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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第4章 炎と結晶
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第121話 育成相談


 一樹は話した。どんな物を与えたらダークスはステラみたいに進化する事が出来るのかって。


「成る程。んじゃダークスには今から俺が言うのを食わせてみたらどうだ?」


「どんな?」


「ムカデ、クモ、カマキリ、ヘラクレスオオカブトとかどうだ?」


「た、確かにそれは強そうだけどよ……。いったいどこで手に入れるんだ? 捕まえないとあげれないだろ?」


「は? 何言ってんだお前? んなもんペットショップに行けばいくらでも売ってんだろうが」


 そう言うけどよカズ……。一樹って今までペットを飼った事が無いからそんなこと知らなかったんじゃねえの?

 ほら、マジで?! って顔してるし。


「知らなかった……」


「その時期にもよるんだけどな。なんなら試しにカマキリ系モンスターの素材がまだあるからやろうか?」


「マジで?!」


「"ナイトメア・マンティス"ってカマキリ系の素材を使った記憶がねえから、まだ倉庫に眠ってるはずだ」


「おいそれって……」


 ナイトメア・マンティス。前にセッチが話してくれたSランクモンスターだ。


「なんでお前そんなの持ってんだよ?」


「なんでって、俺がナイトメア・マンティスの第一発見者であり、新種として登録する為に捕まえたからだ」


 言われてみれば、セッチが「あの人でも苦戦した」とかなんとか言ってたな。


 一方で、一樹は苦笑いしながら口の隅を引き攣らせていた。


「だったらそれを美羽にあげたら良かったじゃねえか」


「あ? やっても良かったが、それじゃなんの経験にもなんねえだろ? それにあの時のステラは戦闘に参加出来たけどよ、お前のダークスはそうでもないだろ? 今のダークスは食わせないと成長しねえし、強くなれない。だったら俺が持ってる素材をダークスにやっても良いと思ったんだが。いらねえなら良いや」


「下さい〜!」


 ナイトメア・マンティスはSランクのモンスターだ。しかもあのカズが苦戦した程の。


 ちなみに。

 ランクは下からF、上はSSまである。

 Sランクから上に認定されているモンスター達は基本的に"最強種"と呼ばれていて、カズが初めてテイムした"ガイア"や"ゴジュラス"。美羽の"ステラ"や"銀月"。そいつら皆Sランクであり、一体だけで国を滅ぼせるだけの力を持つ危険な存在とされている。

 そしてその上であるSSランクは正に規格外の存在で、(ムクロ)やベリーがそのランクになる。

 ちなみに更にもっと上にいるのが三大魔獣って呼ばれている奴らで。

 "地獄"の"八岐大蛇(ヤマタノオロチ)"、"天獄"のイソラ、そして"羅極"ってモンスター。

 そいつらは規格外過ぎてランクどころじゃねえんだとか。そんでそいつら三大魔獣は、"伝説種"として恐れられている。


「なあ、前に聞いた事があんだけどよ。お前、そのナイトメア・マンティスってモンスターに苦戦した事があるんだってな?」


 一樹は前にセッチから聞いた話を思い切って聞いた。


「お前程の奴が苦戦したんだ、きっとスッゲー強かったんだと思うんだ」


「……あぁ、カマキリ系のモンスターでアイツ程 強い種類はそうはいねえ。奴は名前の通り"悪夢"だ。夜行性で暗闇に乗じて奇襲を得意とし、光魔法の"ライト"で周りを照らしても怯む事なく、今度は"迷彩"スキルで周りと同化して攻撃してくる。"熱感知"やどんな索敵系スキルを使っても引っかからず、俺の背後を簡単に取って攻撃を仕掛けて来る。……だったらって事で周りを炎魔法で火の海にしてやったんだが、全然効果が無かった」


 おいおい、周りを火の海にしたってお前……。

 逆にその行動は迷惑だぞ絶対……。


「んで? 結局どうやって倒したんだ?」


「めんどくせえからゼイラムで辺り一面を攻撃しまくって、微かに当たった所を集中的に攻撃。んで、それでも倒れなかったからゼイラムで捕まえた後、デュアルを装備していたから超至近距離からボコボコにしてやった」


「(めちゃくちゃだなコイツ……。バカなんだか天才なんだかほんとマジ解んねえな)」


「お前、今 俺の事バカにしただろ」


「(ば、バレただと?!)」


「お前の顔見りゃだいたい解るんだよコノヤロォ」


 一樹は思っている事が顔に出やすいからよ、だから速攻でカズに見抜かれて。


「グブッ?!」


 凶悪な握力を持つ左手で、一樹は顔を鷲掴みされる事になっちまった。


「ギエェェェ……」


「人が親切に素材をやろうとしてたってのに、そんな態度するならくれてやらねえぞ? あ゛っ?」


「ご、御免なさい」


 鷲掴み、からの放り投げをされ。それを見ていた俺達は一樹に対して(あわ)れんだ。


「おいテメェら、進化させる為の説明をもう一度してやる。進化には幾つものパターンがある。一つは進化させたい姿を考え、その姿になる為の餌とかが必要だ。美羽のステラがそうだ。美羽は今のステラの姿にする為に、色々と与えた。まぁほとんど俺の力による結果でもあるがよ。二つ目は経験だ。戦闘や訓練によって進化する事がある。三つ目はその両方。テメェらの育て方次第でパートナーは進化する。よく覚えておけ」


