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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第5章 崩壊する日常
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第159話 学園祭最終2


 会場に、全国から選抜で呼ばれた10人が上がるけど、そこに佐渡の姿が無い。

 周りを見てみると、泣きそうな顔の佐渡をヤッさんが一生懸命なだめてる姿があった。


 なんだよ、なんだかんだで上手くいったんじゃん。


「んじゃ、とりあえずそれぞれ魔結晶を握り潰してくれ」


 渡した魔結晶を皆が握り潰し、粉末状になってそれぞれの体に入っていく。


「さて、これで君達はほんの少しかも知れねえが、魔力ってもんを手に入れた。それじゃ、それぞれ自分達がこれだってモンスターの前に行ってくれ」


 カズが用意したモンスターは。

 "ウッドエント"、"ペルトフログ"、"コマンドウルフ"、"ディラルボア"。

 そしてそこに、ネイガル商会会長のネイガルさんが現れて。初めて見る鳥の亜人に全員が興奮した。


「御初に御目にかかります皆様方。(わたくし)はネイガル商会会長を務めております、ネイガルと申します。以後、お見知り置き頂けますと光栄に御座います。さて、(わたくし)がここに来たのには理由が御座います。それは此方(こちら)を御覧いただければお分かりになられるかと」


 するとそこに、布で覆われた何かデカイ物が運び込まれてきた。


 絶対、中に何かいる檻だろあれ……。


「先日、和也様に頼まれて皆様方の為に御用意致しました商品に御座います」


 ほ~らやっぱり。


「それでは御覧くださいませ」


 布が取られた檻の中にいたのは。

 お馴染みの"スライム"、"クレッセント・ビー"、まさかの"タイラント・ワーム"……。

 その他に、"ジャック・オー・ランタン"。凶悪な牙を持った人喰い植物モンスター、"マンイーター"。トッカーと同じ、"ロックタートル"。


 あぁ……、なんか一癖も二癖もありそうなモンスターがいるよ……。


「御代は結構。テイムに成功したモンスターは、全て日本政府が支払ってくださいますので」


 そう言ってネイガルさんはイヤらしい笑みを見せながら、親指と人差し指を合わせてシャカシャカと動かす。

 その後、選ばれた10人はそれぞれ好みのモンスターの前に行く。

 一番人気はディラルボア、二番人気はクレッセント・ビー、三番人気はタイラント・ワームだった。

 でもそれだと余るから、クジを引いて当たった奴がテイムする挑戦権を手に入れて、10人ともテイムの挑戦が始まった。

 勿論、テイムの仕方はカズとネイガルさんに教えてもらいながら。


 ……結果的に。成功したのはたったの1人。

 クレッセント・ビーを選んで挑戦権を勝ち取った女子だ。


「やったー!」


「相性もあるが、そいつ自信がテイムされても良いって思ったんだろ。おめでとう。これで俺達と一緒に異世界の学園都市へ行く権利を得た」


 カズの後ろに俺達は集まって、その子に拍手を贈った。


「だがその他の連中はどうだ? ランク的にもどうにか最底辺のランクを選んだって言うのに、成功したのが1人だけ?」


 カズがそう言うと、他の連中が悔しそうな顔になって、それを見ていた人達は残念そうにしていた。


「せっかくだ。誰か挑戦したい奴はいるか?」


 すると、政府の人達が驚いた顔でカズを止めようとしたけど。


「黙れよ? 俺にも決定権があるって言ってたよな? だったら俺のやり方に口出しすんな。ましてやここで選抜者を出すって決めたのはお宅らだ。そうだろ? だったら俺のやり方で残り2人を見つけても良いじゃねえか。違うか?」


 そこまで言うと政府の人達は黙った……。


「んじゃこの中に選抜に挑戦したけど落選したって奴はいるか? いるなら俺の独断で2人揃えるが?」


 すると続々と手が上がった。

 カズはステージの上から誰が良いか手を上げてる奴の顔を見た後。ニヤッと微笑んだ。


「んじゃそこのお前と。……おい佐渡、こっち来い」


  あぁ、成る程そう来たか。

 カズは佐渡との約束を守るために、今呼んだんだな。


 そして呼ばれた2人もさっきの連中みたいに魔結晶を握り潰し、それぞれテイムしたいモンスターの前に歩いていく。

 佐渡が選んだのは……。

 まさかのディラルボア。


 なんでよりによってそんな凶暴なヘビに行くの?! 行くならウッドエントかマンイーターじゃね?!


