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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第5章 崩壊する日常
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第154話 学園都市オーファ


 10月5日



「どうしてこうなった……」


 その日、カズは何時も以上に疲れた顔をしていた。



 ーー 学園都市 ーー



「ねーねー! 向こうの世界ってどんなとこー?!」

 「向こうには鉄の馬が当たり前に走ってるって本当か?!」

「今度遊びに行ってもいいか?!」


 その日、俺達は学園都市に通う生徒達に質問攻めにあっていた。


 俺達は日本政府の要請で、今通っている学校から、異世界の学園へと転入する事になった。

 そのせいで……、カズは現在、絶賛不機嫌中!


「クソッ、余計な事しか考えねえなお(かみ)はよぉ」


「でも、これで先輩後輩の関係から、同級生になれたね?」


 サーちゃんはご満悦だ。

 ここに来て、カズと同級生になれたのがよっぽど嬉しいみたいで、満面の笑みを浮かべている。


 そのサーちゃんだけど、ルカちゃんと一緒に政府から特別に、カズの力による治療を受ける許しが出たから。また前みたいに元気を取り戻していた。


「あの、美羽……さん。その装備はどこで作られたんですか?」


「これ? これはそこにいるカズが私専用に作ってくれた装備です。"猛虎の面"、"彼岸花(リコリス)"、先月倒した"ブレードタイガー"の素材を使って双剣を強化。そしてマスクを作って貰ったんです」


「凄い! ブレードタイガーって確かAランクモンスターですよね?! そんなモンスターを倒せるなんて!」


 美羽もまた注目されてて、その装備がいったいどこの誰が作ったのかも説明すると、全員の目が一斉にカズに向けられた。


「トドメをさして倒したのはお前だろ。俺は頼まれて作ったにすぎねえよ」


「でも私はカズが作ってくれた装備しか身に付けないよ? だって、他と比べてもカズが作ったり強化してくれた方が安心するもん」


 そう言って美羽はカズを後ろから抱き締めた。


 おーおー! 相変わらず見せつけてくれますね!


「ふっ、ありがとよ」


 しかもカズはそんな美羽の頭を撫でるから、美羽は「にゃ~」と言って喜びだすし。それを見た周りの生徒達は「キャー!」と言って顔を赤く染めた。


「周りが見てるから離れろよ」


「ん? い~やッ」


「ったく。授業がはじまんぞ?」


 そうこうしてると鐘の音が鳴って、男の先生が入って来た。


 俺達が入れられたのはAクラス。

 教室はAクラスからEクラスまであり。同じ学年の中でもトップクラスの教室に俺達全員入れられた。

 と言っても、俺達にしてみればレベルが低すぎた……。

 その理由の1つが、誰も俺達みたいにパートナーになるモンスターを連れていなければ、モンスターと戦った実績が皆無だからだ……。

 でもそんな中にただ一人。モンスターをテイムして連れているのがいた。

 それがレイナだ。

 パートナーモンスターは"ケツァルコアトル"で、滅多にお目にかかることが出来ない種類らしい。

 彼女は俺達が入った教室で唯一、モンスターをテイムしている人物で、その腕前と学力は学園でもトップっていうこともあって、空挺騎士団(スカイ・ライダーズ)のリーダーをまかされてもいる。

 ちなみに他の空挺騎士団(スカイ・ライダーズ)の皆さんは、そのレイナの実家の、使用人や騎士の皆さんなんだとか……。


 やっぱ金持ちだったんだな~……。


 しかーし! それは俺達が来るまでの話しだ。

 俺達はカズのシゴきのお陰で強くなってるし、カズのお陰もあって今のパートナー達と出逢えた。

 そのカズは他を圧倒する力を持ってれば、他を圧倒する程のパートナー達を引き連れている。

 ……はっきり言って、カズがこの学園に来た時点で既にトップに君臨しちまった……。

 だからなのか、カズは羨望の眼差しや、ここでも憧れの目で見られる事になった。

 そして……。


「ほら、大人しくしてろよ? "()()()()"」


〈グルッ〉


 ノワール。

 カズが能力を使って生み出した、最強のハイブリッド恐竜。

 ティラノサウルス・レックスの"ゴジュラス"と、ヴェロキラプトルの"アリス"が親で、更に数種類のDNAを組み込まれた俺の新しい相棒。


 そうです。遂にノワールが誕生したんです!