 そう言われてもちゃんと説明してもらった記憶が無いんだが……。


 俺はそう言いたかったけど、一樹のお陰で言うに言えなかった。

 また機嫌が悪くなるかも知れねえって思ったからよ……。


「経験かぁ……。なあカズ」


「あ?」


 次にヤッさんがカズに声をかけた。


「僕のトッカーを、もっと攻撃に回れる様にしたいんだ。もっと速く動ける様にもしたいんだけど、何か良い案はないかな?」


「トッカーか。"ロックタートル"のトッカーは成長したら大型になるから、運搬の為に業者とか多くのハンター達が誰か1人は育てている一般的なモンスターだ。でもロックタートルってのは攻守にも優れている。それはヤッさんも知ってるよな?」


「勿論」


「……ネイガル、頼んでも良いか?」


 カズはネイガルさんにトッカーの鑑定を頼み。羊皮紙に写し出されたステータスをヤッさんと一緒に見た。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  トッカー ((オス)

 種族名 ロックタートル

 Lv. 35   ランクD

 体力910   魔力500

 攻撃400   防御580

 耐性240   敏捷60

 運50

 スキル

  土魔法 運搬 嗅覚強化 瞬発力強化

 ユニークスキル

  硬質化

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ランクDまで育ってたか。他のロックタートルに比べるとけっこう良い感じに育ってるな」


「そ、そう? そう言ってもらえると嬉しいな」


 カズに褒められて、ヤッさんは照れながらも嬉しそうな表情になった。

 そして俺、一樹、沙耶の3人は、そんなトッカーのステータスを見て心から安堵(あんど)した。

 だってよ。ここ最近、俺らの周りにはステラ、銀月、ゴジュラスって異常って言えるぐらいの速さで進化したり育てたりしているSランクモンスターが増えているんだぜ?

 と言っても、沙耶は沙耶でついさっき、ランクAの"ミスト・ドラゴン"のジークを手に入れたばかりだけどな……。


「だがまだまだだ。これだけのステータスならランクCになってても良い。それがまだDランクってのが、俺としては全然満足しないな。まあロックタートル自体の成長は遅いってのもあるし、じっくりと育てるのも良い。けどお前のトッカーだってそれなりの場数を踏んでんだ。もっとトッカーにモンスターを倒させたり、スキルを増やしたりしてやれば、もっと早く強くなれると俺は思う」


「成る程」


「あと、ロックタートルは基本的に進化しないモンスターだ。そんなトッカーをどう進化させたいのかはヤッさんが考えて育てたら良いんじゃねえか? トッカーをどう鍛錬し、どこを重点的に育てるかによってまた変わってくる筈だ」


「うん、わかった」


「俊敏ももっと欲しいところだな。この間言ったように、ちゃんと足腰を鍛えたから"瞬発力強化"ってスキルを手に入れたんだろ。だからヤッさんはトッカーをどんな風にしたいのか良く考えてやれ。良いかお前ら。パートナーってのは一緒な時間を共有しあう"相棒"であり"友人"、そして"家族"なんだ。そのパートナーの事で悩むことはごく当たり前の事だ。だけどパートナーの事を無視してテメェ勝手なことをすりゃ、いずれパートナーはいなくなっちまう。でもお前らは違う。お前らははちゃんとパートナーと向き合ってるってのが俺には解る。だからこれからもその気持ちを大事にしつつ、パートナーの為に何が出来るのかを考え、もっと悩め。そうすりゃ、必ずお前らのパートナーはきちんと応えてくれる」


 カズにそう言って貰えた俺達は、なんだか無性に嬉しかった。

 そして俺は、クロとソラもそうする事で進化しやすくなるのかな? って思った。

 クロは"バーゲスト"と呼ばれる黒いオオカミ型モンスターの子供。ソラは"デーモンズ・ベアー"と呼ばれるクマ型モンスターの子供で希少種。

 バーゲストは育て方次第で最高のパートナーになるらしく、狩猟犬とは比べ物にならない程素晴らしい存在になるらしい。けどその逆に悪い育て方をすると、誰の言うことも聞かない凶暴なモンスターになるんだとか。


 んで、デーモンズ・ベアーは4本の発達した腕を持ち。性格は獰猛で悪魔みたいな姿からそう呼ばれているモンスター。だけど俺のパートナーであるソラはまだ小さいからなのか、比較的大人しい。しかも、デーモンズ・ベアーの肉は最高級で知られていて、その生息数が少ない事もあってか、肉から骨に至るまで余す事なく超高額で取り引きされている。

 そんなパートナーであるクロはすぐ側にいるけど、ソラは周りが気になるのか、好きなように動いている。

 そこでふと、ソラが今何をしているのか気になってそっちに目を向けて見ると。


〈クウ? クウゥ、クゥクゥ〉


 何か手に持って遊んでいやがる。


「ソラ? 勝手にその辺の物で遊んでたらダメだろ?」


 もし危険な物を持って遊んでたらいけないと思い、注意しようと近寄ったその時。


「ソラ〜、何持って遊ん……デッ……」


 ……俺は固まった。それはもう壮絶な顔をしながら固まった。

 ソラは持っていてはいけない、大変危険な物を持って遊んでいやがったんだ。

 いや、遊んでいると言うより、イジっていると表現した方が正しいかも知れないな。


「ソラ?! 何持ってんだよお前?! 危ないからこっちに渡……」


 俺が手を伸ばした途端、ソラは黒い金属製の物を俺の鼻に押し付けた。


〈クウクゥクククゥクゥ?〉


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