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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第5章 崩壊する日常
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第166話 小悪魔の心<イリスside>


 あいつといると、不思議な気分になる……。

 なんなんだこれ? 心臓もいつもよりドキドキしてるし、……兄様(にいさま)に聞いてみるか……。


兄様(にいさま)


「ん? 早かったな。アイツ喜んでたか?」


「はい」


「それならよかった」


 その時、兄様(にいさま)も笑顔になられてそれを見た俺は、「嬉しい」って思った。


 あ? 嬉しいけど、アイツみたいに胸がドキドキしないのってなんでだ?


「なあ兄様(にいさま)……ん?」


「ん?」


 そこで、ミル姉と美羽姉がこっちに来ると、その後ろに他の連中も一緒になってくるからどうしたんだろうって思った。


「どこかにいくのか?」


「いや、ミルクがせっかくだからって美羽と模擬戦したいって言い出したんだ」


「ミル姉が?」


 へ~、珍しいな、ミル姉が言うなんて。


「せっかくですから、美羽さんがどれだけ強いのか知りたくて」


 ふ~ん、俺も知りたいな。


「俺も誰かと模擬戦したらダメか?」


 そう言うと、落武者みたいな髪をしたマークっておっさんが青ざめながら兄様(にいさま)に質問した。


「か、和也さん? ち、ちなみにこちらの御二人様のレベルは……?」


()()()()()()


「今の……俺……?」


「話聞いたろ? Bから昔の俺の血を秘薬だって言われて飲む前と、飲んだ後の俺でじゃレベルが段違いに違いすぎる。今までは出来るだけその時のレベルに合わせていたんだ。それでその2人は俺の血を何回かやってるから、お陰で今の俺に近いレベルに育ってるってことだよ」


「……」


 するとマークは真剣な顔で黙ったあと、盛大な溜め息を吐いた。


「よぅ和也、だったら力を制御してもらわにゃ訓練施設が壊滅的なダメージを(こうむ)ることになるぜ? そうなりゃオメェ、修理するだけでかなり時間が掛かるし訓練施設だけじゃなく全ての施設が機能停止に追い込まれる恐れが出てくるぞ?」


「よしミルク、本気を出すなよ? 出しても半分だ」


(かしこ)まりました」


 ちぇっ、だったらもっと強化しとけよな。


 その後皆で観戦して、美羽姉がなかなか強くなってるのが俺的に嬉しかった。

 ミル姉は結局2割程度しか出さなかったけど、美羽姉は全力を出してもミル姉には勝てなかった。

 まっ、当然っちゃ当然だ。だって俺達は凶星十三星座(ゾディアック)すら圧倒出来るんだからよ。

 俺達がどれだけ兄様(にいさま)から血を分け与えてもらったことか。

 正に今の兄様(にいさま)は敵無しの状態だ、そんな兄様(にいさま)が冥竜王として覚醒したら、それこそ誰も勝てやしねえ。

 ただ1つだけ懸念するとすれば、それは兄様(にいさま)が暴走したらヤバいってことだ。

 八岐大蛇(ヤマタノオロチ)兄様(にいさま)の分身。だから奴が暴走しても俺達ならなんとか抑えられるが、兄様(にいさま)だったら無理だ。流石の俺達でも、敵として認識されたら死んじまう……。


「美羽姉さん、最後の一撃はなかなか良かったと思います。流石です」


「でしょ? でもまだまだ頑張んないと全然追い付けないよ」


「姉さんならきっと私達に追い付けますよ」


 ん、俺もそう思う。


 なんせ美羽姉は兄様(にいさま)の彼女なんだしよ。昔から兄様(にいさま)の背中を追いかけてた人なんだ、そうじゃなきゃ面白くねえよ。

 俺やミル姉だってそうだ。これまでは単なるペットでしかなかった俺達は、兄様(にいさま)のお陰で今はこうして兄妹になれた。

 それがどれだけ嬉しかったか誰にも分かる筈ねえ。

 でもそんな俺達より先に、美羽姉は兄様(にいさま)を追いかけていた。

 だから、そんな人だから兄様(にいさま)の隣に居て良いとすら思える。


 最後まで諦めずに追いかけて欲しいな。

 俺は、あんただから許せるんだからよ。


「よっしゃ、んじゃ次は俺だ。誰が俺と相手してくれるんだ? って……なんだよその顔」


 振り向くと、全員スンッとした顔で俺を見ていた。


「な、なんだよ?」


 するとマークが俺に言ってきた。


「この状況が御分かりになりませんか?」


「あ?」


 状況って言われても、()()()()()()()()()()()()()だけじゃねえか、なんなんだよ?


「ボロボロになってる。それがどうかしたのかよ?」


「どうかしたのかよ、じゃねーんだよ!」


 な、なんだよこのハゲ!


