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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第5章 崩壊する日常
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第156話 学園祭2


 15:00



 その時間、俺達は緊張していた。


「準備は良いか?」


 俺の質問に、美羽達は何時でもと言って頷く。そこにはサーちゃんと志穂ちゃんの姿もあった。

 全員、装備を完全に整えた状態でパートナーを1体ずつ連れて会場に出ていく。

 同時に歓声が沸き上がった。


「御待たせしました! 只今より! 実戦披露を始めてもらいたいと思います!」


 秀一がマイクでそう言った後、急いでその場から離れた。

 そう、俺達はこれからお客や他の生徒達の前で、実戦を披露するからだ。

 対するのはこの男。


「「キャー~!!」」

  「夜城クーーン!!」

 「こっち向いて~ー!!」


 カズだ。

 しかも今回はカズだけじゃなく、アリスと一緒にいる。

 そのアリスから、ヒスイとか他のラプトル達とは違う、独特の威圧感が漂ってた。


 やべぇな……。


 俺はクロ。美羽はステラ。沙耶はピノ。一樹はダークス。ヤッさんはトッカー。

 サーちゃんと志穂ちゃんにはまだパートナーはいない状態。

 けどカズとしてはこっち側に、未だ勝った事が無いサーちゃんがいる。


「今回はサーちゃんがいるし。良いとこまでいける気がするぜ」


「言ってろ。ちなみに手加減はしねえからな?」


 そう言われるとゾクッとして、全身の毛が逆立った。


「では! 始めて頂きましょう! お願いします!」


 いち早く動いたのは沙耶だ。得意としているアーチェリーでカズとアリスに対し、次々と風の矢を放つ。

 その次に動いたのが一樹と志穂ちゃん。2人はカズを両側から挟み、同時攻撃を仕掛ける。

 カズの正面にはヤッさんが大楯を構え、その後ろから俺は"炎の弾丸(ファイヤーブレッド)"で弾幕を張った。


「お決まりのパターンじゃ俺には勝てねえぞ?」


「でも今回はステラ達もいるよ?」


 カズの真後ろには既に美羽が回り込んでいた。


()()か」


 ステラの能力"幻影"。


「でも本体はこっちだな」


 すると何も無い空間にゼイラムを伸ばすと、甲高い音と一緒に火花が散り。そこから真紅の彼岸花が輝く、白く綺麗な双剣を持った美羽が現れた。


「やっぱカズにはバレバレだね」


「はっ。幻影で姿を隠すならもっと気配を隠せって言ったろ」


 美羽はすかさず"シャドーゾーン"を展開して、カズの真下から次々と槍の形状をした影が襲う。

 でもそのことごとくを交わしながら美羽にゼイラムを伸ばした。


「クロ!」


<ガウッ!>


 クロは長い鎖を伸ばすとカズのゼイラムに絡み付き、美羽への攻撃を妨害させたけど、クロ程度の力で止められやしねえのは解ってる。


「クロ。初めて会った時は子犬程度のお前がよくそこまで育ったと思う。けどなクロ。そのお前が俺のゼイラムを止められると思うなよ?」


 カズが能力を使わなくても、それを止める事は確かに難しいさ。

 けどよ……。一瞬の隙を作らせる事は出来る。


「"桜花乱舞(おうからんぶ)"!」


 同時に、美羽は"未来視"を発動させてカズがどう動くのかを視ながら彼岸花(リコリス)を振るう。


「悪くない。けど勘違いすんなよ? ただ悪くないってだけだ」


 美羽が"未来視"を発動させる事を想定しいたカズは、既に罠を仕掛けていた。


「うッ!」


 美羽が視たのは、爆炎に包まれる未来。


「ステラ!」


「あまいな」


 ー "紅蓮華(ぐれんげ)" ー


 いつの間に咲いていたのか、俺達の足元に彼岸花が広がっていた。


 やっば!


 その瞬間、会場になっているグラウンドが爆炎に蹂躙(じゅうりん)された。

 だけど俺達を見に来た人達に怪我させないように、既に障壁魔法を使っているから無事だ。

 それをしたのはカズじゃなく、先生とゴジュラス。

 先生とゴジュラスはそれぞれ結晶を配置していて、防御壁なる魔法を発動していた。


「どうした? もうおしまいか?」


 ちっ! 爆炎の煙でなんにも見えねえ!


 けど俺達はなんとか無事だった。

 どうして無事だったのかと言うと。沙耶が俺達に、咄嗟に風の障壁を作ってくれたから助かったんだ。

 そして煙が立ち込める中、カズに急接近して反撃に出た人がいた。


「カッちゃんこそ、それでおしまい?」


「ちいっ!」


 カズの天敵、サーちゃんだ。

 サーちゃんは煙の中、カズのゼイラムを次々と避けて(ふところ)に入り込むと。


「"蛇愴葬(じゃそうそう)"」


 出た! サーちゃん渾身の一撃必殺!


