表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第4章 炎と結晶
121/337

第120話 お迎え


 親父さんと桜ちゃんの親父さんがそんな話をしてるなんてことを知らない俺達は、ゼオルクの街にある"ネイガル商会"に足を運んでいた。



 ーー ゼオルク ネイガル商会 ーー



「いらっしゃいませ皆様。ようこそおいで下さいました。本日は何をお求めで御座いましょう」


 ネイガル商会オーナーのネイガルさんが俺達の姿を見ると、颯爽(さっそう)と挨拶をしに出て来てくれた。


「今日はコイツがウチのイリスやリオみたいな、綺麗な爬虫類系のモンスターがいないかって見に来たんだ。いる?」


 カズにそう聞かれ、ネイガルさんはニヤッと微笑むと一言、「おります」と応えた。


「沙耶様、貴女は運が良い。ちょうど昨日、当商会に大変レアな種が運ばれて来たばかりに御座います」


「えっ?! やった〜!」


「ふふふ、気性が荒い個体では御座いますが、貴女様にこそふさわしい逸品」


「早く見たい見たい!」


「はい、商品はこちらに御座います」


 そう案内された先に居たのは。


「こちら、"ミスト・ドラゴン"と呼ばれるモンスターに御座います」


 "ミスト・ドラゴン"

 そいつの体はミントブルー色で、下顎と腹は真っ白な色をしたワニとオオトカゲを足して2で割った様な姿をした、まさかの竜種が寝ていたから俺は驚いた。


「まさかの竜種?!」


 その体には色とりどりの宝石が付いていてとても綺麗だ。だけど、その美しい見た目とは裏腹にかなり凶暴そうな顔をしている。特に口。歯はワニ類のクロコダイルみたいな歯がズラリと生えている。

 でかさは約3メートルで、前足の爪が非常に大きくて長い。


「こりゃまた激レアな奴が入荷してんな」


「お褒め頂き光栄至極。やっとの思いでなんとか捕獲する事に成功致しました」


「メッチャカッコいい〜!! この子! そんなに捕獲するのが難しいんですか〜?!」


 カズとネイガルさんの話を聴いていた沙耶は、目の前にいるミスト・ドラゴンの捕獲がどれだけ難しいのか気になって聞くと。


「ミスト・ドラゴンの厄介なところはその能力に御座います。その名の通り霧を操る竜でして、その身を霧に変え、自由自在に姿を(くら)まし、相手を翻弄(ほんろう)させてからその場から逃げたり、死角から急襲したりします。又、霧を自由自在に操れるミスト・ドラゴンは蜃気楼を作り出す事も可能なので御座います。故に見つけるだけでも稀な存在なのですが、捕獲するとなると更にその難易度が跳ね上がります。正直申しますと、和也様のゴジュラスやアリス達よりも難しい存在なのです」


「えっ?! ゴジュラス達よりもですか?!」


 ゴジュラス達より難しいって言うなら、もしかしたら買った時の金額よりもミスト・ドラゴンの方が高かったりするのか?


「ちなみに幾らだ?」


 流石って言うべきか、カズは平然とした顔でネイガルさんに金額を聞くと。


「はい、御値段の方はこれでどうかと考えております」


 ネイガルさんが提示した金額は予想通り、ゴジュラス達なんかよりも高かった。

 その金額を知った沙耶は大量の汗を流し、白目を剥いて愕然としている。


「(高過ぎるよ〜……)」


「なんだ、思ってたより安いな」


「(え〜〜〜……)」


 沙耶はカズの言葉にまた愕然とした顔で見た。うん、勿論俺もそうだ。予想してたとは言え、あのゴジュラスとアリス達よりも実際に高いんだからよ。

 前にカズは、ソラと同種のデーモンズ・ベアーを仕留め、その時の肉や皮、内臓、骨、必要な分だけ取ってあとは全て売り。その時の金を俺達はカズから取り分として貰っている。

 それでも、ミスト・ドラゴンを買うにはまだ程遠かった……。


「(メッチャお迎えしたかったけど、諦めるしか無いか〜……)」


「買おう」


「お買い上げ、誠に有難う御座います和也様」


「うぇ?!」


 カズはその場で普通に買った。普通にだ。

 ちなみにお値段はミスリル金貨15枚。

 そんなミスト・ドラゴンをその場で買ってしまった事に、沙耶はショックを受けた。


「(う〜……、私にもっとお金があれば……)」


「おい沙耶、何してんだ。さっさとテイムしちまえ」


「……え?」


 はっ! お前まさか!


 カズにしてみれば、沙耶にミスト・ドラゴンを買うだけのミスリル金貨を持っていない事なんざとっくに知っていたみたいだった。

 まぁそりゃ当然だ。さっき話したようにそれだけの金、俺達は取り分を貰ったって言っても全然足らねえんだからよ。

 でもそんな沙耶はミスト・ドラゴンのことがよっぽど気に入っていたみたいで、代わりに立て替えるってことでカズが出してくれたんだ。


「貸しだからな?」


「恩にきます!」


 こうしてミスト・ドラゴンは沙耶のモンスターになったけど、そこからがまた大変でもあった。

 沙耶はミスト・ドラゴンをテイムしようとするけど、檻の中に入らずに外から手を伸ばしてテイムしようとする。でもなかなかテイムさせようとしてくれない。


「も〜、なんで〜?」


「ミスト・ドラゴンは気性が荒いモンスターに御座いますが、和也様の御言葉をお借りするならそれだけ臆病であり、警戒心が強い現れでも御座います。だからこそ見つけるのが大変難しい事にも繋がるのです。テイムをするならもっと落ち着いて、貴女様がミスト・ドラゴンの敵じゃない事を教える様にしながら、ゆっくりとしてみては如何でしょう?」


