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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第4章 炎と結晶
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第122話 誤解から始まるカチコミ


 ソラが何を言っているか解らねぇ……。でも、なんとなく何を言っているのか解った俺は、ゆっくりと両手を挙げて固まった。


「あ? なんだよソラ、それに興味あんのかよ?」


 な、何がおかしいんだコノヤロゥ……。


 カズがニッコニコな笑顔でソラに近づくと、ソラが持っている物を簡単に取り。俺は安堵(あんど)した後ソラを怒った。


「ダメだろこんな物騒なもん持ってたら!」


「まあそう怒んなよ。ソラはこれがなんなのか理解した上で持ってたに違いない」


「甘やかすなよカズ。それでも下手に触って()()でもしたらソラが怪我していたかもしんねえだろ」


 俺は俺自身の事よりも、万が一でもソラが怪我をしたらどうしようって心配した。

 それに気づいてくれたのか、ソラは俺の元に駆け寄って来ると、甘える様にして抱きついてきて謝ってくれた。


「ったく、あんま心配かけんなよソラ」


〈クウゥ…〉


 周りからして見れば微笑ましい光景かもしんねえけどよ。俺がどうして暴発したらどうすんだって言った事にお気づきだろうか?

 そしてソラが持っていた黒い金属製の物。

 それは、そこら辺に転がってちゃいけない、物騒な代物だったんだ。


「しっかし、どこにそんな物騒なもん落ちてたんだ?」


 俺は冷や汗をかきながら、カズがソラから受け取った物を見て戦慄した。


「これはイタリア製の"ベレッタm92"って()()だな」


 そう……、答えは拳銃だ。なんでそんなもんがあったのかって言うと。


「さて? そんなベレッタを持った人物に俺は心当たりがあるんだが?」


 そう言ってカズはとある人物の方へニコニコとした顔を向けた。

 その人物ってのは。


「ご、ご、御免なさい〜!!」


「何してんだ()()?」


 犯人はまさかのナッチだった。

 ナッチは俺達がネイガル商会に行くと聴いて、一緒について来ていたんだ。


「そ、その、ソラちゃんがなんだか私の銃に興味があったみたいなので……」


「だからって渡すなよナッチ……」


「で、でもでも! ちゃんと銃弾は全部抜いてあるから暴発とか間違って誰かを撃つとかそれは絶対に無いです!」


 いやいやいや……、それ以前の問題じゃね?


