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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第1章 終わりの始まり
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第14話 調達<和也side>


 00:10



 その時間、廃工場では慌ただしく組員や自衛隊員が外に出たり入ったりを繰り返す事態になっていた。


「おいカズ! 火炎放射器の燃料と消化器の在庫が切れるぞ!」


 そう言ってミコさんは在庫がどれだけあるのか、大きな声で報告する。


「報告します! つい先程無線でお伝えした中型ワームですが、火炎放射器の燃料が不足してるため、現在アサルトライフルで応戦しております!」


 自衛隊の1人がそう報告してくる。

 その報告通り、内部では遂に今回のターゲットである中型ワームが群れになって襲ってきていた。


「若! 現在犬神班はその燃料が切れ、同じように中型のワームと殺り合ってます! 弾薬もあまり効果が無いみたいなんです! だから効果があるかどうか分かりませんけど今から手榴弾を持って行きます!」


「鬼頭班です! 弾薬と火炎放射器の燃料を貰いに来ました!」


 次から次えと組員達が戻って来てはいちいち報告し。次々と武器を手にして戻って行く。


「マズイ状態ですね和也氏」


 柳さんは眼鏡をクイッと上げながら俺に話しかけた。


「確かに。だがもう時期燃料と消化器が到着する筈だ。この際何を使ってでも良いからしのげ。それとも俺と骸が出ようか?」


 すると、それを聞いていた朱莉さんが無線の向こうから怒鳴ってきた。


『こちら朱莉。それはダメってさっきも話したでしょ! こんな雑魚、私達だけで充分よ! いざとなったら私も本気を出すわ。だからアンタは親玉が出て来るまでそこで待機!』


「ちっ」


 ようやく暴れられると思ったのによ。


「そうだぜカズ! いざとなったら俺達も中に突入して応戦する!」


 チッ、ミコさんまで邪魔しやがって。


「あぁぁぁ、わかったよ」


 仕方ねえ、今は諦めるか。


 すると、聞き覚えのあるバイクのエンジン音が聞こえてくるから、後ろを振り返って見るとそこには。


「盗んだバイクで走り出す〜」


 憲明が何か歌いながら来やがった。しかも後ろにいるのはまさかの美羽だ。


 なにしに来やがったこの馬鹿共が。


「ようカズ、待たせたなあ。頼まれたブツはこの俺が持ってきてやったぜ?」


 誰がいつ、何をテメーに頼んだよ馬鹿が。


 バイクの後ろには牽引トレーラーを繋ぎ。そこに火炎放射器の燃料や消化器等が積まれていた。

 しかし、その登場の仕方にその場は静まり返った。


「あれ?」


「あれ? じゃないわよノリちゃんもう!」


「なんでお前らが来たんだ?」


 意味が分からない。なんでお前ら2人がそれ持って来やがった?


「いやーっはっはっはっはっ。実は美羽を連れてちょっと走ろうと思ってたらよ。お前ん家の近くだからちょっと寄りたいって美羽が言うもんだから寄ったんだ。お前が居ないって言っても、「七海ちゃんがいるから」ってさ」


「んで?」


「んで、夜も遅いし帰るかって話してたら丁度オマエから電話が来て、話を聞いてコレを持ってきた訳だ!」


 まさかタイミング悪くその場にいやがったのか……。


 俺は自分の顔を手で掴み。俯うつむいた状態で少し怒っていた。

 いや、呆れていた。


「テメェなぁ……。まあいい、取り敢えずオメェらの説教は後だ」


「うえ?!」


 なんで怒られなきゃならないんだといった顔で、憲明はビックリした表情を見せるがまぁ、それは後回しだ。


「ブツが届いた。さあ、思う存分に殲滅しろ!」


 俺は大きく手を広げ、組員や自衛隊にそう告げる。


「「応!」」


「さあジャンジャン持ってけ! ありったけの燃料と消化器を持って行け! 俺と骸を出したくなけりゃお前等の力だけで殲滅しろ!」


 すると無線からはグレネードランチャーを使用しても良いかや様々な武器の使用許可を求める声が流れる。

 俺は柳さんをチラリと見ると、額から汗を流しながらコクリと頷く。


 すまねえ柳さん。


「派手にブッ放せ! 公安が後から何とでも言い訳してくれるそうだ!」


 その言葉に全員の顔が更に凶悪な顔の笑顔を作り。好き放題にありとあらゆる武器を使い始める。

 先程聞かれたグレネードランチャーを使用したのか、遠くで爆発音が鳴る。手榴弾を次々と投げているのか、連続的に破裂音も鳴る。他にはアサルトライフルの発砲音が廃工場内を支配する。

