第150話 暴かれた真実<和也side>
9月19日
ーー 東京湾上空 ーー
「我々は今! 先日 突如として現れた巨大な門の上空を飛んでおります! あちらを御覧ください! アレがその門です!」
「見えるでしょうかあの巨大な門を! あの門はいったい何なのでしょうか?! 門には見たことも無い文字や模様が描かれており!」
「現在巨大な門の周りには海上自衛隊によって周辺を封鎖しております!」
「不確かな情報ではありますが! あの門が現れた後! 巨大な鳥、またはトカゲが出て来たと言う情報が寄せられております!」
連日、ありとあらゆるメディアが東京湾上空から門を撮影していた。
その門はこちらの世界と異世界を結ぶ巨大なゲート。
門が現れた理由は、稲垣さん達によって引き起こされた現象だ。
俺の"曼蛇"を東京湾までどうにか持って行き。そこで封印を解いて門を創り出した。
親父と刹那の2人がその計画を止める事が出来なかった結果だ。
そうなったのは。その日、Bの他に招かれざる客が現れた事によって、稲垣さんをその場から逃がしてしまった事だ。その招かれざる客1人に親父と刹那の2人は苦戦し、廃工場周辺は火の海と化したのが原因に繋がる。
Bとは違い、そいつは容赦無く2人に攻撃してきたらしく、流石の親父でも重傷を負わされた。
……傷はステラの治癒魔法でなんとか回復する事が出来たが、稲垣さんを逃がし、結果的に今の状況を作らせちまった事に責任を感じて塞ぎ込んでるようだ。
ーー 夜城邸 工房 ーー
「親父の様子は?」
「だいぶまいってるみたい……」
俺は工房で、美羽達が倒したブレードタイガーの素材を使って新しい装備を製作していた。
工房内には俺の他に朱莉さんだけ。
朱莉さんは頭を抱えながら親父を心配していた。
「……刹那はどうなんだ?」
「……あの子も相当落ち込んでいるわ」
「……そうか。それと、親父達はまだ誰が出てきたのか話さねえのか?」
「……えぇ。でも……、誰なのか解るわ」
「誰だ?」
「………"ダークスター"」
その名が出た時、俺は手を止めた。
「確かなのか?」
「えぇ、ほぼ間違いなく。周辺を焼き付くしたのは彼による炎よ。周辺には緑色の炎がまだ残っていたんですもの……。緑色の炎を操れるのはダークスターしかいないわ」
俺はしばらく黙った後、溜息を吐いて再び手を動かし始めた。
俺の工房は地下にあって、そこに憲明達ですら一度も入れたことが無い。
工房は広めに造り、何種類もの道具を壁に掛けているし、他にはこれまで製作した武器や武具なんかを飾ってある。
そして俺の近くにはブレードタイガーの素材を使ったいくつかの武器や武具が置いてあるが、まだ完成していない状態で、最終段階の仕上げに取り掛かっていた。
「とりあえず、今仕上げる」
俺はテーブルの上に置いてある金属類に装飾を施す道具を手に取り、強化した美羽の双剣にとある花を手作業で彫っていた。
「……相変わらず器用ね。能力を使わなくてもそれだけレベルの高い模様を彫れるのはそうはいないわ」
「ありがとよ。"創造"と"変換"を使うなってお上に言われてるから、なんとか手作業で彫ってるが。そう言ってくれるなら手で彫るのも悪くねえな。……だが」
俺はあえて熱を通し、剣の表面を柔らかくして彫っているが、その方法はかなりキツイ。
そこで俺は朱莉さんに「黙ってろよ」と言って、仕上げにとある花を"創造"の力を使って融合させた。
「これで終わりだ……」
うん、我ながら美しい双剣になったんじゃねえか?
