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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第5章 崩壊する日常
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第165話 この気持ちってなんだ?


「よう、暇なら俺と勝負しようぜ?」


 は?


 その日、俺は唐突にイリスにそう言われた。

 ミルクとイリスが実は凶星十三星座(ゾディアック)と繋がってて、しかもかなりの実力者だって知って2日目の朝のことだ。

 皆はもう集まっていたけど、俺はなんだか朝から体が重く感じた。 


「もし俺に勝てたらなんでも言うこと聞いてやっても良いんだぜ?」


 ……なんでも?


 俺は思わず想像したら絶対ダメなことを想像しちまった……。

 もし……、その事がカズに知られればと思うと……。「テメェ、俺の妹に手え出してタダですむと思うなよ?」なんて言われて絶対埋められかねない!


「ん? どうしたよ? するのか? しねえのか?」


 グフッ! やめろ……、やめてくれ! 可愛過ぎる! 想像しちまう!


「ん~?」


 ガハッ!


 しかし、察しのいい奴ってのはどこにでもいた……。


<ガウ?>


 ソラが俺に黒く鈍く光る物を向けて、軽く睨んできた。


「だからやめろってそれ……」


 2日前のシリアスな空気はどこへやら……。


 まぁ、御子神のおっさん達警察とミラさん達軍人はそれでもミルクとイリスに対してかなり警戒してるけどな。

 勿論、2人のことは親父さんと先生達にはもう知られている。

 親父さんは全然顔を出さないけど、先生がそれを知った瞬間、やっぱりって顔で悲しそうな表情を見せた。

 セッチも顔出さないし……。俺は親父さんとセッチの2人が気になったけど、2人にだって思うところがあるから顔を出せないのかも知れないって思って、今はそっとしておこうと考えた。

 ちなみに美羽は(しばら)く活動休止。

 美羽が所属している事務所の社長とマネージャーさんは、どっちかって言うとこちら側の味方だから社長が美羽に、今はそっちに専念して落ち着いてからでいいからまた一緒に頑張ろうって言ってくれたらしい。ほんと、めちゃくちゃいい社長とマネージャーさんだよ。

 それと、リーズから報告を聞いたウルガさんまでやって来て最初は驚いていたけど。取りあえず今はミルクとイリスは極秘扱いになったらしい。

 ちなみにネイガルさんが頻繁に遊びに来ている気がしたけど気のせいか?


「おい」


 は~……、佐渡と岩美、澤崎も最初はショックを受けてたけど、今じゃ受け入れてるし……。


「お~い」


 まぁ、ここで戦闘は絶対しないって約束が出来ただけでも今は良い方かな?


「おいって」


 それにしてもイリスの顔をまともに見れねえって、なんなんだよ? ほんと、マジでどうしちまったんだ俺?


「おいって、聞こえてねえのかよ?」


「うおっ?!」


 イリスが俺に顔を近づけていたからビックリした。


「な、なんだ……よ?」


「だ~から、俺と勝負すんのかしねえのか、どっちなんだよ?」


 ブッ……ハッ……!!

 だからマジでそんなに顔を近付けさせてくるなよ! 可愛すぎて直視出来ねえんだっつーの!


