第99話 死ねよ
次第に八岐大蛇の頭へと変貌を遂げて目を覚まし。そいつらから放たれる殺気と威圧感は以前、俺達が感じた曼蛇の比じゃねえ。
そして、カズの周囲一帯に転がる瓦礫が宙に舞うと、粉々になっていく。
目覚めてはいけないモノが目覚めやがった………。
「どいてくれベリー」
目の前にいるベリーにどいてもらうとカズは前に立ち。八岐大蛇の口から黒い炎をいっせいに吐かせて、バルメイア兵達を跡形も無く焼き殺す。
一瞬でどれだけのバルメイア兵を焼き殺したんだよいったい……。
その数はわかんねえ。ただ簡単に言うと、一瞬で数百人以上は焼き殺された。
「よぅ、暴れやすいようにしてやったぜ? ヘカトンケイル」
既にヘカトンケイルは距離を縮めていて、50メートルも離れていない場所でカズと睨み合いが始まる。
「ははははは! 久しぶりだなガキ共!」
ヘカトンケイルの上に、見覚えのある忌々しい男がそこにいた。
あの糞やろぅ、そこにいやがったのか……。
「まさかお前があの"黒竜"だったなんてな。だが今回は前みたいにはいかないぞ?」
そこにいたのはジュニスだ。相変わらず下衆そうな顔で、俺達を見下していやがった。
カズがその顔を見た瞬間、辺り一面に言い知れぬ殺気が放たれ始めた。
「後退! 大至急後退しなさい! 巻き込まれるわよ!」
危険を察知した先生が、周りにいる味方全員を急いで退がらせる。
カズの顔がどんどん怒りと憎しみに染められ、殺気はおぞましい寒気を含み、先生達ですらカズの殺気にあてられると体を震わせてその場で吐き始めた……。
平気なのは骸とBぐらいだ。
「和也さん、ここはボク達が」
<グルルッ>
Bと骸がカズの前に立ってそう進言するけど、カズは黙ったままジュニスを睨み続けている。
そんな中、俺はカズの背後に立って肩を掴んだ。
「あのクソヤローは俺達に任せてくれないか?」
カズの強烈な殺気の中、俺だけじゃなく美羽達もいる。
「お願いカズ。私達、どうしてもあの人を許す事が出来ないの」
美羽は強い眼差しを向けてお願いして、俺達は美羽の言葉に大きく頷いた。
皆、想いは一緒だったんだ。
「お前はヘカトンケイルを倒してくれ。俺達はあのジュニスってクソヤローを。だから頼む」
するとカズが強烈な睨みを俺達に向けてきたから、俺達はその恐ろしさに正直目を背けたい気持ちになった。だけどそこはグッと堪え、カズが任せると言ってくれるのを信じて待った。
「殺れるのか? 本当に?」
その質問に、俺は大きく頷く。
「……分かった。取り敢えずあのクソヤローをあそこから引き摺り下ろしたら、お前達に任せる。容赦する必要は無い」
ー 殺せ ー
「任せろ!」
そしてカズは動いた。
「別れの挨拶は終わったか? だったら……、殺せヘカトンケイル!」
カズはゆっくりとした足取りでヘカトンケイルに近づき、頭上から無数の巨大な拳が振り下ろされると、地面を大きく割る。
「ははははは!! ひき肉にしてやれヘカトンケイル!!」
ヘカトンケイルが何度も何度も拳を振り下ろす。振り下ろす度に地面は更に割れ、大きな揺れを引き起こす。
それでも俺達はその場に立ち続け、その時が来るのをじっと待つ。
俺達の標的はただ1人。
「ははははは!! どうだ?! これが完成されたヘカトンケイルの強さだ!!」
ジュニスはカズを殺したと思ったのか、ヘカトンケイルに攻撃をやめさせると、そこには何も無い。
「ははっ、やり過ぎて跡形も無くなっちまったかな?」
バーカ、何もねえのは当たり前だボケが。
だってよ、当のカズはジュニスの真後ろに、もう立っているんだからよ。だからそれに気づかなかったジュニスは、真後ろからカズに蹴られて落ちて来る。
「なっ?! なっ?! うわああああああああ!!」
地面に叩きつけられる寸前、ジュニスは下から強烈な風を受け、運良く擦り傷程度で落下。
「ってててててて……くそっ、よくも落としてくれたな?! だが残念! 僕はまだこの通りピンピンしてるぞ! ははははは!!」
それは違うぜ?