「お疲れ様」
「アイツら全員、集まってんだろ?」
「えぇ。大水槽前ホールに集まっているわ」
そう聞いて完成した武器や武具を"アイテム収納"でしまい。憲明達がいる大水槽前ホールへと向かう事にした。
大水槽前ホールは更に豪華な空間にした。
けど憲明達から、「どこぞのマフィア達が集まっていてもおかしくない雰囲気だよな」と言われたが気にしねえ。
そんな空間に俺の好きなクラシック音楽が流れ、大水槽前ホールに憲明達がいた。
そして新たにチーム"夜空"に加わったサーちゃんと、志穂の2人もいる。
他にはマーク率いるチーム"マッドマックス"と変態正義野郎のバニラ。
その他にも各地で活躍していた数チームがその場に集まっていた。
"サムライブレイド" "ラポルグ" "シャデスクム"
この3チームだ。
だが俺が現れた瞬間、空気が張り詰めて緊張し始めたのが伝わってくる。
恐らく、先日新たに付けられた二つ名。"悪竜"って通り名で緊張してんだろ。
前にマークも言ってたが、二つ名に"竜"がついてる奴はほとんどいない。と言っても、付いてるのは俺1人だけなんだけどな。
「(この者が悪竜。そこにいるだけだと言うのになんだこの圧迫感は……。敵に回せば、タダでは済まされないだろう……。しかし、ここで挨拶をしておかねば)」
「(聞いてたより美形だけど、なに? あの存在感……。話が違うじゃんギルマスゥ! もうっ、一応……、挨拶しておかなきゃまずいわよね……)」
「(コイツが夜城か。確かに、コイツに喧嘩を売りゃ絶対に死ぬな。まっ、敵になるわけじゃねえんだ。挨拶しておかねえとな)」
3チームの各代表が同時にソファから立ち上がり、俺の所まで来るとそれぞれが自己紹介がてら挨拶をした。
「お初にお目に掛かる! 我らはチーム"サムライブレイド"! 我はリーダーの"ジャオル"と申す! 日本を愛し! 日本刀なるカタナに心奪われた者達が集まったチームにござる!」
おもいっきり見た目からTHE・侍って感じのおっさんだな。
中身は知らねえが体格はゴツいとは思う。
チーム数は5人で、その全員が鎧を上から下まで装備し、腰には日本刀と脇差まで腰にさしている。
「初めまして。私は"ラポルグ"のチームリーダーをしている"ライラ"。どうぞ宜しく」
どっちかつうと、どこか男勝りな雰囲気を漂わせている女性だ。
歳はまだ20代前半ってところか。
ただ、彼女達から漂う雰囲気はそこいらの冒険者やハンター達と比べても、かなりの実力者だってのが解る。
メンバーは4人チーム。全員女性。装備は肌が露出している部分が多い物を身に付けている。
ちなみに、全員美人ばかりだ。
「俺は"リヒト・S・ボーラン"だ。気軽にリヒトって呼んでくれ。俺は"シャデスクム"ってチームのリーダーをしている。その……、宜しく頼む」
どこかにいそうな典型的な不良、に見える兄ちゃんだな。
でも根は真面目そうな感じがした。
シャデスクムのメンバーは全部で6人で、1人だけが女性。
チームはバランスの取れた組み合わせになっているようで、前衛が3人、後援3人のようだった。
するとリヒトが。
「実は俺達、ついさっきここへ来たばかりでよ。正直……、スッゲー緊張してる……」
そう言って自分達が場違いな場所に来ているんじゃないかって、若干不安そうな感じがした。
「そうか。でもここに来れたって事はギルドから認められたって事だろ? そんなに緊張しねえでくつろいでくれ」
「お、おぉ…」
そう言ったけどよ。
それはリヒトのチーム全員だけじゃなく、他の2チーム全員も同じく不安そうな感じがした。
ん~、どうしたらいいもんかな?
