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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第1章 終わりの始まり
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第17話 釣り<犬神side>


 おかしい……、報告では寄生(パラサイト)タイプもいた筈。いや、寄生(パラサイト)タイプのワームもいる筈だ。それが見当たらない……。


「こちら犬神。御堂、そっちで寄生(パラサイト)タイプのワームを見たか?」


 どこか不穏に満ちた感覚がする、なんだ?


『こちら御堂。いえ、全然見ていません』


『こちら鬼頭。犬神も気づいた? 何かおかしいわよね?』


「こちら犬神。はい、なにか変です。ここに来るまで1匹も見ていません」


 目の前は火炎放射器による火の海。その中で中型ワームは火に焼かれて悶え苦しみながら燃えている。

 なんど目を凝らしてもそこにいるべき姿が見えない……。


『今同じフロアにいるわよね? 今そっちに行くわ』


『こちら御堂。俺も兄貴のとこに行きます』


「こちら犬神。では今から発煙筒で居場所を教えます。お手数お掛けして申し訳ありません」


 その場で発煙筒を出し、自分が何処にいるのかを教えると、数分後に二人が駆け付けた。


「2人共どう思う?」


 合流して早々、朱莉さんはそう聞いてきた。


「何処かに隠れているのでしょうか?」


「ですが兄貴、隠れると言っても、俺達は全ての部屋を火炎放射器で燃やしながらここに追い込んで来たんですぜ? どこに隠れるって言うんです?」


 確かに御堂の言う通りだ。隠れるにしても何処に隠れる場所があると言うんだ……。


「御堂の言う通りよね……。こちら鬼頭。カズ、聞こえる?」


『こちら和也。あぁ、聴いてた。本当に1匹も見てないのか?』


「えぇ、誰一人見てないわ」


『……なんかヤバイ気がするな。一旦引き上げてくれるか?』


「了解。全員聴いてたわね? 直ちに作戦を中止し、一旦外に出るわよ」


 しかし、それは時既に遅しだった。


「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」


「今の叫びは誰?! 何があったの?!」


 その後も、何人もの部下達の叫び声が立て続けに響き渡る。


 クッ! やはり何処かに隠れ潜んでいたか?!


『おいなんだ今の叫び声! 犬神! 御堂! どうなってる?!』


「こちら犬神。わかりません、今から一旦いったん 撤収(てっしゅう)するところに部下が襲われてる様です!」


『チッ! 今すぐ戻れ!』


 若の指示に朱莉さんはその場にいる全員に向け、大声で撤収(てっしゅう)するよう指示を出し。それから数分後、我々は息を乱して外へとどうにか辿り着くことが出来た。


「何人足りない?」


 若の問いかけに、我々が連れていた班の人数を数える。

 朱莉さんの班で5人。御堂の班で2人。俺の班では0人。合計7人が消えていた。


「どこに消えたか分かるか?」


「いいえ、とにかく急いでいたものだからそこまで見てなかったわ」


 朱莉さんは暗い顔で俯きながらそう応えるしか出来ないでいた。


「誰か消えるとこを見てる奴はいないのか?」


 若の問いかけに、誰も応える事が出来ない。


「どうするよカズ、下手にまた中に入ったら、犠牲者が増えるぞ」


 御子神がそう言うと、作戦を立て直す為に若は目を(つむ)り考え込む。

 その間、朱莉さんは俺と御堂と共に、どこか見落とした部屋が無いかを話し合い。無事に出て来た部下と自衛隊はその間、武器の点検をさせた後、(しば)し休憩を取らせることにし。若は危険を承知で、一度お嬢に偵察して来る様に指示を出される。


 それから暫くした後、お嬢から連絡が入った。それは、消えた部下達が天井から吊るされているのを、暗視ゴーグルで確認出来たとの報告だった。

 若は部下達に意識があるのかを確かめさせると、お嬢から最悪な報告を我々は聞く事になる……。

 それは、生きてはいるが、寄生(パラサイト)タイプのワームが部下達の耳の中や口から姿を出していると言うものだった。

 形態はワームに似ているが、大きなハサミの様な(あご)を持っているとのこと。そんなワームが体の中から出て来ると言う事は、つまりそれは手遅れを意味していた。

 ……そこで若は、お嬢に苦渋(くじゅう)の選択を言い渡す。

 それは、これ以上部下達を苦しませない為にも、楽にしてやってくれと言うものだった。例え生き残れたとしても、それは既に死んでいる者と一緒。つまりゾンビの様なものだ。耳から出て来ていると言うことは既に思考を奪われ、ただ死ぬのを先延ばしにされているだけ。