「んん?」
ジュニスはたまたま風で助かった訳でも運でも無い。
「テメーら……」
ジュニスは沙耶の力で、わざと助けられたんだ……。
俺達の手でこのクソヤローを殺すためにな。
「よぉ糞やろう、テメェはカズじゃなく俺達の手でぶっ殺してやるよ」
俺は一歩前に出るとジュニスに宣言した。
「はあ? 舐めてんじゃねえぞこのクソガキが!」
そうほざいた瞬間、ジュニスの右腕が地面に落ちて、傷口から血が噴き出す。
「ゔわああアアアアア!!」
右腕を切り落としたのは他の誰でもない。俺達の中で、一番カズを想ってる美羽だ。
「アンタは絶対に許さない」
「こ、このクソガキイィ!! うっ?!」
今度は左足に違和感を感じ取ったジュニスがその場に倒れる。
今度は一樹だ。と言っても、やったのは一樹のパートナーであるダークスが、毒針を刺しながら強力なハサミで足を挟んでいる。
「あぁこりゃ痛そうだな? 可哀想だから助けてやるよ」
そう言って一樹は、槍で左足を無理矢理切り落とす。
「あ゛ぎゃあアアアアアアアアア!!」
激痛でジュニスは喉が裂けるんじゃないかって言うほど叫んだ。
「トッカー」
今度はヤッさんが、ジュニスの上にトッカーで押さえつけさせる。体の重いトッカーがのしかかった事で肺から空気が漏れ、まともに呼吸が出来ないのか苦しそうだ。
「苦しいか? 苦しいよな?」
俺の質問に、ジュニスは何度も頷く。
「た、助けてくれ……、頼む……。お、お礼は、か、かな、かな、らず……する」
なんか助けを求められるが、俺は勿論、俺達全員の目は酷く冷たい表情になっていたと思う。
「なぁ、そんなに苦しいならどうして人を使ってあんな怪物を作ったんだ? あの人達はテメーよりもっと辛い想いをしたんじゃねえのか?」
「あ……、あ……」
俺の質問に、ジュニスは何も言わない。
「テメーみてえに助けてって言ってたんじゃねえのかよ? 人を人として扱わず、テメーらの欲望の為に多くの人々が苦しい想いをしてあんな怪物が生まれたんだろ? 自分勝手だと思わねえのかよ? ……だからよ、テメーはそんな人達よりもっと苦しまなきゃ使われた人達がうかばれねえよな? 不公平だよな?」
「や、やめ……、たすけ……ぎやああアアアアアアアアアアアアアア!!」
ジュニスを動けなくした後、俺は更に左手と右足も切り落とす。
ざけんな……。ざけんじゃ……ねえぞ……。なんでテメーみてえなクソヤロー共の為に、多くの人達が死ななきゃなんねえんだよ糞が!
その後、俺達は誰もが目を背けたくなるような事を、平気ですることが出来た。
両目を一つずつ潰し、歯を一本残らずへし折り、舌を無理やり切り落とす。
両手両足を切り落としたことで、出血多量で意識が無くなるところをステラで回復させて、切った箇所を俺が炎で止血。
その後、死んだバルメイア兵が持っていた槍で両肩と腰に何本も突き刺し、天にかざす様にしてその場に放置。
「こほ……ひ……へ…………ふへ…………」
あまりに辛いからか、ジュニスが何度も何度も殺してくれみたいなことを言って、俺達に懇願するけど、んなもん無視だ無視。
すると、美羽がジュニスの腹を刺した。
「殺してもらえると思った? 残念、今簡単に殺したら彼女達がうかばれないから駄目だよ」
そう囁きながら剣で何度も刺し、何度も何度も剣で刺しては捻り、その度にジュニスは聞くに堪えない叫び声を上げる。
美羽の目は感情が読み取れない程、冷酷な目をしていた。
そんな美羽を、誰も止めようとしない。逆に、ジュニスに回復魔法をかけ、更に苦痛を与える。
「これで終わりだと思ったら大間違いだよ? この後、カズがヘカトンケイルを倒して、全部終わった後にはもっと苦しい思いをしてもらうから覚悟しておいてね」
「や、やめへ、やめへえぇぇぇ……」
「やめてだぁ? ざけんじゃねえぞテメェ……。そう言われてテメェはどれだけの人を殺してきたんだ? なぁ? ……そういや、テメェはニアちゃんを……、レイプ……、したんだっけな?」
レイプ……、強姦……。……コイツが、……コイツがぁ!
それを考えただけでまた胸糞悪くなった俺は、手に炎を出して、ジュニスの汚ねえ股関を焼いてやった。
「い゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
焼くと、ジュニスは不快で汚ねえ叫び声を上げた。
「うるさい、黙れ」
「お゛あ゛っ゛!」
あまりにもうるさかったからか、美羽がトドメとばかりにジュニスの股間を蹴り上げた。それに、なんかエグい音がしたけどまあ良いや。
一瞬、槍から抜けちまうって思ったけど、的確な角度を蹴ったのかそんなことは無かった。
その頃、カズはヘカトンケイルと戦っていた。