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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第4章 炎と結晶
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第118話 新たな爬虫類仲間


「しっかし、なんでまたこんなもんがウチにあったんだか」


「だからお前が言うな。第一、お前はお前でもっとタチの悪いのを持ってんだろうが」


「ん?」


 俺はミサイルやら爆弾を、カズが多数所持している事を言いたかった。


 夜城邸の地下には異世界に通じる門があり、そこには多数の自衛隊基地ともトンネルで繋がってるんだとか。そしてその門の前には様々な武器弾薬、戦車と言った兵器が置かれていて、そこにはバルメイア軍に使った兵器も置かれている。


 クラスター爆弾、または親子爆弾って呼ばれる物があるんだけど、カズはそのクラスター爆弾よりも凶悪な代物を開発している。

 クラスター爆弾ってのは、大きな容器に小さな爆弾を敷き詰め、それを航空、又は地上ミサイルで発射し。一定のところでその容器から爆弾が雨の様に降り注ぐ兵器のことを言う。

 だけどカズが開発したクラスター爆弾は一味違う。容器そのものが強力なミサイルであり、その内部に収納された爆弾は地上に落ちると先ずガスを撒き散らし、一定のガスが出されると火花を発して爆発。その爆弾の中には殺傷能力をより高める為に、小さな鉄の針とかが仕込まれている。

 どんな材料を使ったか知らねえけど、その爆発力は普通のクラスター爆弾の威力を簡単に凌駕していた。


 だから俺はカズに対し、ナッチ以上だって言いたかった。


「まっ、久しぶりのシャバだ。俺がいない間なんか面白い事 無かったのか?」


「そこまで久しぶりじゃねえだろ」


「あ? だってよぉ、俺が監禁されてた場所はムショとほぼ一緒だったんだぞ? スマホやらなんやら全部取り上げられ、娯楽と言ったらテレビぐらいなもんだったんだぞ?」


「……マジか」


「今の俺は娯楽に飢えてんだ。向こうに行きてえのもあるが、その前に俺は何か面白い話で笑いたい」


 そう言われても面白い話しがそんなにある訳じゃ無いと思ったけど、そこである事を思い出した。


「そういや一昨日によ」


「ちょっと待て!」


 一昨日の話しをしようとした時、ヤッさんが慌てて俺の口を塞ごうと動いた。

 だがしかし、その行動を見たカズは何やら面白い匂いを感じとったのか。ゴジュラスにヤッさんを抑えろと指示を出して抑え込ませた。


「その話しだけは勘弁してよ!」


「なんだよヤッさん、そんなに俺に聞かれたく無い事でもしでかしたのかよ?」


 うん、相変わらずとても悪い顔で微笑みますね。


「憲明、続きを聞かせてくれ」


「分かった」


「ちょっ!」


 俺は一度、ビシッとした姿勢で立つと。カズに話した。


一昨日(いっさくじつ)、……ヤッさんが隣のクラスにいる佐渡(さわたり) 恵梨香(えりか)に告白しました」


「な、なんだと?!」


 ヤッさんが佐渡 恵梨香って言う同級生の女に告白したと言うと、カズは余りにも衝撃的だったのか驚いた。


「で?! 結果は?!」


「……惨敗です」


「ざっ! はあ?!」


 カズはその告白が成功して、遂にヤッさんにも彼女が出来たと思ってか笑顔だったんだけど、無情にもフラれてしまうって残念な結果報告を聞いて、何とも言われぬ顔でヤッさんを見るけど、それが逆にヤッさんらしいって笑った。


「人の不幸を笑うなよ!」


「悪い悪い、だってやっぱそこがヤッさんらしい結果だからよぉ」


「チクショゥ……」


「佐渡ってあの佐渡だよな? 成る程ねぇ、なんて言われてフラれたんだよ?」


 すると今度は沙耶が姿勢を正して俺の横に立った。


「はい、その現場をたまたま見ていた私が御説明致します。佐渡さんはヤッさんの事を「眼中に無い」、「私、もっとカッコいい人が好きなんだよね」と言われた挙句、「つーかアンタ誰?」と言われておりました。ちなみに、佐渡さんはカズの事が大好きな女子の1人でもあります」


「……ほう?」


 フラれた時の事を思い出したのか、ヤッさんはゴジュラスに取り押さえられながらその場で泣き始めた。


「逆に笑えねぇ話になったな……」


 懐からブラックデビルって銘柄のタバコを取り出すと、口にくわえて火をつける。そのカズの目が据わっていて、背筋が寒くなった。


「あのアマァ、ヤッさんに対してそんなフリかたはねえだろ。そうは思わねえか? オメーら」


 まったくであります!