「ん~? な~んかおかしくねえか? 熱でもあんのか? 顔が真っ赤だぞ?」


 そう言ってイリスが俺の頭に手を伸ばし、平然と俺の(ひたい)(ひたい)を当ててきた。


「ん? やっぱ熱あるんじゃねえのか? 少し熱いぞ?」


「へ! 平気だから! 大丈夫だから!」


「んな訳にいかねえよ。熱があるなら人間なんだから寝てなきゃダメじゃねえか。ちょっとまってろ、今兄様(にいさま)に事情を話してお前を運んでやるから」


 は、運ぶって……、そんな……。


 その瞬間、俺は倒れた……。


「ちょ?! おい! おいって!」


 しかもイリスに抱きつく形になって、そのまま意識が遠のいた……。


 あ……、これマジでヤバい……。



「う……」


 うっすらと意識が戻ってくると、どこかで寝てる感覚がした。


「ここは……、俺の部屋?」


「起きたか?」


「……イリス、なんで」


 俺が寝てるベッドの横で、イリスがカズみたいに座って何かの雑誌を読んでいた。


「なんでじゃねえよ、体調が悪いなら悪いでちゃんと寝てろよ、バカなんじゃねえのか?」


「……悪い」


「ふん、別に礼を言われる程でもねえよ。それより、コイツらにはちゃんと謝っておけよ?」


「ん?」


 そこに、クロとノワールが心配そうな顔で俺の上に乗って顔を見ていた。


 ちょっ、重いからどいてくれって言いづらいな……。


「おいクロ、ノワール、いい加減ベッドから降りてもう少し寝かせてやれ」


 イリスがそう言ってくれたから2匹は降りてくれた。


 イリスって、優しいんだな……。


 そう思っているとイリスが俺の頭の上に置いてあるタオルを取り、氷水で冷たくした後水を(しぼ)って俺の頭に置いてくれた。


「なんか、悪い。冷えピタがあれば貼ってそのままにしてくれてよかったのに」


「バーカ。んなもん貼ったところで直ぐに蒸発して使いもんにならねえだろうが。いいから黙って寝てろよ」


 あっ……、本当にヤバい……。


「イリスってさ」


「ん~?」


「可愛いし、優しいんだな……」


「…………は~?!」


 あれ? なんで俺、声に出して言っちまったんだろ? ……まぁ、いいか……、今はなんにも考えずに寝ていたい。


「おまっ! ちょっ?!」


「ありがとな……、イリス。なんか、慌ててる姿も可愛いな……」


「なっ?!」


 その後、俺はまた意識が飛んで眠った。


「ちっ! 寝ちまいやがった! …………くそっ、なんでこんなにドキドキしてんだよ俺は……」



 4時間後



 俺の頭の上に、また冷たくなったタオルが置かれたところで目を覚ました。


「うっ……」


「起きたか……」


「あれ? まだ、いてくれたのかよ?」


 そこにイリスがいてくれていた。


「今、何時?」


「昼の13時を過ぎたところだ」


 時間を聞いた瞬間、俺の腹が少し鳴った。


「なんだ? 腹減ってんのか? ちょっと待ってろ」


 なんか、めちゃくちゃ恥ずかしいな……。


 そこで少し体調がよくなったから、俺はベッドの上で座り、水を少し飲んでクロとノワールに謝ったりした。


 数分経ってもイリスが戻ってこない。

 きっと俺が目を覚ましたし、疲れたから誰かと代わるんだなって思った。


 更に数分経ったけど、誰も来ない……。

 きっと今後のことでも話し合ってるんだなって思って、何気なくイリスが座ってた椅子に目を向けると、そこに雑談が置いてあった。


 誰のだ? これ……イリスが見てた雑誌か?


 初めはボーッとしてたからどんな雑誌かわからなかったけど、よく見たら普通に女子が見てるような雑誌だ。

 俺はどんな内容が載ってるのか何気なく読み始めた。


 更に(しばら)くして。


「おい、なに勝手に読んでんだよ?」


 イリスが何かを持って戻ってきた。


「悪い、やっぱお前のだったか」


「おとなしく寝てろよバーカ。まぁ、一応飯持ってきたから食え」


 寝てろと言ったり、食えといったり、どっちなんだよ……。


「ほら、一応、兄様(にいさま)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ……ん? 今……、なんと?


「ほら食えよ!」


「あっはい」


 そう言いつつ、何故かイリスがレンゲでお粥をすくって俺の顔に近付ける。


「あの……、これは?」


「あ? お粥だよ」


「いや、それは解るんだけど……」


 さすがカズ、お粥すらめちゃくちゃ旨そう……、なんだけど……。


「じれってえなぁ、早く()()()()()()


 だからなんで?!


 何故かイリスがお粥を食べさせようとしてくれるから、なんでそうなったのか俺は気になった。


「自分で食べるからそんなことまでしなくても」


「あ? いちいちうっせぇ。兄様(にいさま)と美羽姉がそうしてやれって言うからやってんだよ」


 あいつらぁ~……。


「……いただきます」


 なんか恥ずかしかったけど俺は食った。


「熱っ!」


「わ、悪い! 熱かったか! ちょっとまってろ!」


 するとイリスがレンゲですくったお粥に、「フーッ、フーッ」って、息を吹き掛けて冷ましてくれる。


「これでどうだ? 旨いか?」


「めちゃくちゃ旨い」


「そ……そっか……、よかった~」


 ウグッ?!


 旨いと聞いて嬉しそうに微笑む顔を見て、俺の心臓がまた強く脈打った。


兄様(にいさま)に教えてもらいながら作ったのは良いけどよ、ちゃんと出来てるか解らねえし不安だったけど、旨かったならよかった」


「そっか、ありがとな、イリス」


 俺は嬉しかったから笑った。

 まさか俺の為にイリスがわざわざ作ってくれたなんて。それに、俺が旨いって言ったらスゲーいい顔で微笑んでくれるからよ。


「うっ?!」


「ん?」


「な、ななななんでもねえよ! ほら! 食ったらまた寝とけ!」


 そう言われつつ、食べ終わるまでイリスが俺に食わせてくれた。


「ほら! 食ったんだからさっさと寝ろ!」


「わあったよ、寝るよ」


 横になると、イリスが冷たくしたタオルを俺の頭に置いてくれて、食器を持って出ようとした。


「イリス」


「あ?」


「ありがとな。お粥、マジで旨かった」


「お、おう……」


 そしてドアが閉まる音がして、俺はまた寝ることにした。


「(くっそなんなんだよ! なんで俺! こんなにドキドキしてんだよ?! ……と、とりあえず兄様(にいさま)に食器を渡しにいかねえとな。……でも、旨かったって言ってくれて嬉しかったな……へへっ……)」


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