第152話 世界の真実
9月21日
ーー 東京湾 ゲート ーー
その日、俺達は海上自衛隊の船で門の前までボートで近づいた。
「デケェな……」
門の下は小さい砂浜になっていて、簡単にボートで近づく事が出来る。
門の入り口は戦闘機がその気になれば簡単に通れる程の広さだ。
その周りを、海上自衛隊が厳重に警備し。侵入出来る隙がまったく無い状態になっていた。
「用意は良いか? 行くぞ」
カズが先頭を切って門の中へと入って行く。
カズの装備はほぼ俺達と同じ、青い彼岸花が刺繍された黒いジャケットを着ている。
でも一緒なのはジャケットまてで。その下には白い蛇柄のワイシャツを第3ボタンまで外し、シャツをそのまま外に出している。
下は4本のゼイラムがついたいつもの黒いV系カーゴパンツ。両方の太腿には魔改造された銃。腰には堕天竜と言った装備をしていた。
門の入り口は空間が渦巻いている。
俺達にしたらいつも見ている門と一緒だから今更恐怖は無いけど、初めて見る人にして見ればその空間は恐ろしいんだろうなやっぱ。
そして門を潜り、ほんの少し歩いた先に出口がある。
そのまま光りの先へと入ると、そこは広大な大地が広がっていて。門はどこかの山の崖に存在していた。
「ここはどこだ?」
見たことも無い土地に胸躍らせながらカズに聞くと、そのカズはここがどこなのか一瞬で理解したのか、なんか嫌そうな顔になった。
「マジか……、学園都市の近くじゃねえか……」
学園都市?
「知ってる場所か?」
「あぁ、よく知ってるよ……。本当なら、俺はこっちの学園に来る予定だったんだ」
「「えっ?!」」
「なにー?!」
「あー……」
その言葉に全員驚いた。
「それをどっかの誰かさんが? 勝負を仕掛けて来て俺が負けたから? そっちの高校に行く事になっちまったんだけどな?」
するとサーちゃんは視線を別な方に向けて、知らないフリをするけど既に手遅れだ。
だって、その話しはこの場にいる全員が既に知っているんだからよ。
だから自然と全員の目がサーちゃんに向けられた。
「成る程ね? 犯人はやっぱりアンタって訳ね……」
「ひ、人聞きの悪い事を言わないで欲しいなー。それに私はカッちゃんに勝ったんだし? だから私のせいじゃ無いし?」
まぁ確かにその通りだけどさ……。
志穂ちゃんはそれ以上何も言いはしなかった……。
分かる、分かるよその気持ち。カズもそう言うところあるからさ……。
「まぁその件はもう良いとしてだ。見ろ。あれがその学園都市だ」
カズはその学園都市に向かって指を指した。
その方向に目を向けると、そこには確かに大きな都市が存在している。
しかも、都市の上には大きな鳥、もしくは飛竜なのかよく分からないけど、何かがいくつも飛び回っている。
「ありゃ学園都市を空から守っている、空挺騎士団だ。飛んでるのは"ワイバーン"、"グリフォン"、"オオワシ"といったモンスターをテイムした連中の集まりで組織されている」
その他に、まるでペリカンの様な鳥に4枚の翼を持つ"ペフィトン"ってモンスターも飛んでいたらしい。
そんなモンスターが飛んでいる中、一際大きなモンスターが1体空を舞っていた。
それはヘビに鳥の翼が6枚付いた、尾の先が鳥の尾羽になっているような大型のモンスター。
「"ケツァルコアトル"。やっぱアイツもいるか……」
「ん?」
知り合いか?
すると、そのケツァルコアトルを中心に空挺騎士団達がこちらに向かって来た。
「やっぱ気づかれたか……。ちっ、行くぞ」
「お、おぅ……」
明らかに嫌そうな顔をしながらも、カズは学園都市に向かう。
距離としては約2キロ。
まっ、その程度の距離なら今の俺達にしたらまだ余裕があるから、全然普通に歩いて行ける。
けど空挺騎士団の方が速かった。
カズの前までケツァルコアトルが降りて来ると、その上から女性の声が飛んで来た。
「やっぱりアナタだったんですのね和也!」
「よぅ、……久しぶりだな、レイナ」
き、金髪縦ロール!
それににどこか気品が溢れてるからお嬢様か?!
そう言った方が手っ取り早い感じの女性がカズに声をかけた。
「まさかここに繋がってるとは思わなかったぜ」
「わたくしもですわ。突然ゲートが出現したと聞き、もしかしてと思い急いで確認をしに行かせたら。やっぱり向こうの世界に繋がってると報告を聞いたので、来るならきっとアナタだと思っていましたの」
「あっそ……」
なんか、本当に嫌そうな話し方しますねカズさん……?