 そんな時、また黒いバンが入って来た。それは他の組員と共に来た七海だった。


「あ、あのぉぉ」


 七海はオドオドしながら俺に声をかけた。


「あ? 七海? なにしてんだお前まで」


 俺としてはまさか七海まで来るとは思っていなかったから、思わず真顔になっちまった。


「ご、御免なさいでした、ちゃんと電話でノリ先輩や美羽さんがいるのをお伝えしておけばよかったのに私ったら……」


「あ? 確かにそうだな」


「はうぅぅ……」


 泣きそうな顔になっても俺には無駄だ。


「それを言いにわざわざ来たのか?」


 俺は渋い顔になり、わざわざそれだけを言う為だけに来たのかと聞くと。


「そ、それと、何か役に立てないかと思って。あ、あと、一応こちらからも燃料を持ってきたです」


 黒いバンの中を覗くと、そこには火炎放射器の燃料がビッシリと積まれていた。

 そしてその中には……。


「なんでお前……こんな物まで持ってきてんの?」


 思わずそれにはさすがにひいた……。


「ひ、火がもっと欲しいって聞こえてたから。と、取り敢えず持ってってみよって私が……」


 そりゃあれだ。ジッポライターのオイルが無くなったから火をくれって言ったんだよ俺は。

 どう解釈して火がもっと欲しいってなるんだよお前……。


 そこで俺は七海と一緒に来た組員を見ると。組員は顔を引き攣つらせながらアハハと笑う。

 それもそうだろう、それはある意味恐ろしいモノだからな。だから俺はその組員の肩にポンと手を乗せ、スマンと一言謝った。


「なあところでカズ、俺達どうすりゃ良い?」


 憲明のその言葉に俺よりも早く、ミコさんが怒る。


「お前らこんな時間までなにしてんだバカヤロー! 今ここは大変だから今すぐ帰れ! ほら帰れ!」


「ま、まてよオッチャン……。一応、軽くだけど一通りのことはそこのナッチに聴いてるって」


 それを聞いた俺が七海を見た瞬間、ビクッと体を震わせてまた涙目になる。


 ……お前なあ。


「ご、ごめんなさぁい……」


「チッ。もう良いよミコさん」


「おん? 良いのかぁ? お前等の秘密がこの2人にバレたんだぞ?」


 秘密、つまりそれは俺達が今までこういった事を、裏でしてきた事が全てバレた事を意味する。


「いずれは話そうと思ってたんだ。それが早くなったと思えばそれでいいさ」


 いずれ打ち明けるつもりだった、だからそこまで怒る事はしなかった。


「あのぉ……」


 すると美羽が恐る恐る手を上げた。


「あ? なんだよ美羽?」


「実は私達だけじゃなかったりしてぇ……」


「「はあ?」」


 美羽のその言葉に、俺とミコさんの声がハモる。

 その直後、またしてもそこへバイクがやって来る。そのバイクを運転してるのは一樹で、その後ろに玲司と沙耶の3人乗りで来やがった。しかもその後ろからはパトカーが数台とお供を連れて。


「なにしてくれてんだこの馬鹿が!」


 さすがに俺は軽くキレた。


「ミコさん、柳さん、あのパトカーを頼む」


「ったく仕方ねえなあ」


「まったく、同意見ですね」


 その後、3人を追いかけて来たパトカーはミコさんと柳さんの2人がどうにか丸く収めることが出来た。

 追いかけて来た警官達はミコさんと柳さんが何者であるのか知るや否や敬礼をし。2人は一樹達を見なかった事にしてくれと頼んだ。そしてその事を交通課等も知ってると警官が言うと、それを後で柳さんが揉み消すとその場ではっきりと伝える。そして、左遷(させん)されたくなければ今見ている光景を忘れろ、あるいは口外するなと念を押す。

 それで警官達は青ざめ、逃げるようにしてその場を去った。


「ったく余計な事をしてくれやがって」


 それから淡々と5人は俺に怒られ続ける。

 どうやら一樹達3人は、途中で憲明達がここへ向かっている所で会ったそうだ。しかし、ここの周りは他の警官隊が通行止めしていた為、そこを強引に憲明達が突破。結果、パトカーに追いかけられる事になる。

 憲明達に事情を聞いていた一樹達3人は、早く憲明達を俺の元へ行かせる為に、自分達が囮役を買ったのだが、最終的にここまで連れて来てしまったようだ。

 俺は余計な事をして、他の無関係な者にバレてしまった事と、そんな無茶な事をした憲明達に激怒した。

 まっ軽くだけどな。

 その怒りかたを見てて可哀想と思ったからか、ミコさんと柳さんが俺を止めに入り、やっとのことで俺は落ち着き始める。


「いずれは話そうと思ってたのが早くなっただけだけどよ。なんなんだお前ら、パトカー数台引き連れて来やがってよ。来るのは良いが余計な者まで巻き込むなっ!」


「スマン……」


 憲明は流石に顔を(うつむ)かせ、俺達に申し訳ない事をしたと反省した。


 ったく、余計な事しかしやがらねえなこの馬鹿共が。


「もういい。取り敢えずそこで大人しく見てろ。おい七海」


「は、はい!」


()()()()()()


