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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第4章 炎と結晶
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第136話 炎と結晶2


 俺はフレイムバードを構え直して、ゴジュラスに向かって走った。

 でもそこに、ヒスイが牙を剥き出しにして俺に飛び掛かってきた。


 ヒスイ?! そうだ……、ヒスイのこと忘れてた!


 そこにクロが援護をする為、ヒスイに長い鎖を伸ばしたけど、今度はそこをゴジュラスが鎖を掴んで邪魔をしに入って来た。


<遅いぞクロ>


〈グルルルルルッ!〉


<可愛いじゃないか。お前の援護を邪魔した私に歯を剥き出しにしている姿を見てみろ。実によく育てているじゃないか>


「褒めてくれてぇっ! ありがと……よっ!」


 ヒスイが俺に馬なりの状態で噛みつこうとしてるのを両手で防ぎ、どうにか振り解くとヒスイは後ろにいたゴジュラスの肩に乗り、低い唸り声で威嚇しだした。


「カノン!」


 カノンを呼ぶと、その体に咲く花に光を集め、次々と光のビームをゴジュラス達に放つ。


<"クリスタル・シールド">


 しかしゴジュラスは地面から巨大で長い結晶を出現させ、その結晶にカノンの攻撃が吸い込まれちまう。


 マジかよ! カノンの攻撃を吸収した?!


 かと思えば、その結晶は花の様な形状にって宙に浮き、中心からカノンが放ったビームを凝縮すると逆に、カノンに向けて放つ。


「避けろ!」


 言う前にカノンは既に回避していた。


「ちっ! カノンの攻撃が効かねえなんてっ!」


 次にカノンは避けながら身体に寄生している植物の(ツタ)を伸ばし、ゴジュラスに攻撃しようとするけど、その攻撃はヒスイの牙や爪によって全てが切り刻まれちまう。


<その程度なのか? ん?>


「んな訳ねえだろ! "炎の弾丸(ファイヤーブレット)"!」


 俺は得意技の炎の弾丸(ファイヤーブレット)を放ったけど、ヒスイは素早い動きで次々と交わしてまったく当たらない。その先にいるゴジュラスは防御する事なく全弾命中し、激しい爆炎が上がる。

 なのに、ゴジュラスはそんな爆炎からゆっくりと出て来ると、その体には火傷1つすら無かった。


「ちっ、やっぱSランクってだけあって強いな」


<それは違うぞ?>


「ん?」


<私がSランクだからどうしたと言うのだ? この世にはお前達がまだ知らない、Sランクとされる"最強種"がまだまだ存在する。(ゆえ)に、私はそんなSランクの中でもまだ弱い方だと思っている。それをお前は違うと言えるか? なにも違わないさ、何故なら私はSランクになりたての新参者なのだからな」


 そう言われるとそうかも知れないと思った。

 世の中には、Sランクとされるモンスター達は長い時間をかけ、数えきれない程の修羅場をくぐったからこそ、それだけ強い種族になれたんだ。

 でもゴジュラスは違う。

 ゴジュラスは自然界に生息するSランクのモンスターとは違い、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)状態のカズから"進化"スキルを与えられた。

 言っちまえばドーピングと同じだ。

 本来ならゴジュラスは自然界に存在しない、存在し得ない。それは美羽のパートナーであるステラも同じだ。

 でもそんな有り得ない事をカズは平気な顔でやってのける。

 そこで俺は改めてその存在に震え、怖くなった。


「やっべぇ、凄え怖くなってきたぜ……」


<ん? 何がだ?>


「確かにお前の言う通りだよ。でもよ……、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。って事はよぉ、お前はもう、()()()S()()()()()()()()()()()()()()ゴジュラス。だからそんな事 言わねえで、もっと堂々と胸を張れよ」


 そう言うと、ゴジュラスはハッとした顔で目を大きく開けた。


「お前、カズのパートナーだろ? 新参者? んなもんカズからしたら笑われるか怒られるような事をお前は言ってんだぜ? だからよ、カズのパートナーなら胸を張ってくれよ」


 俺は寂しくなったけど、そんな考えをしないでほしいからゴジュラスに微笑んだ。

 だって、誰もが認める、誰もが恐れる、誰もが尊敬する奴のパートナーなんだぜ?