「カズ……」


 ヤッさんはカズの言葉が嬉しかったのか、今度は嬉し泣きし始めた。


「明日、学校であのアマが俺に近づいて来たら逆に言ってやるよヤッさん。誰だテメェ? 近寄るなクソブスってなぁ」


 そ、それはさすがに言いすぎじゃないですかね?


 その顔はさっきナッチが見せた悪い顔の比じゃない。まさに凶悪な笑みを浮かべている。

 そんな顔で道を歩いていようもんなら、流石の警察ですら恐怖で身動き出来なくなるだろうよ。


「バジリスク顔負けの顔をすんなよカズ……」


 バジリスクってのは、その目を見ただけで石化させちまうめっちゃ怖ぇー、魔眼を持つモンスターだ。

 だからカズの凶悪な笑みをそんなモンスターに例えてみると。全員がまさしくその通りだって、「うんうん」と何度も頷く。


「それにお前にそんな事を言われたら、ショックで泣くだろうな」


「あ? 泣かしてえから言うんだろうが。てかよくバジリスクなんてモンスターを知ってんなお前。んじゃ、取り敢えず明日 学校で俺達が仲が良いところを見せてやろうぜヤッさん。そんであのクソブスを泣かしてやろうぜ。んで? 他に何か無かったのか?」


「その他には何も無いな」


「そうか、んじゃあんまり面白いことは無かったのか」


「あぁ、まぁいつも通りだ。んでカズ」


 俺はソファの背もたれに手を乗せ、カズに内密の話しをした。


「そうか、分かった」


「この事を知ってるのは今のところ俺だけで、アイツらは何も知らない」


「Bの事だ、直ぐに戻って来るさ。それに元々アイツは凶星十三星座(ゾディアック)の1人なんだしよ、向こうに呼ばれて戻っても、なんら不思議じゃねえだろ」


「そうだけどよ……、俺達はその凶星十三星座(ゾディアック)や親玉、アル、アルバス? アディダス? と、取り敢えずなんだ……、確か冥竜? だっけか? 戦いたくなんてねえんだよ」


「冥竜王であり、絶竜王・アルガドゥクスだよバーカ。まっお前らの気持ちは分からなくもねえけどよ、向こうがどう出るか今のとこ解ってもいねえんだ。この間、ルシファーとダークスターが本当は何をしに来たのかすら解ってもいねえんだし」


「Bがお前に相当 懐いているからその様子を見に来たんじゃ?」


「かもしんねえけどよ、だからと言ってあんまり奴らとは関わるな。向こうが敵対する意志が無いって感じたから俺だってそんな敵対する様なマネをしてるつもりもねえ。だから普通に接したんだ」


 あれで普通かよ……。


「取り敢えずわかった。教えてくれてありがとな、憲明」


「ん。そういや、最近イリスを見てないんだよなあ」


「イリス?」


 イリスってのは、カズが飼育している"コバルトツリーモニター"って樹上性の青いオオトカゲのことだ。

 カズが他に飼育している爬虫類の中でも、特にカズに懐いている個体であり、その為、部屋の中とかで自由にさせている。


「なんだ、イリスと遊びてえなら呼んでやろうか?」


「いやいや、わざわざ呼ばなくても良いって。お前がいない間、この部屋の爬虫類とかを俺達で世話してやろうって話になったからよ、そんで見ないなあって」


「どっかで寝てんだろ。餌なんかこの部屋には豊富にいるしよ」


 まぁ確かに? カズの部屋はまるで大きな植物園の様だし、ある意味 完成された自然に近い、巨大な部屋だよ。

 だから放し飼いにされてる爬虫類が数種類 存在していて、そのどれもがこの部屋に数種類の餌用として放たれている虫を捕らえて捕食している。

 部屋の敷地面積だけでも、恐らく千坪以上は軽くある異常とも言える規模の部屋だからな。


「世話してて思ったんだけど、改めて見てるとカズが飼ってる爬虫類って皆んなメチャメチャ綺麗に育てられているよね〜」


 そう言って沙耶はひとつの飼育ケージの前に立つと、指でガラスを優しく叩いた。その音に誘われてか、その中にいるとある爬虫類が沙耶の方に近づいて来た。


「なんだよ沙耶、そいつを気に入ってんのか?」


「うん。だってこの子、スッゴイ人懐っこいんだもん」


 ケージに入っている爬虫類は体長70センチ前後ぐらいの"エメラルドツリーモニター"と呼ばれる樹上性のオオトカゲ。

 名前の通り、本当に美しい緑色の体に黒い縦模様が入っている。しかもだ。カズが飼育しているエメラルドツリーモニターの背中一面には、綺麗な青色も入っていた。


「そいつ、背中にメチャクチャ綺麗な青色が入ってるだろ? エメラルドツリーモニターの"ブルーバック"って呼ばれる種類の超極美個体だ。しかもホルモンバランスが変化したのか、顔、両手足、尻尾が薄い水色になってきてる。それが徐々に色濃くなって来ているからその内、全身水色の綺麗なミントブルーになるかもしんねえ」


