけた罪。……(つぐな)って!」


 素早い動きで美羽は彼岸花(リコリス)の鋭い刃を、シャノンの(のど)目掛けて振るおうとした。


「降参します」


「え?」


 シャノンは間一髪、彼岸花(リコリス)の刃が(のど)に軽く触れている状態で、降参って宣言した。


「なっ、え? え?」


 あともうちょいってところだったのに、突然シャノンがそう言ったから当然、美羽は困惑した。


「な……、なんで?!」


「いやあ参りました。ヘカトンケイルがまさかあんなあっさりと倒されるとは思ってもいませんでしたし、敵に回すのは得策じゃないと判断致しましたので」


 心の底から本当に残念って感じで、シャノンは両手を軽く上げたまま、変な動きも見せない。

 そのままシャノンは御子神のおっさんに取り押さえられると、両手を後ろにして手錠(てじょう)を掛けた。


「テメェらしくねえじゃねえか、あ? ()()()()()のシャノンさんよぅ?」


「邪竜教幹部?!」


 イリスはシャノンの胸倉(むなぐら)を掴むと、凄味を利かせて睨み付けた。


「致し方ありませんよ。まさか、直接的では無いにしましても、間接的にはあの方を傷つけた訳ですからね。それに、先程言いましたように今の貴女方を敵に回すのは宜しくないと私が判断致しましたので。それよりもです。どうして貴女がその方々と御一緒に行動をなされているのですか? 今の貴女は凶星十三星座(ゾディアック)では無いにしても、あの方直属であり、常に裏で動いていた筈では?」


「うるせぇ黙れ、ブッ殺すぞテメェ……」


「ふふふ、私を殺すのは結構ですが、大切な情報を逃すことに成りかねませんよ? それを、あの方が知ったらどうなるでしょう?」


 コイツ……、なに考えてんだ……。


 美羽と志穂ちゃんは黙ったまま、シャノンをいつ斬り殺してもおかしくない雰囲気を出してるからおっさんがその近くで冷や汗をかいている。

 だけど、そんな事を言われたイリスは苦虫を噛んだみたいな顔になると、その手を離した。


「コイツを連れて帰る」


「ちょっと待ってよイリス。カズの所に連れていく気なの?」


 当然、美羽が止めてきた。


「情報があるなら今聞き出して殺せばいいじゃん」


「それが嘘だろうとなんだろうと、コイツを連れて帰る」


「冗談言わないでイリス。コイツは、カズを悲しませた原因を作った張本人なんでしょ? だったら今ここで殺しておけばニアさんや(ゆう)の為になる」


「それを出されると……」


 さすがのイリスでも、2人の名前を出されて困った表情で(うつむ)いた。

 俺だって思うところはある。けど、なにかしらの情報があってそれを話す気があるならカズの前まで連れてってもいいんじゃねえかって思えた。


「美羽、お前の言うことも分かるけど、コイツがなにか情報を持ってるって言うなら連れていこうぜ」


「なに言ってんの? ノリちゃんはコイツがしたことを許せるって言うの?」


「許せる訳ねえだろ。でも、マジでなにか情報を持っていて、それをカズに教えるって言うなら連れてったほうがいいだろ」


「でも!」


「考えてみろよ美羽。今のあのカズに勝てる奴がどこにいる? "精神支配"ってスキルが厄介そうなのは解るが、あのカズにそれが通用するとお前は思ってんのか? アイツはあれでも……、冥竜王の生まれ変わりなんだぞ? それにこの間アイツが見せてくれた竜の姿を見てどう思ったよ?」


「? 竜の……姿?」


 その時、仮面を付けてるから解らねえけど、シャノンが確かに怯えたって雰囲気を俺は感じた。


「では……、貴殿方はあの方のお姿を」


「見たぜ? そんで嫌ってくらいの恐怖を感じたぜ?」


 俺がそう言うと、シャノンは全身を震わせながら本格的に怯えだした。


「ありえない……、いくらなんでも早すぎる……。何故、()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」


「今……、何て言った?」


 コイツは知ってる。

 カズの魂が2つに分離した理由を知ってる、そう確信した発言をシャノンは喋った。


「……死を覚悟した上で、あの方に謁見(えっけん)(たまわ)ると致しましょう……」


 そこで御子神のおっさんがシャノンの胸元を掴むと。


「上等だ、洗いざらい喋って貰うぜ?」


 刑事(デカ)の目をしていた。


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