「それで和也。そちらの方々は?」
「コイツらは俺のチーム、"夜空"のメンバーだ」
「まあ! そうだったんですのね! お噂は色々と聞いておりますわ! 皆さん! 降りますわよ!」
そうですかそうですか。へ~、どんな噂なんでございましょ?
それでレイナの呼び掛けに空挺騎士団達は空から降りてくると。レイナは1列に整列させて俺達に自己紹介をしてくれた。
「私の名前は"レイナ・ジルフォード"と申します。どうぞお見知りおきを」
「俺は早瀬 憲明、宜しく」
「夜明 美羽です」
「稲葉 一樹」
「中川 沙耶で~す」
「山本 玲司って言います」
それでそれぞれ自己紹介した後に、レイナ達と握手を交わした。
「しかしそうか。だから大きな鳥や竜を見たって話しがされてたのか」
「申し訳ありません。でもどこに繋がっているのか確かめなくてはいけませんでしたの。でも、向こうに行った者が近い内にこちらに来るから待っててくれと言われたそうなので、こちらで待ってましたの」
「成る程な。だから俺達に調査依頼って名目で来させやがったのか。……ちっ、政府の連中はここと繋がってるって既に知っていやがったな?」
政府にしてやられたと思い、カズの機嫌が宜しくない。
知ってるなら政府もちゃんと説明をすれば良かったのではないのかと、俺達も思う。
でも。
「なあカズ、知っていたならなんで政府は黙ってたんだ?」
俺の質問に、カズはどこか疲れた顔でその説明をしてくれた。
「さっきも言ったように、あそこは俺が通う筈だったんだ。んで……、恐らく政府はこの事を世間に話すつもりなんだろ……。実はこことは別に、異世界が存在していますってな。んで、門から空挺騎士団が来た時、それが何者なのか知ってる政府関係者や自衛隊がいたから呼び止め。わざと俺達を来させたんだ。その来させた理由はさっき言ったように、異世界の存在を認め、真実を話す為。そして、その異世界とは仲良く出来る事を訴える為。同時に、空挺騎士団が学園都市の連中だって事を知って、そこに通いたい奴がいれば厳選して異世界の学校に通わせようと考えている。まっ、そんなとこだろ……」
「えぇ………」
まさかそんな事を本気で思ってる訳無いよなと思っても。カズは更に「あの連中ならそう考えていてもおかしくない……」と言って、余計疲れた顔で頭を抱えた。
「もう隠し通すことは出来ねえ段階まで来てる。ましてや凶星十三星座が動いている以上。なんらかの対策も考えなきゃならねえ。その為に戦力は多ければ多い程良いだろ」
だからと言ってその考えは無茶苦茶だ。
「でもよカズ。逆にそうした方が良いとは俺は思ったりするけどな?」
「あ?」
政府が何考えるんだと思っても、俺としては逆にありがたくもあった。
「だってこれでよ。世界の秘密がバレたとしても、これで世界は余計なことで悩まなくて良いだろ? それに一部の人だけが知るのって、なんだか不公平だと思うし」
「バカが。不公平もクソもあるかボケ。逆に世界中が大混乱するに決まってんだろうがアホ」
た、確かにその通りだけどよ……。
下手にバラせば、確かに世界は大混乱するのは目に見えてる。だけど……。
「俺は…、そうは思わねえんだけどな……」
「世の中には知らなくて良い事が山程あるって前にも言ったろうが。結果的に異世界の存在を知った大企業なんかがそこに眠る多くの資源を求め、結果的に争いが生まれる。それを塞ぐ為にも極一部の企業しか知らされず。その協力をしてもらっていたんだぞ。それを他からは独占しているって言われてみろ、こっちにも火の粉が飛んで来るんだぞ」
カズの言いたい事は理解出来る。それでも俺は納得出来ず。結局そのままレイナに、学園都市へと招かれる事になった。
この時の俺達は自分達のパートナーを1体ずつ連れて来ている。
だからこう思った。
恐らくその姿はテレビカメラに映し出されていて、全国ニュースになってるだろうな……。
けど既に門が出現してしまった以上、そんな事はもうどうでも良くなってた。
俺は"バーゲスト"のクロ。美羽は"カラミティー・ドラゴン 白変種"の銀月。沙耶は"ミスト・ドラゴン"のジーク。一樹は"ブラックスコルピオ"のダークス。ヤッさんは"ロックタートル"のトッカー。そしてカズは"ティラノス・グラビティム"のゴジュラス。
……正直、ゴジュラスがテレビニュースでその姿を報道された瞬間、世界中がその存在に驚いて注目が集まった事だろうな。
それだけじゃなく、銀月やジークの存在も同じように言えるし。クロやトッカー、ダークスは正直そんな3体の方が目立つから、そこまで誰も目が行かないと思うけど……。
だがしかし。
予想通り俺達の姿は全世界に報道されていた。だけど逆に各国はどうすべきか頭を抱えてたんだとか……。
……まっ、どうにかなるだろ! うん!
 




