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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第4章 炎と結晶
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第128話 遭遇<御子神side> 1


 その日、俺は歌舞伎町を歩いていた。


「今日も今日とで、街は賑わってんな」


 まっその分、犯罪が多い訳でもあるんだが。


「お疲れさまでした!」


 ふと、店から出てくる連中に挨拶する声が聞こえて目を向けると、見知った連中が出てきていた。


「ん~? カズ? オメェ何してんだ?」


 しかも御堂達まで連れてよ。


「なんだミコさんか。随分と久しぶりじゃん」


 なんだミコさんかじゃねえよまったく。


 笑みを浮かべ、カズが俺の元へやってくる。


「なんでこんな時間にオメェここにいんだ?」


「あっはは、なんでって、ここのクラブは俺が裏のオーナーとして経営しているからさ」


「裏オーナーってオメェ……」


 話は聞いちゃいたが、まさかここだったのかよ……。


 俺は警察としてカズが何者なのか知っている。だからその言葉にどこかドッと疲れを感じてしまった。


 ……今から数ヶ月前、俺とカズはとある事件で再会して以来、全然会っていなかったと言う事もあってかそれでもカズに会えて嬉しくもあるがな。

 そんな俺だからこそ、カズから漂う匂いに気がついた。


「ところでなんでオメェらから血の匂いがすんだ? 何かあったんじゃねえのか?」


「……ちっ」


 舌打ち。ってことはやっぱ何かあったな?


「よぅ、なにかモンスターがこの辺に現れたのか? そんで誰か犠牲者が出たのか?」


 そう聞くと、始めは黙ってたが何があったのか教えてくれた。

 どうやら平木組の平木がモンスターを密かに飼っていて、それが暴れた為に平木自身と幹部連中を入れた十数人が死んだって事らしい。


「その事で問い詰めようとしたらヤロー、トチ狂ってモンスターを解き放ちやがってよ」


「それで?! どうなった?!」


「ちゃんと始末したよ」


「そうか……。それなら中を見させて貰うぞ」


「いやいやいや、ミコさんが出る幕じゃねえだろ。既に()()()掃除係を呼んであるって」


 掃除係をもう呼んだのか。

 ……まっ、今日は何時もより早く終わったんだ。首突っ込まねえでさっさと帰ることにするか。

 でもな……、せめてどんなモンスターがこちらの世界に侵入したのか教えて貰うか。


 そう思って質問すると。


「"グレムリン"って知ってるか? それの近縁種で"グエルル"って奴さ」


 ……聞いたことねえ名だな。


「……そうか。それで? 中にはまだ客がいたんだろ? 大丈夫だったのか?」


「それには心配ねえよ。他のお客は皆んな普通の席にいたし、平木達はVIPルームにいたから感づかれてはいないよ。だからそんな事があったから取り敢えず今日はもう店を閉める事にした」


 俺は深い溜息を吐き、後頭部を無造作にかきむしった。


「平木が死んだんじゃマル暴の連中が大騒ぎするぞ。ただでさえ平木は確か出所したばかりじゃねえか。それに平木組はオメェんとこの傘下に入っていたよな? オメェらの事を知らねえ連中にしてみれば、内部抗争があったんじゃねえかって疑う奴が出て来るだろうよ」


「んなもん心配ねえよ。だからこその公安だろうが?」


 なんだか公安がいい様に使われていて可愛そうに思えてならねえなと、心からそう思えた。


「まぁ、"(やなぎ)"とかに任せておきゃ良いだろうけどよぉ……」


 この時、俺はふとある事を思い出した。それは先日のバルメイアとの戦争の件についてだ。

 伝説の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)って化け物になり、半分暴走。それに何故、カズがそうなったのかって理由もちゃんと聞いてる。


 ……よく見りゃ左目が以前より光っているな。


「どうしたミコさん? なんか聞きたい事があれば聞くだけ聞くぜ?」


「いや、良い。それよりもオメェ、朱莉をあんま心配させる様な事すんじゃねえぞ?」


「なんでいきなりあの人が出てくんだよ?」


「なんでって、そりゃ……」


 いや、やめておくか。


「ん?」


「まぁなんだ………。それよりも分かったか?」


「分かった分かった、出来るだけそうするよ」


「そこは絶対に守るって言えよオメェ」


 ったくよぉ……。


 とりあえず俺は軽く怒るだけにして、それ以上は何も言わねえことにした。


〈クックックックックッ、グルァッ〉


 その時、聞いたことのねえ、甲高い鳴き声がビルの屋上から聞こえた。


〈グルァッ、グルァッ〉


「なんだ? 鳥か?」


 鳥にしてはなんだか変な気がするが。


「いや、鳥には近えけど鳥なんかじゃねえよミコさん」


「ん? そりゃどういう意味だ?」


 カズがとある屋上に視線を向けている事に気づいた俺は、同じようにそっちを見た。


 ん~?


 暗くてよく見えねえけど、よ~く目をこらして見てみると。そこには黄色い目を光らせた何かが2匹、屋上から覗き込む様にしてこっちを見ていた。


「モンスターか?!」


「モンスターと言われたらモンスターだ。丁度いいから紹介してやるよ、ミコさん」


「あ?」


 なに訳の解らんことを言ってんだ?


