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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第4章 炎と結晶
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第135話 炎と結晶1


 12:55


 ーー ゼオルクの街 訓練場 ーー



「見せてやろうぜ、俺達の力を。そんでゴジュラスとアリスの子を引き取り、俺達で育てよう!」


〈ワオーーン!〉

〈クウクウ!〉

〈クオーーン!〉


 俺達は気合を入れ直して訓練所に入った。

 入ると、訓練所には俺達の話を聞いたのか、多くの人達が観戦しに集まっている。その先に、カズと美羽の二人が俺達を待ち構えていた。


「来たな?」


「待ってたよ、ノリちゃん」


 だけどそこにはまだ、ゴジュラスとヒスイの姿がない。

 まぁどんな試合でもそうかも知れないけど。先に入るのはチャレンジャーが多いし、それを迎え撃つ側の方が後からやって来るパターンだって多いからな。

 とりあえず中心に行くと、カズは凶悪な笑みを浮かべた。


「随分と気合が入ってるじゃねえか」


「当たり前だろ? 気合を入れなきゃなんねえんだからよお」


「ふん。まあ精々頑張って立ち向かうと良い」


 そこでカズが左手に付けている時計を確認すると、時刻は12時59分を指していた。


「時間だ。覚悟は良いか?」


「ああ!」


 カズが軽く鼻で笑うと指を鳴らし、その後ろからゆっくりと、ヒスイが現れた。


「ゴジュラスは?」


「そう慌てんなよ。ほら、来たぜ?」


 カズが空を見上げた先に、何かが勢いよく飛んで来る。

 それがゴジュラスで、着地すると地響きと土埃(つちぼこり)を立たせた。


「派手な登場だな」


<時には演出も大事なのだよ。せっかく多くの客人が集まっているのだ、楽しませないとな?>


 そう言ってゴジュラスもカズみたいに凶悪な笑みを見せ、俺は心の底から「お前ら家族だわ」と言って笑う。


「んじゃ、俺達は観客席で観させてもらう。後は頼んだぞ? ゴジュラス、ヒスイ」


<仰せのままに>


〈グルックッ、グルアァッ〉


 美羽はカズと一緒に、アリスがいる観客席へと向かう。

 その後ろ姿にゴジュラスは目線を軽く向けてから、視線を俺達に向き直した。


<準備は良い様だな。では始めるとしようか?>


「あぁ」


 俺は腰に携たずさえた"フレイムバード"を抜き、ゴジュラス達に向ける。


<……来い!>


「行くぜ!」


 俺達の、ゴジュラス達に認めさせる為の試合が始まり、それをまっていた観客が一斉に声を出した。


「お〜〜い! の〜り〜あ〜き〜! 頑張れよ〜!」


 そんな中、聞き覚えのある野太い声が響き渡る。

 マークのおっさんだ。その後ろにはいつものヒャッハーなお兄さん方も応援してくれている。


「なんだよ、マーク達も観に来ていたのか」


 声はカズと美羽が座っている席にまで届いてるのか、お互いに視線が合うと、マークのおっさんがカズに向けて良い笑顔で親指を立てる。それはもう良い笑顔だ。


「マークさん、もしかして仕事せずにサボってる?」


「かもしんねえな」


 すると、俺がなんの反応もしないからなのか、いきなりマークのおっさんが大斧を投げてきた。


 あっぶね! なにしやがんだあのおっさん?!


「コノヤロー! 憲明! いい加減 気づいたらどうだボケ!」


「お、お頭?!」


「まずいですってそれは! 流石に怒られますって!」


「んな事 俺にはかんけえぇぇぇ……」


 そこに、[物は投げないでください]、[発見次第、お仕置きします]と書かれたプラカードを持った、4匹のラプトル達がマークのおっさんを静かに取り囲み、睨んでいる。


 こっちは真剣だしそんな余裕ねえんだよ!