「おい佐渡。本当にそいつで良いんだな?」


「……うん」


「事前にそいつの情報は知ってると思うが。テイムしようと思っても凶暴な奴だからかなり難しいぞ? 例えランクが低くても、腐っても毒蛇系モンスターの一種なんだ。下手に近付けば、解ってるな?」


 そう、腐っても毒蛇系モンスターだ。

 だからコイツに挑戦した奴は半殺しにあっていたからカズが助けて、ステラの回復魔法でどうにか助かった。

 今の俺達ならどうにか出来るけど。それだけ凶暴だから好き好んでは選ばねえ奴って認識になっていた。


「どうする? 変えるなら今だぞ?」


「……挑戦する」


「ほう?」


 佐渡の返事を聞いて、カズは軽く驚きながら微笑んだ。


「大丈夫……。山本君に、コツを教えてもらったから」


「そうか、ヤッさんがね~?」


 カズがニヤニヤしながらヤッさんを見ると、ヤッさんは恥ずかしそうに目をそらした。


「んじゃ、覚悟が決まったら中に入れ。おいヤッさん! いざって時はお前が助けろ!」


「う、うん!」


 それでカズはもう一人の方の所に行った。


「まっ、ヤッさんからコツを教えてもらってんならそう緊張すんな。ディラルボアってのは、こっちが恐怖心を持ってると、獲物と認識して襲ってくるんだからよ」


「うん」


 俺もそんな風に言うと、佐渡の顔から緊張が消えていって、真剣な顔でディラルボアと目を合わせた。


「……」

<シュシュルル……>


 (しばら)く目を合わせた後。佐渡は「お願いします」って言って、中に入った……。


「はっ、アイツも駄目だな」


「あぁ、俺達が駄目だったんだ。そう簡単にテイム出来るかよ」


 佐渡がディラルボアに挑戦しようとすると、それを邪魔したいのか。テイムに失敗した奴らがそんな事を言ってるのが聞こえた。


 ……失敗して当然だな。


 俺はそう思った。

 俺達はカズからテイムの仕方を教えてもらってるし、これまで何度も見てきてるから言える事がある。それは、テイムしたいモンスターと、どれだけ真剣に向き合えるかってことだ。

 最初の俺達はネイガルさんの所に連れてってもらって、クロやピノ、トッカーにダークスと出会えた。

 俺達は別にそこまで深く考えてはいなかったけど。今思えばその時、自分のパートナーになって欲しいって。真剣に考えてたと思う。


「あ、あの……、その……。ごめんね?」


 なんでいきなり謝ってんだよ?


 そう思いながら、俺とヤッさんはお互い微笑んでいた。


「その……」


 ビクビクすんな、攻撃されるぞ?


<シャアー!>


 ほぉら威嚇してきやがった。これで後退(あとずさ)りでもしようとしたら、それで終わるぞ佐渡。


「……私は」


<シャーア!>


「あなたをパートナーにしたい」


 佐渡は後退(あとずさ)りじゃなく、真っ正面から堂々とディラルボアに近付こうと一歩踏みでた。


 マジかよ……。ははっ……、ディラルボアを前にして怖じ気付くどころか、強気だし。


「お願い。私のパートナーになって」


<シャッ……ァ……>


 これはカズと異世界に生息するモンスターの図鑑を読んで知ったことだけど。ディラルボアをテイムするには目を合わせたら絶対に目を離さず、真剣にテイムしたいってのと、心の底からテイムしたいって気持ちがないとディラルボアに攻撃される。

 だから。


「私のパートナーに……、家族になって……」


 その瞬間、威嚇していたディラルボアが嘘みたいに大人しくなると。佐渡に頭を差し出した。


「ありがとう」


 そして佐渡はディラルボアの頭に手を当てて、テイムが始まった。


「今日からあなたの名前は"ブチ"。宜しくね」


<シュア~!>


 佐渡がテイム成功したのを見て、失敗した連中が更に悔しそうな顔になった。


 ざまぁ見ろ。前もって聞いていた情報をちゃんと覚えてないのと、勇気が無かった結果だ。


「や、山本君! 私、やったよ!」


「おめでとう佐渡さん!」


 うんうん、2人共おめでとう。


 俺は俺でヤッさんと佐渡がたぶん、付き合い始めたと思って心の底から祝福した。

 ちょっと涙が出たけど。


「なんだ、佐渡も成功したのか」


 そこにカズがニコニコと微笑みながら戻ってくると。その後ろにもう一人カズに選ばれた奴がモンスターを連れて来ていた。


「なんだ、そっちも成功したのか」


「ふっ、俺の目に狂いは無かったってことだ」


 これで予定の3人が選ばれて、改めて成功した奴らをステージに集めることにした。


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