第13話 死体の謎<和也side>
御堂が連れていた部下の1人がネズミの尻尾が千切れないように、慎重に運んで戻って来た。
俺はその部下に、何かあった時のために他の武器や道具を持って行かせるため、そのままそこで暫く休めと伝える。
そして、持ってきたネズミの死体は異様だった。
「どう思う? ミコさん、柳さん」
2人はなんて言ったら良いか分からなそうな顔だ。
「ん〜……、ただの死体とも思いたいが」
「そうですね。しかし、この腹部の溶け方は……」
死体は硫酸か何かで溶かされたとは思えない溶け方をしていた。
「ミコさん達2人は例の女の死体見てんだろ? アレとは一緒じゃないのか?」
「そうなんだがよぉ。似てるっちゃ似てるんだが、あの仏さんの死体はこんな変な溶け方してなかったぞ。なァ?」
「ええ確かに溶けてませんでしたね」
「おやっさんはどう思うよ?」
「あ? どうって言われてもなあ……。んん? なんだこりゃ?」
おやっさんって呼ばれてる刑事が何かに気づき、指でそれを指すそこには、ウゾウゾと動く何かがいた。
「おいまさか?!」
「例のワームの分身体?!」
その言葉に緊張が走る。
そしてそれを無線で聴いていた御堂達も休憩をやめ、何時でも死体の山を攻撃出来る様な体勢に入ったと無線が来る。
でも俺は嫌な顔をしながらも、どうにか落ち着いて言った。
「これ、ただのウジムシじゃね?」
ピンセットでそれを掴み、俺はそれを観察した。
気持ちわりいなクソッ。
「び、ビビらせやがって!」
「ふうぅ……」
ミコさんと柳さんはそれを聞いて安堵し、御堂達もまた安堵したみたいだ。
「このネズミは普通のドブネズミだな。だから体にこうしてウジムシとかがくっついてる。それだけ汚い所にいたりするからな。んじゃ、このウジムシは他にもついてるのか? それとも……」
俺はそのウジムシを何気に溶けた部位に乗せると、そのウジムシはもがき苦しみながら溶けて行く。
「は?」
何故? と思った。そして急いで虫眼鏡かなにか、拡大して見れる様な物を持って来いと言うと、柳さんが懐からそれを出し、俺に手渡す。
その溶けた所をよく見ると、その部位は今だに溶け続けていた。そして、そこには水色で半透明な何かが今だに食っている最中だった。それも大量に。
大きさは5ミリ程で、形は虫型のワームだが、まるで単細胞生物の様にも見える。体の真ん中には心臓なのか赤い球体が1つだけ。
俺はそれをその場にいる全員に見せた。
「ちっ! やっぱまだくっついてたんじゃねえか!」
それを見てミコさんは焦った。
「どうします? 和也氏」
どうします? んなもん決まってんだろ。
「……骸」
その瞬間、骸のひと睨みでその死体は超低温の氷に包まれ、粉砕されて消えた。
「な?!」
ミコさんは今、何が起こったんだって感じで驚愕した。
「相変わらずですね骸」
柳さんは柳さんで骸を称賛している。
〈ハアァァルルルルルル……〉
「御堂、聞いてたか?」
俺が無線で御堂にそう聞くと。
『こちら御堂。既に火炎放射器で死体の山を燃やしております』
御堂は既に動いていた。
『若、俺達はこの部屋にいましたが、大丈夫でしょうか?』
「お前達は恐らく大丈夫だ。大丈夫じゃなけりゃ服の一部が溶かされ、既に体内に入り込んでる筈だ。確認してくれ」
暫くして御堂から全員問題無いと連絡が返ってくる。
そのまま放置する訳にもいかねえ。死体が無くても各部屋を火炎放射器で焼き尽くすように、俺は指示を出した。
「なあカズよ。アレが今回のターゲットになるのか?」
ミコさんは幾らか動揺してはいるものの、その目は絶対にブレないといった目を見せる。
「あぁそうさ。そして俺のたてた仮説はやっぱ正しかったようだ。そして、恐らくあの小さいワームは幼体だろうね」
「幼体?」
「赤ちゃんって意味ですよ御子神班長。しかし、和也氏の仮説通りなのは良かったんですが。まさか幼体が出てくるとは想像してませんでしたね」
柳さんは冷や汗をかきながら眼鏡をクイッと上げ、俺に視線を向けた。
「柳さんの言う通り、俺も正直考えが甘かったようだ。単体だから繁殖出来ないと考えてたが、今のを見るに恐らく単体でも繁殖出来る個体。単為生殖個体と見て間違いなさそうだ」
単為生殖、それは近くにオスの個体が居なくても、メス単体で繁殖が出来る個体を意味する。
それを説明されたミコさん達は顔を真っ青にし、それはマズイと焦ってる風だった。
「どうすんだカズ!」
「どうするもこうするも、どうにか殲滅しないと非常に危ないでしょ」
「なに呑気な顔で言っていやがる! 朱莉達が心配じゃねーのか?!」
「ミコさん、俺達は表向きヤクザだ。ヤクザとして海外の組織を牽制してる。そして裏の顔はモンスターとかを相手にした専門だ。つまりプロだぞ? どれだけ危険だろうがそれが俺達の仕事。皆、作戦開始と同時に覚悟を決めて挑んでんだぞ? 俺にしてみりゃ皆大事な家族だ。その家族を、俺が信じないでどうするよ?」
「あっ、そ、そうだよな……、悪い……」
ミコさんは申し訳ないって感じで、素直に謝ってくれた。
それを無線越しに聴いていた朱莉さんは。
『皆聴いたかしら? カズは私達を信じてる。そんな私達がカズの思いを裏切る訳にはいかないわよね?』
『こちら犬神。朱莉さんの言う通りです』
『こちら御堂。俺も姉さんの言う通りだと思いますぜ? 取り敢えずこちらはあらかた燃やし尽くして灰にしてやりました』
『了解。一応消火はしてあるのかしら?』
『勿論ぬかりなく』
『そう、それなら良いわ。親玉とご対面する前に火事になったらシャレにならないものね』
『へへっ! 若にああ言われちゃ俺達は全力で応えませんとね!』
『その通り。さあ、親玉の子供を1匹残らず灰にしてから親玉をブチのめすわよ!』
『『おう!!』』
気合いの篭った返事が無線から聞こえ、同時にその返事は廃工場内から鳴り響いた。
そんな中、俺はとある場所に電話を掛けていた。その電話の先は勿論、我が家である夜城邸だ。
『はい! 七海です!』
「今から送るリストの物を大至急用意して持ってきてくれ」
『はい分かりました。直ぐに準備してお届けするです!』
篠崎七海。
綺麗な黒髪を憲明みたいなショートウルフにした小柄で可愛らしい中学生の少女。
右目には小さい蝶と薔薇が装飾された黒い眼帯をしているのが特徴で、その眼帯は俺が作ってやった。
七海は俺の妹なんだが、実は血の繋がりが無い、義妹だ。
『ふぅ、なにやら大変なようですねぇ』
「大変だよまったく」
そこで俺はタバコを取り出し、火をつけようとしたがどうやらジッポライターのオイルが無くなっちまったみてえで火が着かねえ。
「チッ。おい誰か火をくれ! ったく、まぁだから急いでくれ」
ついでにジッポライターのオイルも持ってきてくれたりしたら嬉しいんだけどな。
死体の中に隠れていた生物。そんなのがマジでいたらビックリですけど、現実にそういった生物はいるわけですから自然って怖いですよね。
さて、今回は如何だったでしょうか?
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ではまた次回に!