 とは言っても、プラカードに何が書いてあんのかまで見たんだから、まだまだ真剣になれてなかった俺も俺なんだけど……。

 ちなみに、マークのおっさんを取り囲んでいたのはベリーとレモン、そしてメロンとカシスだ。

 突然現れたカズの家族に対し、マークのおっさんの手下の人達は恐怖でそこから離れると、改めて俺とゴジュラスの戦いを観戦し始めた。


 は、薄情だなぁ……。


「は……はは、じょ、冗談だって、ね? ね?」


〈グルルッ、グルァッ! グルァッ!〉


 おっさんの顔スレスレまで徐々に近づいて睨んでいた4匹のラプトル達が一斉に叫び出し。おっさんの両手両足をそれぞれが噛みついて何処かに運び始めた。


 あぁ、ご退場願うのかな? っと?!


<よそ見とは感心せんな>


「わ、悪い! ただ、マークのおっさんがレモン達にどこかに連れてかれる姿が見えたからさ……」


<あぁ……>


 そんなことを話すと、ゴジュラスもやっぱり気にしていたのか、チラッとカズの方に視線を向けた。


「や! やめて〜! 俺が悪かったから! いや〜〜!!」


 連れて行かれた先は勿論、カズの所だ。


「何してんの? アイツらの邪魔をする気か?」


「いや、そんなつもりはねえんだけど……。な?」


 何を話してんのか知らねえけど、マークのおっさんが「な?」って言ってるような爽やかな笑顔をカズに見せると、カズも爽やかな笑顔を返した。

 しかしカズが指を鳴らすと、そこで待機していたラプトルのダリアが立ち上がり。

 おっさんの大切な、それはもう男にとって大切な息子に対し。ダリアは下からによるジャンピング尻尾ビンタをかましやがった……。


「ア゛ア゛ッ?! オ゛ッオ゛オ゛……オ゛オ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛…………」


 うぅわっ、いったそ~……。


 それで目玉が飛び出る勢いで叫ぶと項垂れ。周りにいた多くの人達の中でも、目の前でそれを見てしまった男性陣はえもいわれぬ顔で大事な息子を抑えて共感していた……。


「マークと同じ様なことした奴は問答無用でお仕置きだコノヤロー!」


〈グルッグルッ〉


 それを聞いてラプトル達は目を光らせると。武器だけじゃなく、なんであろうと物を投げる奴がいないか探し始めるのだった。


 御愁傷様です、おっさん……。


 その後すぐ、俺達はお互いに一度溜め息を吐いて仕切り直した。


「うおっ!」


<どうした? そんなものか?>


「んな訳ねえだろ! 行くぞクロ!」


<ガウッ!>


 そうは言っても、凶悪な尻尾による薙ぎ払いをかわしつつ、前に行こうとしても一撃一撃が強力過ぎてまともに近付けない。

 元々ゴジュラスは"ティラノサウルス・レックス"。最強クラスの肉食恐竜だ。

 その恐竜が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)になったカズのお陰で、"進化"スキルを手に入れて今の姿に変わった。

 恐竜だった頃とは違い、足腰が発達して尻尾を引きずる立ち姿になり。後ろ足は力強く、かなり大きくなっている。

 しかもその尻尾がかなり長い。イリスみたいなオオトカゲみたいに、体の3割近くはある長さだ。

 上半身もかなり筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)としてるし、両肩の幅が広く、太い腕からのパンチや鋭利な爪の攻撃は正直ゾッとする。

 しかも手の指は俺達と一緒で五本指。

 そんな腕が付いてる肩には、角か翼みたいな形状のデカイ結晶が存在しているし、全身に逆鱗みたいなトゲが生えている。

 ちなみに頭は一回り小さくなってるけど、流石は恐竜の王者と言われるだけあって、噛む力は以上だ。

 そんな恐竜から怪獣みたいに進化したゴジュラスに、俺達がまともに手が出せる筈ねえんだ。

 だけど、認めさせるにはそんな弱気なんざ邪魔でしかない。


「クロ! カノン達と一緒に俺の援護を頼む!」


<ガウッ!>


 そう頼むけど、ゴジュラスとはまた違う厄介な奴がもう1匹いた。


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