 俺はその瞬間、勝ったって思った。


「なめんなよ?」


 カズはノーモーションでサーちゃんの必殺技、蛇愴葬(じゃそうそう)を封じた。

 その方法は。


「体が……」


「"影縫い"。忘れたか? 俺の属性を……」


 そうだった! カズは美羽と一緒で闇属性持ってるんだっけ!


 "影縫い"は、影を媒体にした闇系統魔法のひとつ。

 相手の影を自分の影を使って動けなくさせる事が出来る。

 でも俺は今の今までカズがそんな魔法を使うのを見たことがなかったから、使えるとは思ってもいなかった。でもその考えは間違いで、カズは闇属性なんだから当然使えるって思ってたほうが正しかった。

 これまで見てきたのはゼイラムを使った攻撃。そしてそのゼイラムに"ブローニング M2A1 重機関銃"を装備しての攻撃。魔改造したデザートイーグル。両手に装備した"デュアル"。凶悪な蹴り技。彼岸花を使った爆発攻撃。魔眼を使った"瞬炎(しゅんえん)"。重力魔法を使った技。炎、雷、風、3種類を使った極悪魔法"豪雷爆炎龍ごうらいばくえんりゅう"。そして……、"堕天竜(だてんりゅう)"。

 これまで一度も、影魔法を見たことが無い。


「さて、サーちゃんは後回しにさせてもらうとして……」


 よ、よかった……。まだチームとしてカズに勝てる見込みが。


「って俺が言うと思ったかよ?」


 カズはニヤッと、超が付く程の極悪非道な笑みになった。


「させないよ!」


 そこに、美羽がステラの背中に乗ってサーちゃんの救出に向かうと。


「目には目を、歯には歯を」


 カズは影を使って、美羽達に攻撃に出た。


「"影の壁(シャドー・ウォール)"」


「くっ!」


 カズは影で作った壁で、美羽の妨害をして。


「"影の迷宮(シャドー・ラビリンス)"」


 影の壁が広がると、美羽とステラは真っ黒な球体の中に閉じ込められた。

 その間、カズはまったくのノーモーション。

 影を操ってるだけだって言うのに、サーちゃんは動きを止められて、美羽とステラは影の球体の中に閉じ込められると更に。


「行け」


 ーー アリス 


 今まで黙ったまま静観していたアリスを動かした。


<ギエェェッ!>


「クロ! アリスを頼む!」


<ガウッ!>


 アリスはヒスイや他のラプトル達とは格が違う。

 絶対に今、動かしたらマズい相手だって思えた。


「ピノもお願い!」


 沙耶もピノを動かしてアリスの行動を妨害しようとしてくれる。

 だけど、クロとピノだけでじゃアリスを止められない。

 そしてそれは一瞬だった。

 アリスがクロとピノを一瞬で通りすぎると、2匹が倒されちまった。


「クロ!」

「ピノ?!」


「アリスをなめんなよ?」


 カズ程じゃねえからなんとかその時のアリスを目で追えた。

 アリスは、クロとピノを同時に倒しやがったんだ。……しかも、カズ並の足技で。


 やっぱ格が違いすぎたんだ!


「トッカー!」


 ヤッさんもトッカーでアリスを止めようとするけど。正直、トッカーのスピードでじゃ敵わねえ。

 アリスの敏捷は、俺達が思っていたよりもかなり高かった。

 俺の目でギリギリの速さ。

 ってことは……、アリスとまともにスピード勝負が出来るのは美羽ぐらいしかいねえってことになる。

 でもその美羽は、影の球体に閉じ込められたまま。


 あれ? つんだんじゃね?


「さて? 終わらせちまってもいいかな?」


「いいともう! って良いわけねえーよ!」


 嫌みたっぷりな、(わっる)い笑みを浮かべるカズにイラッとしたけど、どうにもならない状況だから俺達は焦った。

 しかもカズは始まってからずっと、その場からまったく動かないままだし。


 どうする……、どうすりゃいいんだよ……。


 考えれば考える程カズは今まで、()()()()()()()()()()()()

 俺達を試すって事じゃなく、()()()()()()()()()


 ……そうか。そう言うことか。

 お陰でようやくわかったぜ。


 つまり、今までの俺達は弱かったから見せる必要が無かったんだ。

 でも今の俺達は前より強くなってる。だから手加減()()()()()()ってことだ。


 お前なりの優しさってか? 俺達が強くなれば強くなるほど、お前は制限していた力のリミッターを外してるんだな。

 だったらそれに応えねえとな!


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