<憲明……。 (あぁ、お前はなんて嬉しい事を言ってくれるんだ。) ……そうだな、確かに彼の方に対して失礼な発言だったな。気づかせてくれた事、礼を言う>


 そう素直に頭を下げられるとなんだかむず痒いんだけど、その後ゴジュラスは、今までとは違う雰囲気を(まとい)始めた。


<これはほんの礼だ。手を抜かなければ簡単にお前を倒す事になってしまっていたからな。失礼を承知で言わせてもらうが、私が本気になればお前は一撃で死ぬ。……だから私はその力を制御していた。気分を悪くさせてしまったのなら後で謝る>


「へへっ、別に気にしてねえよ。んなもん俺自身がよく分かってる事なんだからよ。逆にその気になられると困るってもんだ」


 あっ、やべぇ……、これ、やっちまったかもしんねえ……。


 内心では苦笑いを浮かべながら、やっちまったって後悔した……。

 だって、それだけゴジュラスが(まとう)雰囲気から強烈な寒気を感じるからだ。


「カノン、ソラ、クロ。お前達だけでヒスイをどうにか出来ないか?」


〈……ワフッ!〉


〈クウ? クウクッ!〉


 クロとソラは俺の頼みに気合を入れ直し、カノンは鼻を鳴らすと静かにヒスイを睨んだ。


〈グッグルルル? グルルッ……、グルァッ! グルァッ! グルァッ!〉


 ヒスイは空に向かって鳴き始めたけどピタリとやめ。足の凶悪な爪を地面にコツコツと鳴らしながら歯を剥き出しにし、いつでも来いと言わんばかりに睨み返してくる。

 そんな4匹は静かな睨み合いを続けていたけど、先に動いたのはクロだった。

 クロは前に飛び出すと長い鎖を左右から攻撃。ヒスイはその鎖に噛みつき、もう片方の鎖が横薙ぎに迫って来ると、足の鉤爪で受け止めて火花が散る。


 なんつー器用なことしやがんだアイツ!


 そこにカノンがツノを前に突き出して突進するけど、ヒスイはそんな状態なのに簡単に避ける。

 けどこっちの攻撃の手はまだ終わっちゃいない。

 次に動いたのはソラだ。ソラは銃を取り出し、4本の手に持った4丁拳銃をヒスイに向けて撃ち始める。

 でもその前に……。


 ソラさ~ん? その4丁拳銃はどっから出したんですかね?


 聞くに聞けない状態だからその事は後にしたけど。

 んで、ヒスイは流石にマズイと感じたのか、ソラを睨みながら時計回りをする様にして逃げる。

 逆に、反時計回りにカノンが(ツル)による横薙ぎ攻撃をするけど、それを簡単に回避。

 するかと思った。


〈グルァッ?!〉


 カノンの(ツル)に隠れクロの鎖が隠れていて、鎖がヒスイの足に巻き付くと、そこへクロが脇腹に体当たりをしてヒスイに攻撃が当たる。

 思わぬ攻撃でヒスイは地面を軽く転げたけど直ぐに体制を立て直し、クロへ視線を戻すと。今度はソラが撃つ銃弾の弾幕がヒスイを襲う。


〈ギエェェッ?!〉


 銃弾は本物だ、下手に当たれば死ぬ。

 それが例えラプトルと言ってもタダでは済まされない傷を負う事になる。

 でも相手はヒスイ。カズのパートナーでありカズが育てている恐竜では無く最早モンスターだ。

 その皮膚は下手な銃なら傷一つ付けられない程部厚い。理由は知らねえけど、この異世界で生き延びる為に、今の姿へ独自の進化をした太古の殺戮兵器達。

 だから銃弾が体に当たっても、そう簡単に傷つく事は無いだろうけど、それでも当たると痛い。

 体にアザができて、暫(しば、)くの間は()れるかも知れない。


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