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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第4章 炎と結晶
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第139話 炎と結晶5


 ゴジュラスの頭がまた一回りくらい小さくなる。目の後ろから2本、顎から2本、合わせて4本の大きなツノが生えて来るけど、そのツノはどれも禍々しい(カマ)状の形をしてて、後ろ向きじゃなく前に向かって生える。

 牙はより大きく研ぎ澄まされた歯が外側の歯茎から生えると、より凶悪差が増す。


<私は! 私はその為の進化をやめはしない!>


 黒紫色の筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)とした体が、より筋肉質になっていくし。あちこち生える逆鱗みたいなトゲが赤みを帯びて大きくなる。

 それに頭から背中にかけて、青く光る模様の入った剣の様な歪な形の背ビレが、逆鱗みたいなトゲに近い形になって、今までよりもっと大きくなり、背ビレは尻尾の中間まで生え出てきた。

 赤く明滅を繰り返していた胸は、両肩の結晶と交互に不気味な紫色に変わって鼓動しながら輝き。両肩に二つずつ、(つぼみ)状の結晶が花弁(はなびら)みたいな形状に変わる。

 両足はより大きく、尻尾は根元からより太く強靭で長くなって、その先端には背中のヒレ同様、歪な剣が幾つも生え出てきた。


<私は超戦闘生物として! より! 彼の方のお側に支える者として! ハアアアアアルルアアアアッ!>


 全身から溢れ出る膨大な魔力量が、殺気とはまるで違う恐怖に感じる。


 ちっ! 恐竜から怪獣モドキに進化したと思ったら、完全な怪獣らしい姿になりやがった!


 次にゴジュラスが渾身の力を込めて地面を踏みつけると。ゴジュラスを中心に巨大な結晶が次々と地面を割って生え出て来る。


<これが、私のバトルフィールド……。覚悟があるなら来るがいい>


「そうだな……、そうさせて貰うぜ!」


 フレイムバードを鞘に戻し、恐怖を感じつつもそのまま走り出した。

 走ってゴジュラスのバトルフィールドに一歩入った瞬間、俺は直ぐに違和感を覚えた。


 なんだ?! 急に体が重くなった?!


 そして2歩目で。


 今度は軽くなった?! なんだ?!


 俺が足を踏み込んだ事でゴジュラスはニヤッと微笑む。

 踏み込む前にバトルフィールド全体の空間が歪んでいる事に気がついたけど、ゴジュラスの顔を見て戦慄した。


 ヤバイ!


 後ろからクロ達も踏み入ろうとしていたのを俺は入って来るなと叫び、一端出て対策を考えようとしたけけど。


<そっちじゃない、こっちだ>


「っ?!」


 そこはもう、ゴジュラスのバトルフィールドの中だから逃げるに逃げれない。

 俺は吸い寄せられる様にしてゴジュラスの目の前まで何かの力で引っ張られると、急に足が重くなって動けなくなった。


<この力がなんなのか気づいた顔をしているな。だが、気づいたところでもう遅い!>


 そこからの俺はゴジュラスのサンドバッグ状態になった。

 殴られても殴られても倒れる事が出来ない。それどころかさっきみたいに吹き飛ばされる事が無い。


<クハハハハハハハッ!>


 一撃一撃がめちゃくちゃ重いし、何時 意識を失ってもおかしくない攻撃が続いた。

 それに気がついたのかゴジュラスは殴るのをやめて。俺の胸ぐらを爪で引っ掛けると、俺の指示で外で待機していたクロ達に目を向ける。

 そこには、俺がなす術なくボコボコにされているのを見ているからか、悔しそうな目でゴジュラスを睨んでいた。


<お前のパートナーを見てみよ、お前が一方的にやられている姿を見て怒っているじゃないか>


 意識が朦朧(もうろう)としながらクロ達を見ると、歯を噛み締めながらとても悔しそうな表情をしている。


<健気(けなげ)ではないか、お前の命令を必死に守って。どれ、お前がいくらか回復するまで、私はクロ達と遊ぶ事にしよう>


「やめ……ろ……」


 でもゴジュラスは俺の言葉を無視すると、そのまま俺は放り投げられて。ゴジュラスはクロ達の元へゆっくり近づいていく。

 そんなゴジュラスの後ろ姿を見た俺の目には、まるで悪魔みたいな姿に写った。


<さて、どう遊んでやろうか? ん?>


 くそ……っ……、体が……動……かね……ぇ……。


<お前達はこの世で何が1番恐ろしいか、知っているか? それは絶望だ。いくら強くなってでも、その先に絶望を感じてしまってはそれは(ひと)しく訪れる>


 絶望って言うなら今の俺とクロ達に言える。

 ゴジュラスはそう話しながら一歩ずつクロ達に近づいて行くと、クロ達は全身を震わせながら後退(あとずさ)りしていった。


<かつて、私は一度だけ絶望を感じた事がある。絶望を感じる事の無かった私がだ>


 クロ達の目にはきっと、ゴジュラスは凶々しい魔力を解き放ちながらやって来る絶望そのものでしかなかった筈だ。


<私が怖いか? 恐ろしいか? 違う……、それは違うぞ? 本当の恐怖とは己が信ずるものを失う時だ。お前達は何も失ってはいないでは無いか。そうだ……、お前達に昔話しを聞かせてやろう>