 憲明達だけでなく、ミコさん達も俺がいきなり何を言ってるんだって顔をする。七海は七海で、はいとひと言の後、右目の眼帯を取り外す。その下には、黄色い瞳が隠されている。すると急に雰囲気が変わる。


 悪いがお前の出番だ。


「よう、刹那」


「今晩は、()()


「頼めるか?」


「先輩の仰せのままに」


 喋り方もさっきまでとは違う。さっきまでは感情表現が豊かだったのに対し、今は冷静で落ち着き、その目はとても冷たい目をしている。

 すると刹那は両手を上げると、勢いよく下に振り下ろし、袖の下からナイフを出した。


「行け」


「御意」


 俺の言葉に、返事と共に刹那は物凄い速さで走り抜け、廃工場内へと姿を消す。

 ミコさん等の刑事、それに何故か憲明達5人はその代わり様に唖然とするばかりだった。


 あ? なんでお前らまで唖然とした顔になってんだ?


「相変わらず速いですね彼女は」


 ただ柳さん達公安は刹那の事をよく知ってる。


「おいカズ、今のって、ナッチだよな?」


 ……あ? 何言ってんだコイツ?


 憲明は訳が分からないとばかりに俺に聞いた。


「あ? 何聞いてたんだお前? 俺は刹那に代われと言ってたろ?」


 人の話しをちゃんと聞いてたのかこのボケは。


 俺は眉を八の字にし、憲明に今何を言ってたのか聞いてなかったのかと睨む。


「だからその刹那ってなんだよ!」


「あん? お前等、知らなかったっけか? アイツ、()()()()()なんだよ。そんで本来は今の刹那が表側の人格。七海が裏側で刹那が作った人格だ。だから刹那に主導権がある」


 ……話してなかったか? まぁいいか。


「人格を作って、二重人格って、初めて見た」


 憲明のその反応は正しいだろう。人格など、そう簡単には作る事など出来るものじゃないからな。

 でもそれをやってのけたのがあの刹那だ。


「アイツがなんで俺の家にいるのか、その詳しい話を聞いた事は?」


「無い」


 ……すまん。


「アイツは元々孤児でな。ふとしたきっかけで俺はアイツと知り合った。会った時からアイツの右目が黄色のオッドアイ。ある意味俺と一緒だ。だがそれだけじゃなく、アイツにはとある天賦(てんぷ)の才があった。それは"暗器"。アイツは暗器使いなんだ。だから服の下にはあらゆる武器を隠し持ってる。どこにそんな物をって武器(えもの)さえ隠し持っていやがる」


 俺は眉毛をまだ八の字にしたままの状態で、ニヤリと笑って説明をした。


「た、例えばどんな物とか持ってんだ?」


 いったいどんな物を隠し持っているのか気になった憲明に、俺は説明をする。


「さっきのナイフ2本、拳銃(チャカ)2丁、日本刀2本、モーニングスター、手榴弾数個、それから ーー」


「ちょっと待てカズ」


「あ? まだ全部言ってねえぞ」


 説明している途中で、なぜか憲明が青ざめた顔で(さえぎ)った。


「なぁ、それって何時も持ち歩いてるのか? 学校に行ってても?」


「あ? 持ち歩いてるけど、それがどうした?」


「「えぇぇ……」」


 憲明だけでは無く、他の奴らもそれを聞いて愕然とした。


 俺、何かおかしな事言ったか?


「お前それは銃刀法違反だぞ。刑事(デカ)としてそれはちょっとなぁ……」


 流石にと言いたげな顔でミコさんも困った顔をする。


 だから何がおかしいんだよ?


「いやまて、銃刀法違反の前になんかとんでもない名前を聞いたぞ」


 なんでか知らねえが、憲明達は呆れた顔でそれ以上は聞かなかった。


 あ? なんか俺に文句でもあんのかよ?



どうも皆さん、Yassieです!

さてさて、七海はいったい何を持ってきて皆を驚かせたのでしょうか? 僕だったらそんな物を積んで、普通の車で運搬したくありませんね、絶対に。

そしてここで憲明達がまさかの合流。

和也にしてみれば、憲明達が役に立つ訳じゃなく、逆に邪魔だって感じですよね。

では皆様、今回も読んで頂き誠にありがとう御座います!! 感想、いいね、⭐、御待ちしております!!

どうか宜しくお願い致します!!

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