 お嬢は若のその頼みを聞く事を選択し。持っていた銃で部下達の眉間(みけん)に銃弾を一発ずつ放ち、命を奪う。

 寄生していた者が完全に死んだ事で、寄生(パラサイト)タイプのワームはもがき苦しみ。耳の穴から出て来るのもいれば、口の中から出て来るもの、腹を食い破って出て来るのもいるそうだ。

 出て来た寄生(パラサイト)タイプは天井へと移動。そこは天井の壁が崩れ、鉄筋が丸見えの状態になり。お嬢はその天井裏に潜んでいると確信すると、再び外に出て何を見たのか改めて若に伝える。


「成る程、それで納得した。だからあれだけ追い込んでも見つからなかったのか」


「チクショウ! 天井まで見ていなかったぜ!」


 俺は冷静を装ってそれを受け止め、御堂は自分の左掌(ひだりてのひら)を右手で殴り、怒りを(あらわ)にする。


 悔しいのはお前だけじゃないぞ、御堂。


「落ち着け御堂、居場所が分かった以上、犠牲になった奴等の弔い合戦をするぞ」


「了解です兄貴!」


 殲滅してやる。若がテイムなさったギル以外のワームを駆逐してやるぞ!


「まて2人共」


 だがそれを若が止めに入られた。


「分かったは良いがどうやって引き()り出すつもりだ? 火炎放射器や手榴弾で攻撃して落とすつもりか? それとも誰かを囮にして引き()り出すのかよ?」


 うっ! 俺としたことが……。


「ん?」


「囮?」


 ……囮?


 その言葉に、御子神と柳は何かを思い出したようだ。


「………あっ」


 若も何かを事を思い出した御様子。

 そこに柳がとある人物の肩に手を乗せて告げる。


「さぁ、貴方の出番が来ましたよ」


 それは村中と言う若い刑事だった。


「……はえ?」


 皆んなの熱い視線が村中に集まる。


 その村中がどうしたと?


 どうやら村中を生き餌として使い、ワームを釣るという事らしい。

 その後、村中は絶対に嫌だと泣き叫ぶ。何かあったら責任を取ってくれるのかと。こんな事、上が絶対に許すはずが無いと(わめ)く。


 若がやれと仰るのだからしのごの言わずにやれ……。


「喚くな、鬱陶(うっとお)しい」


 若はそう言って泣き喚く村中を騙せる。


 流石です若、一睨みでその小僧を黙らせるとは。


「お宅さあ、骸を見た時に叫んだよなあ? そのせいで俺の部下は余計な仕事が増えたんだぞ? お宅が叫んでなければもしかしたら親玉が隠れなかったかも知れねえんだぞ? だから何かあったら責任取れって俺ぁ言ったよなぁ? その責任を果たす時が来たんだ、つべこべ言わずにさっさと行けこのボンクラがぁ」


 ドスの効いた言い方で若は更に村中を黙らせる。今にも泣き叫びたそうな村中を若がまた、「大の大人がみっともねぇ」、と仰り、村中を追い込むだけ追い込んで行く。


 流石の御子神達も若の顔とドスの効いた仰りかたに怖気付いてしまっているようだな。

 きっと「えげつない」とでも思っているのだろう。


「それにお宅は刑事だろぅ? あぁ? 第一、お宅今の今までここで何してた訳? んん? ミコさん達は一生懸命バックアップしてくれてんのにお宅はただそこでボーッと突っ立ってるだけだったじゃねえかゴルァ。何か?、自分は関係無いから傍観(ぼうかん)してるだけですってか? えぇ? 舐めてんじゃねえぞこの (ピーーー(自主規制)) が!」


 そこで村中は泣いた。盛大に泣いた。村中は御子神達に助けを求める顔をするが、皆、目を逸らす。


 流石です若!


「なに助けを求めちゃってんだゴルァ。オイ、テメいい加減にしとけよこの (ピーーーー(再び自主規制)) 。この役立たずが、あぁ? 一度その根性を叩き直してやろうかゴルァ」


「あっ、お願いします」


「えっ?!」


 お願いしますと言ったのはエリート風の刑事。その言葉に村中が反応してそちらを見るが、またしても顔を背けられる。


 仲間に見捨てられるとは、余程使えない奴なんだなコイツは。


「だとよぉ。だったら俺達が暫くテメェを預かるからその根性、叩き直してやるから覚悟しておけや。御堂、その時は頼むぞ?」


「へい! 若のお役に立てる様、全力でそいつを鍛え直してやります!」


 その時は御堂のサポートをしてやるか。


「まっ、そう言う事だ。取り敢えず早く餌になれ」


 その後、村中は御堂に首根っこを掴まれて廃工場内へと入って行く。勿論、再び周りから取り囲み。出て来たところを一斉攻撃する為に。


 さて。それじゃ俺も行くとしよう。



今回も読んでくださりありがとう御座います!!

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