 そう言うとゴジュラスはかがんでクロ達を近くに来いと言うけど、怖いからか足が動かないでいた。

 そこでゴジュラスは何もしないと約束し、どうにか側まで来させると、俺や他の誰にも聞こえない様に、小声でなにかを話始めた。


 ……それから数分後、どうにか体が動けるようになった俺は立ち上がると、ゴジュラスも立ち上がって俺の方に振り返り、お互いの視線がぶつかった。


「……待たせたな」


<いや、ちょうど昔の話をする事が出来たから構わんよ>


「その昔の話し、今度俺にも聞かせてくれよ」


<気になるのか?>


「いったいどんな話しをしてたのか、気になって寝てられねえよ……」


<ハハハッ、良いだろう、話してやるとも>


「約束したからな? んじゃ……!」


 よろめきながも、俺は走った。

 今度こそ自分の力を見せて、ゴジュラスとアリスの子供を託してもらう為にも、再び挑戦しに走ったんだ。

 ゴジュラスはそんな俺を再び迎え撃つ為に、バトルフィールドを更に展開する。


<"結晶爆滅">


 ゴジュラスは右手に力を込めて握ると、バトルフィールドに存在する全ての結晶が突然爆発。

 爆発に巻き込まれた俺の視界が、煙で覆われて何も見えなくなった。


<"結晶弾">


 続けざまに爆発した結晶の破片がゴジュラスの周りに集まると、再び新たな結晶になって今度は弾丸の如く俺を襲った。


「"炎の弾丸(ファイヤーブレット)"!」


 俺はそんな爆発で倒れてる訳にもいかねえ。

 飛んでくる結晶を炎の弾丸(ファイヤーブレット)でなんとか撃ち落としながらゴジュラスの所に辿り着くと、両手両足に炎を(まと)わせた"炎の拳(ファイヤーフィスト)"で攻撃。けどゴジュラスは避けるどころか逆に拳で塞ぎつつ攻撃してきたから、逆に俺はその攻撃を交わして更に攻撃をした。

 それに俺の動きを読んでいたのか、ゴジュラスからまだまだ余裕そうな感じがした。


 くそっ! だったら!


 俺は煙を上手く利用しながら何度も姿を(くら)まし、ゴジュラスの隙を(うかが)いながら攻撃を仕掛けようとしたけど、そんな隙が微塵も無い。


 ヤバいとかそんなレベルじゃねえし! こっちがどこにいて何をしようとしてるのか先読みされちまう!


 ゴジュラスは俺の魔力とか気配を読んで上手く先読みしていた。

 流石は王者って呼ばれるだけある元恐竜なだけあるよ。ましてやゴジュラスには"闘争本能"ってスキルがある。だから、その本能があるからこそ今まで敵とかの気配を読んで()じ伏せて、生き延びてきたんだと思う。

 それを思うとやっぱり、ゴジュラスに勝つって言う事がどれだけ難しいことなのか解る。

 そんな中、ゴジュラスはまたバトルフィールドを展開して、下から不意に結晶が出て来たから一瞬焦ったけど、逆に俺はそれを足場にしてゴジュラスの顔面に炎を(まと)った蹴りをブチかまそうとした。けど蹴ろうとした足が捕まって、おもいっきり投げられて背中を結晶に叩き付けることになった。


「かあぁ……! ちっ……くショー! "炎狼斬(えんろうざん)"!」


 体勢が悪いなか、追撃される前にフレイムバードを抜いて渾身の炎狼斬(えんろうざん)を放った。

 炎の狼の形をした斬撃は地面を燃やしながら結晶を避けて、ゴジュラス目掛けて進んでいたんだけど、途中で方向を変えて結晶を破壊する事になった。


<無駄だ。私のバトルフィールド内でその様な攻撃は無意味だ>


 やっぱ……、そう言うことか……。


「……だろうな」


<ん?>


 俺はそれで確信した。

 ゴジュラスのバトルフィールドが何なのか、そのカラクリをようやく理解する事が出来た。


「お前のバトルフィールドは()()()()()()()なんだろ?」


<ほう?>


 言い当てられた事がよっぽど嬉しいのか、ゴジュラスは微笑んだ。


<どこで解った?>


「お前に引き寄せられた時だ。……俺は一瞬、引力か何かかと思ったけど違う。あの力は"重力"。"重力"でお前は俺を目の前まで引き寄せたんじゃ無く、()()()()()()


 そう答えると、ゴジュラスは本当に嬉しいのか笑いだして、<正解だ>と答えた。


<素晴らしいぞ憲明! そう! まさにその通りだ! だが何故その答えに辿り着けた? お前は私のステータスを見た事が無いだろう?>


 見たことねえけどお前にどんなスキルがあるのか大体の事は聞いてんだよ……。

 ……それに。


「お前が答えを口にしてたじゃねえか」


<……成る程、暴虐の星(アトゥロス・ノヴァ)か>


 そう言って今度は寒気を感じる微笑みを見せた。


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