 まぁ、もしかしたらまだ何か知らないDNAを組み込まれているかも知れないけど……。

 産まれた時はそこまで大きくなかった。でも毎日餌を与えていることですくすくと成長して、今じゃ体長は約120センチまで成長。

 見た目はお母さんであるアリスよりだけど、体型は少しスリム。それでもやっぱりお父さんになる、あのゴジュラスみたいな雰囲気を持っている。


 美しい緑色の目。体色は黒に、綺麗な青いジャガー柄。尾はツリーモニターのDNAを持ってるからなのか長く、黒い尾には不規則な青い縦模様が入っている。

 まだ産まれて間もないけどよ、既に狩猟本能が極めて高く、好戦的で凶暴な性格をしている。

 正直、俺のパートナーよりもカズのパートナーになっていた方がしっくりするとは思う。

 だけどよ……。


「おいノワール、授業が始まるから甘噛みすんなよ」


 凄く可愛いんだぁ……。

 ノワールはその見た目からなのか、凄く人気だ。

 それに、今まで確認されているどのモンスターの中でも異色の存在で、カズの手によってハイブリッドされた世にも珍しい事もある。

 今はまだ子供って事もあり、頭でっかち。けどさ、デカクなったら誰もが羨ましく思う存在に育つと思うと、マジで嬉しくて嬉しくて。ついニヤけちまう。


「お〜い。初めてもいいか〜?」


「あっ! 全然大丈夫っス! あっ?! コラッ!」


 するとノワールはまだ構ってほしいのか、今度は服の中に潜ろうと暴れる。


 クソッ……、可愛すぎて怒れねぇ……。


「まっ、今から始める授業はそこの転入生達が連れてるモンスターの話しだから、そのままでも良いぞ〜」


 それでいいのか先生!


 先生の名前は"フューガル・ラグナドル"。41歳の独身。

 髪はボサボサでどこか御子神のおっさんみたいなタイプで、やる気が無さそうに見える。

 どうして歳と独身だと解るのかって言うと。それは転入した時にそう自己紹介されたからだ。

 ちなみに俺達がいるクラスの担任でもある。


「まっ、軽く話しをしたら外に出て、そこで転入生達がどの様にしてパートナー達と連携して戦うのか、実際に見せて貰おうじゃないか。まず、モンスターには3種類存在する。一つ目は進化しないモンスター。二つ目は進化するモンスター。そして三つ目が、そこにいるノワールみたいなハイブリッド型モンスターだな。本来存在しない筈のモンスターだ。だが、そこにいる和也みたいにハイブリッドを簡単に生み出すような奴が世の中にはいる。と言っても、和也程のレベルはそうはいない。つまり、ハイブリッドに関しては和也の右に出る奴は絶対にいないと言える程のレベルだと言える。ここまでで何か質問は?」


 へ~? カズの他にもハイブリッドを産み出せる人いるんだ?


 するとそこで、可愛らしいおさげの女の子が手を上げた。


「はい先生!」


「なんだ?」


「自然界にはハイブリッドモンスターは存在しないんですか? それに"キメラ"や"マンティコア"と言ったモンスターは、どんな括りにされるんですか?」


 あっ、確かに。


「まず、自然界に置いてハイブリッドモンスターの存在はあり得ないと言いたいが。和也はどうだ? こっちに来て説明してやってくれ」


 先生に質問されたカズはダルそうに立つと、教壇の上に向かった。


「和也が冒険者だって事は知ってる筈だ。チーム"夜空"。夜空の名を有名にしたのはバルメイアとの戦争が起きた時だと言うのは記憶に新しいと思う」


「先生は臆病だから参加しなかったんですよね〜?」


「そうそう、先生は臆病だし陰険だから戦争が怖くて。ってバカ!」


 ノリつっこみしやがった!


「まぁそれはいいとしてだ」


 いいのかよ?!


 女子生徒の辛口質問に先生がノリつっこみをしたけど、俺達意外の生徒はそれを普通に流し。改めて話しを続けた。


「そのリーダーである和也は単身、Sランクのモンスターを討伐する事が出来る。二つ名は"悪竜"。そんな男の話しをしっかりと聞けよ? んじゃ、頼むわ〜」


 嫌そうな顔をするカズだけど。まず始めたのはこれまでどんなモンスター達と戦ったかを話した。

 中には、種を越えて友情が芽生えたモンスターと殺し合わなければならなくなった事も話し。生徒全員がカズの話しに夢中になって耳を傾けた。


 その後は外へと出て。美羽と銀月VS俺とノワールが実戦を交えてどんなバトルをするのかを見せた。

 結果的に俺とノワールは終始、美羽と銀月に翻弄(ほんろう)されて負けちまったけど、皆は興奮して見ていた。

 けど皆がもっと興奮したのはその次のバトルだ。


 「……来い」


 カズVS俺達全員 (サーちゃんと志穂ちゃん抜き)


 カズは"ゼイラム"と格闘術だけで俺達5人を圧倒して勝つ。

 だけどその圧倒的な格闘センスと動きに、他の皆は目がついていけてなかったけどな。


「5人もと凄い」


「うん。負けちゃったけど、きちんとしたフォーメーションを組み立ててたね」


 他の皆は勝ち負けの問題より、俺達5人でなんとかカズと勝負と言えるバトルが出来た事が大きかったみたいだ。

 まっ、他の生徒全員が束になっても、カズに秒殺されていたと理解出来る程のレベルだってことも理解してくれたしな。

 そこでカズは言った。

 「負けたら必ず悔しがれ」。「悔しい想いがあるからこそ、強くなれる」って。

 その言葉は生徒全員の心だけじゃなく、俺達にも大きく突き刺さる言葉でもあったな。


 そんな授業を初日に終えた俺達は、その日から学園の人気者になった。


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