愛しいアンに逢いたくて(ロディオside)
勇者だなんて、俺自身がまだ信じられない
たしかに幼い頃から身体は丈夫だし運動も剣も得意だった。
でも小さな村の中でって話で自分が特別な存在だなんて少しも思った事はない。
それより俺にとって特別なのは村にいる幼馴染みのアンの事だ。
幼い頃からそりゃ可愛かったんだ
はじめて逢った時は俺も幼いながら胸がドキドキしたのを今も覚えてる。
同じ歳なのにちっちゃくて、くりっとした薄い茶色の瞳に見つめられると何でも許してしまいそうになる。
そんな可愛いアンの事に近づきたい男はたくさんいて、ついついからかって泣かせてしまうんだ。
そこをすかさず俺が庇って助けてやる。
アンにとってお前達はいじめっ子で俺は助けてくれるヒーローだ!ざまぁみろっ
そんな感じでアンといられる幸せを感じながら俺は村で暮らしていたんだ。
そんな幸せにヒビが入ったのはあの16歳で受ける属性審査だった。
は?俺が勇者
そんなの知らねーし
帝都に行けって?
やだよアンと離れなきゃいけないじゃないか!
明らかにテンションが落ちてる俺に神官のクリス兄さんが言うんだ。
「魔王をなんとかしないとロディの大切な場所も人もみんな無くなるんだぞ」
え!
それは困る
クリス兄さんは偉い人なのに俺らにも優しくしてくれるんだ
普通なら平民の俺が剣を学ぶ事なんて出来るわけないのにタダで教えてくれる。
剣が学べるこの場所、なによりアンがいるこの場所も父さん母さん、クリス兄さんそしてアンがいなくなっちゃうのはそんなの絶対嫌だ
俺は帝都に行く事を決めた。
でもアンに逢えなくなるのは辛いなー
アンは癒し手だった
優しいアンにはぴったりの属性じゃないか
そんなうわの空の俺にクリス兄さんの説明は続く
帝都で修行して勇者パーティーを組んで魔王を倒しに行くんだろ、わかったって
パーティーにはもちろん勇者、賢者、魔法師、タンク、アーチャー、それに聖女の6人が基本で聖女の能力しだいでは補助に癒やし手をつける事もある
ん?
癒し手!?
それならもしかしてアンも連れて行けるんじゃないか?
アンも一緒なら俺めっちゃ頑張るよ!
それにアンだって俺と離れたくないはずだろ?きっと一緒に来てくれる!!
って思ってたのに…
なんでだよ
断られた、あれからも何度も誘ってるのに無理っていわれる…
俺と離れても平気なのかと、ちょっと…
いや、かなり凹む
でもアンは臆病な女の子なんだ
魔王討伐だなんてきっと怖いんだろう
それならば俺が早く修行で一人前になってとっとと魔王をやっつけて来た方がいいのかも知れないって思うようになったんだ
魔王を倒したらきっと報奨金も出るだろう?
もしかしたら王様が何でも願いを叶えてくれるかも!
そうなったら俺はアンと…おっと、これはフラグ
そう決意して村を一人で旅立つ事になった
アンとの別れは涙無しでは語れないけど、ちゃんと気持ちは伝えたし、アンも笑って見送ってくれた
よしっ!やるぞー
俺はやればできる子だー!!
毎日毎日の修行は本当に辛かった…
クリス兄さんとの練習とは雲泥の差だ
あれくらいで、得意気にになってたのが恥ずかしいよ
それでもアンとの文通を心の支えに俺は頑張ったんだ。
そしてようやく魔王討伐の旅に明日旅立つ
予定通りパーティーを組んだけど他のメンバーは正直言うと、ちょっと物足りない。
偉い人が言うには俺の修行ペースが早すぎて他のメンバーがまだ育ってないらしい。
そんなの知らんがな
俺自身は準備万端なんだ、行くしかないだろ?
修行によって俺の能力値は今がピークなんだって
これからは落ちる一方なんだそうだ
確実に魔王を倒すつもりなら、今しかないんだってさ
アーチャーと聖女の女がやたらベタベタしてきて気持ち悪いけどアンを一人にさせとくのはやっぱり心配だし、早く帰りたいから我慢しよう
アン待ってろよっ!すぐに帰るからな!
その頃、
アンはというと神殿でクリスお兄様と呑気にお茶をしながら自気ままに過ごしていましたとさ…