それに引き換え、俺が率いるチーム"夜空"のメンバー全員は、自然と空間に溶け込んで堂々としているし。
まっ、最初は誰だって緊張するか。
「またせて悪かったな。美羽、これはお前に頼まれてたやつだ」
とりあえず俺は"アイテム収納"から装備名を言いながら出した物を美羽に見せると、満面の笑みを浮かべて喜んでくれた。
まず、ブレードタイガーの頭蓋骨や魔鉱石等を使って作ったマスク。
"猛虎の面"
未だ名も無き剣を強化して、俺が名前をつけた双剣。
"彼岸花"
その双剣に俺は彼岸花の装飾を手で彫った後、本物の彼岸花と融合させた一品だ。
「わあぁ……、あはっ、ありがとうカズ!」
「お気に召したようでなによりだ」
早速美羽は"猛虎の面"を口の上に被せると、紐を結んできっちりと落ちないように装備する。
面と言ってもそれはマスクも同然で、虎の口だけを使用。その見た目は骨だから厳ついマスクの装備になっちまったけど。美羽は喜んでくれたから良しとする。
「"猛虎の面"には何故かブレードタイガーの魂が宿っていやがる。きっとお前を気に入ったんだろうな。作ってる時にそれを感じたから、下手な装飾とかは入れずに作らせてもらった」
「……そっか。それじゃこらから宜しくね」
不思議だった。どうしてブレードタイガーの魂がそこに宿ったのか。
でもそれより、そのブレードタイガーの魂が美羽を守ってくれるんじゃねえかって思えた。
次に美羽は彼岸花を手に取った。
「綺麗……。手にとって見ると、改めてその綺麗差が分かる……」
「気に入ってくれたか?」
「気に入るもなにも……。もう、絶対手放せないよ……」
まさかそこまで気に入ってくれるなんて……。
ククッ、嬉しいなぁ、まったく……。
本当に、まさかそこまで気に入ってくれるとは思ってもいなかったから、俺もそれが聞けて嬉しかった。
それで彼岸花は全体的に真っ白な剣に真っ赤な彼岸花が映える双剣だ。
美羽は一度 鞘に入れると左右の腰に取り付け。何度も逆手で抜いたり、そのまま普通に両手を交差する形で抜刀したりして、きちんと握れるかどうかを確認する。
そんな美羽を見て、俺は随分と様になったなって思った。
「んで、次は志穂。これはお前のだ」
取り出したのは両手剣で、ロングソードと呼ばれる種類の比較的、誰もが扱える大きさの剣だ。
だが素材はブレードタイガーの尾の先にあったブレードを加工し。魔鉱石等を使って生み出した、志穂 専用の両手剣になる。
"剣虎"
それが剣の名前だ。
加工する前はだいぶ大きなブレードだったが、志穂 専用であり、志穂の為に造るのだから大きさや長さを考えて加工しなきゃならねえ。
そして、その剣には虎をイメージした模様を手で彫ってある。
専用の鞘はブレードタイガーの革を使用。
「これが……、私の……」
「見た目は普通かもしれねえが、性能はかなりの切れ味だ」
「ありがとう……。ありがとうカズ!」
どうやら志穂も気に入ったようだな。
「サーちゃんと沙耶。お前らは本当に何も作らなくて良かったのか?」
作業に入る前、俺は2人にいらないと言われ、美羽と志穂の2人に良い装備が作れるように使ってくれと言われていた。
「私はどっちかと言うと、今は防御力が上がるようにしたいし」
「私も一緒~。それに私にはいざって時のガルちゃんがいるし~」
「そうか。んじゃ余った素材はありがたく、今お前らが着ているスーツとかの性能を良くするために使うことにする。だから後で集めておいてくれ憲明」
「おうっ、分かった」
渡し終えた俺はBARカウンターに行くと、執事姿のヒスイが中に立っていたからコーラを頼んだ。
「御待たせ致しました。コーラで御座います」
「ん、さんきゅ」
その後ヒスイは、コップを綺麗に拭き始めた。
マスターでも似合うなコイツ。
「あっそうだ。お前ら自己紹介は済んでんのか?」
「おぉ、お前が来る前に終わってんよ」
「そうか、なら良いんだ」
「ヒスイ、俺にもコーラ」
「かしこ参りました」
憲明がヒスイにコーラを頼むと、カウンターに俺達は2人して並んだ。
「(流石、あの悪竜が率いるチームなだけあって皆のレベルが高い)」
「(あぁ……、やっぱり緊張するなぁ……。しかもあの悪竜が今、私の目の前にいるし……)」
俺はこの時、3チームのリーダーがかなり緊張してるのは解ったけどよ。他に別の事でまさか緊張してるなんて思いもしていなかった。
「(悪竜もそうだけどよ……。なんだよ、あの夜空のメンバーがパートナーにしているモンスター達……。明らかに普通じゃないのがいるじゃねえか)」
特に…。
彼らの直ぐ後ろにいる、とても恐ろしいクマとゴジュラスに対してな。