 そう思いながら、俺は訳がわからねえままカズに連れられて、近くにある廃ビルの中に入った。


「ミコさんって恐竜って好きか?」


「あ? なんだよいきなり」


「だから恐竜は好きか? って」


「ん〜そりゃ好きかと聞かれたら好きかもな。恐竜は男のロマンの対象だからな」


「そうか、そりゃよかった」


「ん〜?」


 なんだいったい? なんでまたいきなりんなこと聞いてくるんだ?


 カズが何を言いたいのかさっぱり理解出来ねえままだが、俺の返事を聞いてカズは満面の笑みを浮かべていた。

 だがコイツがなんの理由も無く、そんな事を聞く筈がねえってことが解る俺は、まさかと思って冷や汗が流れ始めていた。

 そのまま廃ビルの5階まで階段で登り、その階の中央にカズは立つと、俺の方へ振り返る。


「紹介するぜミコさん。()()()()は俺のパートナー達であり、家族だ」


 そう言うと、柱の影からそいつらは姿を現し。俺は今の時代にそんな生物がまだ生き残ってるとは到底信じられねえ思いでいっぱいになった。


「おい、まさか……嘘だろっ?!」


 驚いて腰が抜けそうになったが、なんとか倒れるって無様を晒さらしはしねぇよ。


()()()()()()()()だよミコさん」


 両手を軽く広げ、カズは今日1番の凶悪な笑みで俺に紹介してくれた。


「ヒスイ、ダリア、ベリー、レモン、メロン、カシス。皆んな兄妹で俺のファミリーだ」


<クルルルッ>

<クククッ、クルルァッ>


 夢幻なんかじゃねえ、どう見ても本物としか思えねえ! まさか本当に太古の生物が生き残っていたって言うのか?! いやまさか! あるいはカズが復活させた?! カズだったらやりかねねえ!


「そしてコイツが群れを(たば)ねるリーダー、アリスだ」


 紹介されると、白い体に桜の花びらが舞っている様な赤い模様を持った。()()()()()()()()()、ヴェロキラプトルがカズの真横に現れた。

 アリスって名前のヴェロキラプトルは他の奴らとは違い、どこか異質な雰囲気を(まと)いやがる。正直、このアリスに近づきたく無いと、俺の本能がそう(ささや)いていた。


「このアリスは他のラプトルとは違い、知能がズバ抜けている。んで、今コイツの腹には卵があって、もう時期その卵を産むんだ。本当は家に居て欲しいんだけど、たまあに運動がてら自由にさせてる」


「自由に外に出してるだと? それが本当なら万が一誰かを襲ったらどうすんだ?!」


 と言っても、絶対にカズはこのヴェロキラプトル達を信じているに違いねぇ。何故ならそれはペットであるならばだからであり、コイツらはペットなんかじゃなくカズの家族。

 だからこそ、そんな家族をカズは信じているって目だ。


「ミコさんの言いたい事はよく分かる。でもコイツらは俺がテイムした恐竜でありモンスター。ましてやコイツらの首にはGPSを仕込んだ特殊な首輪を付けさせてるから、いつ何処にいたのかとか調べたら直ぐに解る。だからと言ってコイツらが首輪を外す事は無い。外せば直ぐにそれが解る様にしてあるからな」


「成る程な……、だから自由にさせてる訳か。だがそいつらを誰かに見られたらどうするつもりだ? ましてやなんでこんな人が多いこんな所にまで来ている?」


 信じるのは解るさ。だがそれ以前に、もしコイツらが一般市民にでも見られでもしたら、大問題になりかねねえからな……。


「そこも安心してくれよ。コイツらには"気配探知"ってスキルを持っているから、索敵出来る範囲内であればどこに人がいるのか解る。だから人に見つかること無く、自由に動く事が出来るのさ。それとここにいる理由は俺を探しに来たんだろ」


 探しに?


「コイツらの嗅覚は犬以上。索敵しながら俺の匂いを探し、ここまで来たんだろ。単に散歩のついでに探してみたら、そこで俺を見つけた。そんなとこだろ」


〈クルックックックックックッ〉


 するとアリスってヴェロキラプトルがまるでその通りだって言ってるつもりなのか、軽く鳴くと何度も頷きやがった。

 どうやらカズの予想は当たっていた様で、カズは隣に立つアリスの頭を優しく撫で始めた。


「……はあぁぁぁ、わあったわあった、お前を信じるよ」


 もう盛大に溜息しか吐くしかねえ。

 仕方ねぇから、ここはカズを信じる事にするか。


「分かってもらえて良かった。ちなみに本来のラプトルは大きくても2メートル程しか無かったってのは知ってるか? でもコイツらは違った。初めて会った時から通常よりもデカかったんだ。そして今はそれよりも大きくなり、現在の全長は約5メートル近く、背丈も倍以上に成長している」


「何を食ったらそんなにデカくなるんだよ……」


「餌は牛や鳥、豚、肉なら何でも骨ごと食っちまう。時には魚を与えたりしているな」


「はっ、流石は肉食恐竜ってだけあって、肉なら何でも食っちまうのかよ。そんな危険な生物を手懐(てなず)けちまうオメェが1番怖えけどな」


「クククククッ、可愛いもんだぜ? 知能が高えから何でも覚えちまう。なあ?」


〈グルァウ、クルックックックックックックルルルッ〉


 まぁ、羨ましくないって言ったら嘘になるけどよ。そんな凶悪な恐竜がカズに(なつ)くって言うのはまぁ、自然なことなんだろうよ。

 なんせ全部のヴェロキラプトル達が幸せそうな顔をしてるからな。


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