第126話 悪魔のバイク
その日の夜。
19:00
「これで満足か?」
「さっすがカズ! やっぱ頼めるのはお前しかいねえよ!」
そう言うと、まんざらでもなさそうな顔でカズは若干照れた。
俺達がいるのは夜城邸のとある地下にある車庫で、そこには車や大型バイクが何台も止まっている。
それで俺がカズに頼んだのはその内の一台。
カワサキの"Ninja400"で2023年モデル。カラーはエボニー×メタリックマグネティックダークグレーの大型バイク!
「マジカッケー!」
そう、俺はこの大型バイクがめちゃくちゃほしくって頼んだんだ。
しかもカズが愛用しているバイクだから、まさかマジでくれるなんて思わなくって、俺はマジで嬉しかった。
「やったやった! マジで欲しかったんだよ俺!」
「喜んでくれてなによりだコノヤロー。まさかそれを要求されるとは流石に思ってもいなかったよコノヤローが」
「でも本当によかったのか?!」
「なにを今更言ってんだ? あ? まあ俺にはそれとは違うのをまだ持ってるから良いよ、持ってけ」
お前は神か?!
「マジで感謝!」
「でもお前、こっちでは乗るなよ? 乗るなら向こうの世界だけにしておけよ?」
それは間違い無い。
下手にこっちの世界で乗って、それを警察に見つかりでもしたら俺が捕まっちまう。
今の俺の歳で乗る事自体が間違ってるんだし、大型バイクの免許なんてねえんだからよ。
つまり……、無免許ってことになります!
でも原付の免許はある。
「しかしなんでこれがあるって知ってんだお前?」
「お前がいない間、親父さんが見せてくれたんだよ」
「あのクソ親父……」
俺達2人がそんな話をしている中、一樹とヤッさんも車庫内にある大型バイクを見て目を輝かせていた。
「おい見ろよヤッさん! これ"R 1250 R ロードスター"だぜ?!」
「こっちには"1290スーパーDUKE R"!」
「その2台も俺のだ」
なんですと?!
カズがそんな事を言うから、一樹とヤッさんは興奮しだした。
はい、勿論俺もです。
「まぁ、俺のお気に入りはコレだけどな」
そう言って黒いシートをはずすと。
「「カッケー!!」」
俺達3人はより一層目を輝かせて叫んだ。
「なんだよそれ?!」
「コイツは俺が時間をかけてカスタムしていたバイクだ。元は"ハーレー"なんだが、カスタムしてるうちにハーレーだった頃の原型をほとんど留めていないくらいまで改造しちまった」
ま、魔改造……、しやがった……、だと?
元は"ハーレー"って大型バイクだったんだろうけど、カズが言う通り原型を留めていない、超大型バイクがそこにあった。
バイクの前部分は大きく流線型になっていて、なんだかワニの頭? アクアみたいなモササウルスの頭? まぁそんな形をしていてる。その前方にちゃんとライトが1つある。
ハーレーを知る人にして見れば、どうやったらそんな風に魔改造出来たんだって思えるだろうよ。
ん~……、カッコいい……。だけど、エンジンはどんなのを積んでるんだろ?
「んで、ここをこうすると」
カズがとあるボタンを押すと、車で言うボンネットみたいな上に"ガトリングガン"2丁が顔を出しやがった。
「お、お、お前……」
「どうだ? 例えばこれで敵を追跡しつつガトリングガンで攻撃。更に"ゼイラム"で俺の愛銃である"ブローニング M2A1 重機関銃"を4丁持たせて蜂の巣だ」
正直そんな状態のカズに追いかけられたく無いのが本音です。
「ちなみに今、バイクじゃねえが俺が持ってた改造銃あるだろ? アレを更に強化して魔改造してる最中だ」
あぁそぉですかぁ……、更に魔改造したのかぁ。ハハハッ、ハハッ……ハッ……。
「それに、このバイクに乗ってる最中は自動運転をしてくれるようにもしてある。だから両手に銃を持ってても自動運転するし、追尾機能も搭載してあるからただ乗ってるだけで楽だ」
おいちょっと待て……。
「お前、AIとかは流石に……」
「勿論AIは搭載済みだ」
「お前、それってもう……、ある意味バケモノじゃねえか」
背中から冷や汗が流れ出て冷たい……。
「でも、まだそこまで動かないよな?」
一樹が恐る恐る聴くと。
「あ? 俺が動かないのを作ると思ったか? ちゃんと動作確認したし、コイツはいつでも動ける。ましてやたまあに"アリス"達と走ってるぞ?」
そっ! それはそれでかなり羨ましいぞ!!
アリスってのはカズのパートナーで、恐竜"ヴェロキラプトル"の雌。
アリスの他に、ヒスイ、ダリア、ベリー、レモン、メロン、カシス。合計7体のヴェロキラプトルがカズのパートナーにいる。
しかしこの時、まだとある事にカズは勿論、俺達はまだ気づいていない事が実はあった。
「いやいやいや、アリス達とバイクで走るって、めっちゃ憧れるじゃねえか」
「だろ? だったら今度の日曜、一緒にどうだ?」
「いいね、行こうぜ!」
「だったらせっかくやったバイクをちゃんとお前が整備とかしろよ? ガソリンはいくらでも用意出来るが、自分のバイクぐらい自分で整備してやんねえとな」
「勿論わかってるって」
俺はまた目を輝かせ。カズから貰ったバイクを磨き始めた。
「お前らもどうだ?」
カズに誘われ、一樹とヤッさんは「勿論」って笑顔で答えた。
「んじゃ一樹、お前には俺が持ってるバイクを貸してやるからそれ乗れよ」
「マジで?!」
「そのかわり壊すなよ?」
「そ、それ言われると怖いな……」
「ヤッさんはどうする? 乗れるなら貸すぞ?」
「ぼ、僕は乗れないからな……」
バイクが好きでもヤッさんはバイクが乗れなかったのか……。なんか、残念だな……。
「男ばっかりズルイ」
すると、話を聞いていた沙耶が自分も行きたいのに、どうして声をかけてくれないのかって、両頬を膨らませながら悲しげに怒っていた。
「たまには良いんじゃない? 男同士だけで出掛けるのも」
桜ちゃんは沙耶を慰め、志穂さんはそんな俺達になんだか呆れていた。
「それなら、たまには女同士で出掛けるって言うのはどう?」
「うん、そうだね。それなら美羽ちゃんも誘おうよ」
志穂さんの提案に桜ちゃんは賛成して、美羽も呼ぶ事にした。
沙耶はどこか不満そうだけど、それならBが戻って来たらBも誘おうよって話す。
「ならセッちゃんも行く?」
その場にはセッチもいて、親父さんのバイクを点検していた。
「……はい」
「よし、決まりだね。あとは美羽が来れるかどうかだけだね〜」
その後、沙耶は美羽に連絡をすると「行く」と返事が来たらしく。女6人 (1人不明)で出掛ける予定を組んだりして、俺達は帰ることにした。