「ここまでボロボロになってるのに! 更にボロボロにされたらそれこそ機能停止しちまうよ!」


 あぁ……。


「お前らもだよ美羽! ミルク! テメェらはなにか? 話を聞いてなかったのか? あん?」


「そ、そんなことは……、ねぇ?」


「はい、これでも制御したつもりなんですが」


「制御してるのにどうしてこうなってるんでしょうか?」


「「……」」


 嘘……だろ? あのミル姉が、ハゲに圧倒されつつあるだって?!


「んじゃなにか? ん? 制御しててこれなら、もっと力を出したらどうしてました? ん?」


「そ、それは……」


「壊れてたかもしれませんね」


「そうでしょ? んじゃここを壊したかったのかな? ん? 和也に出しても半分だって言われてもさぁ、そりゃねえんじゃないのかな? ん?」


 "威圧"とかそんなスキルを使ってる様にはまったく見えねえのに、あのミル姉が萎縮(いしゅく)し始めていやがる……。何者だよあのハゲ?!


「あのぉ、僕、そんなに難しいこと言ってました? ここが壊れたら機能停止って言ったのに、どうしてここまでボロボロにしたんですか? ボロボロにする前にやめません? あるいはもっと制御しませんか?」


「「……」」


「聞いてます?」


「「はい……」」


「んじゃ答えてもらえませんか?」


 ヤバすぎる! なんだよマジでこのハゲ! ミル姉が動揺して目が泳ぎ始めちまった!


「特にミルクさん。アナタがぁ……、原因ですよね? どうしてくれるんですか?」


「……申し訳ありません」


「いやいやいや、謝ってほしくて言ってるんじゃないんですよ? 僕は、どうしてボロボロにしたのか理由を聞いてるんですよ?」


 めんどくさっ! マジでめんどくさいこのハゲ!


 それから小一時間それが続いた後、美羽姉とミル姉はハゲに解放された……。

 しかも兄様(にいさま)までハゲに捕まったけど、そこは兄様(にいさま)だ。逆になんでもっと強化しねえのかって言ってハゲを論破し始めた。

 でもハゲも負けちゃいなかった。

 ハゲはだったらもっと良い強化素材を集めて寄越せって言うと、兄様(にいさま)と激しい攻防を繰り広げやがった。

 俺は付き合ってられねえからそこから離れ、とりあえず憲明の様子を見に行くことにした。



 憲明の部屋に来て、ドアを軽く三回ノックしたけど反応が無い。


「……寝てるのか?」


 静かにドアを開けて確認したら、憲明はおとなしく寝ていた。


「……」


 幸せそうに寝やがってコイツ。


「ふふっ……」


 ん? なんで今、俺笑ったんだ?


 側にはクロとノワールがおとなしくしていて、安心しきってるって顔をしていた。


「なぁ、お前らはコイツの側にいてどう思ってんだ?」


<……ガウ>


<カロロッ……>


「なるほどね……、確かにそうかもな」


 クロとノワールは、そこが居場所だって答えた。


 居場所か……。

 なんでだろう……、コイツの近くにいると、兄様(にいさま)とは違う安心感を感じるのは……。


「……はっ、不思議な奴だな……」


 幸せそうに寝てる顔を見てると、自然と微笑んじまう……、なんなんだ……。


「今、どんな夢見てんだ?」


 夢を見てるのかどうか知らねえよ。でも本当になんでなのか顔を見てると……。


「落ち着くな」


 そお思って思わず口に出た。


「……とりあえずタオルを冷やしてやるか」


 憲明の頭に乗せてるタオルを取ると、無意識なのか反射的になのか俺の手を掴んだ。


「お、起こしちまったか?」


「……」


 そう聞いても、憲明は普通に寝息を立てて寝ている。


「ビ、ビックリさせやがってこのっ!」


 殴ってやろうかなって思って拳を握ったけど、顔を見たら殴れなくなった。

 それどころか顔が熱くなる。


 クソッ、なんか調子狂うな……。俺まで体調悪くなっちまったのか? ……いや、そんな筈はねえ。

 だったらなんだ?


<クゥン?>


<ルルルッ>


「あ? 別に……なんでもねえよ」


 クロとノワールが、どうして俺の顔が赤いのか聞いてきたから少し恥ずかしくなった。

 だって、俺自身がどうしてそうなってるのか解らねえんだからよ、どう答えていいか解らねえじゃん。


 ったく……、どうしちまったんだ俺。やっぱコイツの風邪かなにか移ったのか?


 そお思いながら憲明の顔を見てると俺まで眠くなって……、……俺まで寝ちまった。



 16:30



「ねえカズ、見て見て」


「……コイツらいつの間に?」


「もう少し寝かしとこうか」


「そうだな……、そうしとくか。まさか2()()()()()()()()()()()()()()



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