「せめて一言俺に言ってくれねえか?」


「ううぅ……」


 俺は半分呆れながら軽く睨んだら、ナッチは半泣き状態になった。


「ソラもだ。あんな物騒なもんで遊ぶな。分かったか?」


〈クウゥ……〉


 ソラも注意すると反省したのか、コクリと頷いたんだけど、そこでまさかの発言をする奴が現れた。


「ソラちゃんに銃を持たせたら、逆にそっち方面に進化して面白そうだと思うな」


 美羽だ。


「お、お前……」


 俺はなんて危ない事を考えるんだって思って、美羽に対してドン引きした。


「だって想像してみてよ。銃を持ったソラちゃんの事」


 そう言われて想像した……。

 黒いサングラスに全身黒のスーツを着たソラの事を。そしてその手に勿論、銃。


「……ありかも知れない」


「でしょ? 可愛いよね?」


 俺はその場で這いつくばる様にして愕然とした。


 馬鹿な……、可愛いじゃねえか……。


「カズ!」


「あいよ」


 カズはすぐさまスマホを取り出すとどこかに電話して、ゲート前に銃火器類を用意しろと伝える。

 ちなみにこっちの世界では本来、スマホは機能しない。

 んじゃどうして使えるのか。

 それは自衛隊が独自に開発したアンテナを設置して、ゼオルクの街内であれば使える様にしたからだ。

 そうしてカズから電話を受けた組員の人は慌てることとなった……。


「若が大至急 銃火器を用意しろって電話が来た!」


「なに?! そりゃ一大事(いちだいじ)だ! さっさと準備するぞヤロー共!」


「「おうっ!!」


 まさか夜城邸ではカズが出入り……、つまりどこかの組織にカチコミしに行くと勘違いをして慌ただしくなったなんて想像もしていなかった……。

 だからそんな事になっているとは知らないカズと俺は、ソラにどんな銃を持たせるか2人で悩んでいた。


「ここはやっぱスタンダードに"デザートイーグル"がカッコいいか?」


「いや、ここはやっぱ男らしく"リボルバー"なんてどうだ?」


 俺はデザートイーグルが良いと思ったんだけど、カズはそれよりもリボルバーが良いんじゃないかと話す。


「確かに、リボルバーはリボルバーでまたシブくてカッコいいな」


「だろ?」


「でも悩むな〜……」


「取り敢えず、組の者に銃火器を用意させてるからよ。ソラが気に入った銃があればそれをくれてやるよ。そしたら俺がソラに使い方をいちから教えてやる」


「頼んだ」


 だけどその頃、俺とカズはその事でゲート前が凄い事になっている事をまだ知らない……。


 それから30分後に俺達がゲートを潜って戻ると。


「若! 今度はどこの馬鹿が喧嘩を売って来たんで?!」


「任せてください若! 若が出るまでもねえ!」


「俺達だけで若に喧嘩売って来た組織を壊滅させてやりますよ!」


「…………はい?」


 ありとあらゆる銃火器を装備した総勢100名以上の恐い人達が、カズの戻りを待っていた。

 それを見た俺達の目は点になり、口を半開きにして固まっちまった……。


「な、何事?」


「さぁ……」


 流石のカズも、一体何が起きているのか理解出来ずに何度も(まばた)きして固まる。


「して若! どこの組織なんですかい?!」


「若が銃火器を用意しろって言ったぐらいだ、相当 手強い相手なんでしょ?!」


「……はい?」


 カズと俺達はまだ理解出来ない。


「さあ教えて下さい若! カチコミの用意は既に整っておりやす!」


「これだけの人数と銃火器がありゃそこらの組織なんてイチコロですよ! そうだよなオメーら?!」


「そうだぜ! 殺ってやんよ!」


「若の敵は俺達の敵ですからね!」


「ヒャーッハー! 腕がなるぜ!」


 そこでカズはようやく、どうしてこんな状況になっているのかようやくその原因に気がついた。

 それは俺も同じで、お互い目をゆっくりと合わせた。


「(……俺か?!)」

お前えぇぇぇ……。ちゃんと説明してなかったからこうなったんだな?!


「(くっ……、ここは潔いさぎよく俺の説明不足で誤解させて悪かったと謝るしか無いのか……)」


 さっさと説明しろよカズ!


 冷や汗をかきながら、カズが取り敢えず落ち着けと言おうとすると。


「もしや若! "ブルマスキー"っつう裏組織を潰しに行くんですね?!」


「あっいや……」


「そういやその組織がゼオルクの街にも入ったって聞いたな。その組織が悪さする前に潰そうって事ですね若!」


「いや違 ーー」


「任せてください若! そいつらの居場所なら俺が掴んでます!」


「よっしゃ! んじゃ若はここでお待ち下さい! 行くぞテメーら!」


 そう言って総勢100名以上の恐い人達はゲートを潜り、"ブルマスキー"って裏組織を潰しに出掛けていっちまった……。


「…………」


「よかったな」


 俺はカズの肩に手を置き。何もしてはいないけど話が別な方向に上手く向いた事に対して、本当によかったなと言った。

 勿論笑顔で。


「本当にこれでよかったと思うか?」


 だけどカズは顔を引き攣らせていて、誤解を解く間も無く勘違いさせたままでよかったのか頭を悩ませていた。


 うん、まぁいいんじゃねえの?

 ……しんねえけど。


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