「ほほう、それはそれでなかなか良いですな〜」


 沙耶はこの時、あることを忘れてしまっていた。

 そして俺達はこの時、そんなカズと沙耶を止めるのを忘れちまっていた。


「飼育はそんなに難しくねえ。餌は虫の他にオオトカゲ専用のモニターフード。湿度は75から85パーセントに設定し、昼の温度は30度。ホットスポットで45度。夜間は30度以下にして問題無い。と言っても低い時で20度を下回らなけりゃ意外と平気だ。まぁ冬の時期はあえて20度以下にしたりする事もあるけどな。ベビーサイズを飼育するなら昼夜問わず30度以上で飼育した方が体調を崩さずに済むからそうした方が良い。だいたいヤングサイズを超えたあたりから温度を気にしなくて良い。エメラルドツリーモニターの平均サイズは飼育下で約90センチ、自然下で120いくかいかないかまで成長する。基本的にコバルトツリーモニターとは違って臆病で警戒心が強いが、経験上ベビーの頃からハンドリングとかして人慣れさせ、餌を与える時は生きた虫を与えつつ手から与えると比較的おとなしい個体になってくれやすいな。んでケージはあまり大きいのを選ばない事だ。少し手狭かなって位のケージに入れ、自分の存在を認識させる事も大切だ。そうする事でそのエメラルドツリーモニターみたいなベタ慣れと呼ばれる個体になりやすい。ようは愛情だな。ちなみに出来るだけ全身が入れる水の入った容器を入れてやればそれが水飲み場になるしトイレにもなるから毎日の水替えも必要になる事を忘れるな」


「「(ヤ、ヤバイ……)」」


 そう、俺達はやっちまったんだ……。カズは爬虫類の話しになると止まらなくなる……。


「ストップストップ!」


「あん?」


 美羽はそんなカズの説明を急いで中断させた。


 ナイスだ美羽!


「解ったからもう大丈夫だよカズ」


 だけどカズは「まだ説明したい事があったんだがな」って、不完全燃焼な状態だった……。


 すまねぇカズ……。すぐ暴走するから許してくれ!


「ちなみに沙耶、……やらねえよ?」


「ちっ……」


 およ? なんだよ沙耶。けっこう気に入ってたのかよ?


 よっぽど気に入ってたのか、沙耶は思わず舌打ちをした。

 そして気に入ったからこそ、もっとエメラルドツリーモニターの飼育法をカズから聞きたそうな顔をするけど、そんな沙耶に対して俺達は無言の圧力でそれを阻止した。


「私もこの子みたいな綺麗な子をお迎えしようかな〜」


「んじゃ今度、前に連れて行った事があるペットショップにでも行くか。あそこは貴重な生態なんかも仕入れているからな」


「やった〜!」


「クククッ、これでまた爬虫類仲間が増えたぜ」


 爬虫類仲間が増えたことがよっぽど嬉しいんだろうな。カズはまた凶悪な笑顔になるとソファから立ち上がり、沙耶と一緒にエメラルドツリーモニターを観察し始めた。


「ちなみに性別と名前は〜?」


「コイツはオスで、名前は"リオ"って名前だ」


「良いなあ……、ちょっとしか世話してないけど、この子めっちゃ良い……」


「イリスみてえに部屋ん中を自由にさせられねえが、コイツはなかなか頭が良いからな」


「今度、爬虫類系のモンスターをパートナーにお迎えしても良いかも」


「おお、それも良いな。んじゃそっちはネイガル商会に行って、何か良いのがいればそこで買うのも手だな」


「ちなみにこの子をお迎えした時、幾ら位したの?」


「消費税込みで275.000円」


 た、高いなやっぱ……。


「…………ケージとか含んだら?」


「物にもよるが、ざっと40万は掛かると思ってた方が良いな」


 なっ?!


「…………買えなくも無い」


 いったいそんな金が何処にあるんだって言いてえけど。沙耶は前に、カズから取り分として相当な金額を貰っているし、それをあまり使っていないからなのかそう言えたんだろうな。

 その金は沙耶だけじゃなく、もちろん俺達もその時に貰っている。でも桜ちゃんと志穂さんはその時はまだ異世界の存在を知らなかったら、その金を貰っていなかった。


「今の季節だと、ネイガル商会に入って来ている爬虫類系のモンスターは種類が少ないかも知れないが、もしかしたらレアな奴が入ってるかも知んねえし。下手すりゃ誰かに買われちまうかも知んねえからこれから行ってみても良いかもな」


「是非行きましょう先生!」


「ん? んん……。(なんで先生呼びすんだコイツ?)」


 そんなこんなでさっそく異世界行きになった。


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