 ネイガルさんが優しい微笑みを見せながら沙耶にアドバイスを送ると、ゆっくりと後ろに下がった。


「(そっか〜……、アナタはそれだけ繊細なんだね)」


 沙耶はネイガルさんにアドバイスしてもらったように、ゆっくりと自分の魔力を込め始めた。

 ゆっくりと、……ゆっくりと。

 そこで沙耶は何かに気づいたみたいだった。


「(そう言う事か〜)、だったら!」


<?!>


 沙耶の取った行動に、ミスト・ドラゴンは驚いて目を覚ました。

 沙耶は思い切って檻の中にゆっくりと入り。風魔法でミスト・ドラゴンを動けなくさせると、今度は優しくその頭に触れて、自分の魔力をゆっくりと当て始める。


「お願い、私を受け入れて」


 その時、ミスト・ドラゴンの体に付いた宝石が一斉に光った。


「よかったな、これでそいつはお前のパートナーになった。ネイガル、コイツの鑑定頼めるか?」


「かしこまりました」


 ネイガルさんの"鑑定"で羊皮紙に映し出されたミスト・ドラゴンのステータスは沙耶に渡された。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  ミスト・ドラゴン 性別 ((オス)

 種族名 ミスト・ドラゴン

 Lv.48   Aランク

 体力650   魔力1500

 攻撃600   防御500

 耐性200   敏捷300

 運70

 スキル

  隠密 気配察知 危機回避能力強化

 エクストラスキル

  付与術 幻魔法 属性魔法強化

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「魔力量が高いな」


 俺はミスト・ドラゴンの魔力量が他のステータスに比べて高い事に驚いた。


「そこがミスト・ドラゴンの特徴のひとつだ。そしてミスト・ドラゴンの"危機回避能力強化"や"属性魔法強化"は何も自分だけが上がる訳じゃない。パートナーやその他の者にその力を付与する事が出来る。ここに"付与術"ってあるだろ?」


「あっ! ほんとだ!」


「だからコイツを手に入れた沙耶は今までと訳が違う。ましてや風と霧ってのは場合によってはその相性がとても良い組み合わせになる。そこにカーバンクルのピノまで加わりゃ、下手すりゃお前より厄介だぞ? ちなみにミスト・ドラゴンはあの、()()()と近縁種でもあるんだ」


「ベリーと近縁種?! そうは見えねえぞ?!」


「ミスト・ドラゴンはベリーと同種の"アラフェル=メレフ"とは違う方へ進化したモンスターだ。簡単な話、トカゲがオオトカゲかヘビの2つに分かれ、どっちかに進化して行ったの違いだ」


 そう言われて俺は普通に驚いた。

 "ベリー"ってのは「霧の王」を意味する"アラフェル=メレフ"って蛇竜種のモンスターで、あの(ムクロ)と同じSSランクに位置づけられてる"古代種"。


 そう言えばあれから見てねえけど、ベリーの奴、元気にしてんのかな?


「んで沙耶、コイツの名前はなんにするんだ?」


 すると沙耶は聞かれる前に、どんな名前にするかもう考えていた。

 何を考えていたのかって言うと。沙耶は爬虫類系のモンスター、あるいは向こうにいる爬虫類でトカゲやヘビをお迎えした時、どんな名前を付けてあげようかってことをずっと考えていたらしい。

 でも、爬虫類系モンスターと言っても竜種のミスト・ドラゴンを迎える事が出来た沙耶は、まさか竜種をお迎え出来るとは思ってもいなかったんだと。

 そりゃ誰だってそう思う。だけどひとつだけ、このミスト・ドラゴンに付けられそうな名前があった。


「……()()()


 その瞬間、ミスト・ドラゴンの目が光ると大きな咆哮を上げた。


「宜しくね、"ジーク"」


〈グアゥ!〉


 ジークか、なかなかカッコいい名前にしたじゃん。


「なるほど、ドイツ語で"勝利"を意味する名前か。良いんじゃねえの?」


 ミスト・ドラゴンは"ジーク"の名を与えられ、正式に沙耶のパートナーになった。


 一方で。

 一樹は一樹で、新たにパートナーを増やす事よりも早くダークスを成長させ、せっかく"進化"のスキルを手に入れたんだからステラみたいに進化させたいって考えていた。

 ダークスは"ブラックスコルピオ"と呼ばれる種類で、大型になる黒いサソリ型モンスター。

 今はまだ小さくて、戦闘にはどうにかこうにか参加出来そうなら参加する程度の大きさしかない。

 今は一樹の背中を隠せる程度の大きさしか無いけど、成長すれば逆に一樹だけじゃなく、俺達全員を乗せれるくらいのでかさになって、かなり頼れる存在となるんだと。

 だけどそのブラックスコルピオってのは、意外と育てるのが難しく、手に入れても上手く育たずに死なせてしまう事が(ほとん)どな種類らしく。そんな種類のダークスが今日まで育っているのは、やっぱりカズのアドバイスの賜物(たまもの)だ。


「(進化させるならもっとカッコよくなって欲しいよな。強くてたくましい、最高の相棒に)」


 カズからのアドバイスで、今のダークスには様々な毒を与えているらしく、そのお陰で"猛毒生成"ってエキストラスキルを手に入れていた。

 相手を弱らせるだけ。あるいは動けなくするだけの弱毒。たった一滴で人間を数十人も毒殺する事が出来る強毒を、自由自在に生産出来る能力。

 それだけでも十分な戦力になるけど、それでもまだまだダークスは弱く。ランクが高いと言っても下手をすれば一撃で倒されちまう可能性がある。


「カズ、相談があるんだけど良いか?」


「あ? なんだ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